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第21稿 カーテンコール|地図のない旅人たちへ

長い冬の物語に、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

『流氷の哭き声レストラン』。 この物語は、私の人生において最も寒く、けれど、最も体温を感じた季節の記録でした。 行き場を失った魂が、北の最果てで「流氷の音」に許され、再び歩き出すまでの再生の譜面(スコア)。 もし、この物語があなたの心の中に、小さな「止まり木」のような場所を作れたのなら、書き手としてこれ以上の喜びはありません。

しかし、旅はここで終わりではありません。 私の手元には今、一枚の地図と、もう二つの物語があります。

Reneという作家が描こうとしている世界。 それは、痛みを知る大人が、再び自分の足で立ち上がるまでの、「ロードムービー」です。

冬の次は、風の季節へ

もし、『流氷』が傷ついた羽を休めるための**「静寂(Stillness)」の物語だとしたら。 次に奏でられるのは、癒えた翼で再び空へ飛び立つための「風(Wind)」**の物語です。

次作長編『風のコーダ』。

舞台は再び海を越え、ニュージーランドの北島から、南島へ。 閉塞した社会から、思い切って飛び出した一人の女性が、異国の風に吹かれながら、自分だけの生き方を、見出していく物語。 静かな癒やしのその先にある、荒々しくも美しい「自立」への冒険。 スクリーンの中で、光と風が交差するような、鮮やかな色彩の物語を、準備しています。

原点としての『Deja vu・・』

そして、『風』が吹くその前に。 Reneという作家の世界観(トーン&マナー)を、もっと深く知っていただくために。 私の原点とも言える短編小説を、名刺代わりに皆様へ差し出します。

『Deja vu —— 終わらない囁き』

これは、心の病、家族の呪縛、そして逃避という名の自立を描いた、Reneワールドの「原液」のような掌編です。 『流氷』のルカが抱えていた静けさと、『風のコーダ』のエルが向かう激しさ。 その両方の種が、この短い物語の中に眠っています。

たとえば、ショート・ムービーのように。 古い幻燈機が映し出す、切なくも美しい記憶の断片のように。 この短編を通して、私の作家としての「腕(スキル)」と「視座(ビジョン)」を感じていただければ幸いです。


私の物語には、それぞれ「音」があります。
物語が一番静かに震える瞬間、いつも鳴っていた曲。
音楽は、説明ではなく、記憶の鍵です。
同じ一文でも、同じ景色でも、
音が違えば、心の奥の扉が違う場所で開く。

・Deja vu —— 終わらない囁き
クラムボン「ララバイ・サラバイ」
・風のコーダ
the band apart : 「K.AND HIS BIKE」
・流氷の哭き声レストラン:Pierre Bensusan「L'Alchimiste」

活字から、映像へ

私たちの人生は、映画のように劇的なカット割りでは進みません。 けれど、ふとした瞬間の光や、風の匂い、誰かと囲む食卓の湯気の中に、映画よりも美しいシーンが隠れていることを、私は知っています。

小樽の雪景色から、函館の夜景へ。 あるいはシドニーの眩い光を反射する波濤へ。

活字から映像へ。 国境を越えて、心と心へ。 私の紡ぐ物語が、あなたの「これから」を照らす淡い光になりますように。

また、新しい旅先でお会いしましょう。

流氷 / 風 / Deja vu

2026年、早春 Rene


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