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🟩小説の䞭の音楜箱 《邊楜線》 123曲スタンバむ

「音楜箱ゞュヌクボックス」ず読んでください。

小説に音楜䜜品が登堎するたびに付箋を付けおいたす。筋の䞊で重芁な圹割を持぀曲、人物蚭定や時代背景をあらわす曲など、それぞれの小説でふさわしい曲が䜿われおいたす。この投皿では、小説䞭に登堎する邊楜曲を50音順に玹介し、䜿甚䟋を小説から匕甚しおいたす。
掲茉曲123曲127バヌゞョン2026幎7月珟圚
䞋線の぀いたタむトルをクリックするず、You Tubeず連動しお曲が聞けたす。

 🎵🎀💋🎧🎹🎞🎷🪇🥁📀😀💋👏🎵

〈目次〉は歌手名50音順で配列。ただし、アニメ番組映画劇䞭歌、クラシック、唱歌童謡、民謡は郚立おしおたずめ、曲名順に䞊べたした。



【ア行】


💋 青江䞉奈  長厎ブルヌス

🎵 『長厎ブルヌス』 1968
  䜜詞/吉川静倫 䜜曲/枡久地政信

⋯⋯花街だった䞞山にほど近い思案橋界隈ずいうのは、長厎随䞀の歓楜街でございたしお、この圓時は、垭数千垭を誇るキャバレヌの「十二番通」や「銀銬車」を䞭心に、高玚クラブ、スナックが狭い路地の先の先たでびっしりず建ち䞊び、長厎の巚倧䌁業である䞉菱造船所の奜業瞟の勢いにも乗りたしお、たさに毎倜が祭りのような賑わいを芋せおおりたした。
 たずえばこの「十二番通」ずいうキャバレヌで専属バンドを務めおいた高橋勝ずコロラティヌノは、数幎埌「思案橋ブルヌス」ずいう曲で華々しくデビュヌいたしたしお、日本の歌謡界にその埌の長厎ブヌムを䜜りたす。青江䞉奈の📍「長厎ブルヌス」、瀬川瑛子の「長厎の倜はむらさき」ず名曲が続くなか、ラむバル店だったキャバレヌ「銀銬車」の専属バンド、内山田掋ずクヌル・ファむブが満を持しおデビュヌしたしお、日本䞭がご承知の「長厎は今日も雚だった」の倧ヒットも誕生するのでございたす。

➡📗 吉田修䞀 『囜宝』 2021

 

💋 èµ€ã„鳥  翌をください

🎵 『翌をください』 1971
  䜜詞・䜜曲/山䞊路倫

⋯⋯颚に乗っお䜕かが聞こえおくる。
 耳鳎りの奥から響いおくる、これは──
「歌、だ」
 誰もが子䟛の頃に䞀床は歌ったこずがあるメロディヌだった。
 
📍いた私の願いごずが叶うならば
翌が欲しい
この背䞭に鳥のように癜い翌
぀けおください
この倧空に翌を広げ 飛んで行きたいよ
悲しみのない自由な空ぞ 翌はためかせ
行きたい 

──それも䞀人二人の錻歌じゃない。倧合唱。 䞭略
 車の屋根に乗った数千、いや数䞇人芏暡の人たちが、道を埋め尜くしおいる。
 先頭を走るのは自衛隊の偵察車や化孊防護車、消防隊の特殊灜害察策車で、その屋根に乗っおいる人たちは陜圧匏化孊防護服や毒劇物防護服を身に纏たずっおいる。 䞭略
 車道を芆うほどのこのうねりは空からもはっきりず芋える。歌も届いおいるだろう、だから散垃郚隊も劇薬の雚を止めざるを埗なかったのか。
 圌らは歌ず共に薬剀散垃の䞭心地に向かっお行進しおいく。ただ薬剀の雚を降らせおいるずころもあるずいうのに、それをたったく恐れおいないようだ。

➡📗 穂波了 『月の萜ずし子』 2019

 

💋 ïŒ¡ïœ„  新時代

🎵 『新時代』 2022
  䜜詞・䜜曲/䞭田ダスタカ

⋯⋯「⋯⋯どうしたの」
 東山さんが䞍思議そうな顔をしお私を芋぀める。
 䜕か起きた蚳ではなかった。ずいうか私が勝手に目の前のあるこずに気づいただけだった。
 至近距離で顔ず顔を合わせお初めお分かっおしたったのだ。
 ──東山さん、錻毛出おる。
「⋯⋯えっず、その」
 蚀える蚳がない。口走った途端にこの空気はぶち壊れおしたう。でも私の胞の䞭では既に倉化が起きおいる。さっきたではちきれんばかりにドクンドクン音を立おおいた心臓が今は、ドクン ドクン ず疑問を持ちながら脈を打っおいるようだった。
「次、私歌いたす 䞭略 📍新時代、始たるぞ」
 の『新時代』を入れおテンションを䞊げおいこうず思ったのは、さっきの雰囲気のたただず笑っおしたいそうだったからだ。コメディヌチックな䞭での錻毛はオヌケヌだけど、ロマンチックな雰囲気での錻毛は無理だ。無理ゲヌ。錻ゲヌだ。ダバい、そんな倉な蚀葉が頭の䞭で思い぀いおしたう。歌っお誀魔化そう。

➡📗 枅氎晎朚 『17歳のビオトヌプ』 2023


📺 アニメ番組映画挔劇䞭歌  
アタックNo.1の歌おゞャ魔女カヌニバル!!想い出がいっぱい銀河鉄道999すきすき゜ングずんちんかんちん䞀䌑さんパヌトオブナアワヌルドははうえさたひょっこりひょうたん島BEYOND THE TIME メビりスの宇宙を越えお民衆の歌ゆけゆけ飛雄銬ラゞオ䜓操第

 ðŸ˜€ã€Žã‚¢ã‚¿ãƒƒã‚¯No.1の歌』 1969
アニメ「アタックNo.1」オヌプニングテヌマ
💋 倧杉久矎子、䜜詞/東京ムヌビヌ䌁画郚山厎敬之、䜜曲/枡蟺岳倫

⋯⋯蕗子が「あ」ず足を止めた。倧きく芋開かれた目は青々ず柄んだ空の䞀点を芋すえおいる。
「月」
「え」
「昌間の」
 その芖線を远った吟郎の目に、ほのかに癜い半円圢の茪郭が映る。
「ね、お父さん。あそこに人類が立ったなんお、信じられないね」
 たすたす頌子に䌌おきたアヌモンド圢の瞳をたぶしげにすがめ、蕗子がほうっず息を吐く。聞くたでもなく、「人類」ずは二幎前に月面に降りたった二人のアメリカ人を指すのだろう。 䞭略
 こんなふうに立ちどたり、のんびりず月を仰いだのはい぀以来だろう。
 党力で走っおきた。私教育ずいう道なき道を、ただひたすらに、闇雲に。垞に数歩先を疟走しおいる千明の背䞭を芋倱わぬようにず、脇目もふらずに駆けぬけおきた。 䞭略
 立ちどたるのを恐れおいたのかもしれない。ほんのり霞かすんだ空の青さが目に沁みだすず、吟郎の胞にはふっずそんなかげりも忍び蟌んだ。 䞭略
「おずう、おねえ、早く」
 前を行く蘭にせかされたのず、背埌で自動車のクラクションが鳎ったのず、ほが同時だった。吟郎は蕗子を守るように路肩ぞ匕きよせた。
 マツダの癜いファミリアが肩で颚を切る勢いで走りぬけおいく。
「やれやれ。のんびり月を芋るのもたたならない、物隒な䞖の䞭になったもんだ」
 がやきながら吟郎が再び歩きだし、蘭が今床は📍『アタック.1』のテヌマを倧声で歌いだす。ここに菜々矎が加われば、さらにけたたたしい二重唱がくりひろげられるこずだろう。育ちざかりの䞉人姉効がいる家庭に感傷は䌌合わない。

➡📗 森絵郜 『みかづき』 2016

 ðŸ˜€ã€ŽãŠã‚žãƒ£é­”女カヌニバル!!』 1999
アニメ「おゞャ魔女どれみ」䞻題歌
💋 堂、䜜詞/倧森祥子しょうこ、䜜曲/池毅たけし

⋯⋯我々は䜓をほぐしながらそのアニメを芋お午埌を過ごした。耳に残る、オヌプニング曲📍「おゞャ魔女カヌニバル!!」が䜕床目か流れお、だらだらした雰囲気の䞭で急にぶたれた亜矎の挔説を、私はよく芚えおいる。
「䞍思議なチカラがわいたらどヌしよ っおゆヌのはさ、魔法が䜿えるみたいにサッカヌが䞊手くなるこずでしょ。どっきりだし、びっくりだし」
「それが、䜕だかずっおもすおきね、なのね」
「いヌでしょ」
「いヌよね」
「でしょヌ」笑っお埌ろに傟いた戻りしな「そしたらさっ」ず声を匵り䞊げる。「もうサッカヌばっかりしお孊校なんか行かなくおいヌじゃん。 それだずきっず毎日が日曜日みたいだし、やな宿題はぜヌんぶゎミ箱にすおちゃえ、になるんだけど、どうやっおサッカヌが䞊手くなるかっおいうのは、教科曞みおも曞いおないけどだし、子猫にきいおもそっぜ向くけどっお感じで緎習あるのみなの。でもね、だからがんばっお緎習したら、もしかしおほんずヌにできちゃうかもしれないじゃん」
 私は亜矎の背埌で興味深く耳を傟けおいたのだ。
「倧きな声でピリカピリララっおいうのは呪文だから、あたしの堎合は䞍動明王の真蚀で」ず倧げさに目を閉じる。「のうたくさんたんだ ばざらだん せんだ たかろしやだ さはたや うんたらたかんたん サッカヌよ、䞊手くなれ」
 魔法シヌンの真䌌に、みどりさんはすごいすごいず倧喜びで手を叩いた。
「パパ、ママ、せんせに怒られちゃうけどさ、そんなの実はどヌだっおいヌじゃんっおこずなんだよね。サッカヌできおたらさ。だから、テストで点、笑顔は満点、ドキドキワクワクは幎䞭無䌑なの」
「ずっずずっずね」
「幎䞭無䌑」
 最埌はちょうどテレビの声ず重なった。芪切な合いの手でおしたいたで説明しきった亜矎は、満足そうに息を぀いおベッドの䞊ぞ仰向けに倒れお、すぐ暪のみどりさんを芋た。

➡📗乗代雄介 『旅する緎習』 2021

😀『想い出がいっぱい』 1983
アニメ「みゆき」゚ンディングテヌマ
💋 ₂、䜜詞/阿朚あき燿子、䜜曲/鈎朚キサブロヌ

⋯⋯案内された郚屋に入っおも、わたしたちはビヌルを飲み぀づけた。なにを話しおも琎矎さんが倧げさに笑っおくれるので、わたしは調子に乗っお話し぀づけた。黄矎子さんず初めお䌚った倏の日のこず。そのあず黄矎子さんが突然いなくなっお途方に暮れたこず。でも再䌚できたこず。映氎ペンスさんは本圓にいい声をしおいるのに、これたで歌うのを䞀床も聎いたこずがないこずなんかを話した。 䞭略
 歌い終わるず琎矎さんは照れたようにむ゚ヌむず小さく䜓をよじらせお、拍手をした。琎矎さんの声になのか歌詞になのか、それずもここでふたりでこうしおいるこずにたいしおなのか、あるいはその党郚になのかわからなかったけれど、私はほずんど泣きそうになっおいお、なんおいう曲なのず尋ねるので粟いっぱいだった。「これは📍『想い出がいっぱい』っおや぀でヌす」ず琎矎さんはマむクを通しお蚀うず、花ちゃヌんず笑っお䞡手をあげおわたしの名前を呌んだ。そのずき、琎矎さんのはだけたスカヌトから倪ももに青黒い痕があるのがみえた。それはなにか間違いじゃないかずいうくらいの、どうやったらそんな色になるかずいうくらいの倧きな痕だった。

➡📗 川䞊未映子 『黄色い家』 2023

 ðŸ˜€ã€ŽéŠ€æ²³é‰„é“999』 1979
 ïŒˆã‚¢ãƒ‹ãƒ¡ã€ŽéŠ€æ²³é‰„é“999』䞻題歌
 💋 ã‚Žãƒ€ã‚€ã‚Žã€äœœè©ž/英語奈良橋陜子日本語山川啓介、䜜曲/タケカワナキヒデ

⋯⋯スタンドでの挔奏はやはり解攟感があるのか、みんな䌞び䌞びず挔奏しおいるように感じた。チアリヌディング郚、野球郚の応揎団ず息を合わせお頑匵っおいる。
📍『銀河鉄道』
『ひみ぀のアッコちゃん』
『サりスポヌ』
『ひょっこりひょうたん島』
 野球応揎の曲目は、昭和時代にヒットしたアニメや歌謡曲が䞻になっおいお興味深い。垂船には、倧矩の䜜った曲ずは別に『垂船カモン』ずいう曲があり、これは教育孊研究のために吹奏楜郚を蚪れおいた東京倧孊倧孊院の孊生さんが䜜ったものらしい。長調の明るいメロディで吹奏楜の音がよく鳎る楜しい曲だ。
 思った以䞊に倚い応揎団のレパヌトリヌに私は感心しおいた。曲が違えばダンスの振り付けも違う。チアリヌディング郚も野球郚も、もちろん吹奏楜郚も数倚いレパヌトリヌを次々ず倉えながら遞手たちの背䞭を抌す。

➡📗 䞭井由梚子 『歳の゜りル』 2018

😀『すきすき゜ング』 1991
アニメ「ひみ぀のアッコちゃん」゚ンディングテヌマ
💋 氎森亜土あど、䜜詞/山元護久もりひさ井䞊ひさし、䜜曲/小林亜星あせい

⋯⋯スタンドでの挔奏はやはり解攟感があるのか、みんな䌞び䌞びず挔奏しおいるように感じた。チアリヌディング郚、野球郚の応揎団ず息を合わせお頑匵っおいる。『銀河鉄道』📍『ひみ぀のアッコちゃん』『サりスポヌ』『ひょっこりひょうたん島』 野球応揎の曲目は、昭和時代にヒットしたアニメや歌謡曲が䞻になっおいお興味深い。垂船には、倧矩の䜜った曲ずは別に『垂船カモン』ずいう曲があり、これは教育孊研究のために吹奏楜郚を蚪れおいた東京倧孊倧孊院の孊生さんが䜜ったものらしい。長調の明るいメロディで吹奏楜の音がよく鳎る楜しい曲だ。 思った以䞊に倚い応揎団のレパヌトリヌに私は感心しおいた。曲が違えばダンスの振り付けも違う。チアリヌディング郚も野球郚も、もちろん吹奏楜郚も数倚いレパヌトリヌを次々ず倉えながら遞手たちの背䞭を抌す。

➡📗䞭井由梚子 『20歳の゜りル』 2018

 ðŸ˜€ã€Žãšã‚“ちんかんちん䞀䌑さん』 1975
アニメ「䞀䌑さん」オヌプニングテヌマ
💋 盞内あいうち恵・ダングフレッシュ、䜜詞/山元護久もりひさ、䜜曲/宇野誠䞀郎

⋯⋯倧量のアルコヌルにスナック菓子、それにコンビニのおにぎりやらサンドりィッチやらを校舎の屋䞊ぞ運びこみ、念願のビッグ・むベントを決行したのは、その倜のこずだ。
 思えばゆるい孊校だったのだろう。倩文郚の正匏郚員ずなった元道が笹川先生の協力を仰ぎ、芳望䌚を開くずいう名目で屋䞊ず䞀階の非垞口の鍵を手に入れるのは、そう難しいこずではなかった。 䞭略
 星明かりも華やぐ透明床の高い倜だった。欜ちゃん組のゆかちんず駅で埅ち合わせ、玄束の䞃時に少し遅れお校舎の屋䞊ぞ到着するず、男子四人のヘビメタ組はすでにほろ酔い加枛で歌をうたっおいた。 䞭略
 猶ビヌルをちびちびやりながら聎くずもなしに耳を傟けおいるず、女子を䞭心ずした欜ちゃん組が着替えをすたせ、仮装埌の姿でばたばた珟れた。仮装ずいっおも、ゞャヌゞの䞊から柔道着をはおり、灰色の玙を貌り぀けたヘルメットを頭に茉せただけ。「䞀䌑でヌす」「もくねんでヌす」「ちんねんでヌす」などず掟砎おきおやぶりの自己申告をするなり、六人そろっお📍「奜き奜き奜き奜き奜き──奜き」ず『䞀䌑さん』のアニメ゜ングを歌いだした。
「おいおい、仮装っお、そんだけかよ」
「たったくずんちがきいおねヌぞ、その䞀䌑」
 倧䞍評だったが、䞀䌑さんたちはずんず気にせず、気持ちよさげに熱唱し続ける。ヘビメタ組も負けじず再び歌いだし、思いきり歌声がかぶっおいたけれど、そんなこずはやはりどちらも気にしちゃいなかった。

➡📗 森絵郜 『氞遠の出口』 2003

😀『パヌトオブナアワヌルド』 日本公開1991
 米ディズニヌ映画『リトルマヌメむド』人魚姫アリ゚ルの歌
 💋 すずきたゆみアリ゚ル圹声優、䜜詞/ハワヌドアッシュマン蚳詞/束柀薫・近衛秀健、䜜曲/アランメンケン

⋯⋯海沿いに癜い颚力発電のタヌビンが䞊ぶ。倜のはしりの䞭で、止たりそうになりながら回っおいる。
 そのタヌビンに届くように、声を出しおみる。声を屋にしお真っ盎ぐに攟぀。喉からでも腹からでもなく、感情から出す。
 こんなこずをしお、䜕が倉わる
 声を出しながら、口には出しおいない蚀葉が聞こえた気がした。
 自転車のスタンドを立おお䞡手を自由にし、スマヌトフォンのアむコンをタップする。
 粗い画像が画面に浮き䞊がった。しばらく眺める。芋おいる間、歌を䞀曲心の䞭で歌う。今日は📍『パヌトオブナアワヌルド』。昔、泣いおいるず決たっお母に蚀われた。泣いたからっお慰められるず思っおはいけない、悲しい時、蟛い時は歌を歌いなさいず。 䞭略
 今日も来られた。来週も来られるずいい。たるで呜を繋ぐように通っおいる。冬になっおもそうする぀もりだ。自転車が無理になれば、バスを䜿っお。歩いおでもいい。
 そうすれば、䜕かが倉わる。流れだっお倉わる。今だっお、きっず䜕かを倉えおいる。だっお、この街に来お、攟課埌に海を芋おいるなんお、誰も思っおいないはずだから。

➡📗也ルカ 『氎底のスピカ』 2022

  ðŸ˜€ ã€Žã¯ã¯ã†ãˆã•た』 1975
アニメ「䞀䌑さん」゚ンディングテヌマ
💋藀田淑子ずしこ、䜜詞/山元護久もりひさ、䜜曲/宇野誠䞀郎

⋯⋯「私たちのお披露目䌚なんおこんなものである。途䞭、元道が春の星座のミニ講座を始めたものの、たずもに聎講しおいたのは助手ずしお偎にいた私だけ。気が぀くずヘビメタ組も䞀䌑さんたちもラむトの䞋に矀がり、サンドりィッチやお菓子をほおばりながら酒盛りを始めおいた。
「結局、ただの飲み䌚なんだよね」
 私ず元道もフェンスの前に座りこみ、本腰を入れお飲みだした。䞭略
 倏の倩文週間の終了埌、普通の䞉幎生が郚掻を離れる時期に矎術郚ぞもどった私は、遅蒔おそたきながらの進路遞定に忙殺されお、星のこずなどもうほずんど忘れおいたけれど、こうしお芋䞊げるず反射的に冬の倧䞉角圢を結んでいるのが可笑しい。 䞭略
「ねえ、い぀か私の䟿箋がお店に䞊んだら、䞀生倧事にしなくおいいから、心をこめお䜿い捚おおくれないかな。それで、䞀床でもいいから、その䟿箋で倧事な人にラブレタヌを曞いおくれないかな」
 返事はない。かわりにラむトの䞋から📍「ははうえさた、お元気ですかヌ」ず、『䞀䌑さん』の゚ンディングテヌマが流れおきた。これ以䞊ないほど物悲しいその調べに、思わず宇宙そらから目を降ろした。

➡📗 森絵郜 『氞遠の出口』 2003

 ðŸ˜€ã€Žã²ã‚‡ã£ã“りひょうたん島』 1964
人圢劇「ひょっこりひょうたん島」䞻題歌
💋 前川陜子・ひばり児童合唱団 䜜詞/山元護久・井䞊ひさし 䜜曲/宇野誠䞀郎

⋯⋯スタンドでの挔奏はやはり解攟感があるのか、みんな䌞び䌞びず挔奏しおいるように感じた。チアリヌディング郚、野球郚の応揎団ず息を合わせお頑匵っおいる。
『銀河鉄道』
『ひみ぀のアッコちゃん』
『サりスポヌ』
『ひょっこりひょうたん島』
野球応揎の曲目は、昭和時代にヒットしたアニメや歌謡曲が䞻になっおいお興味深い。垂船には、倧矩の䜜った曲ずは別に『垂船カモン』ずいう曲があり、これは教育孊研究のために吹奏楜郚を蚪れおいた東京倧孊倧孊院の孊生さんが䜜ったものらしい。長調の明るいメロディで吹奏楜の音がよく鳎る楜しい曲だ。
思った以䞊に倚い応揎団のレパヌトリヌに私は感心しおいた。曲が違えばダンスの振り付けも違う。チアリヌディング郚も野球郚も、もちろん吹奏楜郚も数倚いレパヌトリヌを次々ず倉えながら遞手たちの背䞭を抌す。

➡📗䞭井由梚子 『20歳の゜りル』 2018

😀 『BEYOND THE TIME メビりスの宇宙を越えお』 2019
1988幎にTM NETWORKがアニメ映画「機動戊士ガンダム 逆襲のシャア」の䞻題歌ずしお䜜成した曲を、2019幎テレビアニメ「機動戊士ガンダム THE ORIGIN」の䞻題歌ずしおLUNA SEAがカバヌ
💋  、䜜詞/小宀み぀子、䜜曲/小宀哲哉

⋯⋯十八メヌトルのガンダムが暪浜に出珟したのは、二〇二〇幎の倏。期間限定オヌプンしおいる「  」の目玉䌁画ずしお、メディアにその党貌を明らかにしたのは、その幎の十䞀月末だ。
 䞀般公開されるず、門田は早々に芳に行き、初代モデルを再構成した「7800」ガンダムが、河村隆䞀の歌う📍『  』に合わせお光を攟ったのを芋お胞を熱くした。動きは少ないものの、幌いころからプラモデルを぀くっおいる身ずしおは、実物倧のガンダムが手を開くだけでも可動域を蚈算し感激しおしたう。
 その初代モデルが暪浜の枯湟を背景に、正面を向いお立っおいる。遠くのドックにいるガンダムが、頭から足の先たではっきりず芋える。䞘の䞊から芋たからこそ、倧きさが鮮明に䌝わっおきお、門田は初代モデルの芋栄えにため息を぀いた。
そしおその雄姿を蚘録しおいる最䞭さなか、先厎に声を掛けられたのである。 䞭略
「実物倧ず聞きたしたが、倧きいですねぇ。アレに暎れられるず、県譊はお手䞊げです」
 珍しく冗談を蚀ったのは、呌び出した盞手ぞの気遣いか。いずれにせよ、出䌚っおから四半䞖玀ほど経ち、少しだけ距離が瞮たった気がした。
「暪浜垂内は倧䞈倫じゃないですかね。基本的に宇宙で戊いたすから」
「ああ、そうか」
「たあ、地䞊戊のシヌンもありたすが」
 ぎこちなく䌚話が途切れ、互いに苊笑する。五十代も半ば、友だちづくりが䞋手になっお䜕十幎ず経぀。

➡📗塩田歊士 『存圚のすべおを』 2023

😀『民衆の歌』 日本公開1991
ミュヌゞカル『レ・ミれラブル』劇䞭歌
䜜詞/アランブヌブリル蚳詞/岩谷時子、䜜曲/クロヌド=ミシェルゞェヌンベルク
 
⋯⋯北海道のロヌカル局は、NHKも民攟も地震の情報を流し続けおいる。朝から䜕床も芋た映像に、䞀぀二぀新しい映像が混じる。避難所からの䞭継、液状化により傟く䜏宅、炊き出しの様子、絊氎斜蚭に䞊ぶ行列が映る。ポリタンクを持った䞭幎女性が、マンションの゚レベヌタヌが止たっおしたったから、氎を運ぶのが倧倉だず答えおいる。 䞭略
二床目の絊氎はキャリヌバッグを䜿ったが、マンションの階段はどうしようもなかった。矎什はキャリヌバッグの䞭から絊氎袋を出しお、䞀段䞀段階段を䞊った。
 䞀床目は五階ごずに取った䌑みを、今床は取らなかった。䌑たずにどこたで登り続けられるか詊しおみようず思った。
 自分で自分を拷問しおいるみたいだった。足の筋繊維が傷぀き切れおいくのを痛みで実感する。足の蟛さより矎什を苛さいなんだのは絊氎袋の重みだった。指の腹に食い蟌み、ちぎり萜そうかず蚀わんばかりだ。
 矎什は知らず歌を口ずさんでいた。十八番は『パヌトオブナアハワヌルド』。奜きなのは📍『民衆の歌』。流行はやりの歌は実はあたり埗意ではないけれど、あの猛吹雪の翌日に曎玗が゚モいず蚀っおいた曲はずおも気に入った。
 階段を䞊りながら、矎什は䞀人小声で歌い続けた。
 矎什は十八階のフロアを螏んだ。足に力が入らず、その堎に倒れたが、ずにかく十八階のフロアに倒れたのだった。絊氎袋を離しお手を芋るず、持ち手が食い蟌んだ指の腹は、内出血で玫色だった。

➡📗也ルカ 『氎底のスピカ』 2022

 ðŸ˜€ã€Žã‚†ã‘ゆけ飛雄銬ひゅうた』 1968
アニメ『巚人の星』䞻題歌
💋 アンサンブル・ポッカ、 䜜詞/東京ムヌビヌ䌁画郚、䜜曲/枡蟺岳倫たけお

⋯⋯がらんずした攟課埌の教宀で、吟郎は䞀幎九組を担任する女教垫の怒りを䞀身に受けずめた。
「誠に申しわけございたせん」
「䞀床や二床のこずではないんですよ。しょせん六぀の子ども、たずもにずりあうのも倧人げないず、私がこれたでどれだけ目を぀ぶっおきたこずか」
 くやし涙を浮かべた女教垫はただ䞉十をすぎたばかりず聞くが、その顔にはすでに経隓を積んだ教育者ずしおの矜持きょうじず、そしお、塟ぞの䞍信感が匷く滲にじんでいる。教育畑の新参者である塟に敵意をむき出す孊校教員はけっしお少なくない。この手の茩やからず千明がひずたびぶ぀かったが最埌、泥仕合は必至だ。吟郎は改めお自分が来お正解だったず胞をなでおろす。
「今日ずいう今日は、さすがに私も堪忍袋の緒が切れたした。蘭さんの傍若無人ぶりは、子どもだからずいっお看過できる域をこえおいたす」䞭略
「お父さん」
 悶々ずした自省を胞に閘門をくぐりぬける吟郎の耳を、枅さやかな颚のような乙女の声がかすめた。
 芋るず、校門の柱のかげから蕗子が手をふっおいる。 䞭略
「い぀も悪いね。君には負担をかけおばかりで」
「ううん、ぜんぜん。そんなこずより、蘭の先生、なんお」
 なぜか倧声で📍『巚人の星』の䞻題歌を歌いだした蘭を远いながら、吟郎が浮かない声で教科曞の䞀件を語るず、蕗子はあきれ顔で苊笑した。

➡📗森絵郜 『みかづき』 2016

😀『ラゞオ䜓操第』
  䜜曲/團䌊玖磚

⋯⋯克己は手前の路肩に車を停め、少し離れた堎所から圌らの様子を芳察しおいた。螏切の譊報が鳎り、遮断機が䞋りる。そこを二䞡線成の電車が通過しおいく。倪陜を济びお茝く海が、車䞡の窓を通しお芋える。その矎しさに克己は目を奪われた。マニアが写真に収めたがる気持ちも圓然だろう。しかし、それが迷惑行為の免眪笊になるわけはない。
 次の譊報が鳎ったずき、克己はすたすたず螏切に向かっお歩いた。
「おい、止たれよ」「邪魔なんだよ」眵声が背䞭に降りかかる。
 克己はお構いなく歩を進め、降りたばかりの遮断機のポヌルの前に立った。そしお振り返り、📍ラゞオ䜓操第のむントロを倧きな声で奏でた。
「ラゞオ䜓操第、ペヌむ タンタカタヌン、タンタカタヌン、タタタタタタタン、タンタカタヌン、タンタカタヌン、タタタタタ──」
「䜕やっおんだよ、おめえ」
「ふざけんな」
「電車が来ちゃうだろう」
撮り鉄たちが憀怒ふんぬの衚情で叫ぶ。
「䞡足飛びで軜く党身を揺する運動。ハむ、むチ、ニ、サン、シ──」
 克己は自分で号什をかけ、ゞャンプを繰り返した。

➡📗奥田英朗『コメンテヌタヌ「ラゞオ䜓操第2」』 2023


💋 è’井由実  ひこうき雲

🎵 『ひこうき雲』 1973
  䜜詞・䜜曲/荒井由実
1976の結婚を機に束任谷由実に改姓

⋯⋯12月28日。垂船の定期挔奏䌚。
 習志野文化ホヌルに、倧矩の姿があった。車怅子に乗っおいた。䞭略
 2幕が開けお、今幎の『吹劇』が始たった。
「吹劇『ひこうき雲生きる』」
 そのアナりンスに倧矩はドキンずした。
 生きる。
 今幎のテヌマは、「生きる」。
 序曲、䜕気ない日垞、悪倢、生き甲斐、䞍安、䜙呜宣告、ひこうき雲、氞蚣⋯⋯。たるで、自分のこずのようではないか。なぜ、高橋先生は今幎の吹劇のテヌマをこれにしたのだろう。
 幕が開けた。䞻人公は画家。圌は日々を創䜜に費やし、生き甲斐を感じ、呜を燃やしおいる。だがある日突劂ずしお䜙呜宣告を受け、苊しみ、やがお⋯⋯。 䞭略 
「癜い坂道が空たで続いおいた
 ゆらゆらかげろうがあの子を包む
 誰も気づかず ただひずり
 あの子は昇っおゆく
 䜕もおそれない そしお舞い䞊がる」 
📍荒井由実『ひこうき雲』の合唱が、倧矩の耳にがんやりず聞こえおいた。䞻人公の画家は、ひず぀の答えを芋぀けた。
 最埌の瞬間たで「生ききる」ずいう答えを。

➡📗 䞭井由梚子 『20歳の゜りル』 2018


💋 åµã€€ã€€Beautiful days

🎵 『  』 2008
  䜜詞・䜜曲/akuya arada

⋯⋯そうだ──ず僕は気づく。本庄絆はあんなタむミングで抌す必芁がなかった。あらかじめ答えを知っおいたのだずしおも、せめお問題冒頭の「ビュヌティフル」を聞いおから抌せばよかった。「ビュヌティフルラむフ」かもしれないし、ビュヌティフル・マむンド」かもしれない。パッず思い぀く限りでも、嵐やeeeeが📍「ビュヌティフル・デむズ」ずいう曲を歌っおいる。「ビュヌティフル」だけで「ママ、クリヌニング小野寺よ」ず答えられるクむズプレむダヌがこの䞖に存圚しないこずくらい、本庄絆はわかっおいたはずだ。少し埅぀だけで、バレバレのダラセを党囜に知らしめなくおすんだ。
 どうしお本庄絆はあんな抌し方をしたのだろうか。

➡📗 小川哲さずし『君のクむズ』 2022


💋 ã‚¢ãƒ³ã‚žã‚§ãƒ©ãƒ»ã‚¢ã‚­ã€€ã€€æ‰‹çŽ™ïœžæ‹å•“ 十五の君ぞ

🎵 『手玙拝啓 十五の君ぞ』 2008
  䜜詞・䜜曲/アンゞェラ・アキ

⋯⋯その日の倜、高橋先生はナナに連絡をしおいた。至急、赀ゞャ30人に垂船に集たるようにず。
 翌日、音楜準備宀に集たった、ほが党員の赀ゞャたちに先生は告げた。
 倧矩は、助からない。
 党員が呆然ずした。みんなどこか、のん気に構えおいたのだ。入退院を繰り返す䞭で「倧倉だなあ」ず思っおいた。昚幎の定挔のずきには、すっかり瘊せた倧矩の姿に衝撃を受けた。それでも、たさか死んでしたうなんお、倢にも思わなかった。
「倧矩に手玙を送ろう」
 ナナが立ち䞊がる。党員で音楜宀に向かった。
 蚭眮したカメラの前で、笑えるたでに長い時間を芁した。
 やっずい぀ものように笑えるようになったずき、ミハルがカメラのボタンを抌した。普段通りの、笑いあう皆の姿が録画され始める。ヒロアキが、ピアノの前に座った。䌎奏を始める。
 高校のずき、みんなで䞀緒に歌った曲📍『手玙拝啓 十五の君ぞ』だ。 
「今 負けそうで泣きそうで
 消えおしたいそうな僕は
 誰の蚀葉を信じ歩けばいいの」 
 ナナは歌いながら、頭の䞭で倧矩の笑顔を思い浮かべようずした。だけど、浮かんでくるのは定挔のずきの、消えおしたいそうな倧矩の姿だった。たるで皆にお別れを蚀うように手を振っおいた倧矩。 

➡📗 䞭井由梚子 『20歳の゜りル』 2018


💋 çŸ³å·ã•ゆり  倩城越え接軜海峡冬景色

🎵『倩城あたぎ越え』 1986
  䜜詞/吉岡治 䜜曲/匊哲也

⋯⋯新平に女がいる。
 田䞞屋の冚子ずいう女ず、ずっず付き合っおいる。
 䌊豆ぞの旅行䞭、英子は行きのバスからさっそくそんなこずを蚎えはじめ、昌食のレストランでも、カピパラのいる䌊豆シャボテン動物公園でも、絶景の城ヶ厎海岞でも、暇さえあれば芪族の誰かを捕たえおは、我が家の䞀倧事を告発しようず努めたから、そのたび新平がさらりず泚意喚起をし、話の腰を折るこずになった。 䞭略
 やがおはじたったきょうだいたちの䜙興にも、ほずんど目もくれずに食べる。幹事を務めるしげるの腹螊りや、定吉倫劻の寞劇『金色倜叉』、末の効、はるえの唄📍『倩城越え』にも、終わるず拍手を送るばかりで、それよりも石焌きのステヌキを食べ、ご飯をかき蟌むのに倢䞭な様子だった。 

➡📗 藀野千倜 『じい散歩』 2020

⋯⋯「日隅矎枝子がマメなタむプで助かった。受任した案件、぀たり揉め事の蚘録が山ほど残っおる。これを蟿っおいけば日隅ず他の被害者二人、あるいはNARUずの接点を芋぀けられるはずだよ」 䞭略
倕食埌、むサガワ先生はノヌトの山を四぀に分けた。衚玙に曞かれた西暊が山によっおそれぞれ異なっおいる。二〇䞀九幎から二〇二二幎たで、四幎分の蚘録が䞊べられおいた。 䞭略
光は最初の十五分で手掛かり探しに飜きおしたったようで、手で芆いもせず倧きな欠䌞あくびをした。反察に、暁人は指で文字を蟿りながら集䞭しお読み進めおいる様子。そしおむサガワ先生は凄たじい速さで次々にペヌゞを捲っおいた。 䞭略
「光、集䞭しなさいよ」
光の手元が留守になっおいるのを芋かねお、暁人が先生みたいなこずを蚀った。光は䞍服そうに返す。
「だっおさ、倧晊日にこんなのっおないぜ」
「盆も正月も関係ないでしょ」
「わかっおるっお。あヌあ、でも玅癜がないず幎越せねえよ」
ノヌトをパラパラず流し読みしながら、光は呑気にも錻歌を歌い出した。やはり音痎だけれど、かろうじお📍「倩城越え」に聞こえなくもなかった。

➡📗 荒朚あかね 『歀の䞖の果おの殺人』 2022

🎵 『接軜海峡冬景色』 1977
  䜜詞/阿久悠 䜜曲/䞉朚たかし

⋯⋯緒方は滋賀刑務所を出所した足で五幎前逮捕された倩王寺公園にたっすぐ戻った。その埌高速道路の䞋を抜け、通倩閣ず新䞖界を尻目に、ゞャンゞャン暪䞁も玠通りしお、䞊行する関西本線ず環状線のガヌドをくぐり、倧通りを枡った。動物園前䞀番街、二番街のアヌケヌドをひたすら南䞋する。䞭略
 オヌ゚ス劇堎の幟のがりがはためいおいる。
「桜の囜の芝居の名所 ここは山王オヌ゚ス劇堎 劇団蝶々 絶賛来挔䞭 䞭野匘次郎 あおい竜也 『鯉名の銀平』」
碁䌚所から、立ちこめる煙草の煙がもれ出しおくる。「逃子の王将」の厚房では、鉄鍋ず鉄杓子が喧嘩する掟手な音がひびき、䞀杯飲み屋の「金毘矅こんぎら」からはカラオケで唄う📍「接軜海峡冬景色」の調子っぱずれの声が䞊がる。
 緒方は、あの頃ず倉わらない颚物のあいだを、キャリヌバッグを匕きずっお歩く。飛田本通をかすめお右に折れ、今池本通を抜けた。堺筋を暪切っお萩之茶屋本通ぞ向かう。 䞭略 萩之茶屋本通から䞉角公園ぞず近づいおゆく。 

➡📗 蟻原 登 『冬の旅』 2013


💋 五茪い぀わ真匓  恋人よ

🎵 『恋人よ』 1980
  䜜詞・䜜曲/五茪真匓

⋯⋯ある日の午埌、掋子を車怅子に乗せたたた、぀いその堎で居眠りをしおいるず、歌が聞こえた。久島は顔を䞊げた。
「フダァラァクヌダ キシヌりツヌ ナァミハヌ」
 掋子が、䞀点を䞭心に車怅子をぐるぐる回しながら歌っおいるのだ。ゆったりずしおいお、寄せおは返す波のような節回しず歌詞に芚えがあった。久島が小さい頃、通倜や斜逓鬌せがきで祖父母や䞡芪が小さな鉊かねを敲たたきながら唱えおいた埡詠歌だ。
「お母ちゃんが歌を歌うずうた」
 その倜、久島は嚘に電話をした。
「五茪真匓の📍『恋人よ』でしょ。奜きやったもんね」
「違う違う、埡詠歌や。ふしぎなこっちゃで。掋子は今たでいっぺんも歌うたこずなかった。いや、埡詠歌なんお知らんはずや。なんでやろ。それもな、䞀番の那智青岞枡寺せいがんずじから䞉十䞉番岐阜の華厳寺たで、党郚歌い切ったんや」 䞭略
 久島の努力もむなしく、掋子の症状は悪化の䞀途をたどった。䞋着を勝手に脱いで、ベッドで排泄し、䟿をいじる。止めようずする久島を、じっず憎々しげににらみ぀けた。 

➡📗 蟻原 登 『冬の旅』 2013


💋 å²©åŽŽå®çŸŽã€€ã€€è–æ¯ãŸã¡ã®ãƒ©ãƒ©ãƒã‚€

🎵 『聖母マドンナたちのララバむ』 1982
 䜜詞/山川啓介、䜜曲/朚森敏之・ohn cott

⋯⋯琎矎さんは煙に目を现めお、映氎ペンスさんの名前を口にした。「わたしら、それくらいから぀るんでるの」
「孊校が䞀緒だったんですか」
「たさか」琎矎さんは笑った。「うちら孊校なんか行っおないよ。店で䌚ったの。はるか昔の、歌舞䌎町時代だね。花ちゃんはどこだっけ」
「わたしは東村山の奥のほうで」
「あ、そっか。順子ママのずころにいたんだよね。あそこ、店の名前なんおいったっけ⋯⋯なんか、長いのじゃなかった」
「はい、『聖母マドンナたちのララバむ』です。母は働いおいたしたけど、わたしは䞭孊生だったので」
「そうそう、📍『聖母たちのララバむ』だったわ。長いよね。順子さん、あの人もむかし歌舞䌎町にいたの。店終わりにぜったいあの曲を歌うのよね。歌わないず誰も垰れないっおいう。花ちゃん、どんな歌か知っおる」
「はい、母芪も歌っおたので、わたしも歌えたす」
「なんか笑える歌だよね」 

➡📗 川䞊未映子 『黄色い家』 2023


💋 å†…山田掋ずクヌルファむブ  長厎は今日も雚だった

🎵 『長厎は今日も雚だった』 1969
  䜜詞/氞田貎子、䜜曲/圩朚雅倫

⋯⋯花街だった䞞山にほど近い思案橋界隈ずいうのは、長厎随䞀の歓楜街でございたしお、この圓時は、垭数千垭を誇るキャバレヌの「十二番通」や「銀銬車」を䞭心に、高玚クラブ、スナックが狭い路地の先の先たでびっしりず建ち䞊び、長厎の巚倧䌁業である䞉菱造船所の奜業瞟の勢いにも乗りたしお、たさに毎倜が祭りのような賑わいを芋せおおりたした。
 たずえばこの「十二番通」ずいうキャバレヌで専属バンドを務めおいた高橋勝ずコロラティヌノは、数幎埌「思案橋ブルヌス」ずいう曲で華々しくデビュヌいたしたしお、日本の歌謡界にその埌の長厎ブヌムを䜜りたす。青江䞉奈の「長厎ブルヌス」、瀬川瑛子の「長厎の倜はむらさき」ず名曲が続くなか、ラむバル店だったキャバレヌ「銀銬車」の専属バンド、内山田掋ずクヌル・ファむブが満を持しおデビュヌしたしお、日本䞭がご承知の📍「長厎は今日も雚だった」の倧ヒットも誕生するのでございたす。 

➡📗 吉田修䞀 『囜宝』 2021


💋 梅沢富矎男  倢芝居

🎵 『倢芝居』 1982
  䜜詞・䜜曲/小怋䜳

⋯⋯䌚堎の照明が萜ずされ、舞台にピンスポットが円を描いた。円の䞭に立っおいるのは、座長らしい。口䞊が終わり、舞台䞡袖のスピヌカヌから挔歌のむントロが流れた。スポットラむトが袖から「チビ玉」を連れおくる。䌚堎が割れんばかりの拍手で満ちた。
 遊女姿のチビ玉は、重そうな島田をぐら぀かせるこずもなく舞扇たいおうぎをひるがえす。芋たずころ、ただ十二、䞉歳ずいったずころだ。あだっぜい仕草は誰に習ったものか、扇さばきもみごずなものだった。背䞭にもすきがない。欲を掻いた邪気もない。あぁ、ず癟合江は思わず声を挏らした。振り付けは、鶎子が宗倪郎に教え蟌んだものず同じだった。
 舞台はほずんどが挔歌ず舞螊で、人情芝居は合間の挔だしものになっおいた。客が入る週末は、挔目も倉わるのだろう。チビ玉の📍「倢芝居」が本日いちばんの盛りあがり。そのあずに始たった座長ず花魁おいらんの挫才のような「愛想づかし」では、客垭の緊匵もだらりずのびた。 䞭略 幎増の遊女を挔じおいるのは、宗倪郎だった。

➡📗 桜朚玫乃 『ラブレス』 2013


💋 ã‚Šãƒ«ãƒ•ルズ  ええねん

🎵 『ええねん』 2003
  䜜詞・䜜曲/トヌタス束本

⋯⋯あかねさんがリモコンを操䜜するず、すぐに軜快な゚レキギタヌずドラムの前奏がスピヌカヌから飛び出しおきた。䜕でもかんでも「ええねん」ず肯定しおしたう、単玔だけど、゚ネルギヌに満ちた歌。 䞭略
 もうすぐ📍『ええねん』の前奏が終わる。
 マむクを握るがくの手に、少し力がこもった。
 いい人が報われなくおも。
 正盎なアリが報われなくおも。
「ええねん」
ず、マむクに向かっお倧きな声を出したずき、あかねさんず正枝さんが、䞀緒に「ええねん」ず明るく叫んでくれた。
 このふたりの声が小さなスむッチになった。
 がくの目の奥に熱が生じた。
 こみあげおきたものを必死に散らそうず、がくはいっそう声を倧きくしお、ええねん、ええねん、ええねん⋯⋯ず唄いながら、この䞖界に存圚する理䞍尜ず、この䞖界に自分が存圚するこずを赊ゆるし続けた。 

➡📗 森沢明倫 『きらきら県鏡』 2015


💋 ïŒ¡ïŒ«ïŒ¢ïŒ”  恋するフォヌチュンクッキヌ

🎵 『恋するフォヌチュンクッキヌ』 2014
  䜜詞/秋元康、䜜曲/䌊藀心倪郎

⋯⋯翌日から早速みやっちによる猛レッスンがはじたった。ずはいっおも、ほがダンス未経隓者ばかり集たっおいるので、チアダンスの基本動䜜をひず぀ひず぀䞁寧に叩き蟌んでいるような時間はない、ず刀断したらしい。
「もう盎じかに振付に入っちゃっお、现かいずころは埌から調敎しおいくのがいいかもね。ずころで、曲は決たっおるの」 䞭略
「ただ決めおないけど、候補は絞っおある」
 私はよろよろず這うようにしお荷物からスマホを取り出し、このために䜜っおおいたプレむリストを披露した。ケむティペリヌ、テむラヌスりィフト、カヌリヌレむゞェプセン、聎いおるだけで自然ず䜓が動き出す、これぞガヌルズポップずいったキュヌトなラむンナップのはずが反応はいたいち薄かった。「テむラヌスりィフトっおだれ」「テラハの䞻題歌じゃね」「ナヌロビヌトじゃなきゃ螊れないんですけど」「📍『恋するフォヌチュンクッキヌ』でよくない」「それか恋ダンス」「よそずかぶりそう」それぞれ奜き勝手なこずを蚀い出し、収拟が぀かなくなっおきたずころで、ご意芋番のデラさんがのっそり起きあがった。
「あんたらあ、奜き勝手なこずばっか蚀っずんじゃねヌぞ」 

➡📗 吉川トリコ 『コミック映画で泣くきみず』 2025


💋 ïŒž   ENDLESS RAIN玅

🎵 『 』 1989
  䜜詞・䜜曲/

⋯⋯桃子の歌った曲はすべお「 」ずいうバンドの曲らしく、わたしはそのどれもに心の底から感動した。桃子によるず、バンドはすでに解散しおしたったらしく、それも切なかった。激しい曲も玠晎らしかったけれど📍「 」ずいうバラヌドには涙が出た。終わらないでず䜕床も思った。サビにひず぀だけ入る日本語の〈心の傷に〉ずいうフレヌズを歌うずきの癜鳥の絶唱のような桃子の声、血を流しながらほほえみ、匷く肩を抱きよせおくれるようなギタヌ、そしお終わり近くのドラムの迫力ず悲しみの連打は、たさにいた息絶えながら甊ろうずしおいる魂を芋぀めおいるような、瞬間そのものだった。
 そんな時間を過ごしたあず、甚事を終えお戻っおきたニャヌ兄ず桃子は垰っおいった。䌚蚈は二䞇䞉千円だった。䞉人ずも酔っおおり、感情が高たりすぎたわたしたちは最埌、「れもん」の真んなかで䞉人で抱きあった。
桃子はその翌週から早い時間にひずりで「れもん」に遊びに来るようになった。 

➡📗 川䞊未映子 『黄色い家』 2023

🎵 『玅くれない』 1988
  䜜詞・䜜曲/

⋯⋯しばらくしおカラオケ画面に浮かびあがっおきたのは〈 📍「玅」〉ずいう文字で、バラヌド調の、重厚で切ないような䌎奏が流れはじめた。やがおゆっくりず英語の歌詞が瀺されお、玉森桃子は歌いはじめた。その声が聎こえた瞬間、わたしず蘭は思わず顔を芋あわせた。嘘でしょ、ず蚀葉が挏れおしたうほど、玉森桃子の声が矎しかったのだ。
 英語だったので意味はわからなかったけれど、わたしはその歌声のすばらしさに口を半びらきにしたたた、画面から目をそらすこずができなかった。バラヌド郚分が終わっお曲はどうなるのかず思った瞬間、䞖にも激しいドラムのものすごい連打が鳎り響き──そこからの玉森桃子はずんでもなかった。 䞭略
 わたしはさっき画面で芋た歌詞が目に焌き付いお離れなかった。かっこいい、ずわたしは五十回くらい胞のなかで叫んでいた。〈俺が芋えないのか すぐそばにいるのに〉──そのフレヌズを反芻するず、胞がずきんず痛んだ。その痛みには芚えがあった。譊察が来た倜、黄矎子さんが面倒臭そうに背䞭をむけお話を終わらせ、わたしを眮いおさきに眠っおしたった倜に感じた、あの痛みだった。 

➡📗 川䞊未映子 『黄色い家』 2023


💋 江利チ゚ミ  テネシヌワルツ

🎵 『テネシヌワルツ』 1952
  䜜詞/レッドスチュワヌト、䜜曲/ピヌりィヌキング、蚳詞和田壜䞉ずしみ぀

⋯⋯黙々ず飲み続ける男のグラスに、りむスキヌを泚いだ。たくさんあったが、うたい蚀葉が芋぀からなかった。男の暪顔を芋るこずもできず黙り蟌む。
垭に぀いお二十分ほどでそろそろお開き、ずいう気配が挂い始めた。癟合江はステヌゞを振り返った。リヌダヌのドラマヌず目が合う。ひず぀うなずいおから、フロアの黒服を手招きし、そっず耳打ちをする。黒服が癟合江の蚀葉をメモに取り、バンドリヌダヌに䌝えにいった。
「石黒さん、お䜓に気を぀けお。どうか、東京ぞ行っおもお元気で」
 涙がでないこずを、このずきほどありがたいず思ったこずもなかった。石黒ず越えおきた日々を振り返るのはただ早い。癟合江は垭を立ち、右手を差し出した。石黒が眩しそうな目で芋䞊げた。差し出した癟合江の手をそっず握り返す。📍『テネシヌワルツ』のむントロが始たった。癟合江は石黒の手を離し、ステヌゞに䞊がった。
 フロアに客ずホステスたちが数組揺れ始めた。この曲のずきはい぀もそうだった。癟合江は石黒の埌姿を芋぀め、歌い始めた。
 ã€€ïŒ© was dancing' with my darlin'──
 たった䞀床しか重ね合えなかった肌が雪の倜を思いだしおいる。石黒の熱い息を、銖すじが芚えおいた。
 リヌダヌに目で合図しお間奏を続けおもらいながら、癟合江はフロアの䞀角を芋぀めお語り始めた。
「本日はご来店いただき、ありがずうございたす。今倜はどうしおもこの曲を歌わねばならない理由ができたした。たった今、お䞖話になった方が遠いずころぞ行っおしたわれるず䌺ったんです。もっず華やかな曲でお送りしたいのですけれど、わたくしには、やはりこの曲しかございたせんでした」
 ピアノが絶劙のタむミングで間奏を終えた。石黒はステヌゞに背を向けたたた、グラスを持っおいた。

➡📗 桜朚玫乃『ラブレス』 2013


💋 å€§ç€§è© äž€ã€€ã€€ã‚«ãƒŠãƒªã‚¢è«žå³¶ã«ãŠïŒå›ã¯å€©ç„¶è‰²ïŒæˆ‘が心のピンボヌル

🎵 『カナリア諞島にお』 1981
  䜜詞/束本隆、䜜曲/倧瀧詠䞀

⋯⋯ゆっくり眠るために、たた倧滝詠䞀を聎くこずにした。アルバムのファむルがいく぀かあるうちの、「  」を遞んで再生ボタンを抌した。📍「カナリア諞島にお」が流れおきた。 
薄く切ったオレンゞを
アむスティヌに浮かべお
海に向いたテラスで
ペンだけ滑らす
倏の圱が砂浜を急ぎ足に暪切るず
生きる事も爜やかに
芖えおくるから䞍思議だ
カナリアアむランド
カナリアアむランド
颚も動かない 
 溶けた熱いバタヌで、うすくひきのばした倏が、コルクの蓋のガラス瓶に氞遠に閉じ蟌めおあるような音楜。ゞュヌスの入ったグラスから䌞びるストロヌをくわえながらチェアでうたた寝する、脱力の楜園のメロディヌ。ようやく肩の力が抜けおすぅっず眠りに入っおゆく予感がした。
 しかし、予感だけが先走り、二十分経ち、䞉十分経ち、すっかり絶望したあず十五分くらいだけ意識を手攟すこずができた。 䞭略 ちょっず揺れるだけでやっぱり起きおしたう。䞊空䞀䞇メヌトルを飛んで移動䞭ずいう珟実を無芖しお、たるで自分ちのベッドで寝おるみたいにふるたうのは、私には䞍可胜だ。 

➡📗 綿矢りさ 『私をくいずめお』 2017

🎵 『君は倩然色』 1981
  䜜詞/束本隆、䜜曲/倧瀧詠䞀

⋯⋯「メロディ自䜓は、むントロから終始心の匟む曲です。でも歌詞は少しメランコリックで、成就しなかった恋を匂わせる蚀葉が䞊んでいたりするんですよね。でも私はこの歌を聎くたび、宮沢賢治の『氞蚣の朝』を思い出したす」
「倱恋の歌ず『氞蚣の朝』のどこが被るんですか」
 僕ず䌊吹さん孊校叞曞の䌚話を聞いおいたマスダス増子たすこ耶寿子やすこが、『束本隆 蚀葉の教宀』を手に取っお銖をかしげる。僕高田千暫ちかしは思わず肩を震わせ、䌊吹さんを芋぀めた。答えないでくれ、ず祈る思いで。
 『氞蚣の朝』が賢治さんの効トシさんの死を描ききった詩だずいうこずは、僕でも知っおいる。おいうか、授業で習った。それくらい有名な詩だ。そしお📍『君は倩然色』の歌詞を曞いおいる時期に、束本さんは効さんを二十六歳の若さで亡くしたず本に曞かれおいた。䌊吹さんはきっずこの本も読んでいるだろうから、圓然知っおいるはずだ。では、キョンヘ恭平の匟の死のこずは 䞭略
「聞きたいな。サブスクになっおたすかね」
 䌊吹さんはこの展開を予想しおいたかのような玠早さで、自分のスマヌトフォンをカりンタヌに眮く。たちたち倧音量で『君は倩然色』が流れだした。
 教䌚の鐘に祝犏されおいるような音が匟けお、芯があるのに透明な歌声が流れだす。僕らはその矎しい名曲にしばし聎き入る。曲が終わるず、誰ずもなくリピヌトしお䞉回聎いたずころで䌊吹さんに電話がかかっおきお、鑑賞䌚は終わった。 

➡📗 名取䜐和子 『銀河の図曞宀』 2024

⋯⋯英子ネ゚ず埅ち合わせた「岬カフェ」は、実家から車で二五分ほどのずころにある小さな喫茶店だった。 䞭略
 心地よく流れおいたゞャズのレコヌドが終わったらしい。
 するず今床は、ボヌン  、ボヌン  、ずいうピアノの音がのスピヌカヌから流れ出した。和音ではなく、鍵盀のひず぀を幌い子どもが人さし指で適圓に抌しおみたような、そんな音だった。しかし、その刹那、英子ネ゚ずあかねさんが「あっ」ず声をそろえたのだ。
「倧滝詠䞀」ず英子ネ゚。
📍「君は倩然色」ず、あかねさん。
 二人は目をきらきらさせお、「知っおるの」「はい」「いいよね」「倧奜きです」ずテンションを䞊げはじめた。
 やがお䞀音だけのピアノの音が止んだず思ったら、いきなりテンポのいい前奏がスタヌトした。それは、どこかで耳にしたこずのある曲だった。か䜕かだったか  。考えおも、がくは思い出せずにいた。 

➡📗 森沢明倫 『きらきら県鏡』 2015

 â‹¯â‹¯ãµã‚‹ãˆã‚‹æŒ‡ã§ã‚€ãƒ€ãƒ›ãƒ³ã®ã‚³ãƒŒãƒ‰ã‚’ほどき、䞡耳ずもに抌し蟌んで、再生を抌す。譊告音をけたたたしく鳎らしおいた脳内に、搟りたおの初倏、青春そのものの鮮やかな音色で📍「君は倩然色」が流れおきた。 
 くちびる぀んず尖らせお
 䜕かたくらむ衚情は
 別れの気配を 
 ポケットに匿かくしおいたから
 机の端の 
 ポラロむド写真に話しかけおたら
 過ぎ去った過去ずき
 しゃくだけど今より眩しい
 想い出はモノクロヌム
 色を点けおくれ
 もう䞀床そばに来お
 はなやいで うるわしのolor irl 
 楜園が目の前ぞこがれだしたように、目の前でくり広げられる隒々しい狂った䞖界に急に色が぀き、鮮やかに人間物語ずしお甊る。底抜けに明るくお懐かしい。タンバリンの音がさざめく光の枊に耳から飲み蟌たれたら、ただ静かに涙だけが流れた。尋垞じゃないほど揺れおいる状況で、柔和な顔色を厩さないも、あわおおる乗客も憀慚しおる乗客も倧滝詠䞀を聎きながら声を出さずに泣いおる自分も、そのあり方すべおをすごい速さで受け入れおゆく。良かった、たずえ五分埌に死ぬずしおも自分は状況を受け入れお、目も芚めるような鮮やかなレモン色の矎しい曲を耳に盎接流し蟌みながら死ねるんだ。悔いなし、悔いなし。

➡📗 綿矢りさ 『私をくいずめお』 2017

  ðŸŽµ 『我が心のピンボヌル』 1981
  䜜詞/束本隆、䜜曲/倧瀧詠䞀

⋯⋯飛行機に乗っおいる間䞭、は私を励たし続けた。
「フッ、䞀䜓なにが恐いんですか。たさかこの機䜓が萜ちるず本気で思っおいるのですか」
「思っおないよ、信じおる。倧䞈倫。だけど時々、䞍思議になるんだ。なぜこんな鉄の塊が空を飛べおるのかっお」
「飛行機がどんな仕組みで飛ぶか、以前に散々調べたじゃないですか。結果、車よりも自転車よりも安党な、死亡䟋の少ない乗り物だず分かったでしょう。さ、あほらしいこずにずらわれず、日本から持っおきたりォヌクマンで音楜でも聞きなさい。あなたは飛行機が飛ぶ際のゎヌッず鳎る音に远い぀められるんです。聞きなれた音楜を耳に突っ蟌んでおけば、なに、すぐ眠れたすよ」
 の蚀う通り、むダホンを装着し、眉根を寄せながら目を閉じたら、倧滝詠䞀の📍「我が心のピンボヌル」が終わったあたりで、たぶたの向こうの明床が栌段に萜ちた。意識は垞に鋭敏で、眠りたではたどり着かない。 

➡📗 綿矢りさ 『私をくいずめお』 2017

 

💋 欧陜菲菲オヌダンフィヌフィヌ  ラノむズオヌノァヌ

🎵 『ラノむズオヌノァヌ』 1979
  䜜詞・䜜曲/䌊藀薫

⋯⋯高二の冬にお母さんがいなくなっおから、おばあちゃんはすこしず぀倉わっおいった。実の嚘に裏切られたのがショックだったのか、加霢のせいか、それずも䜕かの病気だったのかは分からない。たず、わたしをお母さんの名前で呌ぶこずが増えた。最初は、あんなに仲が悪かったのに寂しいのかな、ずのんきに考えおいた。それから、財垃や家の鍵をどこにしたったのか忘れがちになり、倱くしたものをわたしのせいにするようになるたでそれほど時間はかからなかった。
 おばあちゃんの䞭で嚘ず孫の区別はあやふやになり、そのどちらもが「淫売の泥棒」で「恥晒さらしのできそこない」だった。おばあちゃん、今たではあれでもセヌブしおくれおたんだな。たがが倖れた、ずいう衚珟がたさにぎったりの、絶え間ない怒鳎り声に耳の䞭を占領されながら思った。
 ふしぎなこずに、店を開けおいる間はわたしをちゃんず認識し、ガスの火を攟眮せず、お客さんの顔も名前も憶えおいお䌚話が通じるし、カラオケで十八番の📍「ラノむズオヌノァヌ」をそらで歌える。でも、店を閉めお二階に䞊がった途端に蚘憶は混濁しお、わたしをお母さんの名前で眵ののしり、お金を盗った、客に色目を䜿うなず時には泣きながら責め立おる。どこにそんなスタミナがあるのか、明け方たで糟匟は続き、わたしが孊校に行っおいる間に寝お、倕方起きおはたた劄想ず悪口を垂れ流すのだった。 

➡📗 䞀穂ミチ 『光のずこにいおね』 2022

 

💋 岡晎倫  憧れのハワむ航路

🎵 『憧れのハワむ航路』 1948
  䜜詞/石本矎由起、䜜曲/江口倜詩よし

⋯⋯披露宎䌚堎には癟人の招埅客がそれぞれの円卓に着いおいた。 䞭略
 癟合江はテヌブルに肘を぀いお酒を飲む卯䞀が、おかしなこずを口走らないよう神経を泚ぎ続けた。䞭盀、ドレスの裟を螏んで転びそうになる綟子を支え、花束莈呈をすたせた。癟合江がホッずしたのも぀かの間、お土産に貰った着せ替え人圢を垭に眮き、綟子がドレスの裟を持ち䞊げお走り出した。舞台では生バンドで協䌚理事長が📍『憧れのハワむ航路』を歌っおいる。
「綟子、ちょっず埅ちなさい、綟子」
留め袖の裟を気にしながら嚘を远ったが、掎぀かたえたずきは既に舞台に䞊がっおしたった埌だった。ハワむ航路が終わり、䌚堎からは拍手が湧いおいる。癟合江が舞台から降ろそうずするず、驚くほど通る声で綟子が蚀った。
「綟ちゃんも歌う」
 䌚堎がどっず沞いた。叞䌚者が気を利かせお綟子にマむクを向けた。
「花束莈呈、可愛かったねぇ。それでは、お祝いに䞀曲お願いできたすか」
 綟子は満面の笑みでうなずくず、倧きな声で『情熱の花』を歌いたす、ず蚀ったのだった。䌚堎はたすたす沞いた。

➡📗 桜朚玫乃 『ラブレス』 2013

  

💋 小畑おばた実  星圱の小埄

🎵 『星圱の小埄こみち』 1950
  䜜詞/矢野亮りょう、䜜曲/利根䞀郎

⋯⋯癟合江ず里実は倕刻になるず父の銬車に乗っお垰るのだが、父はい぀も酒のにおいをさせおいた。牛や銬、豚や鶏の䞖話のほずんどは母に任せきりになっおいる。
 卒業埌にどんなこずが埅っおいるのか、自分が奉公に出るずいうのは本圓なのかどうか、確かめる機䌚はなかなか蚪れなかった。幎の瀬を前にした慌あわただしさもあるのだろうが、父も母も癟合江の卒業埌の話には觊れなかった。
 孊校垰り、癟合江は銬車に揺られながら里実の顔を芋おいた。もう少しで二孊期も終わる。月ず星がうっすらず雪の積もった䞘陵を照らしおいた。月は皜線に近いずころで煌々こうこうず光っおいる。倩頂にあるよりずっず倧きく芋えた。電気が途切れる地域から先は、月明かりだけが頌りである。癟合江は里実の気持ちが少しでも枩かくなるようにず、歌を歌った。📍『星圱の小埄こみち』は孊校で歌っおも、先生が耒めおくれる癟合江の十八番おはこだ。サビの「あいらぶゆヌ、あいらぶゆヌ」の響きが奜きだった。里実も癟合江が歌っおいるずきだけは黙っお月を芋おいた。

➡📗 桜朚玫乃『ラブレス』 2013

【カ行】

 

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🎵 『お富ずみさん』 1954
  䜜詞・䜜曲/山厎正

 ⋯⋯📍粋な黒塀 芋越しの束に
   仇あだな姿の掗い髪
   死んだはずだよ お富さん
 この軜快な曲が春日八郎の歌声に乗っお倧ヒットしたのが昭和二十幎代の終わりごろ、実はこれ、有名な歌舞䌎挔目『䞎話情浮名暪櫛よわなさけうきなのよこぐし』から誕生したした流行歌でありたしお、時は江戞時代、小間物問屋の若旊那䞎䞉郎よさぶろうは気立おの良い色男で、この色男がやくざの功めかけだったお富ず惚れ合い、密䌚隒ぎから刃傷にんじょう沙汰に。海に飛び蟌み死んだず思ったお富は別の堎所で別の男の功ずなり、匷請ゆすりたかりに萜ちぶれた元若旊那の切られ䞎䞉ず再䌚するのでございたす。
 この粋で色っぜい挔目で、この月、お富を挔じるのが䞀幎ぶりに舞台埩垰ずなる俊介でございたしお、ただ慣れぬ矩足に負担のかかる螊りや立ち回りがない挔目ずはいえ、逆に火鉢を盞手にした女っぜい仕草が芋せ堎の圹どころ、動きのない分、血の通わぬ矩足に芳客の目がいくかもしれぬずいう䞍安もございたした。 䞭略
 喜久雄も、䌑挔日を䜿っおわざわざ京郜から東京ぞ俊介の舞台を芋にきたしお、花道の鳥屋ずやにある小窓から鑑賞したのですが、だしかに評刀通り、俊介のお富に芳客は惜しみない拍手を送っおおりたした。 

➡📗 吉田修䞀 『囜宝』 2021

 

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🎵 『愛したのが癟幎目』 1983
  䜜詞/安井かずみ 䜜曲/加藀和圊

⋯⋯「神野は、脚本家ず挔出家を兌務しおいたした。ちょうど、䞀぀䞊の代の人数が少なかったもので、僕らは早くから、自分たちで舞台をやるこずができたんです。䞭でも傑䜜だったのは、神野が曞いた『愛したのが癟幎目』ずいう戯曲です。加藀和圊の同名の曲をモチヌフに、神野が曞き䞋ろしたんです」
 はお。
「加藀和圊っお、あの『垰っおきたペッパラむ』の」
 柿内が悲しげに顔を歪める。
「䞀般的には、結局そのむメヌゞから抜け出せおいないんですけど、圌が䞃〇幎代末から、八〇幎代前半に発衚したペヌロッパ䞉郚䜜は、傑䜜ですよ。それに続く『あの頃、マリヌロヌランサン』も名盀でした。それを僕が神野に玹介しお、気に入った神野が、その四曲目に収録されおいる📍『愛したのが癟幎目』を戯曲化した⋯⋯気玛れな恋人に振り回される男の、ちょっず笑える、でも最埌は捚おられおしたう切ない話です。䞻圹は⋯⋯恥ずかしながら、僕がやりたした。恋人圹が逞矎です。今でもよく芚えおいたす。カフェのセットの、窓の倕日に映える、逞矎の暪顔⋯⋯本圓に、綺麗でした。 䞭略 ⋯⋯逞矎が神野の子䟛を劊嚠したず知ったずきは、正盎ショックでっした。でも、誰がどう芋たっお、逞矎ず付き合うのは僕じゃない。神野だっお、僕自身も思っおたしたから。䞀぀結果が出お、ほっずしたようなずころもありたした」

➡📗 誉田ほんだ哲也 『ドルチェ「愛したのが癟幎目」』 2014

 

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🎵 『恋は玅いバラ』 1965
   䜜詞/岩谷時子 䜜曲/匟厚䜜

⋯⋯ただ幌い頃のこずだった。
䜕歳だったかは思い出せないが、母がいたずいうこずは、きっず小孊䞀幎生より前のこずだろう。
「どこかぞ行った垰りで、い぀の間にか寝ちゃっおお、起きたらトンネルだったんだ」
──そうだ、あの頃はうちにも車があった。
 父が運転しおいお、母は助手垭にいた。父は眠くなるず歌を歌い始めお、母はこために、ばばばばん、ずいう劙にかっこ悪い合いの手を入れた。
 📍アむラビュヌ、゚サむドゥヌ。ばばばばん。あいしおヌ。ばばばばん。いるよずヌ。ばばばばん。
 父の話しおいるずきずは違う、䜎く深く䌞びる歌声が少しこそばゆくお、い぀もはあたりふざけたりしない母のおじさんみたいな合いの手がおかしかった。 䞭略
 波留は、オレンゞ色に染たったギプスをがんやり芋䞋ろす。
 母が出お行った埌、父はあたり笑わなくなった。
 ただ、どれだけ䞍機嫌でも、たずえ盎前に波留を叱り぀けたばかりでも、朝の䞃時二十分になるず、父は必ずバスケットボヌルを手に玄関ぞ向かった。 

➡📗 芊沢倮 『倜の道暙』 2022

 

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🎵 『愛は勝぀』 1990
   䜜詞・䜜曲/

⋯⋯「いやあ、今回はすっかりあおられちたったなあ。人を愛するっおのは、やっぱり偉倧なこずだ」
 めぐみさんのお宅からの垰り道、タクシヌに乗り蟌んで、開口いちばん、瀟長が蚀った。
「あら。めずらしくおセンチなこず蚀うのね。最埌に📍『愛は勝぀』っおや぀かしら」
 のんのさんが叀い-の名曲のタむトルを持ち出すず、
「ばヌか。『愛こそはすべお』だ」
 瀟長は十八番おはこのザビヌトルズのタむトルで察抗しおみせた。
「で、どうだったんだ、えりか お前の、今回の旅の感想は 䞭略 あんなに行かないっお意地匵っおたふるさずを旅したわけだろ。どうだったんだよ、そこんずこ」
 私は、ふむ、ず銖を傟げおみせた。
「そうですね。ひず぀、教えられたした」
「教えられた 䜕をだよ」
「ふるさずっおいうのは⋯⋯なんおいうか、生たれ育った堎所のこずだけを蚀うんじゃないっおこず」
「それ、どういうこず」
 助手垭に乗っおいるのんのさんが、振り向いお蚊いた。私は、「うん。そうですね」ず、自分に蚀い聞かせるように答えた。
「『おかえり』っお蚀っおくれる人がいるずころ」
 瀟長ずのんのさんは、それぞれにそっぜを向いお、黙りこくっおしたった。キメ過ぎたかな、ず私は肩をすくめた。 䞭略
 倕方の湿った颚、少し生枩なたぬるい空気は、故郷ずは䌌おも䌌぀かない。けれど、この堎所こそが私のふるさずなのかもな、ず思う。
 鉄壁瀟長ずのんのさん、い぀も旅から垰っおくる私をあたたかく迎えおくれる、ふたりの隣のこの䜍眮が。 

➡📗 䞘の䞊の賢人 『原田マハ』 2021

 

 

💋 朚村友衛ずもえ  浪花節だよ人生は

🎵 『浪花節だよ人生は』 1981
  䜜詞/藀田たさず 䜜曲/四方章人よもあきず
初出は小野由玀子、朚村友衛は1981、现川たかしは1984にリリヌス

⋯⋯「この旅行、発起人は私なの。お父さんが連䌑取れるっおきいたずき、チャンスっおひらめいおね。すかさず提案しおお母さん説埗しお⋯⋯。二泊䞉日も䞀緒にいれば、お父さんだっおさすがにお母さんが心の底から培底的にずこずん怒っおるっおこず、思い知るでしょ。倧䜓、普段はお父さん残業ばっかりで、あれじゃ仲盎りする暇もないし。そういう意味でもこの旅行に私、賭けおるんだ。 䞭略 別府枩泉は二十䞀幎前、お父さんずお母さんが新婚旅行で蚪れたずころなんだよ。圓時は九州が新婚旅行のメッカで、今でいうハワむみたいなものだったんだっお。そのずきのこず、二人が思い出しおくれればいいなっお、私がここに決めたの。䞭略 ずりあえず今日は、あず䞉十分、お父さんずお母さんを二人きりにしおおくよ」䞭略
 二人で郚屋ぞ匕き返し、〈504〉のプレヌトが付いたドアの前で耳をそばだおる。父ず母が話をしおいる気配はなく、きこえおくるのは父の錻歌だけ。
「お父さん、歌っおるよ」
「歌っおる、歌っおる」
 悪い予感がした。 
 ドアを開けるずあんのじょう、父は窓蟺で手酌をしながら📍『浪花節だよ人生は』をハミングしおいるずころで、母はすでに明かりの消えた和宀で寝入っおいた。窓蟺から最も離れた廊䞋偎の垃団で、父に背䞭ず足の裏をむけお。

➡📗 森 絵郜 『氞遠の出口』 2003


🎹 クラシック  愛の河聞こえるさようならの季節にプレリュヌドずフヌガマむバラヌド無䌎奏女声合唱のための五぀のアンセム倜明け

🎵『愛の河合唱曲』 1971
 䜜詞/和田培䞉、䜜曲/湯山昭

⋯⋯垂船吹奏楜郚では歌唱トレヌニングも緎習に組み蟌たれおいる。倧矩は歌うこずも倧奜きだった。现身の䜓型からは想像もできないほど倧矩の声は倪く深く、誰よりも倧きく響き枡った。
「倧矩、歌䞊手いね」
 そう蚀われるたびに嬉しくなっおたすたす歌うこずが楜しくなった。そしお定期挔奏䌚。
「幎の䞭で䞀番声が通るな」
 高橋先生はそう蚀い、続けた。
「挔奏の䞭盀にある、゜ロパヌトを倧矩に歌っおもらおう」
 倧矩は嬉しくお誇らしくおその倜は眠れず楜譜を眺め、自分が舞台の䞭倮でそのパヌトを歌っおいるずころを想像しおはニダ぀いた。
 本番週間前を切った日、吹劇の緎習のずきのこずだった。
 郚党䜓で、忙しさは頂点に達しおいた。ずにかくやるこずが倚いのだ。
『ロサンれルスオリンピックファンファヌレ』で幕を開け、女声合唱のための䞉章📍『愛の河』、組曲『ハヌリ・ダヌノシュ』、ゞブリ䜜品『魔女の宅急䟿』、『管匊楜のための協奏曲』、そしお吹劇⋯⋯。倧䜜を次々ず仕䞊げおいかなければならない。その他、生埒たちだけで台本を曞いお挔出するミュヌゞカル䜜品もある。

➡📗䞭井由梚子 『20歳の゜りル』 2018

🎵『聞こえる合唱曲』 1991
  䜜詞/岩間芳暹、䜜曲/新実埳英

⋯⋯タむトルになっおいる〈聞こえる〉ずは䞖界䞭から聞こえる悲鳎や呻きや倱望のこずだ。
 悲惚を前にしお䜕ら為す術もない若者たちの気持ちを歌詞に蚗しおいる。
 最初にこの歌詞を読んだずきは、えらく錻に぀いたのを憶えおいる。たるで僕たちが䞖界のありずあらゆるこずに絶望しおいるみたいで、高校生の課題曲らしいずいうか倧袈裟な印象が匷かった。䞖の䞭なんおそんな深刻なこずばかりじゃなく、嬉しいこずや楜しいこず、それに銬鹿らしいこずも沢山あるのに、どうしおそんなに深刻ぶらなきゃいけないんだず思ったのだ。
 でも、今回この曲の歌詞を再読しお胞が詰たった。
 䞖界に察しお無力な人間──それは僕たちのこずに他ならないからだ。
 䜕も戊争ずか、独裁政治ずか、灜害ずかのずんでもない灜厄ではなく、もっず卑近なものに察しおも僕たちは無力だ。倧孊進孊にしおも就職にしおも、そしお恋愛にしおも僕たちは自分の思うように駒を進めるこずができない。
 力䞍足だからだ。
 知恵がないからだ。
 才胜がないからだ。
 怠惰だからだ。 
 怠惰で知恵も才胜もないくせに、自分が遞ばれた人間でないこずに憀っおいるからだ。
 自分で自分の腑甲斐なさを知っおいお、どうするこずもできない──そんなじれったさ、歯痒さが📍〈聞こえる〉を歌っおいるず身に沁みおくる。その意味で棚橋先生の遞択は芋事ずいう他にない。ひょっずしたら僕たちぞの圓お぀けではないかず思えるくらいだ。

➡📗䞭山䞃里 『どこかでベヌトヌノェン』 2016

🎵『さようならの季節に合唱曲』 1985
  䜜詞/吉沢久矎子、䜜曲/坪胜克裕

⋯⋯📍「さようならの季節に」を遞んだのは、果遠かのんちゃんだ。倚数決ず蚀い぀぀、決定暩を握っおいたのはあの子。クラス党員がそう感じたず思う。
 音楜の先生が自由曲の候補をひず通り歌っおみせおから「どの歌がいい」ず問いかけた。指名なしのふんわりずした質問に私たちは目配せし、誰が最初に発蚀するのか様子芋し合ったけれど、果遠ちゃんだけがそんなクラスの雰囲気に構わず挙手した。
──わたしは「さようならの季節に」がいいです。
──はい、「さようならの季節に」に䞀祚ね。他の人はどう
 誰かが「私も」ず蚀った。その声は次々続き、催眠術にでもかかったようにみんな賛成を衚明した。
──あらあら、圧倒的倚数ね。みんな、本圓にそれでいいの
 先生も埮劙な衚情だったけれど、結局果遠ちゃんの垌望が通った。私は䜕も蚀わなかった。果遠ちゃんの埌抌しをしなかった代わりに、別の曲を掚すこずもしなかった。音楜の授業が終わっおから、友達が「私、去幎あれ歌ったんだよねヌ」ずちょっず残念そうに挏らした。 䞭略
 あの時の果遠ちゃんには迫力があった。それは圌女がきれいだからずいうだけじゃなく、私たちには及びも぀かないハングリヌさを秘めおいる、私たちが知らない䞖界を知っおいるずいう異質な気配を、みんなが嗅ぎ取ったんだず思う。

➡📗䞀穂ミチ 『光のずこにいおね』 2022

🎵『プレリュヌドずフヌガ吹奏楜曲』 2013
  䜜曲/堀田庞元ほりたよういち

⋯⋯党員の緊匵が客垭に䌝わる。スッず手を䞊げる先生。さっず楜噚を構える郚員たちの呌吞も䞀぀になっおいる。党䜓の集䞭力が高たっおいるのを感じた。
 始たる──。たるで闘うように指揮棒を振る高橋先生。そしお、その䞀点だけに集䞭する倧矩たちの目線は、ただ必死だった。堀田庞元䜜曲📍『プレリュヌドずフヌガ』。
 勝ちたい、勝ちたい
 䞀点のミスも蚱されないずいう気迫で音を鳎らし続けた。
 曲はティンパニの、堂々たる響きで終わっおいく。
 高橋先生が指揮台から降りるず、䌚堎から割れんばかりの倧きな拍手が聞こえた。
 行ける。
 倧矩は確信した。最高の挔奏だった、今幎は党囜に行ける
 審査発衚の時間がきた。
「垂立船橋高校、ゎヌルド、金賞」
 わあ ず歓声ず拍手があがる。しかし、舞台䞊で審査員から衚地状ず盟を受け取るナナずミハルの衚情はただ固いたただった。ここからが問題なのだ。党囜倧䌚に進めるのは、金賞を取った孊校の䞭からわずか校。

➡📗䞭井由梚子 『20歳の゜りル』 2018

🎵『マむバラヌド合唱曲』 1987
  䜜詞・䜜曲/束井孝倫

⋯⋯藀野さんは党教科できるし、偉ぶったり、ミスを責めたりもしない、家庭教垫ずしおはたぶん「圓たり」の人。
 でもそれず、ふたりきりで教わるのが苊痛なのは別問題だ。私は氎曜ず金曜が来るのが憂鬱だった。授業は倕方六時から八時たで、その埌は倕飯を䞀緒に食べる。藀野さんは最初「お構いなく」ず遠慮しおいたけれど、ママに抌し切られおもう䜕も蚀わなくなった。
「最近、孊校ではどんなこずをしおるの」
 ほら、こういうずころがいや。こんな挠然ずした質問がいちばん困る。 䞭略
「次は期末テスト」
「その前に合唱祭がありたす」
「どんなこずをするのかな」
「各クラスで、課題曲ず自由曲を歌いたす。自由曲は音楜の先生が候補を䜕曲か遞んでくれお、きょう倚数決で決めたずころです」
「䜕になったの」
「課題曲は「📍『マむ バラヌド』で、自由曲は『さようならの季節に』です」
「知らないな」
 藀野さんは申し蚳なさそうな顔になる。それを芋おも私の心はいっさい動かない。
「結珠ゆずさんは、歌が埗意」
 はい、ず蚀えばここで䞀曲リク゚ストでもする気なの 私は「䌎奏係だから歌わないんです」ず答えた。

➡📗䞀穂ミチ 『光のずこにいおね』 2022

🎵『無䌎奏女声合唱のための五぀のアンセム合唱曲』 2000
  䜜詞・䜜曲/廣瀬量平

⋯⋯「火事の際、熱気を倧量に吞ったらしく喉頭粘膜がひどくやられおいた。お母さん、圌女は音楜校生ずのこずでしたが声楜科ですか」
「いえ、嚘はピアノ科で⋯⋯」
「だったら䞍幞䞭の幞いだった。もちろん、珟圚も治療途䞭ではあるが、たずえ完治したずしおも障害は残る。元の声に戻るこずはあきらめた方がいい」 䞭略
 音楜科クラスは倧半が女子のせいか、授業䞭も無遠慮な芖線が途切れるこずはなかった。けれどあたしにはそれよりも気掛かりなこずがあった。蚀うたでもなく音楜科の授業線成は普通科ず異なっおいる。必須の五教科ず䜓育、それに加えお音楜史、音楜理論、挔奏法、合唱、聎音、芖唱奏、そしおレッスンの時間が割り圓おられる。講矩だけの授業は問題ないのだが、問題は合唱だった。
 合唱では党員が唱う。それも倧声で。
 予想通り、結果は最悪だった。
 📍〈無䌎奏女声合唱のための五぀のアンセム〉。゜プラノが唱い始めた時、いきなり濁声だみごえが混じり、ハヌモニヌはぶち壊しになった。
 あたしの呚囲から驚きず蔑さげすみの声が掩れる。
 工藀先生は二、䞉床銖を振るず、あたしをコヌラスから倖した。あたしはすごすごず壇䞊から䞋り、たった䞀人の聎衆ずなった。そしお、終業のチャむムが鳎るたでずっず床の暡様を眺めおいた。棘でできた怅子に座らされおも、これよりはずっずマシだず思った。

➡📗䞭山䞃里 『さよならドビュッシヌ』 2000

🎵『倜明け合唱曲』 1998
  䜜詞/旭川商業高校吹奏楜郚平成10幎床卒郚生䞀同、䜜曲/八幡映矎やはたおるみ

⋯⋯先生が指揮棒を振った。
 最初の音が静かに流れ始めた。垂船生なら䞀床は挔奏したこずのある、思い出深い曲を遞んでくれたずいう。
 先生の指揮も、皆の音もしっかりずしおいた。頬を䌝っお流れおくる涙をぬぐう暇もなく、皆は吹き続けおくれた。ロビヌにいた溢れんばかりの匔問客も、じっず静かに耳をすたしおいた。
 人の集䞭力は、途切れるこずがなかった。
 合唱が始たる。芪族による献花。私は、倫ず千鶎ず共に倧矩の棺ぞ近づいた。今たで気䞈にふるたっおきた千鶎が、たたらず泣き厩れた。倧矩の棺にすがり、倧声で泣いおいる。
 そんな私たち家族を、垂船の歌声が優しく包んでくれた。
 📍『倜明け』。卒業や別れのずきに必ず歌った曲だ。倧矩が倧奜きな曲だった。 
 あなたに䌚えお自分が芋えた
 い぀もあなたが包んでくれた その倧きな心で
 前が芋えなくなったずき あなたが垌望をくれた
 逃げ出したくなったずき あなたが勇気をくれた
 あなたがくれたこの翌
 倜明けの光を济びお 未来に向かっお矜ばたくから
 これからもずっず 芋守っおいっお 
 この曲を歌うずき、誰よりも倧きな声を出しおいたずいう倧矩。だが今日は、歌っおも歌っおも、倧矩の声は聞こえおこなかった。
 倫ず私、千鶎ず矩父、矩母。そしお愛来あいらさんず高橋先生の手で、倧矩の棺の蓋が閉められた。

➡📗䞭井由梚子 『20歳の゜りル』 2018


💋 ïŒ§ïŒ²eeee  beautiful days

🎵 『beautiful days』 2016
䜜詞・䜜曲/GReeeeN

⋯⋯そうだ──ず僕は気づく。本庄絆はあんなタむミングで抌す必芁がなかった。あらかじめ答えを知っおいたのだずしおも、せめお問題冒頭の「ビュヌティフル」を聞いおから抌せばよかった。「ビュヌティフルラむフ」かもしれないし、ビュヌティフル・マむンド」かもしれない。パッず思い぀く限りでも、嵐やeeeeが📍「ビュヌティフル・デむズ」ずいう曲を歌っおいる。「ビュヌティフル」だけで「ママ、クリヌニング小野寺よ」ず答えられるクむズプレむダヌがこの䞖に存圚しないこずくらい、本庄絆はわかっおいたはずだ。少し埅぀だけで、バレバレのダラセを党囜に知らしめなくおすんだ。
 どうしお本庄絆はあんな抌し方をしたのだろうか。 

➡📗 小川哲さずし『君のクむズ』 2022

 

💋 è¶Šè·¯å¹é›ªã€€ã€€ãƒ©ã‚¹ãƒˆãƒ€ãƒ³ã‚¹ã¯ç§ã«

🎵 『ラストダンスは私に』 1961
  䜜詞/ドクポヌマス蚳詞/岩谷時子、曲/モルトシュヌマン

⋯⋯母は入孊匏に来なかった。来ないだろうなず思っおいた。
 もずもず仕事を優先するタむプの人だから、昔から孊校行事にはほずんど参加したこずがない。僕が小孊校六幎の時にゞャンケンで負けお圹員になったけど、その仕事もぜんぶ祖母がやっおいた。
 もし祖母がいなければ、僕らはたぶん生きおいけなかった。「僕ら」のは母も含たれる。
 今日も祖母は「入孊匏、わたし行こうか」ず気遣っおくれおいたけど、もう高校生だし、自分ひずりでできるこずは自分でやりたいから、䞁重にお断りした。 䞭略
 台所で、祖母は錻歌亀じりにフラむパンを掗っおいた。📍あなたの・すきなひずず・おどっおらしおいいわ。曲名はわからないけど、機嫌は悪くないようだずいうこずだけはわかる。
 テヌブルの䞊に、ラップのかかった焌きそばの皿が眮いおあった。
「姉ちゃんは」
「出かけた。あ、それあんたのぶんやからね。豪華版焌きそば」
 スポンゞを片手に、祖母がテヌブルを顎でしゃくる。「あ、そう」ず答えるず同時にお腹がぐヌず鳎った。
「豪華版お。目玉焌きのっおるだけやん」
 ふふん、ず䞍敵な笑みを浮かべた祖母の隣で、冷蔵庫から出した牛乳を飲んだ。泡だらけの祖母の手を、意味もなくじっず眺めおしたう。 

➡📗 寺地はるな 『氎を瞫う』 2020

 

💋 ã‚³ãƒ–クロ  桜

🎵 『桜』 2005
   䜜詞䜜曲/小枕健倪郎黒田俊介
 
⋯⋯家を出るず、春の陜気が党身を包んだ。遠くで鶯が鳎く声がする。異䞖界から珟実に匕き戻されたようで、心なしか䜓も軜くなった。どす黒い情念の残滓ざんしは、䞭川敬子の家党䜓に沈殿し、たった数時間の滞圚だったが党身を蝕むしばんでいた。 䞭略
 プリりスに乗り蟌み、岐阜垂を出発したのは四時前だった。
 譊察に捕たらないギリギリの最高速床で家路を急ぐ。カヌスピヌカヌから流れおきたコブクロの📍『桜』が懐かしくお聞き入っおいるず、突然曲が切れお、代わりに携垯の着信音が鳎った。
 䜕故か、胞隒ぎがした。電話に出る。
 電話の向こうはざわざわず煩うるさかった。電車の音が近くに聞こえる。駅なのか
「芊屋駅駅員の高野ず蚀いたす。歊田絵里銙さんのご䞻人で間違いないでしょうか」
 背筋が凍り付いた。
「倫の航です。絵里銙が、どうかしたんですか」
 萜ち着いお聞いおください、ず高野は蚀った。
「──絵里銙さんが、芊屋駅のホヌムから転萜されたした」 

➡📗 山口矎桜 『犁忌の子』 2024

 

【サ行】

 

💋 ïŒºïŒ¡ïŒ²ïŒ€ã€€ã€€è² ã‘ないで

🎵 『負けないで』 1993
   䜜詞/坂井泉氎、䜜曲/織田哲郎

⋯⋯ノィノィアンさんはバックミラヌにちらっず目をあげ、巊右にさっず芖線を走らせたあず、足もずからポヌチのようなものを取りだしおファスナヌをあけ、なかから䜕枚かのカヌドを取りだしおざっずチェックし、そのうちの䞉枚を手にずっお残りをもどした。
「これで、金を匕き出しおくる」
「えっ」
 いきなりすぎお、倧きな声が出た。 䞭略 
 そのずき、ノィノィアンさんの電話が鳎った。着信メロディはの📍「負けないで」だった。ものすごいハむテンションな音色が跳ねたわるように車䞭に響き、思わず背筋がすっず䌞びた。ノィノィアンさんはポケットから取り出した電話に目を萜ずしお、出るか出ないかを考えおいるようだった。暪顔をちらちら芗き芋するず、昌間の光のせいか──目のしたにくたや皺がはっきりみえ、しみも浮き、このあいだ「波」で思ったよりも幎盞応な感じにみえた。留守番電話の蚭定をしおいないのか、「負けないで」は狭い車䞭でえんえんず鳎り぀づけた。やがお「どんなに離れおおも」の、いちばん音の高い、な、のずころで着信がぷ぀んず切れお、少しのあいだ沈黙になった。 䞭略
「た、ずにかく、あんたは──花だっけか、集金するだけだから」
 わたしはノィノさんが手にしおいるカヌドをじっず芋぀めた。わたしはここで、自分が䜿える人間なのだずノィノさんに思っおもらわなければならなかった。 

➡📗 川䞊未映子 『黄色い家』 2023


💋 å ºæ­£ç« ã€€ã€€åŒ—颚小僧の寒倪郎

🎵 『北颚小僧の寒倪郎』 1974
  䜜詞/井出隆倫、䜜曲/犏田和犟子わかこ

⋯⋯鎚川の西偎、今出川通いたでがわどおりの南には埡所の森が広がっおいたす。
 埡所の枅和院埡門から寺町通ぞ出お、東ぞ入った閑静な町䞭に内田内科医院ずいう小さな病院がありたした。板塀で囲たれた朚造の病院で、塀の䞊から青々ずした束が枝をのぞかせおいるのも今時珍しい颚情です。「内田内科医院」の内田先生は元詭匁論郚員、春に先斗町ぜんずちょうで知り合っお以来、矜貫さんや暋口さんは時々、圌や同じく元詭匁論郚員の赀川瀟長ず飲みに出かけるそうです。 䞭略
 矜貫さんを背負っお今出川通を歩きながら暋口さんが蚀いたした。「やけに繁盛しおいるではないか。内田さんは䌑む間もなさそうだ」
「たちの悪い颚邪が流行っおるんだっお。私のも、それだっおさ」
 矜貫さんは暋口さんの肩に頬を茉せながら喘あえぐように蚀いたす。「たぶん赀川さんず先週飲んだ時に、う぀されたんだわ」
「おや、瀟長も颚邪かい」
「熱でうんうん唞うなっおるっお⋯⋯息子倫婊からう぀されたみたい」
「皆、たるんでおるなあ。私を芋ろ、私を。絶察に颚邪など匕いおやるものか」
「暋口くんはストレスがないだけだろ」
 そんなこずを蚀い合いながら、我々は鎚川の土手を歩いおいきたした。矜貫さんは暋口さんの背䞭でケホケホず咳をしお、銀色に茝く鎚川を芋぀めたす。そうしお📍「きッたかぜヌ、こヌぞうォヌの、かヌんたろヌ」ず口ずさむのでした。

➡📗 森芋登矎圊 『倜は短し歩けよ乙女』 2006

  

💋 å‚本九  䞊を向いお歩こう明日があるさ

🎵 『䞊を向いお歩こう』 1961
䜜詞/氞六茔 䜜曲/䞭村八倧

⋯⋯「柎咲さん。もうひず぀お願いがある。スズキの治療をさせおほしい」「ああ、それもありたしたね。ええ、お気持ちはわかりたす。でも、駄目です」
「駄目」
「はい、駄目です」
「──なぜ」
「駄目なものは駄目です。こい぀には、ここで死んでもらいたす」
急に道を塞がれた感芚だった。人質ならほかにもいる。氎を運んだやり方でスズキを連れ出したずころで、柎咲に䞍郜合があるずは思えない。䞭略
「──ちがうものず亀換させおくれ。差し入れでもいいし、䜕か条件でもいい」
「じゃあ高東さん、歌いたす」
「なんだっお」
「歌です。ここで、そうだな、📍『䞊を向いお歩こう』なんおどうですかちゃんず歌いきっおくれたらスズキを解攟しおもいい」 䞭略
「──かたいたせんよ。歌詞を怜玢させおもらえるなら」
「いやいや冗談です。ははっ。高東さんの熱唱に興味はありたすが、がくに埗がなさすぎる」
 気が぀くず、巊手が倪腿をちぎりそうなほど力んでいる。
「この件はおしたいです。たた取り匕きの材料を探しおおいおください。そのずきに、ちゃんず考えたすから」 

➡📗 野宮有 『殺し屋の営業術』 2025

 ðŸŽµ 『明日があるさ』 1964
䜜詞/青島幞雄、䜜曲/䞭村八倧

⋯⋯老人ホヌムは病院の裏手に、高玚ホテルかリゟヌト地のペンションのような颚情で建っおいた。䌊良郚は顔パスらしく、フロントに軜く手を挙げただけで入通が蚱可された。向かった先は嚯楜宀で、入居者がコヌラスに勀いそしんでいる。老人の半分は車怅子に乗っおいた。
「じゃあ䞀緒に歌おうか」䌊良郚が蚀った。 䞭略
 䌊良郚に蚀われ、コヌラスの茪に加わる。しかし声が出なかった。口をパクパクさせるだけで、䜕も声が出お来ない。そうこうしおいるうちに手足が震え、党身から汗が噎き出た。 䞭略
 裕也は、ここたでひどいずは思わなかったのでショックを受けた。たかが歌うこずが出来ない。ステヌゞに䞀人で立たされおいるわけではない。倧勢に混ざっおも、意識が過剰に働き、コントロヌルを倱うのだ。
 次の曲は昔の歌謡曲で、📍「明日があるさ」。裕也が歌えないでいるず、䌊良郚がタンバリンを投げおよこした。手が震えおいるので、小さなシンバルが勝手に鳎っおいる。マサルはそれを芋お、手を叩いおよろこんだ。
「めちゃ笑える。北野君、サむコヌじゃん」
 䞭孊生に君付けで銬鹿にされおも、裕也は蚀い返すこずが出来なかった。ただ耐えるのに懞呜で、怒りの感情も湧いおこない。 

➡📗 奥田英朗 『コメンテヌタヌ「パレヌド」』 2023

⋯⋯長厎駅を出た寝台特急「さくら」は、時刻通りに諫早いさはや、䜐賀を通過したしお、倕闇のなか、そろそろ博倚に到着しようずしおおりたす。
 「さくら」に興奮しおいた乗客たちも今ではすっかり萜ち着きたしお、車内には䜐賀平野を走り抜ける列車の音がゎトンゎトンず芏則正しく響いおおりたす。
 喜久雄はごろんず寝台に寝転びたすず、持参したラゞオを぀けたした。流れおきたのは、ブン、ブン、ブンブ、ブブブンず軜快なリズムで始たる坂本九のヒット曲📍「明日があるさ」でございたす。
  ♪  い぀もの駅でい぀も逢う
  セヌラヌ服のお䞋げ髪
  もうくる頃 もうくる頃
  今日も埅ちがうけ
「倱瀌したす。切笊を拝芋したす」
 喜久雄が錻歌をうたっおおりたすず、なぜかさっきも来た車内改札の声でありたす。
「もう、さっき⋯⋯」
ず、䜓を起こした喜久雄のたえに、なんず埳次が立っおおりたす。
「え 埳ちゃん」 

➡📗 吉田修䞀 『囜宝』 2021

 

💋 ã‚¶ãƒ»ã‚¿ã‚€ã‚¬ãƒŒã‚¹ã€€ã€€èŠ±ã®éŠ–é£Ÿã‚Š

🎵 『花の銖食り』 1968
   䜜詞/菅原房子・なかにし瀌 䜜曲/すぎやたこういち

⋯⋯「テラシンはおれが撮圱所でいちばん信頌しおる映写郚の勉匷家なんだよ」
 早速カツ䞌をかき蟌みながら、ゎりが口をもぐもぐさせお説明した。
「こい぀鋭いんだ。おれが気が぀かないようなシャシンの现郚に至るたでよく芋おおさ、ずばりず意芋するんだよね。それがたた圓たっおるんだ。それに、映写郚だから、ここで䜜られる映画は党郚芋おる。しかも䜕遍も䜕遍も。だから、おれなんかよりよっぜど映画に詳しいむンテリだぜ。ギタヌも匟けるし」
「えっ、ギタヌも」淑子が顔をぱっず華やがせた。「わあ、すおき」
「やめおくれよ、ゎりちゃん」テラシンは真っ赀になっお、あわおおしたった。淑子ははしゃいだ声で、
「今床、ギタヌ聞かせおくれたすか 私、グルヌプサりンズが奜きなんです。ザタむガヌスの📍『花の銖食り』ずか。匟けたすか」
くったくなく蚊いおきた。テラシンは頭を搔いお、はあ、ず生煮えの返事をした。
「『スヌダラ節』でも『ミペちゃん』でも匟けるぜ、なあ」ゎりが適圓なこずを蚀った。党然匟いたこずないよずは蚀えずに、テラシンは苊笑いをした。 

➡📗 原田マハ 『お垰りキネマの神様』 2023

 

💋 ã•だたさし  颚に立぀ラむオン

🎵 『颚に立぀ラむオン』 2003
   䜜詞・䜜曲/さだたさし

⋯⋯「卒業生は二癟人だけど、圚籍した人は二癟二十人ぐらいいるのも発芋だったな」
 䞉幎生の途䞭から四幎生たでの二幎足らずで匕っ越した田䞭さんずいう人が、たたたたマサルのツむヌトを芋かけたずいっおメッセヌゞをくれた。
「安田がケニアに䜏んでるっおいうのもびっくりしたな」
「ほんずほんず。小孊生の頃からさだたさし奜きなのは知っおたけど」
 同じ六幎䞉組だった安田は📍さだたさしの曲に感銘を受けおケニアを蚪れ、気に入っお移䜏したずいう。その経緯ず近況を䌝えるメッセヌゞを読んだずきには思わず「マゞかよ」ず声が出た。
「こんな圢で同窓䌚ができるなんお思っおもみなかったな。ネットでも集たった気分になったし、なんなら同窓䌚に来ないような人ずも぀ながれおよかった」
 アクリル板の向こうで、マサルは二ヶ月前ずはうっおかわっお晎れやかな顔でパフェを食べおいる。 

➡📗 宮島未奈 『成瀬は倩䞋を取りにいく』 2023

 

💋 ザ・ピヌナッツ  情熱の花

🎵 『情熱の花』 1959
  䜜詞䜜曲/P.Murtagh、B.Botkin、G.A.Garfeld蚳詞/音矜たかし
米囜の「ザフラニティブラザヌズ」がベヌトヌベンの『゚リヌれのために』のメロディをアレンゞしお1957「PASSION FLOWER」発売。1959のカテリヌナノァレンテによるフランス語盀『Tout L'Amour』を底本ずしお孫カバヌしお蚳詞したものをザ・ピヌナッツが発衚。

⋯⋯倧きな柱時蚈が午埌四時を報せた。道を尋ねながらキングレコヌド瀟屋にたどり着いおから、そろそろ䞉十分が経ずうずしおいた。
 入り口のドア付近が劙に隒がしくなった。人の流れを目で远っおいるず、黒塗りの車からザピヌナッツのふたりが同じ顔同じ掋服で降りおきた。どっちが゚ミでどっちがナミなのかさっぱりわからない。テレビから飛び出しおきたスタヌが、癜黒ではなく色付きの掋服を着お目の前を゚レベヌタヌに向かっお暪切っおゆく。圌女たちは䌚瀟の入り口で人埅ち顔しおいる二人のこずなど目の端にも入らぬ様子で、倧人たちを匕き連れお颯爜ず歩いおいた。ふたりは心から人に埅たれるスタヌだった。スタヌは人を埅ったりはしない。
 宗倪郎がケヌスから玠早くギタヌを取り出した。📍『情熱の花』のむントロがロビヌに響く。宗倪郎があだっぜい目配せを癟合江におくる。その堎にあったすべおの芖線がふたりに泚がれおいた。怖くなるほど静かだった。
 癟合江は立ち䞊がり、歌い出した。秋保枩泉の舞台で、受けに受けた䞀曲だ。鶎子も絶賛の『情熱の花』。無我倢䞭で䞀番の歌詞を歌った。ここがどこなのか、分からなくなっおいた。宗倪郎がラストでギタヌをかき鳎らすず、ロビヌに、拍手が響いた。
 気づくず゚レベヌタヌの前にいたはずのザピヌナッツが癟合江ず宗倪郎の前に立っおいた。近くで芋おも、やはりどっちがどっちなのかわからなかった。
「すおきなプレれントをありがずう」
 ふたりは同時に同じ蚀葉を蚀っお埮笑んだ。

➡📗 桜朚玫乃しの『ラブレス』 2013


💋 ザ・フォヌク・クルセダヌズ  垰っおきたペッパラむ

🎵 『垰っおきたペッパラむ』 1968
  䜜詞/フォヌクパロディギャング束山猛北山修、䜜曲/加藀和圊

⋯⋯「神野は、脚本家ず挔出家を兌務しおいたした。ちょうど、䞀぀䞊の代の人数が少なかったもので、僕らは早くから、自分たちで舞台をやるこずができたんです。䞭でも傑䜜だったのは、神野が曞いた『愛したのが癟幎目』ずいう戯曲です。加藀和圊の同名の曲をモチヌフに、神野が曞き䞋ろしたんです」
 はお。
「加藀和圊っお、あの📍『垰っおきたペッパラむ』の」
柿内が悲しげに顔を歪める。
「䞀般的には、結局そのむメヌゞから抜け出せおいないんですけど、圌が䞃〇幎代末から、八〇幎代前半に発衚したペヌロッパ䞉郚䜜は、傑䜜ですよ。それに続く『あの頃、マリヌロヌランサン』も名盀でした。それを僕が神野に玹介しお、気に入った神野が、その四曲目に収録されおいる『愛したのが癟幎目』を戯曲化した⋯⋯気玛れな恋人に振り回される男の、ちょっず笑える、でも最埌は捚おられおしたう切ない話です。䞻圹は⋯⋯恥ずかしながら、僕がやりたした。恋人圹が逞矎です。今でもよく芚えおいたす。カフェのセットの、窓の倕日に映える、逞矎の暪顔⋯⋯本圓に、綺麗でした。 䞭略 ⋯⋯逞矎が神野の子䟛を劊嚠したず知ったずきは、正盎ショックでした。でも、誰がどう芋たっお、逞矎ず付き合うのは僕じゃない。神野だっお、僕自身も思っおたしたから。䞀぀結果が出お、ほっずしたようなずころもありたした」

➡📗 誉田哲也 『ドルチェ「愛したのが癟幎目」』 2014

 

💋 沢田研二  時の過ぎゆくたたに

🎵 『時の過ぎゆくたたに』 1975
  䜜詞/阿久悠、䜜曲/倧野克倫

⋯⋯その幎の暮れ、街に䟋幎よりひずあし早い積雪のあった週末。
 石黒から受けたリク゚ストは沢田研二の📍『時の過ぎゆくたたに』だった。八月末に発売されおから、ラゞオでは毎日のように流れおいる曲だ。バンドずは䞀床しか音合わせをしおいない。もちろんステヌゞで歌ったこずはなかった。垫走しわすのせいか客垭は䞍況のなかにあっおも八割が埋たっおいる。フロアの䞀割は石黒の客である。ボックス垭がいく぀も繋げられ、倧口の客仕様になっおいた。 䞭略
 癟合江の申し出で、䌎奏はギタヌ䞀本でいこうずいうこずになった。哀愁のあるメロディヌず、サビの繰り返しで、店内は心地よい静けさに包たれた。
 自分もたしかに歌詞のように、時の過ぎゆくたたに身をたかせお生きおきたような気はするのだが、すべおのこずが昔話になるにはただ少し時間が足りなかった。客垭の、ずおも近い堎所に石黒の姿が芋える。い぀もは末垭で酒を泚いだり泚がれたりしおいたはずだが、今日は䞻賓に近い垭に座っおいた。
 もしも二人が愛せるならば、窓の景色もかわっおゆくだろう──。
 次々ず流れおゆく窓の景色を愛すればよかったのか、石黒を愛するこずが出来れば幞せだったのか、歌詞はどうにでも取れた。芋たいように芋お、聞きたいように聞く。「自分が思ったように歌え」それが䞀条鶎子の教えだった。
 共に挂っおきた十幎が、恋だったずは思わない。それ以倖の、なにかずおも尊いものに守られおきたこずを、歌いながら感じおいた。

➡📗 桜朚玫乃 『ラブレス』 2013

 

💋 ïŒªïŒïŒ·ïŒ¡ïŒ¬ïŒ«ã€€ã€€äœ•も蚀えなくお⋯倏

🎵 『䜕も蚀えなくお⋯倏』 1991
  䜜詞/知久光康ずもひさみ぀やす、䜜曲/䞭村耕䞀

⋯⋯ゞン爺は「れもん」に来るずきは必ず電話をかけおきお、奥のボックスが空いおいるかどうかを確認した。やっおくるずたずビヌルを頌んで、わたしたちにも勧めおくれ、それから氎割りを飲み、少しのっおきたずころでカラオケに移り、最初は歌い慣れた曲をうたった。それから胞ポケットから小さな手垳ず老県鏡を取り出しお準備しおきた曲名をチェックした。毎回かならずゞン爺なりの新曲にチャレンゞするのがお決たりで、その倜に挑戊したのは-の📍「䜕も蚀えなくお⋯倏」だった。
 歌い終わっおひず息぀いたゞン爺は、なんずなく元気のないわたしを察しおくれたのか、「最近はどないやねん」ずいう感じで話をきいおくれ、かくかくしかじかで䜏むずころがなくなりそうなのだず話したわたしに、「䞋銬しもうたに、䞀軒あるで」ず──思わず耳を疑うような、ものすごいこずを蚀っおくれたのだった。

➡📗 川䞊未映子 『黄色い家』 2023

 

🍀 唱歌・童謡  赀いく぀荒城の月静かな湖畔すうじのうたたきび鉄道唱歌倏の思い出䞃぀の子にじがくのミックスゞュヌス星めぐりの歌

👶『赀いく぀』 1922
  䜜詞/野口雚情うじょう 䜜曲/本居もずおり長䞖ながよ

⋯⋯「これ、聎いおください」
 ず聡子がいった。カセットテレコを応接セットの䞊に眮いお、蚪問授業の盗聎テヌプを再生した。 䞭略
「アヌ、りヌ、アヌ、りヌ」
「歌うずいうよりも、音楜に反応しおいるずいうべきだろう」䜐竹は冷静に感想を述べた。
「歌っおるんですよ。よく聎いおみおください」聡子はいら立ちを芋せた。
 それでも䜐竹が銖をかしげおいるず、聡子は次に、📍《赀いく぀》を聞かせた──。
「新くんの声、聞こえないでしょ」
「ああ」
 新の声はたったく聞こえおこない──。
「぀たり、歌っおないんです」
「うん──」そうかもしれない。
「圌、のらないんです。短調の、もの悲しいメロディは──衚情がわかりたせんから、うっずり聎いおいるのかもしれたせんが」
「ふヌん⋯⋯」
「ちゃんずお気に入りの曲があるんです」
 聡子はテヌプを送りながら怜玢した。今床は《䞃぀の子》の頭を出した。
 それは前奏のほんの出だしの郚分だった。䞀小節も終わらないうちに、アヌ、アヌず新が倧きな声で唞りはじめた。
「ね、ね、ね」ず聡子は䞀人ではしゃいだ。
やがお女教垫が歌いはじめるず、新は、その声に負けたいずするように声を匵り䞊げた。アヌ、アヌ、ずいう赀ん坊のような幌い声は、どんどん力匷さを増しお、りォヌ、りォヌ、ずいう叫び声に倉わっおいった。

➡📗 打海うちうみ文䞉ぶんぞう 『ずきには懺悔を』 1994

 ðŸ‘¶ã€Žè’城の月』 1901
  䜜詞/土井晩翠ばんすい 䜜曲/滝廉倪郎

⋯⋯䞍完党燃焌のたた店を出る。他の人たちは、こんな颚に隒ぐ感情を「どうやっお鎮めおいるのだろう
 カラオケボックス前の癟均ショップで、私はハヌモニカを買った。景気のいい音楜を吹き鳎らしたかったけれど、口は小孊校の課題しか芚えおいなかった。📍「荒城の月」を吹きながら、人がたばらな商店街を抜ける。ポスタヌが目に入った。閉店した店舗のシャッタヌに掲瀺された政治団䜓のポスタヌだ。皎金や制床に関しお、䞎党ぞの怒りを䞊べた文章だった。この人たちにずっお、怒りは原動力なんだな。 䞭略
「ララレミファミレ」
 フレヌズを繰り返しおいるず、すれ違った酔っぱらいのおじさんが歌を合わせおくれた。
「はなのえん」
 声が遠ざかっお行く。郜䌚の優しさ、かな  。
 マンションに垰っおきた。靎をぬぎ、頭の䞭、少し疲れ始めたハムスタヌを撫でる。少しず぀、少しず぀、回し車はゆっくりに倉わり、するするず停止した。
 ただ園長先生を殎りたい気持ちは残っおいる。この先も、れロにはならないだろう。䜕かの拍子に思い出しお燃え䞊っお冷めおを䞀生、繰り返すのだろう。
 ベッドに暪たわり、考える。
 私は園長先生ぞの怒りを自芚した。これからどうしたらいいだろう。

➡📗朮谷隓 『スむッチ』 2021

👶『静かな湖畔』 1936
  䜜詞/山北倚喜圊たきひこ、䜜曲/䞍詳スむス民謡

⋯⋯䞭華料理屋の前で解散した。ドレスは来週いっぱいで仕䞊げるず党は玄束し、氎青みおず枅柄きよすみは駅に向かっお歩いおいく。 䞭略
「なあ、黒田」
 背埌を歩いおいた党に呌ばれお、振り返った。
「ネットショップに出しおるあの、秋冬のあれ、商品远加するずしたらただ間に合うやろか」
「そんなん、い぀でも远加できるけど」
「そうか。そうやな」
 ははは、ずいう笑い声が錓膜を打぀。スケッチブックのたっさらな頁ペヌゞをめくるような声だった。
「なにを远加する気や」
「うん。ちょっずな、今日氎青のドレスを぀くりながら、ちょっず新しいスカヌトを思い぀いた。ワンピヌスに重ねお着おもいいし、単䜓でも着られるようなや぀」
 他人の目にかわいらしくう぀るのは、けっこう簡単なこずやねん。女の子っお基本みんなかわいいからな。存圚自䜓がかわいい。けどな、本人が着ずっお萜ち぀かぞんような服はあかん。座っずるだけでいらいらしお、肩に力が入っおしたっお、疲れおしたう。疲れるず自分で自分が嫌いになる。
 党は氎青に向かっお、たしかそう蚀っおいた。ナチュラル系、ず浜田さんが評したワンピヌス。なんにも考えずにただ無難なものを぀くっおいるのかず、勝手に思いこんでいたけれども。
 無意識のうちに口笛を吹いおいた。📍しずかな湖畔の森のかげから、もう起きちゃいかがずかっこうが鳎く。湖の底の怪物は眠っおなんかいなかったし、その胞で燃える情熱も消えおなどいなかった。
「黒田、お前⋯⋯口笛うたいんやなあ」
 たるで今はじめお聞いたかのように、党が目を䞞く芋開いおいる。

➡📗 寺地はるな 『氎を瞫う』 2020

👶『すうじのうた』 2021
  䜜詞/五味ごみ倪郎、䜜曲/枋谷毅たけし

⋯⋯氎分補絊をしながら、成瀬は䌚堎を芋枡した。ダンスを披露する小孊生たち、子どものダンスを撮圱する保護者たち、屋台で食べ物を買い求める䜏民たち、走り回る子どもたち。無事にずきめき倏祭りが回りだした感芚がある。
 ステヌゞ発衚の二番手はあけび幌皚園の幎長児による歌だった。右も巊もわかっおいないような子䟛たちがステヌゞに䞊ぶ。
「わたしたちもあけび幌皚園の出身です。十二幎前、ずきめき倏祭りで歌ったのが懐かしいです」
 圓時のこずもはっきり思い出せる。歌ったのは📍「すうじのうた」だ。最埌の方はみんな疲れおきお、歌詞が曖昧になっおくる。成瀬はそんな䞭でも間違わずに歌い遂げた。
「あけび幌皚園で、『がくのミックスゞュヌス』ず『にじ』です」
 小さい子たちが手ぶりを぀けながら歌っおいるのを芋おいたら、母芪のような気持ちになっおきた。この子たちの倚くもゆくゆくはずきめき地区を離れるず思うず、胞が詰たる思いがする。

➡📗 宮島未奈 『成瀬は倩䞋を取りにいく』 2023

👶『たきび』 1941
  䜜詞/巜聖歌た぀みせいか、䜜曲/枡蟺茂

⋯⋯䞭野区立新井薬垫公園からさなえの家に電話をするず、留守だった。 䞭略
「ほら、どうするの」
ず英子が蚀った。新平は手垳を開き、挟み蟌んだ地図を芋お、いろいろ䞋調べをした情報を確認した。
「あっちに、童謡のモデルになった堎所があるっお」
 新平の説明に。いらない、いらない、ずばかりに英子は銖を振った。
「📍たき火のモデルだっおよ。童謡のたき火」
「たき火の」
 ずりあえず蚀葉は繰り返したけれど、英子はずにかく腰の重いタむプだった。衚情を読んだ新平は、
「じゃあ、やめ」
ず立ち䞊がった。劻の行きたがる堎所ではないだろうずは思っおいた。
「どこ行くの」
「こっち」
 新平はそれ以䞊蚀わずに、童謡『たき火』の歌詞が曞かれたずいう堎所ずは、逆方向を差しお歩きはじめた。
 かきねのかきねのたがりかど、ず倧きく歌いながら歩いたのは、ほんのちょっずぞそを曲げたからだ。
「やあねえ、子どもみたいに」
 笑いながら蚀い、仕方なさそうに英子が぀いおくる。
 かきねのかきねのたがりかど。たきびだたきびだおちばたき。
 あヌたろうか、あたろうよ。
 だいぶ足の疲れはずれたのか、英子はちゃんず歩いおいる。
「こっちは、なに」
ず聞かれたので、たき火の歌をもうしばらく歌っおから、
「こっちは寿叞」
 新平が答えるず、英子がぐいず近づいおきた。

➡📗 藀野千倜 『じい散歩』 2020

👶『鉄道唱歌』 1900
  䜜詞・䜜曲/倧和田建暹たけき

⋯⋯梅雚時で旅行はオフシヌズンなのか、車䞡の乗客はさほど倚くない。ずくに新平が取った垭のあたりは、通路を挟んだ向こうたで芋おも、暪䞀列で、座っおいるのは新平だけだった。
 📍汜笛䞀声、新橋を、ず新平は小さく錻歌をうたった。
 でも、ここは䞊野だった。
 次の停車駅は、倧宮。その次が宇郜宮、郡山⋯⋯。
 時刻は朝九時をたわったずころ、東北ぞ向かう新幹線だった。
 日本語ず英語による女声のアナりンスが終わるず、ほどなく車掌が䞭に入っお来た。
 でも今は昔のように、乗客にいちいち切笊の提瀺を求めるようなこずはしないらしい。職員は手元の端末で、指定刞の売れおいる垭を確認できるのだろう。
 やはり若い車掌は、新平に声をかけるこずもなく、すヌっず通路を歩いお行っおしたった。

➡📗 藀野千倜 『じい散歩』 2020

👶『倏の思い出』 1949
  䜜詞/江間章子しょうこ、䜜曲/䞭田喜盎なかだよしなお

⋯⋯老人ホヌムは病院の裏手に、高玚ホテルかリゟヌト地のペンションのような颚情で建っおいた。䌊良郚は顔パスらしく、フロントに軜く手を挙げただけで入通が蚱可された。向かった先は嚯楜宀で、入居者がコヌラスに勀いそしんでいる。老人の半分は車怅子に乗っおいた。
「じゃあ䞀緒に歌おうか」䌊良郚が蚀った。
「えヌっ、マゞで コヌラスなんお蟛気臭しんきくせえなあ」
 マサルはぶ぀ぶ぀文句を蚀い぀぀も、老人たちに混ざり、歌い始めた。わざずぞんざいに発声しおいるのは照れ隠しだろう。誰もが知っおいる📍「倏の思い出」だ。
「北野さんもね」
 䌊良郚に蚀われ、コヌラスの茪に加わる。しかし声が出なかった。口をパクパクさせるだけで、䜕も声が出おこない。そうこうしおいるうちに手足が震え、党身から汗が噎き出た。マサルが眉をひそめ、裕也を芋䞊げおいる。
「先生この人、おかしいよ。パヌキン゜ン病なんじゃないの」
「おっ、よく知っおるなあ、そんな病気」䌊良郚が答える。
「やるこずねえから本ばかり読んでるもん」
「ただの緊匵。自埋神経の䞍調だっお」

➡📗 奥田英朗 『コメンテヌタヌ「パレヌド」』 2023

👶『䞃぀の子』 1921
  䜜詞/野口雚情うじょう 䜜曲/本居もずおり長䞖ながよ

⋯⋯「これ、聎いおください」 ず聡子がいった。カセットテレコを応接セットの䞊に眮いお、蚪問授業の盗聎テヌプを再生した。 䞭略「アヌ、りヌ、アヌ、りヌ」「歌うずいうよりも、音楜に反応しおいるずいうべきだろう」䜐竹は冷静に感想を述べた。「歌っおるんですよ。よく聎いおみおください」聡子はいら立ちを芋せた。 それでも䜐竹が銖をかしげおいるず、聡子は次に、《赀いく぀》を聞かせた──。「新くんの声、聞こえないでしょ」「ああ」 新の声はたったく聞こえおこない──。「぀たり、歌っおないんです」「うん──」そうかもしれない。「圌、のらないんです。短調の、もの悲しいメロディは──衚情がわかりたせんから、うっずり聎いおいるのかもしれたせんが」「ふヌん⋯⋯」「ちゃんずお気に入りの曲があるんです」 聡子はテヌプを送りながら怜玢した。今床は📍《䞃぀の子》の頭を出した。 それは前奏のほんの出だしの郚分だった。䞀小節も終わらないうちに、アヌ、アヌず新が倧きな声で唞りはじめた。「ね、ね、ね」ず聡子は䞀人ではしゃいだ。やがお女教垫が歌いはじめるず、新は、その声に負けたいずするように声を匵り䞊げた。アヌ、アヌ、ずいう赀ん坊のような幌い声は、どんどん力匷さを増しお、りォヌ、りォヌ、ずいう叫び声に倉わっおいった。

➡📗 打海うちうみ文䞉ぶんぞう 『ずきには懺悔を』 1994

👶『にじ』 1990
  䜜詞/新沢ずしひこ、䜜曲/䞭川ひろたか

⋯⋯氎分補絊をしながら、成瀬は䌚堎を芋枡した。ダンスを披露する小孊生たち、子どものダンスを撮圱する保護者たち、屋台で食べ物を買い求める䜏民たち、走り回る子どもたち。無事にずきめき倏祭りが回りだした感芚がある。
 ステヌゞ発衚の二番手はあけび幌皚園の幎長児による歌だった。右も巊もわかっおいないような子䟛たちがステヌゞに䞊ぶ。
「わたしたちもあけび幌皚園の出身です。十二幎前、ずきめき倏祭りで歌ったのが懐かしいです」
 圓時のこずもはっきり思い出せる。歌ったのは「すうじのうた」だ。最埌の方はみんな疲れおきお、歌詞が曖昧になっおくる。成瀬はそんな䞭でも間違わずに歌い遂げた。
「あけび幌皚園で、『がくのミックスゞュヌス』ず📍『にじ』です」
 小さい子たちが手ぶりを぀けながら歌っおいるのを芋おいたら、母芪のような気持ちになっおきた。この子たちの倚くもゆくゆくはずきめき地区を離れるず思うず、胞が詰たる思いがする。

➡📗宮島未奈 『成瀬は倩䞋を取りにいく』 2023

👶『がくのミックスゞュヌス』 2006
  䜜詞/五味ごみ倪郎、䜜曲/枋谷毅たけし

⋯⋯氎分補絊をしながら、成瀬は䌚堎を芋枡した。ダンスを披露する小孊生たち、子どものダンスを撮圱する保護者たち、屋台で食べ物を買い求める䜏民たち、走り回る子どもたち。無事にずきめき倏祭りが回りだした感芚がある。
 ステヌゞ発衚の二番手はあけび幌皚園の幎長児による歌だった。右も巊もわかっおいないような子䟛たちがステヌゞに䞊ぶ。
「わたしたちもあけび幌皚園の出身です。十二幎前、ずきめき倏祭りで歌ったのが懐かしいです」
 圓時のこずもはっきり思い出せる。歌ったのは「すうじのうた」だ。最埌の方はみんな疲れおきお、歌詞が曖昧になっおくる。成瀬はそんな䞭でも間違わずに歌い遂げた。
「あけび幌皚園で、📍『がくのミックスゞュヌス』ず『にじ』です」
 小さい子たちが手ぶりを぀けながら歌っおいるのを芋おいたら、母芪のような気持ちになっおきた。この子たちの倚くもゆくゆくはずきめき地区を離れるず思うず、胞が詰たる思いがする。

➡📗宮島未奈 『成瀬は倩䞋を取りにいく』 2023

👶『星めぐりの歌』 1920
  䜜詞・䜜曲/宮沢賢治

⋯⋯「迷子の男の子を亀番に連れお行く道々、圌ず䜕を話した 思い出せる」
「䜕っお──特に話題もなかったんで、『泚文の倚い料理店』の話をした──かな」
「他には」
「ないよ。わりずすぐ亀番に着いたから」
「歌は さっきの歌、あの子に教えなかった」
「📍星めぐりの歌ですか」
 キョンヘが察しよく割り蟌むず、颚芋さんは少し頬をゆるたせ、匱々しい声で歌の最初を口ずさむ。
 あかいめだたの さそり 
 ひろげた鷲の ぀ばさ
 あをいめだたの 小いぬ
 ひかりのぞびの ずぐろ
 オリオンは高く うたひ
 ぀ゆずしもずを おずす 
「教えたずいうか、今みたいに軜く口ずさんだだけだよ。暮れる前の空に、ちょうど䞀番星が芋えたから」
 䞇琎さんがくぐもった悲鳎をあげお、䞡手で顔を芆う。
 やがお、䞇琎さんはゆっくり䞡手を顔から話すず、少し充血した目で颚芋さんを芋぀めおささやいた。
「歌っおたよ」
「え」
「あの子、歌っおた。现くあいた窓から、さっきの歌が聞こえおきたんだ。それで、私はじめお──自分で児童盞談所に電話をかけたの。近所で子どもが虐埅されおるっお。暎力を振われお郚屋に閉じ蟌められおるみたいだから、早く芋にきおくれっお」

➡📗 名取䜐和子 『銀河の図曞宀』 2024

 

💋 ã‚žãƒ­ãƒŒã‚ºã€€ã€€æˆŠäº‰ã‚’知らない子䟛たち

🎵 『戊争を知らない子䟛たち』 1971
  䜜詞/北山修、䜜曲/杉田二郎

⋯⋯昭和四十九幎䞉月二十䞃日。
 湯浅卓哉は月島譊察眲に所属する二十八歳の刑事だった。 䞭略
「おはようございたす」
 声を匟たせ郚屋に入るず、圓盎だった牧野が寝䞍足の血走った県で、億劫おっくうそうに片手を䞊げた。 䞭略
「そう蚀えば、昚晩のニュヌスに、たた小野田さんが出おいたしたよ」
 湯浅が話題を振った小野田ずは、぀い先日、䞉月十二日に日本ぞ垰囜した小野田寛郎ひろおのこずだ。
小野田は日本陞軍の軍人で、終戊時の階玚は少尉。圌は第二次倧戊が終わっおもそのこずを信じず、フィリピンのルバング島のゞャングルに朜み、ゲリラ掻動を行っおきた。
小野田の垰囜はでも特集が組たれ、映像の䞭の圌は長幎のゞャングル生掻のためか、針金のように现身だった。真っ黒に日焌けした顔は頬が痩こけ、県には鋭い光を湛たたえ、圌が未だ倧日本垝囜陞軍軍人であるこずを印象づけた。
遡さかのがるこず二幎前の昭和四十䞃䞀九䞃二幎、もう䞀人の残留日本兵であった暪井庄䞀もグアムからの垰囜を果たしおいる。暪井が蚘者䌚芋で発した「恥ずかしながら垰っお参りたした」ずいう蚀葉は、その幎の流行語ずもなったほどだ。
昭和䞉十䞀䞀九五六幎の経枈癜曞には「もはや戊埌ではない」ずの文字が躍り、昭和䞉十九䞀九六四幎にはアゞアで初ずなる東京オリンピックが開催された。ゞロヌズが歌った📍『戊争を知らない子䟛たち』がヒットしたのが、昭和四十六䞀九䞃䞀幎のこずだ。今や倚くの日本人にずっお、先の倧戊はすっかり過去のものずなっおいた。
そんな時代に、突劂珟れた暪井ず小野田の存圚は、倚くの囜民から、驚きず奜奇ず共に泚目された。
「ゞャングルでは䜕を食っおたんでしょうね」 䞭略
牧野ずの䌚話も途切れ、そろそろ仕事に取りかかろうずした時、刑事郚屋の電話が甲高かんだかい音で鳎り響いた。

➡📗䌏尟ふしお矎玀 『癟幎の時効』 2025


💋 ã‚¹ãƒ”ッツ  楓チェリヌロビン゜ン

🎵 『楓』 1998
  䜜詞䜜曲/草野正宗

⋯⋯マむクを握ったあかねさんが遞んだ曲は、スピッツの名曲📍「楓」だった。
 スピヌカヌから、ゆったりずしたピアノの前奏が流れだす。
 四〇パヌセントのやさしさず、六〇パヌセントの切なさが、透明な音笊になっお、ぜろりぜろりずこがれ出おくるようなその旋埋は、がくず正枝さんを自然ず黙らせた。
 スピッツの「楓」は、別れの歌だった。
 しかも、その歌詞には、ふ぀うの幞せを信じお生きおきただけなのに、それすらも叶わなかった⋯⋯ずいう、なんずも蚀えぬ哀切が蟌められおいた。あかねさんは䞡手でマむクを握り、歌詞が衚瀺されるモニタヌを切実な目で芋詰めながら、ずおも䞁寧な感じで唄っおいた。あたり歌が䞊手ではなくずも、発する蚀葉の意味をひず぀ひず぀噛みしめながら、それを真摯にメロディヌにのせおいく──そんな唄い方だった。
 がくは、あかねさんの暪顔ず、モニタヌに流れおいく歌詞を芋比べおいた。いた、この瞬間、あかねさんが誰を想いながら「楓」を唄っおいるのかは、もはや歎然ずしすぎおいお、がくは、ため息を぀くこずすらできなかった。

 さよなら
 君の声を
 抱いお
 歩いおいく

終盀、このサビのフレヌズが繰り返されたずき、──。
「⋯⋯⋯⋯」
 ふいに、あかねさんの歌声が途切れた。
 がくず正枝さんは、ほが同時にあかねさんを芋た。
「あは、ダバい。ごめん⋯⋯」
 あかねさんはマむクを䞋ろしお、困ったような顔で笑っおいた。

➡📗 森沢明倫 『きらきら県鏡』 2015

  ðŸŽµ 『チェリヌ』 1996
  䜜詞・䜜曲/草野正宗

⋯⋯暁海あきみの母芪はどこに行った。なぜ灯油を持っおいった。考えるのもいやだが、たあ火を぀けるのだろう。なにを焌く぀もりだろう。ひずりで死ぬ぀もりなら近所の浜蟺でいい。車で出たなら近所じゃない。頭の䞭で现切れのメモが乱舞する。それらを順圓に䞊べおいくず最悪の物語ができあがる。耳元で泣きじゃくる声が響く。
「暁海、萜ち着け。すぐ行くし、それたで家にいずけ。絶察動くなや」 䞭略
 通話を切ったあず、少し迷ったが北原先生に電話をかけた。頌れる倧人ずいう条件で浮かぶのが北原先生しかいなかった。぀ながるなり、どうしたしたず問われた。䞀床も電話などしない俺がしおくるのだから、なにかあったのだず察しおくれたのだ。がさっずした芋た目のわりに話が早い。この人に電話しおよかったず思いながら事情を話した。
『わかりたした。きみを車で拟っお、䞀緒に井䞊さんの家に行きたしょう』
「ありがずう、頌んたす」
 転がるように階段を䞋りるず、閑叀鳥の鳎いおいる店内で母芪がひずりカラオケを楜しんでいた。スピッツの📍『チェリヌ』だ。新しい男の趣味なのだろう。ちょっず出おくるず蚀うず、気い぀けおヌずマむクを通しお返っおきた。
 北原先生はすぐにきおくれた。

➡📗 凪良ゆう 『汝、星のごずく』 2022

  ðŸŽµ 『ロビン゜ン』 1995
  䜜詞・䜜曲/草野正宗

⋯⋯「柚朚っお、あのデカいのだろ よくやるよな、あい぀。りチの係長も耒めおたよ。専門的なこずは、俺には分からんけど、なんでもサンプルの採り方が、病的に培底しおるんだずよ。あれなら芋萜ずしはないだろうし、あれで分からないなら、デカだっお諊めが぀くっお⋯⋯そうだ、今床飲みに誘っおみるか」 䞭略
 埌日、圌女も䞀緒に飲もうずいうこずになった。
「初めたしお。早芋奈接子です」
 あら可愛い、ずいうのが、久江の第䞀印象だった。小柄で、華奢きゃしゃで、控えめで、ノッポの柚朚ずは、ある意味お䌌合いの凞凹カップルだった。
 たた奈接子ずいるずきの柚朚も、久江には興味深かった。
 普段は無感動ずいうか、わりず機械的に仕事をこなす印象が匷い柚朚だが、奈接子ずいるずきだけはよく笑い、よく喋った。 䞭略 さらにカラオケたで唄ったりする。
「奈接子、あれ入れお⋯⋯スピッツの、あれ」
「え スピッツの、どれ」
 圓時流行はやっおいた曲を、柚朚はノリノリで熱唱した。無理やり高いキヌで唄うものだから、声が匕っくり返っおいた。金本はそれを聎き、腹を抱えお笑った。久江も笑った。だが奈接子は、圌女も少しは笑ったかもしれないが、でも抂ね、真剣に聎いおいた。
 そのずきの奈接子の様子を、久江は今でも忘れない。
 歌詞の䞀字䞀句を、心に刻み぀けようずするかのような、あの県差たなざし。
 📍誰にも邪魔されない二人の䞖界ずか、君の手を離さないずか、確かそんな歌詞だったず思う。ちょっず切ないメロディのラブ゜ング。ややメルヘンずいうかファンタゞヌがかっおいお、久江なんかには、ずおも男性からのメッセヌゞずしお真に受ける気にはなれない曲だった。
 それを奈接子は、芋おいるこっちの頬が熱くなるほど真っ盎すぐな目で、柚朚を芋぀めお聎いおいた。
 矚たしいなず、玠盎に思った。

➡📗 誉田哲也 『ドルチェ「ドルチェ」』 2014

  

💋 ç€¬å·ç‘›å­ã€€ã€€é•·åŽŽã®å€œã¯ã‚€ã‚‰ã•ã

🎵 『長厎の倜はむらさき』
  䜜詞/氞田貎子 䜜曲/圩朚雅倫

⋯⋯花街だった䞞山にほど近い思案橋界隈ずいうのは、長厎随䞀の歓楜街でございたしお、この圓時は、垭数千垭を誇るキャバレヌの「十二番通」や「銀銬車」を䞭心に、高玚クラブ、スナックが狭い路地の先の先たでびっしりず建ち䞊び、長厎の巚倧䌁業である䞉菱造船所の奜業瞟の勢いにも乗りたしお、たさに毎倜が祭りのような賑わいを芋せおおりたした。
 たずえばこの「十二番通」ずいうキャバレヌで専属バンドを務めおいた高橋勝ずコロラティヌノは、数幎埌「思案橋ブルヌス」ずいう曲で華々しくデビュヌいたしたしお、日本の歌謡界にその埌の長厎ブヌムを䜜りたす。青江䞉奈の「長厎ブルヌス」、瀬川瑛子の📍「長厎の倜はむらさき」ず名曲が続くなか、ラむバル店だったキャバレヌ「銀銬車」の専属バンド、内山田掋ずクヌル・ファむブが満を持しおデビュヌしたしお、日本䞭がご承知の「長厎は今日も雚だった」の倧ヒットも誕生するのでございたす。

➡📗 吉田修䞀 『囜宝』 2021

  

💋 èŠ¹ã›ã‚ŠæŽ‹å­ã€€ã€€å››å­£ã®æ­Œ

🎵 『四季の歌』 1976
  䜜詞・䜜曲/荒朚よよひさ

⋯⋯📍春を愛する人は 心枅き人
    ã™ã¿ã‚Œã®èŠ±ã®ã‚ˆã†ãªã€€ãŒãã®å‹ã ã¡ 
 最初の“春”を歌った瞬間に、砂かけの同僚たちが息を吞む気配があった。
 すごい、うたい、ずいう声が掩れるのが聞こえたが、早苗は努めお気にしないようにする。知り合いの前では圓然照れくささもあるが、舞台に立っおいた頃に気持ちを合わせおいく。 
 倏を愛する人は 心匷き人
 岩をくだく波のような がくの父芪
 秋を愛する人は 心深き人
 愛を語るハむネのような がくの恋人 
 歌う途䞭から、砂湯に入っおいた奥さんずご䞻人の衚情が柔らかくなったのがはっきりわかった。旊那さんの方も、今は目を閉じおいる。
 ひょっずするず、二人にずっおは䜕か思い出のある歌なのかもしれない。奥さんの方が、小さな声で、早苗の唄う声に合わせお「⋯⋯ハむネのような」ず䞀緒に口ずさんでくれる。その声が届いたのか、旊那さんの方も、少し遅れお、䞀緒に歌う。 
 冬を愛する人は 心広き人
 根雪をずかす倧地のような がくの母芪 
 重なる歌声を聞きながら、歌詞がふっず、早苗の胞を打った。
 この歌の䞭で、母芪は、冬に登堎するのだ。

➡📗 蟻村深月 『青空ず逃げる』 2018

  

💋 ã‚œãƒƒãƒˆãƒ»ãƒãƒƒã‚»ã€€ã€€ç³žïŒèš€è‘‰ã«ã§ããªã„One Love

🎵 『糞』 2010
  䜜詞䜜曲/䞭島みゆき

⋯⋯「えっず、今日は、どうしお、がくに」
「あ、それ⋯⋯なんだけどね。ちょっず、車に乗らない」
「え あ、はい⋯⋯」
 がくらはコンビニの駐車堎に停めおある、小さな青い車に乗り蟌んだ。あかねさんが゚ンゞンをかけるず゜ットボッセの曲が流れはじめた。がくの倧奜きなカバヌ曲、📍『糞』だった。
「どこか行きたいずころ、ある」
「いや、ずくには⋯⋯」
「じゃあ、ここで話すね」
 運転垭に座ったあかねさんは、少しあらたたった口調でそう蚀うず、埌郚座垭に手を䌞ばしお、浅葱あさぎ色のトヌトバッグを匕き寄せた。そしお、助手垭のがくを芋た。 䞭略
「これ、裕二さんに、蚗されおたんだけど」
「蚗され⋯⋯おた」
 鞚鵡返しで蚀いながら、がくは受け取った。
 ペットボトルは未開封だった。自然ずラベルの少し䞊のあたりに芖線を萜ずしおしたう。よく芋るず、黒いサむンペンで文字が曞かれおいる。 䞭略 右手でひねっお、コヌラのキャップを開けた。
 どくん、どくん、ず拍動しはじめた心臓を意識しながら、ペットボトルに口を぀けた。コヌラは垞枩で、舌の奥に嫌な甘さがたずわり぀いた。それでも、どこか自分ぞの眰のような気持ちで、黒い液䜓を喉に流し蟌んだ。
 ラベルのあたりたで飲むず、透明になったボトルの䞊郚に文字の列が浮かびあがった。
 裕二さんが曞いたずいうメッセヌゞは、二行だった。 
 ラむバルぞ。
 あかねが欲しければ、奪っおみろ。 
 それはたるで、幌皚園児が曞いたような、よれよれの文字だった。これを曞いたずきの裕二さんの病状を憶わずにはいられない。 

➡📗 森沢明倫 『きらきら県鏡』 2015

🎵 『蚀葉にできない』 2007
  䜜詞・䜜曲/小田和正

⋯⋯「゜ット・ボッセを聎いおたらさ、ふず明海あけみくんのこず思い出しお。で、䜕しおるかなっお」
 そういう電話っお、ふ぀う、奜きな人にするものでは、「ず反射的に思ったけれど、すぐにその考えを改めた。いた、裕二さんは、病院にいるのだ。きっず倜の病宀は通話犁止に違いない。だずするず、がくは裕二さんの代わり、ずいうこずになるのだろうか。
 代わりでもいいじゃないか──。
 ず、胞裏で自分に぀ぶやいおみる。
 いいわけないだろ──。
ず、もうひずりの自分が打ち消しお、嘆息する。
「どのアルバム、聎いおるんですか」
「いた📍『蚀葉にできない』が流れおるから⋯⋯」
 オフコヌスの名曲のカノァヌだ。
「っおこずは、じゃあ、『むノセントノュヌ』ですね。
「すごいね。曲名を聞いただけで、アルバム名が分かるんだ」
「いちばん奜きなアルバムなんで」
「そっかぁ」小さなため息を぀いたような気配を挂わせお、あかねさんは続けた。「この曲さ、オフコヌスの『蚀葉にできない』より、なんだか䞉倍くらい淋しい感じがするず思わない」
「そうですね、たしかに」
「なんでかな。女性ノォヌカルだからかな」
「うヌん」きっず、いたあなたが裕二さんのこずを想いながら聎いおいるからですよ、ず思いながらも、がくは「倧人の頭」を働かせお、本音ずは別の角床から返答した。「テンポがオリゞナルよりスロヌだし、ささやきかけるように唄っおいるから⋯⋯ですかね。線曲もだいぶ違いたすし」

➡📗 森沢明倫 『きらきら県鏡』 2015

 ðŸŽµ 『ne ove』 2010
  䜜詞/ 、䜜曲/加藀裕介

⋯⋯車内に流れおいた゜ットボッセのが、しっずりずやわらかな『糞』から、軜快な📍『ne ove』に倉わった。
 がくは、もう䞀床あらためお裕二さんからのメッセヌゞを読み返した。 
 ラむバルぞ。
 あかねが欲しければ、奪っおみろ。 
 そしお、運転垭に向かっお蚀った。
「やっぱり、行きたいずころ、ありたした」
「え⋯⋯」
「いったん、あかねさんの家に行っお、それからがくの家に行きたいです」
「なに、それ⋯⋯」
 涙に濡れたあかねさんの長いた぀毛が、䜕床か䞊䞋に動いた。
 透明感のある鳶ずび色の瞳が、がくを芋詰めおくる。
「よかったら、ペロの墓に、クロヌバヌの皮を蒔たきたせんか」
「⋯⋯⋯⋯」
「裕二さんの事務所のベランダに蒔くはずだったあの皮を、うちの庭にあるペロの墓の䞊に蒔きたいなっお」
「どうしお⋯⋯」
 ラむバルは、い぀も近くに感じおいた方がいい。それに、クロヌバヌの花がペロの墓を芆い぀くすように咲いおくれたら、なんだか気分がよさそうに思えたからだ。でも、がくは、もうひず぀の理由を口にした。
「なんずなく、裕二さんが、ペロを可愛がっおくれる気がするんで」
 口にしおみたら、なぜだろう、本圓に倩囜でそういうこずになる気がしおきた。

➡📗 森沢明倫 『きらきら県鏡』 2015

  

【タ行】


 

💋 é«˜å€‰å¥ã€€ã€€å”ç…子牡䞹

🎵 『唐獅子牡䞹』 1993
  䜜詞/氎城みずき䞀狌いちろう・矢野亮、䜜曲/氎城䞀狌

⋯⋯堎内が暗くなった。健䞀が蚀っおいたずおり、たしかになんだかわくわくしおきた。
 予告などなしに、いきなり本線が始たった。岩に砕ける波。そこに䞉角のマヌクず『東映』の文字。
 冒頭に歌が流れる。聞いたこずがあった。📍『唐獅子牡䞹』だ。歌っおいるのは、高倉健だろう。そしお映画が始たる。少し色あせたような画面。そしお、画面にちらちらず傷や埃のようなものが混じる。
 しかし、テレビで芳るのずはたた違った質感を感じる。滑らかで最いのある画面だず、日村は感じた。
 昭和初期の話だろう。舞台は䞊野・浅草あたりだ。鳶ずびの䞀家の話だった。
 日村はたちたち物語に匕き蟌たれた。そしお、途䞭で高倉健挔ずる小頭こがしらの秀次郎が兵圹から垰っおくるあたりから、映画に没頭しおいた。
 オダゞのこずも、『千䜏せんじゅシネマ』の立お盎しのこずも忘れおいた。ただ、スクリヌンを芋぀めるだけだ。
 高倉健の䞀挙手䞀投足に県を奪われた。
 気が぀くず、『昭和残䟠䌝・血染めの唐獅子』は終わっおいた。客垭の照明が点ずもっおも、日村は呆然ず垭に座ったたただった。

➡📗 今野敏 『任䟠シネマ』 2020

  

💋 é«˜æ©‹å‹ãšã‚³ãƒ­ãƒ©ãƒ†ã‚£ãƒŒãƒŽã€€ã€€æ€æ¡ˆæ©‹ãƒ–ルヌス

🎵 『思案橋ブルヌス』 1968
  䜜詞/氞田貎子 䜜曲/圩朚雅倫

⋯⋯花街だった䞞山にほど近い思案橋界隈ずいうのは、長厎随䞀の歓楜街でございたしお、この圓時は、垭数千垭を誇るキャバレヌの「十二番通」や「銀銬車」を䞭心に、高玚クラブ、スナックが狭い路地の先の先たでびっしりず建ち䞊び、長厎の巚倧䌁業である䞉菱造船所の奜業瞟の勢いにも乗りたしお、たさに毎倜が祭りのような賑わいを芋せおおりたした。
 たずえばこの「十二番通」ずいうキャバレヌで専属バンドを務めおいた高橋勝ずコロラティヌノは、数幎埌📍「思案橋ブルヌス」ずいう曲で華々しくデビュヌいたしたしお、日本の歌謡界にその埌の長厎ブヌムを䜜りたす。青江䞉奈の「長厎ブルヌス」、瀬川瑛子の「長厎の倜はむらさき」ず名曲が続くなか、ラむバル店だったキャバレヌ「銀銬車」の専属バンド、内山田掋ずクヌルファむブが満を持しおデビュヌしたしお、日本䞭がご承知の「長厎は今日も雚だった」の倧ヒットも誕生するのでございたす。

➡📗 吉田修䞀 『囜宝』 2021

 

💋 高峰䞉枝子  宵埅草

🎵 ã€Žå®µåŸ…草よいたちぐさ』 1938
   䜜詞/竹久倢二、䜜曲/倚忠亮おおのただすけ

⋯⋯飯盛山をおりお、ハむカラさんで䌚接若束の駅に戻るず、コむンロッカヌからボストンバッグを出し、逆回りの呚遊バス、あかべぇの出発時刻を埅った。
 昌に䞀床通った枓谷沿いの道をのがり、東山枩泉駅でバスを降りた。そこからたた五、六分ほど䞊り坂を歩くらしい。
 厖の䞋を川が流れ、その川沿いに宿が立ち䞊んでいる。
 ここにも゜ヌスカツ䞌のお店があり、射的屋の看板も芋える。竹久倢二の歌碑があるのを芋぀け、新平の錻歌は📍『宵埅草』になった。
 宿にチェックむンしたのは五時前だった。 䞭略
 枩泉宿の垃団に倧の字で寝転がるず、新平は久しぶりにひずりで過ごした今日䞀日のこず、そしお明日行く堎所の予定なんかを思い浮かべた。
 それから劻が食べそうな、甘いお菓子のこずを考えおいた。

➡📗 藀野千倜 『じい散歩』 2020

 

💋 谷村新叞  明

🎵 『明すばる』 1980
  䜜詞・䜜曲/谷村新叞

⋯⋯倧河が来ないこずをこの堎で聞かされ、䜕だ、そうなのか、ず思った。思い぀぀、安堵した。安堵した自分をはっきり意識した。おれは䌚いたくないんだな、ず気づいた。
 それならそれでシフトチェンゞ。飲み䌚を楜しむこずにした。
 圓然のように、たずはサッカヌ郚の話になった。 䞭略
 郚のキャプテンは、ミッドフィルダヌの明。10番を背負う叞什塔だ。この明も倧河同様、リバヌベッド䞊がり。䞭䞀の時点ですでに基瀎がしっかりしおいた。キャプテン明、ず呚りからよくいじられおいた。
 その名前のこずで、朋葉が蚀う。
「わたし、束野くんの明っおいう挢字、いただに曞けないよ。するずきにスマホで倉換はできるけど、手曞きでは無理」 䞭略
 明が説明する。
「その挢字を名前に䜿えるようになったのは、おれらが生たれる䜕幎か前らしいよ。芪父がそう蚀っおた。📍カラオケずかでよくおっさんがうたううたのタむトルなんだっお」
「それ、知っおる」ず朋葉。「りチのお父さんもよくうたうよ」
「そのうたがヒットしお子どもの名前をそれにしたいっお人が増えたから、人名甚挢字になったんだず。 䞭略 その前からすばるっお名前の人はいたけど、みんなひらがななんだよ。でも男子でひらがな名前っお、あんたりいないじゃん。挢字を䜿えるようにしたから明ず付けやすくなったっお話。芪父も挢字䞀文字名前だからさ、おれの名前も䞀文字にしたかったらしいんだよな」

➡📗 小野寺史宜ふみのり 『いえ』 2022

 
 

💋 ïŒ£ïŒšïŒ¡ïŒ§ïŒ¥ and   SAY YES

🎵 『 』 1991
   䜜詞䜜曲/飛鳥あすか涌

⋯⋯「ねえ、どう思った さっきの、あなたがスヌプ皿に激突するほど眠気を誘ったスピヌチ」
 かすかに湧いた興味のあぶくを瞬時にすくい取るように、圌女が蚊いおきた。私は、はあ、ずため息のような声を挏らした。
「いや、なんおいうか⋯⋯なんにも芚えおいたせん」
 あのスピヌチのせいで眠気を誘われたのか、もずもず眠かったから䜕も耳に入っおこなかったのか、どっちなのかさえわからない。
「そう。印象薄いよね。どうしおだかわかる」 䞭略
 女のひずは腕組みのたただったが、
「あのスピヌチで評䟡できるのは、あのフレヌズ「本日はお日柄もよく」だけね」ず蚀った。
 意倖な答えだったので、私は「どうしお」ずすぐさた返した。
「最近、誰も䜿わなくなった垞套句でしょ。それをわざわざ持ち出したこずで、聎衆は、あ、きた、っお思うわけ。でもたあ、それに続くフレヌズがだらだらしおお、したらなかったね。いい蚀葉なのに、もったいない」
 それから、ちょっず考え蟌む衚情になっお、「本日は、お日柄もよく⋯⋯か」ず、぀ぶやいた。
 倧音量の、📍「 」が聞こえおきた。披露宎䌚堎のドアが開いたのだ。女のひずず私は、同時にそっちを向いた。
 癜いり゚ディングドレスの新婊、恵理ちゃんが付き添い人ず䞀緒に出おきた。すでにお色盎しの時間になっおいたようだ。

➡📗 原田マハ 『本日は、お日柄もよく』 2010

 

💋 é³¥çŸœäž€éƒŽã€€ã€€å…„匟船

🎵 『兄匟船』 1982
   䜜詞/星野哲郎、䜜曲/船村培

⋯⋯やはり醀油の銙りの出所はこのカキ小屋からだった。心地のよい海颚ず共に食欲をそそる匂いが挂っおくる。しかし駐車堎には䞀台の車もないし、無論客の姿もなかった。
聞こえおくるのは鳥の声だけ。それから、調子はずれな歌声だ。
──歌声
「波の谷間に呜の花がふた぀䞊んで咲いおいる」
誰かが歌っおいる。挔歌だ。若者の声だった。
「兄匟船は芪父のかたみ型は叀いがしけには぀よい「おれず兄貎のペ倢の揺り籠さ」 䞭略
先生は物怖じするこずなく、快掻な声で二人に呌び掛けた。
「お兄さん、玠敵な歌声だね」
調子はずれな挔歌を歌っおいた男は、あからさたに衚情を硬くし、䞍審そうな顔぀きでこちらをねめ぀けおいた。圌は䞊背がある䞊に目の芚めるような銀髪をしおいお、匷面の銀島ずはたた違った近づき難さがあった。よく芋れば、圌の耳には少なくずも十個以䞊ものピアスが散らばっおいる。
「今のは䜕お歌」
銀髪の男はぶっきらがうに答えた。」
「鳥矜䞀郎の📍兄匟船」 䞭略
「お二人、今䜕しおたの」ず気さくに尋ねるむサガワ先生。銀髪男が代衚しお答える。
「俺らは、えっず、物資を運んでただけだ。そういうお前らは䜕しおたんだよ」
「ちょっずここらで事件があっおね。私たちはその捜査䞭だよ」
「捜査」銀髪男はぎゅっず眉根を寄せた。「譊察か」
「元、譊察ね」
「元っおなんだよ。じゃあお前、今は譊察じゃないんだろ」
「そう、ボランティアみたいなもんだよ。今聞き蟌み調査䞭でさ、よければここ最近の話を聞かせおもらえない」

➡📗荒朚あかね 『歀の䞖の果おの殺人』 2022


💋     未来予想図Ⅱ

🎵 『未来予想図Ⅱ』 1989
   䜜詞䜜曲/吉田矎和

⋯⋯䞀九九䞉幎十二月䞀日、午埌十時半。劊嚠䞉十六週二日に陣痛は始たった。
 既に眠っおいた信也を矩父母に任せ、吟郎の運転で二人は産院ぞ向かった。窓は結露で癜く、カヌステレオからドリカムの📍『未来予想図Ⅱ』が流れるのを聞きながら、敬子は滎したたり萜ちる雫を数えお痛みを玛らわせおいた。
 赀信号で車が停止したずき、
──お、蹎り返しよる。
 運転垭から吟郎が、敬子の䞋腹郚を぀぀いお愉快そうに笑った。せりだした腹のなかでむに、ず小さな足が動くのがわかる。元気そうで、敬子の心はほっず枩かくなった。
 もうすぐ䌚える。正真正銘の、私たちの赀ちゃんに。
 浮かんだそんな考えに、ちらりず信也に悪いな、ずも思ったが、倫婊のどちらにも䌌おいない、浅黒い信也を芋るたびに、䞀抹の寂しさを芚えおきたのもたた事実だった。

➡📗 山口矎桜 『犁忌の子』 2024

  

【ナ行】


 

💋 äž­å³¶ã¿ã‚†ãã€€ã€€æ™‚代

🎵 『時代』 1975
  䜜詞䜜曲/䞭島みゆき

⋯⋯吉䜏は䞍味いものを舌に茉せたような顔をした。 䞭略
「四十幎ほど前、法医孊教宀の担圓は蜷川教授。ただ光厎は助教授だった」
「それは存じおいたすけど」
「ある時、女児の連続殺人事件が発生し、最初に病死ず蚺断した蜷川教授は続く二件目を防止できなかったずしお教授䌚によっお凊分された。埌釜に座ったのは自ら汚れ圹を匕き受けた光厎だった。䞖間の芋方はずもかく、心ある者には蜷川教授の倱脚は光厎が教授䌚ず結蚗した策謀にしか芋えなかった」
「それが吉䜏教授ずどんな関連があるんですか」
「ここにいる劻の䞀重は蜷川教授の䞀人嚘だよ」
 真琎はあんぐりず口を開けた。
「📍めぐるめぐるよ因果はめぐる、か」
 病宀を远い出された叀手川はかの名曲に乗せお皮肉る。
「さっきの因瞁を知れば、蜷川教授の実子ず嚘婿なら光厎先生憎しが先にきおも仕方ないず぀くづく思う」
 蚳知り顔で蚀うので、真琎は぀いからかいたくなる。
「䜕だか、身に芚えがあるみたいな蚀い方」
「県譊内郚でも論功行賞や報埩人事は珟実に存圚するからね」
 こず人事や評䟡には無関心なのだろうず決め぀けおいたので、叀手川の台詞は少し意倖だった。

➡📗 䞭山䞃里 『ヒポクラテスの悔恚』 2021

  

💋 䞭条なかじょうきよし  うそ


🎵 『うそ』 1974
  䜜詞/山口掋子、䜜曲/平尟昌晃

  湯浅は䞀人で、デッキに䞊がっおいった。海を枡る颚は少し冷たい。連絡船のスピヌカヌからは䞭条なかじょうきよしの📍『うそ』が流れおいた。
船䜓埌郚の手摺りにもたれかかりながら、船の航行に䌎っお発生する耇雑な波の陰圱をがんやり芋䞋ろしおいた。事件のこずを忘れ、気分転換したかったのだが、気づけばたた、凶噚のこずを考えおいた。
䜃島の事件ず凜通の事件の䞡方に、日本刀が凶噚ずしお䜿われ、被害者の䞀人は銖を萜ずされた。
吉川柄䞀ちょういちの説では、犯行の手口が同じであれば、同䞀犯の可胜性が高い。だが凜通事件の犯人たちのうち、金井は䜃島事件の被害者ずなり、九重は氎死䜓で発芋され、唯䞀生き残った児島も、これたでの捜査で、䜃島事件ぞの関䞎は吊定されおいる。
䜃島の犯人ず凜通の犯人は別人だ。
やはり手口法を殺人事件の捜査に甚いるのは無理があったか。
湯浅は意気消沈しながら、遠ざかっおいく枡島おした半島を眺めおいた。

➡📗䌏尟ふしお矎玀 『癟幎の時効』 2025


💋 長枕剛  RUN


🎵 『』 1993
   䜜詞䜜曲/長枕剛

  六月十䞃日金曜日。午前九時十分。䜐竹ず聡子はカロヌラを府䞭東逊護孊校の正門近くに停めた。
九時二十二分。赀いアルトが出おきた。
「授業があるんですよ」聡子の声がかすかにふるえおいた。
掚定、十日ぶりの蚪問授業だった。
アルトが長枕剛の📍〈〉をガンガン流しながら目の前を通過しお行った。聡子がカロヌラを発進させた。アルトは䜏宅街の䞭の曲がりくねった道を南䞋しお行く。䞭倮自動車道の䞋をくぐる。右手に倚摩川競艇䞊の巚倧なスタンドが芋えおきた。アルトは西歊倚摩川線の小さな螏切を越え、倚摩川の堀防に突き圓たり、巊折した。聡子がアクセルを螏み蟌む。コヌナヌを曲がるず、八十メヌトル前方をアルトが走っおいる。堀防沿いの道を二癟メヌトルほど走り、巊折した。カロヌラが速床をあげ、六、䞃秒遅れお巊折するず、アルトの姿が消えおいた。 䞭略
䜐竹はショルダヌバッグを担いで車を降りた。あわおる必芁はなかった。䞀時間あずに来おも、どの家で授業が行われおいるのか、䞀目瞭然だろう。あの女教垫の挙動は調べが぀いおいた。授業䞭に甲高かんだかい声で笑い、元気すぎる声で歌い、カシオトヌンは片手でしか匟くこずができない、ずいうこずもわかっおいた。

➡📗打海文䞉うちうみぶんぞう 『時には懺悔を』 1994


【ハ行】


 

💋 ãƒãƒŠè‚‡ã¯ã˜ã‚ãšã‚¯ãƒ¬ãƒŒã‚žãƒŒã‚­ãƒ£ãƒƒãƒ„  スヌダラ節

🎵 『スヌダラ節』 1961
   䜜詞/菅原房子なかにし瀌、䜜曲/すぎやたこういち

⋯⋯「テラシンはおれが撮圱所でいちばん信頌しおる映写郚の勉匷家なんだよ」
 早速カツ䞌をかき蟌みながら、ゎりが口をもぐもぐさせお説明した。
「こい぀鋭いんだ。おれが気が぀かないようなシャシンの现郚に至るたでよく芋おおさ、ずばりず意芋するんだよね。それがたた圓たっおるんだ。それに、映写郚だから、ここで䜜られる映画は党郚芋おる。しかも䜕遍も䜕遍も。だから、おれなんかよりよっぜど映画に詳しいむンテリだぜ。ギタヌも匟けるし」
「えっ、ギタヌも」淑子が顔をぱっず華やがせた。「わあ、すおき」
「やめおくれよ、ゎりちゃん」テラシンは真っ赀になっお、あわおおしたった。淑子ははしゃいだ声で、
「今床、ギタヌ聞かせおくれたすか 私、グルヌプサりンズが奜きなんです。ザタむガヌスの『花の銖食り』ずか。匟けたすか」
 くったくなく蚊いおきた。テラシンは頭を搔いお、はあ、ず生煮えの返事をした。
「📍『スヌダラ節』でも『ミペちゃん』でも匟けるぜ、なあ」ゎりが適圓なこずを蚀った。党然匟いたこずないよずは蚀えずに、テラシンは苊笑いをした。

➡📗 原田マハ 『お垰りキネマの神様』 2023

  

💋 ヒデ with pread eaver  ピンクスパむダヌ

🎵 『ピンクスパむダヌ』 1998
  䜜詞・䜜曲/

⋯⋯坂を䞊り終え、䞁字路が珟われた。
「じゃあ」
 波留が右手を䞊げる。
「おう、たた明日」
 桜介も答え、自転車に跚たたがった。 
 すぐに走り始めた波留の背䞭を、サドルに腰かけたたた芋送る。
 このずきたしかに、桜介は波留ず別れがたく感じおいた。倕飯の時間たでには家に戻らなければならないこずが歯痒はがゆく、波留はそんなこずを少しも思っおいないようなのが寂しかった。
 けれど、匕き留める口実が芋぀からなかった。ずっず道端で話し続けおいるわけにはいかない。どうしおも今話しおおかなければならないこずも、特にない。
 桜介はリュックを開け、兄から借りたりォヌクマンのむダホンを匕っ匵り出しお耳に抌し蟌んだ。📍「ピンクスパむダヌ」の腹の底を這いたわるようなむントロに、の死のニュヌスを芳お泣いおいた兄の姿が蘇よみがえり、咄嗟ずっさに曲をスキップする。

➡📗芊沢倮あしざわよう 『倜の道暙』 2022

  

💋 å¹³å°Ÿæ˜Œæ™ƒãŸã•あき  ミペちゃん

🎵 『ミペちゃん』 1960
   䜜詞/菅原房子なかにし瀌 䜜曲/すぎやたこういち

⋯⋯「テラシンはおれが撮圱所でいちばん信頌しおる映写郚の勉匷家なんだよ」
 早速カツ䞌をかき蟌みながら、ゎりが口をもぐもぐさせお説明した。
「こい぀鋭いんだ。おれが気が぀かないようなシャシンの现郚に至るたでよく芋おおさ、ずばりず意芋するんだよね。それがたた圓たっおるんだ。それに、映写郚だから、ここで䜜られる映画は党郚芋おる。しかも䜕遍も䜕遍も。だから、おれなんかよりよっぜど映画に詳しいむンテリだぜ。ギタヌも匟けるし」
「えっ、ギタヌも」淑子が顔をぱっず華やがせた。「わあ、すおき」
「やめおくれよ、ゎりちゃん」テラシンは真っ赀になっお、あわおおしたった。淑子ははしゃいだ声で、
「今床、ギタヌ聞かせおくれたすか 私、グルヌプサりンズが奜きなんです。ザ・むガヌスの『花の銖食り』ずか。匟けたすか」
くったくなく蚊いおきた。テラシンは頭を搔いお、はあ、ず生煮えの返事をした。
「『スヌダラ節』でも📍『ミペちゃん』でも匟けるぜ、なあ」ゎりが適圓なこずを蚀った。党然匟いたこずないよずは蚀えずに、テラシンは苊笑いをした。

➡📗 原田マハ 『お垰りキネマの神様』 2023

  

💋 ãƒ”ンクレディヌ  サりスポヌピンクレディヌメドレヌ

🎵 『サりスポヌ』 1981
  䜜詞/阿久悠、䜜曲/郜倉俊䞀

⋯⋯スタンドでの挔奏はやはり解攟感があるのか、みんな䌞び䌞びず挔奏しおいるように感じた。チアリヌディング郚、野球郚の応揎団ず息を合わせお頑匵っおいる。
『銀河鉄道』
『ひみ぀のアッコちゃん』
📍『サりスポヌ』
『ひょっこりひょうたん島』
 野球応揎の曲目は、昭和時代にヒットしたアニメや歌謡曲が䞻になっおいお興味深い。垂船には、倧矩の䜜った曲ずは別に『垂船カモン』ずいう曲があり、これは教育孊研究のために吹奏楜郚を蚪れおいた東京倧孊倧孊院の孊生さんが䜜ったものらしい。長調の明るいメロディで吹奏楜の音がよく鳎る楜しい曲だ。
 思った以䞊に倚い応揎団のレパヌトリヌに私は感心しおいた。曲が違えばダンスの振り付けも違う。チアリヌディング郚も野球郚も、もちろん吹奏楜郚も数倚いレパヌトリヌを次々ず倉えながら遞手たちの背䞭を抌す。

➡📗 䞭井由梚子 『20歳の゜りル』 2018

  ðŸŽµ ãƒ”ンクレディヌメドレヌ

⋯⋯「ふヌん。玀ちゃん、割りきっおるんだね。卒業匏ではあんなに泣いおたのに」
「ほんずになんずもない 玀ちゃんは䞭孊校のこず、いろいろ考えお怖くなったりしないの」
 裏切者でも芋るような目をする二人に、私は「しないよ」ず胞を匵っおみせた。
「だっおあたしは今を生きおるし、それに⋯⋯それにそんな先のこず考えなくたっお、ほかにもいろいろ考えるこずあるし」
「いろいろっお」
「だからその⋯⋯たずえば、恋のこずずか」
「恋!?」
 たずえ話を誀った、ず気づいたずきには遅かった。クヌ子ず春子は同時にすっずんきょうな声を䞊げ、黙々ずレコヌドを遞んでいた人々の芖線が私たちに集䞭した。倩井のスピヌカヌからは二日前に解散した📍ピンクレディヌのメドレヌ曲が流れおいた。
「恋⋯⋯。玀ちゃん、恋をしおるんだね」 

➡📗 森絵郜 『氞遠の出口』 2003

 

💋 フィンガヌファむブ  孊園倩囜

🎵 『孊園倩囜』 1974
  䜜詞/阿久悠、䜜曲/井䞊忠倫

⋯⋯ハルノアラシ。
今から五十幎前のあの倜のこずに぀いお思いを銳せる時、真っ先に私の頭に浮かぶのは、母から教えられたこの蚀葉だ。
倕方から降り始めた雚は、倕食を食べ終わった頃から家のトタン屋根に音を立おお打ち付けるようになり、颚は窓ガラスをガタガタず震わせるようになった。
倕食の埌、父ず母が雚戞を閉めるず、家の䞭は薄暗くなった。颚が吹く床に茶の間の電灯が明滅し、私の䞍安を掻き立おる。
「おうい、蠟燭ろうそくはどこだったかな」
「玍戞にしたっおありたすよ」
䞡芪たちも萜ち着かなくなる。
停電に備えお。四畳半の玍戞を父が探す間、茶の間のテレビからは、フィンガヌの📍『孊園倩囜』が流れ、私ず姉の矎代子は振り付きで歌っおいた。
「──運呜の女神さたよ、このがくにほほえんで䞀床だけでもお──」
 ミシッ、ドドン、ミシッ、ミシッ、ドンドン、ダンッ
 颚が朚造の家の倖壁にぐ䜿った。家が壊れそうだ。圓時䞃歳だった私はテレビの前から逃げ出し、台所で掗い物をしおいる母の腰にしがみ぀いた。そんな私に母は教えおくれたのだ。
「春の嵐。これは本圓の春になるための準備なのよ」

➡📗䌏尟ふしお矎玀 『癟幎の時効』 2025



💋 ふなっしヌ  ふなふなふなっしヌ♪

🎵 『ふなふなふなっしヌ♪ ふなっしヌ公匏テヌマ゜ング』 2014
   䜜詞・䜜曲/ふなっしヌ

⋯⋯📍投げられたっおも蹎られたっおも
  たた立ちあがればいいなっしヌ♪
  誰にも盞手にされなくっおも
  自分の道を進めなっしヌ♪ひゃっはヌ
  どんなに汚れたっおも
  君さえ笑えばいいなっしヌ♪
  君が悲しんでいる時は
  すぐ笑顔にさせるなっしヌ♪ひゃっはヌ

➡📗 吉本ばなな『ふなふな船橋』゚ピグラフより  2015


💋 フランク氞井束尟和子  東京ナむトクラブ

🎵 『東京ナむトクラブ』 1959
  䜜詞/䜐䌯孝倫、䜜曲/吉田正

⋯⋯「ナッコ姉さん、あたしのギタヌず姉さんの歌で、きっず今日明日食べるくらいは䜕ずかなるよ。本物にお瀌を蚀われるくらいなんだからさ」
 その倜、名も知らぬ飲み屋街を歩いおいるうち、適圓な路地を芋぀けお宗倪郎はギタヌを肩にかけた。舞台で挔やっおいた曲を次々に぀た匟きながら「䞀曲いかがですか、お奜きな曲を歌わせおいただきたす」ずやる。色癜の矎男は癟合江よりひず目に付きやすく、男も女もたず宗倪郎の顔ず声に興味を芚えるようだった。
「おう、兄ちゃんたち、ちょっずこっちで䞀曲たのむわ」
「ありがずうございたす」
 呌ばれればすぐに暖簟のれんをくぐり、戞を開け攟したたたで癟合江が歌う。『チャンチキおけさ』から『黒い花びら』📍『東京ナむトクラブ』。みんなラゞオず鶎子のトランゞスタテレビで芚えた曲ばかりだ。暖簟の内偎で歌えば、次の店から声がかかる。叀い歌は道倫ず鶎子の舞台から教わった。リク゚ストに応えられない曲は、ひず぀もなかった。宗倪郎は午前零時をたわるころ、ポケットいっぱいになった小銭を数えお「それじゃあ姉さん、宿に行こう」ず蚀った。

➡📗 桜朚玫乃 『ラブレス』 2013


💋 æ˜Ÿé‡Žæºã’ん  恋

🎵 『恋』 2018
  䜜詞䜜曲/星野源

⋯⋯翌日から早速みやっちによる猛レッスンがはじたった。ずはいっおも、ほがダンス未経隓者ばかり集たっおいるので、チアダンスの基本動䜜をひず぀ひず぀䞁寧に叩き蟌んでいるような時間はない、ず刀断したらしい。
「もう盎じかに振付に入っちゃっお、现かいずころは埌から調敎しおいくのがいいかもね。ずころで、曲は決たっおるの」 䞭略
「ただ決めおないけど、候補は絞っおある」
 私はよろよろず這うようにしお荷物からスマホを取り出し、このために䜜っおおいたプレむリストを披露した。ケむティペリヌ、テむラヌスりィフト、カヌリヌレむゞェプセン、聎いおるだけで自然ず䜓が動き出す、これぞガヌルズポップずいったキュヌトなラむンナップのはずが反応はいたいち薄かった。「テむラヌスりィフトっおだれ」「テラハの䞻題歌じゃね」「ナヌロビヌトじゃなきゃ螊れないんですけど」「『恋するフォヌチュンクッキヌ』でよくない」「それか📍恋ダンス」「よそずかぶりそう」それぞれ奜き勝手なこずを蚀い出し、収拟が぀かなくなっおきたずころで、ご意芋番のデラさんがのっそり起きあがった。
「あんたらあ、奜き勝手なこずばっか蚀っずんじゃねヌぞ」

➡📗 吉川トリコ 『コミック映画で泣くきみず』 2025

  

【マ行】


 

💋 束たか子  ありのたたで


 🎵 『ありのたたで』2014
䜜詞・䜜曲/nderson opez risten蚳詞/高橋知䌜江

⋯⋯「昚日の倜、就職する䌚瀟から連絡が来お」みどりさんは぀ぶやくように蚀った。「内定を蟞退したせんかっお」
 文面を芋せおもらうず、コロナ犍による業瞟の悪化から内定蟞退の垌望者を募るずいうものだった。
「倉なの」ず亜矎は遠慮なく倧声を出した。「でも、無芖しお蟞退しなかったら䌚瀟に入れるっおこずでしょ。それで倧䞈倫だよ」
「そうなんだけど」ずみどりさんは口ごもった。 䞭略
「みどりさん、その䌚瀟で働きたくないの」
「わかんない。私は䜕かをしたいっお思っおこなかったから」そしお少し間を眮いお「私には䜕もないから」ず申し蚳なさそうに蚀った。「二人ずちがっお」
 䌚話が途切れたずころで「銬頭芳音にお参りしたから倧䞈倫」だず私は励たした。銬頭芳音は、もずもず無智や煩悩を払い、畜生道から救う菩薩である。無智っお䜕ず亜矎が蚊くので「この䞖で起こるこずをありのたたに芋るこずができない状態」だず説明する。
「ありのたたっおアナ雪みたいなこず」
 蚀ったそばから📍その䞻題歌を口ずさみながらリフティングを始める。元来が気楜に生たれ぀いた我々は、先の先たで芋通せるだだっ広いずころを、さっきず違っお䞉人で歩いおいるだけで、どうにも深刻さを欠いおきおしたうようだった。ずはいえ、みどりさんは圓然ただ色々なこずを気にしお歩いおいるのはわかる。亜矎がそれを気にかけおいるのも。

➡📗乗代雄介『旅する緎習』2021


💋 æŸç”°è–子  瑠璃色の地球

🎵 『瑠璃色るりいろの地球』 1986 
䜜詞/束本隆、䜜曲/平井倏矎

⋯⋯月日、高橋先生が病宀に蚪れた。
 倧矩は「高橋先生に寝たたたでは倱瀌だから」ず蚀っお車怅子に座った。ほずんど寝たきり状態で起き䞊がるこずすらたたならなかったのに、この日だけは車怅子に座れた。
 看護垫たちは驚いたが、倧矩にずっおは圓たり前のこずだった。
 高橋先生に䌚うのだから。先生は雲の䞊の人なのだから。
 結局、長時間座っおいるこずはできず、先生が蚪れたずきにはベッドにたた戻っおいた。
「遅くなっお悪かった」
「ありがずうございたす」
 高橋先生はしっかりず倧矩の手を握り、話し始めた。
「たずは、業務連絡だ。『千人の音楜祭』、リハヌサルは順調だぞ」
「はい」
「お前が線曲した📍『瑠璃色の地球』、あれが倧奜評だよ」
「よかった⋯⋯」
「今床、リハヌサルの音源、持っおくるよ」
「はい」
 倧矩は、昚幎の倏、䞀床目の脳の手術を終えた頃、高橋先生から䟝頌されお、幎の『千人の音楜祭』グランドフィナヌレの線曲を手掛けおいた。

➡📗 䞭井由梚子 『20歳の゜りル』 2018

  

💋 束任谷た぀ずうや由実  ダンデラむオン春よ、来い真珠のピアス

🎵 『ダンデラむオン』 1983 
䜜詞・䜜曲/束任谷由実

⋯⋯リハビリずいうのは、蚀うたでもなく、倱恋からのリハビリだった。
 こおんぱんに砕け散った保田くんずの恋は、私にそれ盞応のダメヌゞを䞎えた。ゟンビのように䜕床も這いあがり、這いあがり保田くんを远いかけたおかげで、必芁以䞊に゚ネルギヌを消耗しおいたし、そんな自分を芋぀め盎した際のこっぱずかしさもひずしおだった。
 が、それでも、倱恋が本決たりずなっおからの私は、我ながらほれがれするほどにがんばったのだ。
 泣いたり、焊じれたり、ふさぎこんだりのすったもんだは、恋の最䞭さなかにさんざんやり぀くした。今こそ脱华のずき そう自分に蚀いきかせ、あれは䞀皮の通過儀瀌だったのだず前向きに受けずめるこずにした。私は保田くんに愛されなかったし、愛するこずさえおが぀かなかったけれど、でもそれはそれで貎重な、意味のある経隓だったのだ。ステップだったのだ。そうよ運呜が甚意しおくれた倧切なレッスンだったのだ⋯⋯ず、ナヌミンの📍『ダンデラむオン』を聎きながら、倜な倜なポゞティブシンキングにいそしむ日々。それでも飜き足らずに日蚘たで぀けはじめ、「成長」「必然」「詊緎」「勉匷」「準備」「運呜」「感謝」なんお文句でペヌゞを埋め぀くした。そしお、倜な倜なそんな文句を綎぀づっおいるこず自䜓、保田くんぞの思いを断ちきれずにいる蚌拠なのだず気づいたずきには、すでに高二の冬も終わりかけおいた。

➡📗 森絵郜 『氞遠の出口』 2003

 ðŸŽµ 『春よ、来い』 1994
  䜜詞・䜜曲/束任谷由実

⋯⋯『こんばんは、ハダブサ飛脚䟿です。お届け物です』
 モニタヌに映っおいるのは、ただ孊生のような初々しさを挂わせる青幎だった。街でよく芋かける宅配業者のビタミンカラヌの制服を着おいる。
 薫子は眉間にしわを刻み、さわやかな笑顔の青幎を怜分した。ここ数日は通販を利甚しおいないから荷物が届く心圓たりはない。先ほどの母の様子からしお、䞡芪から誕生日プレれントが届くずも思えない。宅配業者を名乗る青幎はなんずも玠盎そうで人を隙すような人間には芋えないが、詐欺垫の目は柄んでいるのだずミステリ小説に曞いおあった。
「倱瀌ですが、荷物の差出人の名前を教えおいただけたす」
『え はい、えっず⋯⋯』
 青幎は、モニタヌには映っおいない手もずをのぞき蟌む仕草をした。
『野宮晎圊様からのお届け物です』
 心臓が胞の䞭でボヌルのように跳ねた気がした。
「本圓ですか 本圓にそう曞いおあるんですか」
『え、はい⋯⋯すみたせん、俺あたり挢字が埗意じゃないんですけど、ナヌミンの📍春よ、来いの春に、スラムダンクの井䞊雄圊たけひこ先生ず同じ圊です』
「差出人の電話番号を、読み䞊げおもらえたすか」
『はい、ではいきたす』
青幎はよく通る声で、薫子が蚘憶しおいる通りの十䞀の数字を正確に読み䞊げた。
「匟は」
 死にたした、ずいう蚀葉を呑みこみ、薫子はマンションの゚ントランスの解錠ボタンを抌した。

➡📗 阿郚暁子 『カフネ』 2024

 ðŸŽµ 『真珠のピアス』 1982
  䜜詞・䜜曲/束任谷由実

⋯⋯「ただいた」そう蚀いながら父さんがネクタむを緩める。手には猶ビヌル。スヌツ姿の父さんは䞖間の人で、私はべったりの母さん子だったから、父さんがよくわからないこずがある。私が孊校でいじめられおいるこずや、保健宀登校しおいるこずや、それから、母さんの幜霊を芋られるようになったこずはもちろん知らない。 䞭略
 父さんが顎あごを䞊げお空を芋䞊げる。
「母さんずよく行ったなあ、プラネタリりム。 䞭略 スピカっお真珠星ずも蚀うんだよ」 
 父さんがビヌルをぐびりず飲んで蚀った。
「真珠星」
「そう。ほら、戊争䞭はなんでも日本語の名前を぀けないずいけなかっただろ。敵囜の蚀葉を䜿うこずができないから。 䞭略 だから、スピカじゃなくお真珠星、っお呌んでたんだっお」
 ぞヌ、ず思いながら、なんずなく、その話はデヌト䞭の母さんにもしたんだろうな、ずいう気がした。
「その話を母さんにしたらさ」やっぱり。
「ナヌミンおいう歌手の歌に📍真珠のピアス、っおのがあっおさ。母さんに真珠のピアスが欲しいっおねだられお。真珠星の話があんなに高く぀くなんお思いもしなかった」
 隣の母さんはにやにやしおいる。
「安い絊料貯めお買ったんだ。それなのにすぐに母さん、片方なくした、ずか蚀っおさ」
 母さんならありえるず思った。母さんはなくし物の倩才でもあったから。
 父さんず、父さんの肩に頭をもたせかける母さんを私はがんやり芋おいた。䞡芪のいちゃ぀く姿を芋せられるのはあんたり気持ちのいいものではないが、母さんが自分のそばにいるのに気が぀かない父さんのこずがなんだか䞍憫にも感じた。 

➡📗 窪矎柄 『倜に星を攟぀「真珠星スピカ」』

 

💋 氎原匘  黒い花びら

🎵 『黒い花びら』 1959
  䜜詞/氞六茔、䜜曲/䞭村八倧

⋯⋯「ナッコ姉さん、あたしのギタヌず姉さんの歌で、きっず今日明日食べるくらいは䜕ずかなるよ。本物にお瀌を蚀われるくらいなんだからさ」
 その倜、名も知らぬ飲み屋街を歩いおいるうち、適圓な路地を芋぀けお宗倪郎はギタヌを肩にかけた。舞台で挔やっおいた曲を次々に぀た匟きながら「䞀曲いかがですか、お奜きな曲を歌わせおいただきたす」ずやる。色癜の矎男は癟合江よりひず目に付きやすく、男も女もたず宗倪郎の顔ず声に興味を芚えるようだった。
「おう、兄ちゃんたち、ちょっずこっちで䞀曲たのむわ」
「ありがずうございたす」
 呌ばれればすぐに暖簟のれんをくぐり、戞を開け攟したたたで癟合江が歌う。『チャンチキおけさ』から📍『黒い花びら』『東京ナむトクラブ』。みんなラゞオず鶎子のトランゞスタテレビで芚えた曲ばかりだ。暖簟の内偎で歌えば、次の店から声がかかる。叀い歌は道倫ず鶎子の舞台から教わった。リク゚ストに応えられない曲は、ひず぀もなかった。宗倪郎は午前零時をたわるころ、ポケットいっぱいになった小銭を数えお「それじゃあ姉さん、宿に行こう」ず蚀った。

➡📗 桜朚玫乃 『ラブレス』 2013


💋 çŸŽç©ºã²ã°ã‚Šã€€ã€€å“€æ„æ³¢æ­¢å ŽïŒæŸ”


🎵 『哀愁波止堎』 1960
  䜜詞/石本矎由起、䜜曲/船村培

⋯⋯䞀週間、囜分町こくぶんちょうの小路で流した。静かでさびしい歌の泚文が倚かった。さびしい歌は、喧隒の尟から少しず぀離れおゆくずきの杖になる。
「お、あんたらぁ、秋保あきうで歌っおた䞀座の人じゃないか」
 その倜䞉軒目に入った䞀杯飲み屋のカりンタヌから、よれた背広姿の男が声を掛けおきた。五十がらみの少しなれなれしい気配のする男だった。芋芚えはなかった。癟合江は頭を䞋げ、その節はどうもず返した。誰なのか思い出せないずきも、笑っおお蟞儀をすればなんずかしのげる。
 男はふたりに📍『哀愁波止堎』をリク゚ストした。宗倪郎のギタヌが響き、癟合江が歌い始めるず、厚房もカりンタヌも小䞊がりも静たり返った。歌い終わり、拍手を受けながら男から花代を受け取る。男の目に、うっすらず涙がにじんでいた。
「お垫匠さんがいなくおも、頑匵りな。きっず座長さんも喜んでくれおるよ」
 宗倪郎はもう店の出口ぞず向かっおいた。癟合江は男の蚀葉の意味が飲み蟌めず、瞬たばたきを数回しお銖を傟かしげた。お垫匠さんずは、䞉接橋道倫のこずだろうか。男は癟合江の様子を芋お䞀床錻をすすった。
「䟛逊はもう終わったのかい」
「䜕のこずでしょう。誰の䟛逊ですか」
 男は腺病質な頬をしばらくぞこたせ、口をあけたたた癟合江の目をのぞき蟌んだ。
「あんた、䜕も知らないのか」
 癟合江の瞬きが、意識せず倚くなる。店内はたたざわ぀き始めた。誰も男ず癟合江のやりずりには興味がないようだ。
「䞀ヵ月前、䞀座の座長さんが枯から䞊がったろう」

➡📗 桜朚玫乃 『ラブレス』 2013

🎵 『柔やわら』 1964
  䜜詞/関沢新䞀、䜜曲/叀賀政男

⋯⋯今幎からカラヌ攟送になった玅癜歌合戊を、春江は癜黒テレビで芋おおりたす。寒いはずで、炬燵こた぀垃団を銖たで匕っ匵り䞊げおいるくせに、その背䞭はセヌタヌがたくれ、癜い腰が赀倖線ランプで赀く染たっおおりたす。 䞭略
 喜久雄は錻先をかすめる郚屋の臭いに顔をゆがめながら、それでも煙草を䞀本吞いたすず、今床は、「あヌ、サブサブ」ず身震いしながら炬燵ぞ戻り、甘えるように春江の䜓に抱き぀きたす。
「喜久ちゃんの手、冷たか」
 春江が喜久雄を抌し返したすず、
「ねえ、お母ちゃん、うちもカラヌテレビ買おうよ」
ず、台所で掗い物をしおいる母芪に声をかけたすが、カラヌテレビに興味のない母芪は、
「今幎は玅組のトリが、ひばりの📍『柔やわら』で、癜組は誰ね」
ず話を逞そらし、春江もさほどカラヌテレビが欲しいわけでもないらしく、「坂本九か、䞉波春倫やろ」ず応えおおりたす。

➡📗 吉田修䞀 『囜宝』 2021

  

💋 䞉波春倫  チャンチキおけさ

🎵 『チャンチキおけさ』 1957
  䜜詞/門井八郎、䜜曲/長接矩叞よしじ

⋯⋯「ナッコ姉さん、あたしのギタヌず姉さんの歌で、きっず今日明日食べるくらいは䜕ずかなるよ。本物にお瀌を蚀われるくらいなんだからさ」
 その倜、名も知らぬ飲み屋街を歩いおいるうち、適圓な路地を芋぀けお宗倪郎はギタヌを肩にかけた。舞台で挔やっおいた曲を次々に぀た匟きながら「䞀曲いかがですか、お奜きな曲を歌わせおいただきたす」ずやる。色癜の矎男は癟合江よりひず目に付きやすく、男も女もたず宗倪郎の顔ず声に興味を芚えるようだった。
「おう、兄ちゃんたち、ちょっずこっちで䞀曲たのむわ」
「ありがずうございたす」
 呌ばれればすぐに暖簟のれんをくぐり、戞を開け攟したたたで癟合江が歌う。📍『チャンチキおけさ』から『黒い花びら』『東京ナむトクラブ』。みんなラゞオず鶎子のトランゞスタテレビで芚えた曲ばかりだ。暖簟の内偎で歌えば、次の店から声がかかる。叀い歌は道倫ず鶎子の舞台から教わった。リク゚ストに応えられない曲は、ひず぀もなかった。宗倪郎は午前零時をたわるころ、ポケットいっぱいになった小銭を数えお「それじゃあ姉さん、宿に行こう」ず蚀った。

➡📗 桜朚玫乃 『ラブレス』 2013


💋 äž‰æ©‹çŸŽæ™ºä¹Ÿã€€ã€€æ­Šç”°ç¯€

🎵 『歊田節』 1961
䜜詞/米山愛玫あいし、䜜曲/明本京静あけもずきょうせい

⋯⋯英子は黙っお新平の暪たで来お座ったけれど、効の蚀うずおり旅の疲れもあったのだろうか、期限は䞀切盎らなかった。
「おい、どうした」
 新平が声をかけおも、ぷい、ず暪を向いおこちらを芋ようずしない。そのかわり、ひずり黙々ず料理を食べ぀づけた。 䞭略
「次は矩姉さん、歌お願いしたす。矩姉さん、明石英子さん」
 マむクで指名されおも、食べおいる。
「矩姉さん、📍歊田節」
 リク゚ストの声も、「いい、いい、私、音痎だから」ず拒吊しお食べ぀づけた。
 かわりに新平が立っお『花笠音頭』を唄った。「めでためでたの」ず、アカペラで声を匵り䞊げるず、兄匟䌚のみんなが「ちょいちょい」「やっしょヌたかしょヌ」ず合の手を入れる。これは盛り䞊がった。歌い終えるず、明石家兄匟䌚党員の倉わらぬ健康を祝しお、䞀本締めをした。
 そしお戻った新平に、げふっ、ず劻は満腹のしるしを聞かせた。

➡📗藀野千倜 『じい散歩』 2020

  

😇 æ°‘謡  䌚接磐梯山江州音頭長厎ぶらぶら節花笠音頭北海盆歌

 ðŸŽµã€ŽäŒšæŽ¥ç£æ¢¯å±±ã€
犏島県 1934小唄勝倪郎歌唱のレコヌドで党囜的に広たるが「正調䌚接磐梯山」ずは異なる

⋯⋯トンネルを抜けるず、たすたす田んがの色が鮮やかに芋えた。
 新平は郡山で新幹線を降り、圚来線の快速電車に乗り換えた。
 䞀番埌ろの指定垭車䞡に乗り、やはりたず荷物を䞊げる。そしお前の背もたれにあるラックから、芳光案内のパンフレットを取っおめくっおいるず、車掌が蚪れ、切笊の提瀺を求められた。
 昔ながらの怜札に懐かしさを芚え、新平は財垃やカメラを入れた小さなショルダヌバッグから、倧きな乗車刞ず指定垭刞を取り出し、車掌に枡した。
 䌚接若束ぞず向かう始発電車だった。
 入鋏にゅうきょう枈のハンコを抌した切笊を返しおもらい、車掌が立ち去るず、📍䌚接磐梯山は、宝の山よ、ず新平は機嫌よく錻歌をうたいながら、車窓からの景色を眺めた。
 喜久田きくた。
 磐梯熱海あたみ。
 猪苗代いなわしろ。
 い぀も明石建蚭で仕事を頌んでいた倧工にも、䌚接若束に䜏む芪子がいた。事務所の二階によく泊たっおもらったが、劙におっずりした、気のいい芪子だった。䌚接には、いい枩泉がいく぀もあるよお、ずよく教えおくれた。

➡📗 藀野千倜 『じい散歩』 2020

🎵『江州ごうしゅう音頭』 ã€€
  滋賀県䞭心に近畿地方各地で盆螊りに䜿甚される音頭

⋯⋯「貎重品だから、念のため名前を聞かせおもらえるだろうか」
 島厎さんから財垃を受け取った成瀬さんは、真剣な衚情のたたわたしに尋ねた。
「北川みらいです」
 成瀬さんはテントに入っおいき、はっぎを着たおじさんに話しかけおいる。返しおもらえなかったらどうしようっお䞍安になったけれど、成瀬さんはすぐに戻っおきおお財垃を枡しおくれた。
「埅たせおすたない。実行委員長に確認を取っおいた。芋぀かっおよかったな」 䞭略
 倏祭りの最埌のほうで、れれカラは挫才を披露した。近所のスヌパヌの平和堂をネタにした挫才で、テレビで芋る挫才ず同じぐらいおもしろかった。さっき、本郚テントでお財垃を枡しおくれた二人が泚目を济びおいる。わたしは信じられない気持ちでステヌゞを芋䞊げおいた。
 そのあずの📍江州音頭のずきに話しかけようず思ったけれど、二人はたくさんの人に囲たれおいたから近寄れなかった。

➡📗 宮島未奈 『成瀬は信じた道をいく』 2024

⋯⋯「これからも、れれカラを、よろしくお願いしたす」
 島厎のお蟞儀に合わせお成瀬も頭を䞋げる。䜏民たちの枩かい拍手を济びながら、来幎もれれカラずしおこの舞台に立おる喜びを嚙みしめた。
「ラストは📍江州音頭です。螊っおくれたちびっこにはお菓子のプレれントもありたす。皆さん、楜しく螊っおくださいね」
 成瀬ず島厎もステヌゞを䞋りお、茪に入っおいく。小孊生男子の集団が「膳所から䞖界ぞ」ず振り付きでれれカラの真䌌をしおきたので、成瀬も「膳所から䞖界ぞ」ず応じる。吉嶺は「来幎の倏祭りもよろしく」ず成瀬に手を振り、皲枝は気たずそうな笑みを浮かべお「なんかごめんね」ず謝る。島厎は友だちに囲たれお「面癜かったよ」ず賞賛されおいた。成瀬の母ず島厎の母も少し離れた堎所で茪に加わっおいる。
 倜空を芋䞊げお䞀息぀くず、江州音頭のむントロが聞こえおきた。い぀のたにか隣に島厎が立っおいる。成瀬は片手にブヌケを握り、党身党霊で江州音頭を螊った。

➡📗 宮島未奈 『成瀬は倩䞋を取りにいく』 2023

🎵『長厎ぶらぶら節』 1931
  䜜詞・䜜曲/䞍詳、レコヌド化1930凞助でこすけ、1931愛八
お座敷唄が昭和初期にレコヌド化されお認知され長厎くんち本螊に必須の民謡ずなった

⋯⋯その幎の正月、長厎は珍しく倧雪ずなり、濡れた石畳の坂道や晎れ着姿の初詣客の肩に積もるのは、たるで舞台に舞う玙吹雪のような、それは芋事なボタ雪でございたした。
 この倧雪のなか、長厎は円山町にある老舗料亭「花䞞」に、次々ず黒塗りの車が到着いたしたす。 䞭略
 ちょうど料亭花䞞の建぀坂の途䞭に怜番がありたしお、このころは䞞山新五人組ず呌ばれた名劓めいぎたちが婀嚜あだな姿で人々の目を匕いおおりたした。ちなみに初代の䞞山五人組のなかには、📍「長厎ぶらぶら節」でその名の残る芞者、愛八あいはちがおりたす。
 芪分衆が到着するころには、鶎の間、鷺の間ずもに、客たちもずらりず揃っおおりたしお、ただ幎端もいかぬ子䟛たちが座敷の広さに興奮しお走り回り、あちこちで倧人の手に捕らえられそうになっおはたた逃げ回りたす。
 普段は腹巻きにゞャンパヌ姿の組員たちもこの日ばかりは背広姿。幎末に近所の床屋で刈らせた頭も枅々すがすがしく、その暪ではフランスの女優のような化粧に、髪を高く結い䞊げた女房たちが、あちらこちらに顔を向け、幎賀の挚拶に忙しくしおおりたす。

➡📗 吉田修䞀 『囜宝』 2021

🎵『花笠音頭』
  山圢県

⋯⋯英子は黙っお新平の暪たで来お座ったけれど、効の蚀うずおり旅の疲れもあったのだろうか、期限は䞀切盎らなかった。
「おい、どうした」
 新平が声をかけおも、ぷい、ず暪を向いおこちらを芋ようずしない。そのかわり、ひずり黙々ず料理を食べ぀づけた。 䞭略
「次は矩姉さん、歌お願いしたす。矩姉さん、明石英子さん」
 マむクで指名されおも、食べおいる。
「矩姉さん、歊田節」
 リク゚ストの声も、「いい、いい、私、音痎だから」ず拒吊しお食べ぀づけた。
 かわりに新平が立っお📍『花笠音頭』を唄った。「めでためでたの」ず、アカペラで声を匵り䞊げるず、兄匟䌚のみんなが「ちょいちょい」「やっしょヌたかしょヌ」ず合の手を入れる。これは盛り䞊がった。歌い終えるず、明石家兄匟䌚党員の倉わらぬ健康を祝しお、䞀本締めをした。
 そしお戻った新平に、げふっ、ず劻は満腹のしるしを聞かせた。

➡📗 藀野千倜 『じい散歩』 2020

🎵『北海盆歌』
  北海道

⋯⋯玺色の着物に臙脂えんじの垯を締めお仲居郚屋から出おきた癟合江を、添乗員の石黒が呌び止めた。
「癟合江さん、今晩もよろしくお願いしたす。うちの䌁画、ずいぶん評刀がいいんですよ。歌う仲居がいる旅通に連れお行けっおいう申し蟌みが倚いんです」
石黒の勀める日の出芳光は、この春から䞞八旅通にずっお䞊客䞭の䞊客になっおいる。それたでは宿泊代の倀切りや無理な日皋ず人数を抌し぀けるばかりだったのが、二ヵ月ず経たぬうちに態床を倉えた。
「喉の調子はどうですか」
「悪くないですよ。倧䞈倫。今日は蟲協さんでしたっけ」
「ええ。䞀番牧草を刈り終わっおひずいき぀きたいずころらしいです。 䞭略 い぀ものように📍『北海盆歌』から流行歌、最埌はひばりで。アンコヌルがかかったらたた、『テネシヌワルツ』で泣かせおください。僕、癟合江さんのあの曲がいちばん奜きです。盛りあがった宎䌚ほど、みなさん満足されるようです」

➡📗 桜朚玫乃 『ラブレス』 2013


💋 村田英雄  人生劇堎

🎵 『人生劇堎』 1959
映画『人生劇堎』内で楠朚繁倫1938歌唱
䜜詞/䜐藀惣之助そうのすけ、䜜曲/叀賀政男

⋯⋯「お颚呂の掃陀が䞊がったんで、どうぞ」
 恰幅かっぷくのいい仲居が襖ふすたの陰から声をかけた。ただ着物に着替える前の圌女たちはみな頭にカヌラヌを巻いお、掟手なスカヌフで芆っおいる。
「あいよ」ず返しお鶎子が立ち䞊がった。䞀座に䞎えられたのは垃団郚屋の隣にある、元々は䜏み蟌みの仲居郚屋だった。 䞭略
 トランゞスタテレビから📍『人生劇堎』が流れおきた。村田英雄が高そうな着流し姿でマむクを持っおいる。癜黒なので色はわからないが、盞圓な光沢だ。䞉接橋道倫がよくこの男の話をしおいたのを思いだした。
「圌は倩才なんだ。浪曲も䞊手うたいけど、叀賀こが挔歌がいちばん䌌合うよねぇ」
 䞉接橋道倫は人を劬ねたむずいうこずのない男だった。歌にもそれがにじみ出おいた。人がよすぎるず鶎子が蚀う。だから借金ばかりの人生になっおしたったのだろう。道倫の死に氎を取ったのは鶎子だった。
 癟合江はテレビの癜黒画像に合わせ、「矩理がすたればこの䞖は闇だ」ず口ずさんだ。なたじずめるな倜の雚──。男ず男の䞖界も矩理がからんで心忙こころぜわしいかもしれないが、女ず女もそう倉わりはあるたい。

➡📗 桜朚玫乃しの『ラブレス』 2013


【ダ行】


 

💋 å…«ä»£äºœçŽ€ã€€ã€€é›šã®æ…•æƒ…

🎵 『雚の慕情』 1980
䜜詞/阿久悠、䜜曲/浜圭介

⋯⋯「お前は遞挙で遞ばれた人間じゃないだろ」
「ああ。だけど暜芋さんに遞ばれた」
「そういう蚀い回しを芚えたか」
 颚間はたた頭を掻く。ただし今床は悔しそうな仕草だった。
「地䜍が人を創るずいうのは本圓かもしれんな。それで、囜土匷靭化蚈画の具䜓案でもあるのか」
「今回のような豪雚被害を最小限に食い止めたい」
「初手から困難な話をするんだな」
「そんなに難しい話なのか」 䞭略
「銬鹿。地震ず同様、自然を盞手にするんだぞ。第䞀、空に呜什できるのは八代亜玀くらいのものだ」
「📍雚の慕情か」
 颚間が定番のオダゞギャグを発する時は、倧抵投げやりになっおいる蚌拠だ。
「別に台颚の発生を食い止めるずか、進行方向を曲げるずか倧それたこずを考えおいる蚳じゃない。実は地元の譊察眲長から気になる話を聞いた。『根本的な原因は治氎にありたす。䞊流のダムさえ完成しおいたら、被害もここたで拡倧はしなかったはずなのです』ずな。俺の故郷だけじゃない。広島県内の河川はほが䟋倖なく氟濫しお各地に倚倧な被害をもたらした。台颚に盎撃される寞前、各地に蚭けられたダムがちゃんず機胜さえしおいれば、これほど倚くの損害を出さずに枈んだはずだ」
「぀たりダム行政から着手しようっお肚はらか。
「行政は人間がするものだ。台颚を盞手にするよりはずっず楜だろう」

➡📗 䞭山䞃里 『総理にされた男・第二次内閣』 2025

  

💋 山川豊  凜通本線

🎵 『凜通本線』 1981
䜜詞/たきのえいじ、䜜曲/駒田良昭

⋯⋯暁人ず話し合っお、わたしの匟成吟ず暁人の匟光の遺䜓は自動車孊校の花壇に埋めるこずにした。近所のホヌムセンタヌから拝借したシャベルで二人分の穎を掘り、遺䜓を暪たえる。暁人は地べたに座り蟌んで噚甚に土をかけおやりながら、歌を口ずさんでいた。
「さよならあなた、北ぞ北ぞ北ぞ垰りたす  ひずりひずり、身を匕く凜通本線」
調子倖れなその声は、光たち兄匟に出䌚った日のこずを思い起こさせた。気持ちよさそうに挔歌を歌う光ず、「音痎だ」ずそれを笑う暁人。二人の笑い声があたりにも楜しそうで、ここがこの䞖の果おだず忘れおしたいそうになったのだ。
「それ䜕の歌 倩城越えにそんな歌詞あったっけ」
「ないよ」
「じゃあ、鳥矜䞀郎」
「いいや。山川豊の📍凜通本線」
「知らないや。暁人くん、あんたり歌䞊手くないんだね」
「光よりはマシでしょ」
わたしは成吟の奜きな歌を知らない。最埌に蚀葉を亀わしたのはい぀だったっけ。
たさか成吟が、いじめた盞手に謝りたがっおいたずは思いもよらなかった。たさか道で出䌚った少女に声をかけお助けようずするなんお。たさか刃物を手にした殺人犯に立ち向かっおいくなんお。
「知らないこずだらけだったね」
成吟にしか聞こえないくらい小さな声で呟いお、わたしは匟の䞊に芆い被さった土を掌で抌し固めた。

➡📗 荒朚あかね 『歀の䞖の果おの殺人』 20252


💋 å±±å£ç™Ÿæµã€€ã€€ã‚€ãƒŸãƒ†ã‚€ã‚·ãƒ§ãƒ³ïœ¥ã‚ŽãƒŒãƒ«ãƒ‰

🎵 『むミテむションゎヌルド』 1977
  䜜詞/阿朚燿子、䜜曲/宇厎竜童

⋯⋯その日、電話盗聎噚は䞀床も䜜動しなかった。倜十時近くになっお、゚ステヌトミズキの前の道から、山口癟恵の📍《むミテむションゎヌルド》が聞こえおきた。柄んだ声で、くせのない歌い方だった。歌声は倖階段を䞊っおきお、郚屋の䞭たで぀づいた。
 聡子は四畳半で着替えをしながら最埌たで歌い終わった。襖を開け、満足しきった顔をのぞかせお、
「倏䌑みに嚘ず二人で旅行をする玄束をしたんですけど、䌑みもらっおいいですか」ずいった。
「もちろん」ず答えるず、聡子は「ほんずにいいんですか」ず小嚘のように喜んで、感謝のしるしずでもいうように、板ガムを䞀枚くれた。
 䜐竹が垰ろうずするず、聡子は「お茶を䞀杯、぀きあっおください」ず匕き止めた。聡子は話を聞いおもらいたいのだろう、ず䜐竹は思った。
だが、そうではなかった。嚘ずのデむトがどんな具合だったのか、䞊機嫌でしゃべりだすかず思ったのだが、もう聡子は自分の話は䞀蚀も口にせず、今日䞀日、明野父子おやこがどんなふうに暮らしおいたか、新の健康状態に倉化はなかったかどうか、䜐竹にこず现かに質問を济びせかけはじめた。

➡📗 打海うちうみ文䞉ぶんぞう 『ずきには懺悔を』 1994


💋 å±±äž‹é”郎  クリスマスむブ

🎵 『クリスマス・むブ』 1983
  䜜詞䜜曲/山䞋達郎

⋯⋯街角には人通りが戻り、クリスマスずいうこずも手䌝っお商店街は掻気を取り戻した。恐怖ず猜疑心に苛さいなたれた䞉週間を取り返そうずするかのように、皆が財垃ず携垯電話を片手に町ぞ繰り出した。そしお過ぎ去った事件を躁病気味に面癜おかしく語り始めた。恐怖の王だったカ゚ル男は道化垫に栌䞋げされ、自分たちず同列だった四人の犠牲者は単に䞍運な者たちず片づけられた。
 それは、たるで街党䜓から憑物が萜ちたような光景だった。
 こうした経緯を、叀手川は病院のベッドの䞊で枡瀬から聞かされた。勝雄が逮捕されおから、すぐここに担ぎ蟌たれたのだ。若いずいうのは倧したもので脱臌した右腕はその日のうちに敎骚され、党身二十䞃箇所に及ぶ打撲傷ず八箇所の切り傷、そしお肋骚二本の眅ひび割れも五日間で快方に向かった。䜆し錻ず巊足だけは損傷具合が甚だしく、未だに包垯が取れない。特に巊足は原型を留めないほどの耇雑骚折で、医垫からは党治䞀ヶ月ず蚺断された。 䞭略
「俺、今から有働さんのずこ行っおきたす。 䞭略 俺が行っお報告しおきたす。そりゃあ俺が行っお䜕の圹に立぀わけじゃないけど、少なくずもあの人の話し盞手にはなっおやれたす」 䞭略
 街角では📍山䞋達郎ずマラむアキャリヌのお銎染みのナンバヌが流れる䞭、包みを抱えたカップルず芪子連れが溢れ返っおいた。耳をそばだおおいるず、皆が最近たで倖出やショッピングを控えおいたのが分かった。

➡📗 䞭山䞃里 『連続殺人鬌カ゚ル男』 2011

 â‹¯â‹¯ä»Šæ€ãˆã°ã€ã‚りきたりの぀たらないラブストヌリヌだった。 䞭略
が、゚ンディングテヌマが流れはじめた頃、十䞃歳の私はめくるめく感動の枊に身を任せおいた。
 こんなこずもあるのだ、ず。愛しあう二人が誀解によっお匕き裂かれ、離ればなれになっおしたうこずがあるのだ、ず。しかし、愛の力は匷い。どちらか䞀方がほんの少しの勇気を出せば、誀解は解け、すべおは元の通りになる──。
 勇気。
 そう、私ず保田くんに欠けおいたのは䞀握りの勇気ではなかろうか。 䞭略
 胞の奥で䜕かが躍動を始めた。ドラマの終了埌、出挔者たちが䞻題歌プレれントのお知らせを始めた頃には、私はもう䞀分たりずもじっずしおいられなくなっおいた。
 時蚈を芋るず、八時二十四分。保田くんの予備校は九時に終わるはずだから、電車で最寄りの駅に降り立぀のは九時半過ぎだろう。
 今ならただ間に合う。
 安田君のために線んだセヌタヌを抱え、フヌド぀きのブルゟンをはおっお、私は家を飛び出した。九時たで来ないバスを埅぀のももどかしくお、駅たでの長い道のりを久々に自転車でかけぬけた。癜いスカヌトの裟すそを翻す私の頭の䞭には、もちろん山䞋達郎の📍『クリスマスむブ』が流れおいた。
 ようやく駅に着いたのは九時十分、そこから二぀䞋った保田くんの最寄り駅に降り立ったのが九時二十䞀分だった。ぎりぎりセヌフ。私は改札の前で癜い息を吐きながら保田くんの垰りを埅ちわびた。

➡📗 森絵郜 『氞遠の出口』 2003

 

💋 å±±æœ¬è­²äºŒã€€ã€€ã¿ã¡ã®ãã²ãšã‚Šæ—…

🎵 『みちのくひずり旅』 1980
  䜜詞/垂堎銚かおる 䜜曲/䞉島倧茔

⋯⋯キムラずは、はじめお二床デヌトをした。しかも、二床目はランチではなく、倜に䌚った。最初のランチが枋谷の癟貚店内の和食屋で、二床目の倜は、新宿西口の超高局ビルの飲食店街にあるむタリアンだった。 䞭略
 すぐ近くにあるカラオケの広い郚屋を予玄しおいるず蚀うので、付き合うこずにした。本圓に広い郚屋で、゜ファなども高玚感があった。そしおキムラは、照明を萜ずし真っ暗にした䞭で、スポットラむトを济びながら、📍「みちのくひずり旅」ずいう昔の挔歌を熱唱した。「お前がおれには最埌の女」ずいう歌詞が䜕床も繰り返されお、これはひょっずしたらプロポヌズなのだろうかず思った。
 韓流ドラマでは、女が喜びそうなさたざたな工倫をしお、プロポヌズする。 䞭略
 歌い終わったあずで、キムラは蚀った。
「結婚を考えおもらえたせんか」
 やはりプロポヌズだった。そういったサヌビスがあるのだろう、花束が届けられお、キムラは手を握りしめ、結婚を申し蟌んできた。玠盎にうれしくお、涙がにじんできた。だがキムラは、手を握ったたた、これだけは話しおおかないずいけないんですが、そう蚀っおう぀むき、工堎の珟状に぀いお話し出した。芁は、働き手が足りなくお、嚘倫婊、息子倫婊ずの同居になるずいうこずだった。 䞭略
 䞭米志接子は、握られた手を、ゆっくりず離した。

➡📗 村䞊韍 『55歳からのハロヌラむフ「結婚盞談所」』 2012

 

💋 優里ゆうり  ドラむフラワヌ

🎵 『ドラむフラワヌ』 2020
   䜜詞・䜜曲/優里

⋯⋯「葵ちゃん䞊手だね」
 私たちが来たのはカラオケだった。私が䞀曲目を歌い終わった埌に東山さんがそう蚀っおくれた。先にマむクを䜿っお声を出せば緊匵がほぐれるず思っお、私の方から歌わせおもらったのだ。十八番のペルシカの『ヒッチコック』を歌ったのも良かった。それに東山さんも耒めおくれたし、このデヌトを楜しむ䜙裕が少しだけ出おきた気がする。
「じゃあ次は俺の番か」
 東山さんが、マむクを手に取る。既に入れおいたのは優里ゆうりの📍『ドラむフラワヌ』だ。
 東山さんの声がカラオケの郚屋の䞭に響く。宀内に蚭眮された照明は音楜に合わせお明かりが倉わる仕様だった。 䞭略
 私が小さく拍手をするず、歌い終えた東山さんが、さっきよりも近い堎所に座っおから蚀った。
「葵ちゃんは、䜕飲んでるの」
「⋯⋯りヌロン茶です」
 やっぱり距離が近い。本圓に䜕を飲んでいるのか蚊きたかったのだろうか。䞀緒にドリンクバヌに行った時に、私が䜕を遞んだか知っおいるはずだけど⋯⋯。

➡📗 枅氎晎朚 『17歳のビオトヌプ』 2023

  

💋 ãƒšãƒ«ã‚·ã‚«ã€€ã€€ãƒ’ッチコック

🎵 『ヒッチコック』 2018
  䜜詞・䜜曲/-ナブナ

⋯⋯「葵ちゃん䞊手だね」
 私たちが来たのはカラオケだった。私が䞀曲目を歌い終わった埌に東山さんがそう蚀っおくれた。先にマむクを䜿っお声を出せば緊匵がほぐれるず思っお、私の方から歌わせおもらったのだ。十八番のペルシカの📍『ヒッチコック』を歌ったのも良かった。それに東山さんも耒めおくれたし、このデヌトを楜しむ䜙裕が少しだけ出おきた気がする。
「じゃあ次は俺の番か」
 東山さんが、マむクを手に取る。既に入れおいたのは優里ゆうりの『ドラむフラワヌ』だ。
 東山さんの声がカラオケの郚屋の䞭に響く。宀内に蚭眮された照明は音楜に合わせお明かりが倉わる仕様だった。 䞭略
 私が小さく拍手をするず、歌い終えた東山さんが、さっきよりも近い堎所に座っおから蚀った。
「葵ちゃんは、䜕飲んでるの」
「⋯⋯りヌロン茶です」
 やっぱり距離が近い。本圓に䜕を飲んでいるのか蚊きたかったのだろうか。䞀緒にドリンクバヌに行った時に、私が䜕を遞んだか知っおいるはずだけど⋯⋯。

➡📗 枅氎晎朚 『17歳のビオトヌプ』 2023

 

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💋 ïŒ¬â€™ïŒ¡rc~en~ielラルクアンシ゚ル  HONEY

🎵 『』 1999
  䜜詞・䜜曲/

⋯⋯すぐに走り始めた波留の背䞭を、サドルに腰かけたたた芋送る。
 このずきたしかに、桜介は波留ず別れがたく感じおいた。倕飯の時間たでには家に戻らなければならないこずが歯痒はがゆく、波留はそんなこずを少しも思っおいないようなのが寂しかった。
 けれど、匕き留める口実が芋぀からなかった。ずっず道端で話し続けおいるわけにはいかない。どうしおも今話しおおかなければならないこずも、特にない。
 桜介はリュックを開け、兄から借りたりォヌクマンのむダホンを匕っ匵り出しお耳に抌し蟌んだ。「ピンクスパむダヌ」の腹の底を這いたわるようなむントロに、の死のニュヌスを芳お泣いおいた兄の姿が蘇よみがえり、咄嗟ずっさに曲をスキップする。
 流れ始めた’rc~en~ielの📍「」に合わせおペダルを挕ぎ始めたずころで、そうだ、ず思い぀いた。
──林間孊校の班の話があった。
 改めお同じ班になろうず誘わなくおも䞀緒になるだろうず思っおいたけれど、䞀応話しおおいおもいいかもしれない。
 自転車の向きを倉えお元来た道を匕き返し、波留が向かった道ぞず進んだ。
 予想倖に早く、波留の姿が芖界に入る。桜介は自転車を停め、アップテンポなサビを鳎らすむダホンを匕き抜いた。
 波留は、信号のない暪断歩道から少し離れたずころで、車の流れを目で远っおいた。

➡📗芊沢倮あしざわよう 『倜の道暙』

 


いいなず思ったら応揎しよう