夜景を撮って
夜の都会の空のなか、おびただしいビルのあかりに、ビル自体が溺れるように暗く沈んでいる。燦然とした夜空を、彼女はヘリコプターでめぐっていた。
それを見上げていたダリは、夜空と道路のあいだの低空を車で浮遊していた。ラジオ番組を流しながら、映像塔へ向かうべく、魔法の絨毯めく上に座っている。くつろげてはいるが、眠い目をとじるわけにはいかなかった。
道に連なる虹の輪のなかに入り込んで進んだ。斜め右上をながめやると、ビルの上で巨大なひかりのライオンが回転している。左上の側面は四角くひかる窓が縦横にびっしりと並んでいる。
すぎては現れる虹の輪とこちらとのあいだ、真横に、夜鳥がスピードをあわせて滑空していた。その滑空はこちらより先へ進んだかと思えば遅れがちにあとへついたり、並んだりした。虹の輪のなかの信号はいまのところ阻まない。
夜鳥が飛んでいったのを確認したとき、こちらも虹の輪から飛び出した。あかりのない夜の空が目のまえまでも広がり、瞳孔がひらいていく。ラジオ番組は一枠鳴り終えていた。
スピードを下げてなお進む。目のまえには暗い藍色の砂漠が広がりはじめる。ふりかえると暗がりの向こうに小さく都会が見えた。浮遊の速度を上げる。暗い砂漠の地平線の底から、ふたたび幾つもの高層ビルが立ち上がってくる。
砂漠に立ち上がる無数の高層ビル、その下で静止したダリは浮遊から足を下ろし、あたりを見廻す。ラスベガスのような印象。映像塔に入った。ここまでの録画を映像ディレクターに渡して、ようやくダリは仕事を終えた。あかるい夜空をながめながらいると、彼女のヘリコプターが降りてくる。
おかえり。
ダリは頷いた。ようやくだ。あとはこの夜空を遊周し、今度こそくつろぎながら眠い目をとじることができる。
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