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「サンセット・サンライズ」の感想

サンセット・サンライズをAmazonプライムで観た。今年の年明けに劇場で観たかったんだけど予定が合わずに観られず。満を持して観た。以下ネタバレあり。

★★★

飯が美味そうすぎた

この映画の最高のシーンは「もてなしハラスメント」のシーンだと思う。"祈る会"の面々に「お前ただじゃ帰さないからな」と料理を振る舞われる晋作。ここで出される料理の一つひとつがめちゃくちゃ美味そうすぎた。もはや今まで観てきた映画の中でもトップなんじゃないかってくらい美味そうで、もう画面に釘付けになってしまった。
桃ちゃんに好意を持ってる"祈る会"の4人。最初は不穏な空気だったけど、めちゃくちゃ美味しい料理を食べさせて、ある意味で「胃袋を掴む」的なことで仲間に入れる、というかひれ伏させるというか。歓迎でもあるし、自慢でもあるし、支配でもあるし。「どうだおれたちの街は最高だろ」的な歓迎としてこの料理シーンは最高だった。

竹原ピストル最高

というか、この"祈る会"の4人がめちゃくちゃ良かった。特に竹原ピストルのキャラ、貫禄、愛らしさ。不器用だけど誠実で、誰からも愛されるキャラクターの説得力が最高だった。そして三宅健。最初は誰だかわかんなかったけど、「もしかして三宅健?」と思ったら当たってた。あのなんかヤンチャな兄ちゃんの感じもめちゃくちゃ良い。後に町長になる人も良いし、好井まさおの公務員顔もめちゃ良かった。全員が全員「田舎の30代」って感じがリアルで、本当にこういう人いるよって感じだった。

地方と東京

ぼくは北関東の田舎で生まれて、大学で東京に出てそのまま東京の会社に就職し、そして今はまた田舎に帰ってきた人間だ。そして同時に今は行政に近いところで仕事もしている。
そんな中で役場の職員の考え方だったり、田舎の人の考え方もめちゃくちゃリアルだった。誰かを特別扱いするわけにはいかなくて、問題があれば「一回辞めよう」ってなったり、「こんな街誰も好きにならない」と卑屈になったり。そういう空気感は事実として田舎にはある。一方で都会の会社がビジネスとして「空き家活用」の理想を持ち込んだとしても、「誰と誰が仲が悪い」とか、見えない部分の壁も本当にあって。「こうしたほうがいい」ということは分かっていても、そんなに簡単じゃないっていうのが本当のところだと思ってる。

そんなに簡単じゃない

地方と東京にはそれぞれの暮らしがあって、それぞれの良さがある。それをすぐに混ぜ合わそうとしてもそんなに簡単じゃない。それこそ"芋煮"みたいに全部の具材を入れちゃえばいいってもんでもない。ただ具材を混ぜ込んだだけじゃ駄目で、そこには「しめじ」みたいに「それがないと成り立たないもの」があったりする。
芋煮会のシーン、彼らは自分の本音を打ち明ける。「桃さんはただここに生まれただけ。おれはただここに生まれなかっただけ」。震災のときには「たまたま奪われた人」がいて、「たまたま奪われなかった人」がいた。助けたい気持ちがあって、それでも何をしていいかわからなくて、被災した人を尻目に普通の生活を送っていいのか。娯楽を楽しんでいいのか。笑っていいのか。そんな空気感があの時代にはあったように思う。
そんな中で竹原ピストルが言った「ただ見ていてくれればいいんだ」という言葉がぼくにはまるで突き刺さるようだった。ただ混ぜ合わせるだけでもだめで、じゃあ何をすればいいのか、何ができるのかって考えるけど、そんなに「簡単じゃない」のが事実としてあって。その中で「ただ見ていてくれればいいんだ」っていうのが「助け合いの距離感」として、ぼくがこの隔たりに対して感じていたものへの回答として突き刺さるようだった。

「け!」

東京の人間が東京の理屈で空き家ビジネスを持ってきても、それがスムーズに地方に受け入れられるかと言ったらそうじゃない。そこにはそこのルールがあって空気がある。
最終的に桃さんと晋作は結婚はしないで、養子に入るという形で家族になる。それぞれが「自分のことだけ考えればいい」として、それで困ったときに助けあえばいいと。それが正しい「助け合いの距離感」なんだと感じた。なんでもかんでも「助ける」ことが全部正しいわけではなくて、それぞれがそれぞれの人生を生きて、そして食べ物が余ったら、それを分け与えればいいんだ。「け!」って。

まとめ

全体として流れる田舎の空気、美味そうな料理、そしてなにより「ただ見ていてくれればいいんだ」という言葉が突き刺さり、この映画が大好きな作品になった。なにより劇場で観ていなかったことを後悔した。「この夏の星を見る」もそうだし「フロントライン」等もそうだけど、2025年は「コロナ禍」を題材にした映画が多い。あれから5年が経つけれど、あれから変わったものもあれば、変わらなかったものもある。「コロナ禍」という特殊な状況が浮き彫りにしたものもあるだろう。そんな中であの「空気感」が映画という作品の中に残り続け、ぼくらの当時抱いていた感情をしまっておいてくれるのだろうか。
「ただ見ていてくれればいいんだ」という今まで抱いていたモヤモヤする感情への回答が何よりも突き刺さった。

95点

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