なぜ「飛行機」は飛び続けることができるのか?翼と空気が生み出す、揚力のひみつ
こんにちは、Ichi Logi代表の村岡 梨紗です。
飛行機に乗るとき、ふと思ったことはありませんか。
「こんなに重い鉄の塊が、なぜ何時間も空を飛び続けられるんだろう?」
鳥のように羽ばたくわけでもなく、ただ翼を広げたまま空に浮いている。あの巨大な機体を支えているのは、翼と空気の間で起きている、物理学の法則です。
今回は、飛行機が飛ぶ仕組みを「揚力」というキーワードを中心に、丁寧に解き明かしていきます。
飛行機を支える「四つの力」
飛行機が安定して飛び続けるためには、四つの力がつり合っている必要があります。
上向きの力:揚力 翼の特別な形と空気の流れによって生まれる、飛行機を上に押し上げる力です。飛行の核心となる力で、これがなければ飛行機は空に浮かべません。
下向きの力:重力 飛行機の重さによって、常に地面へと引っ張られる力です。揚力がこの重力に打ち勝つことで、飛行機は空に浮かんでいられます。
前向きの力:推力 エンジンがジェット燃料を燃焼させることで生まれる、飛行機を前に進める力です。この推力があるからこそ、翼に空気が流れ込み、揚力が生まれます。
後ろ向きの力:抗力 飛行機が前進するときに、空気の壁にぶつかることで生まれる抵抗力です。推力と抗力がつり合うことで、飛行機は一定の速度を保てます。
飛行機が安定して飛んでいる状態とは、この四つの力が完全につり合っている状態です。離陸のときは揚力が重力を上回り、着陸のときは意図的にそのバランスを崩しています。
翼の「特別な形」が揚力を生む
飛行機の翼を横から見ると、上側がふくらんでいて、下側が比較的平らになっています。この断面の形を「翼型(よくがた)」といいます。
この形が、揚力を生み出す鍵です。
飛行機が前進すると、翼の前端で空気が上下に分かれて流れます。このとき、上側のふくらみが大きい分、上を流れる空気は下を流れる空気よりも長い距離を通らなければなりません。同じ時間で長い距離を通り抜けるためには、上側の空気は下側よりも速く流れる必要があります。
この「上側の空気が速く、下側の空気が遅い」という状態が、揚力を生み出す直接の原因になります。
ベルヌーイの原理——速さと圧力の不思議な関係
ここで登場するのが、18世紀のスイス人科学者ダニエル・ベルヌーイが発見した法則です。
「流体(空気や水)は、流れる速度が速いほど、圧力が低くなる」
日常でもこの現象は体験できます。電車がホームに高速で進入してくるとき、ホームの端に立っていると体が吸い寄せられるような感覚を覚えたことはないでしょうか。あれは、高速で流れる空気の圧力が低くなり、体が引き寄せられているためです。
飛行機の翼に当てはめるとこうなります。
翼の上側:空気が速く流れる → 圧力が低い
翼の下側:空気がゆっくり流れる → 圧力が高い
圧力は高い方から低い方へ向かって押す性質があります。つまり、翼の下側の高い圧力が翼を上に向かって押し上げる。これが「揚力」の正体です。
翼の面積が大きいほど、この圧力差から生まれる力も大きくなります。ジャンボジェットの翼があれほど巨大なのは、機体の重さを支えるために必要な揚力を確保するためです。
離陸の瞬間に起きていること
飛行機が滑走路を走り始めると、エンジンの推力で速度が上がっていきます。速度が上がるほど翼に流れ込む空気の量が増え、揚力も大きくなっていきます。
やがて揚力が重力を超えた瞬間、飛行機はふわりと地面を離れます。あの離陸の瞬間は、四つの力のバランスが一気に変わる、物理学的にドラマチックな瞬間です。
巡航高度に達すると、パイロットはエンジン出力を調整し、四つの力を再びつり合わせます。この状態が、私たちが機内で過ごす「安定飛行」です。
日常の「なぜ?」が世界を広げる
飛行機が飛ぶ仕組みを知ると、次に搭乗するときの景色が変わります。窓の外に見える翼が、空気と物理法則を使って精密なバランスを保っていることが見えてくる。
知識は、日常の解像度を上げてくれます。
「なんとなく乗っていたもの」が「仕組みのわかるもの」に変わるとき、世界は少し豊かになります。リベラルアーツが目指しているのは、まさにそういう「見え方の変化」だと思っています。
次回も、身近な疑問から世界を読み解く記事をお届けします。
Ichi Logi 代表 村岡 梨紗
