おぉ、また来たか。
見ての通り、ワシは今、このパイプの煙が天井に届くまでの「正確な秒数」を数えるという、世界で一番どうでもいい作業に従事しているところだ。
さっきの一吸いは、天井に届くまでに七秒半だった。
だがその前のやつは、途中で焚き火の熱気に煽られて、五秒で霧散しおった。
この「一秒の差」に何の意味があるのか、もう三時間ほど考えているが、結論から言うと「全くの無意味」だ。
だが、その無意味さが、この地下深くでは最高の贅沢なんだわい。
ところで、さっきの「パチン」という音を聞いたか?
あれはドワーフの音階で言うところの「ミ」に近い。
昨夜の薪はもっと湿っていて「ボフッ」という低い「レ」だった。
この音の響きだけで地上の森の乾燥具合を占う……なんてことはせず、ただ「あぁ、よく燃えとるな」とだけ思うのが正しい作法だ。
人生なんてのはな、こういう「どうでもいいこと」をどれだけ愛せるかだよ。
……さて、次は「パイプの吸い殻を叩き落とした時の音の違い」について、一時間ほど詳しく語ろうかのう。
