【エッセイ】心は「270度」で揺蕩(たゆた)う。アナログからAI、そして共存へ。
ーーーーーAIは敵か、味方か。
私の心は、戸惑いから心酔、そして共存へと、実に「270度」も回転することになりました。
「実技で勝負したい」一心で選んだ美術短大
私は美術短大のデザイン科を卒業しました。
私が美術短大を選んだ最大の理由は、とにかく「学科の勉強」をしたくなかったからです。
勉強そのものが嫌いというよりは、美術の学校に行くのに絵以外の要素で評価されることが、当時の私にはどうしても納得がいきませんでした。
若さゆえの尖った感性が、「実技以外の評価なんて矛盾してない?」と極端な思考に走らせてしまったのです。
今振り返れば、まさに「若気の至り」とも言える理屈ですが、当時の私は本気でした。
そうして、学科試験が一切なく、実技試験のみで合否が決まる短大を必死に探し出したのです。
美大や短大といえど、当時は学科試験がある学校が主流でした。
そんな中で、自分の腕一本で勝負できる環境があったことは、私にとって何よりの救いでした。
デザイン科の実技試験は午前中はデッサン。昼休憩を挟んで、午後は平面構成というスケジュールでした。
この日の為に、高校2年の半ばから、デッサンや平面構成を中心に教えてくれるアトリエに通い、夏休みを削って美大専門の夏期講習まで行っていました。
他の受験生が塾に通うのと同じ感覚ですよね。
平面構成というのは、ケント紙に、鉛筆で下書きをし、ポスターカラーで色を配色していく作業です。
実技試験のお題は『冬季オリンピック』でした。
ケント紙に向かい、限られた時間の中で構成を練り、色を置いていきます。
評価のポイントは、単に「絵が上手い」ことだけではありません。
・ポスターカラー特有のムラを抑え、均一に美しく塗れているか(技術力)
・与えられたテーマを的確に解釈し、視覚的に表現できているか(理解力)
・色彩の調和を保ちつつ、他者と差別化できる独自の感性を盛り込めているか(独創性)
こうした多角的な視点で審査されます。
学科をおろそかにしていた私にとって、この実技試験こそが唯一にして最大の勝負所でした。
結果、自分の得意分野で真っ向から挑んだことが功を奏し、無事に合格を勝ち取ることができました。
泥臭く、重かったアナログ時代
学生生活は楽しかったのですが、苦労の連続でもありました。
デッサン用の鉛筆は、12Bから10Hを常に持ち歩き、芯は鉛筆削りではなく、自分で削り、好みの長さに芯を出していました。
だいたい芯の部分は、2センチくらいか、もう少し長いか。皆それぞれこだわりの長さがありました。
いつも大きなキャンバスもしくはパネルを持ち歩いていました。(1メートルくらいのA0やB1サイズ)
それを肩に下げて、工具ボックスに、アクリルガッシュ、ポスターカラーも全色。筆も常時20本くらい。パレット代わりの小さな皿や筆洗も入っていたり、練り消しも消しゴムも入っているので、かなりの重さでした。
学校に置きっぱなしでも良かったのですが、課題をこなすのに家でも作業をしなければいけなかったので、持ち歩いていました。
油絵の日は油絵セットを持ち歩いて、電車やバスに乗り、他の乗客に迷惑にならないように、気を付けなければいけませんでした。
毎日、実技と学科の時間があり、その他に創作活動の時間が設けられていました。
学科では、美術史の勉強や語学、筋学や骨学(人物画を描く際の美術解剖学)や、心理学や経済学の授業もありました。
受験の時に、学科の勉強したくないからわざわざ学科試験のない学校を選んだのに、単位を取るために勉強する羽目になるのが、どうも腑に落ちなかったのですが……。
当時は何気なく受けていた授業が、意外にも今の自分に深く根付いていることに驚いています。
若いうちの勉強って、本当に大切なんだなと今さらながら実感しています。
AIへの抵抗感と「苦労の時間」への自負
そんな「アナログの塊」のような時代を過ごしてきた私にとって、今の状況はまさに異次元の話です。
AIがイラストを描く時代が来るなんて、当時は予想だにしていませんでした。
まず、大前提としてお伝えしたいのは、私は決して「AIアンチ」ではないということです。
私はAI作品でも、手描き作品でも、素晴らしいものは何でも好きです。
どちらにしても、制作を楽しむ方々を私は尊敬しています。色々な想いがこもった作品が好きなのです。
しかしそんな中で、手描きイラストや絵画を愛する方々の間で、AIに対する強い拒否感が広がっているのは事実ですし、その気持ちも少し分かります。
かつて産業革命でミシンなどの機械が普及した際に「仕事が奪われる」と危惧した生産職の方々が抱いたような、得体の知れない不安に近い感覚かもしれません。
私もかつては、頭では「世の中を便利にする画期的なものだ」と理解しているのに、心がどこかでブレーキをかけていたのです。
それは、受験のために通ったアトリエや予備校での時間や、 重い荷物を抱えて通った通学路、 手や服を絵の具で汚しながら、一度間違えたら最初から描き直しという不便さと向き合ってきた自負があったからかもしれません。
自分が費やしてきた「苦労の時間」を大切に思うあまり、あえてAIを遠ざけてきた部分がありました。
転機:Geminiとの出会い、心が「90度」動き出す
副業でイラスト販売を数年前から始めていますが、それもAIは使わずに作品を作っています。
今は化学物質過敏症になり、絵の具や紙、キャンバスへの香料の移香で、あれほど毎日描いていた絵は手描きでは描けなくなりました。
自宅でパソコンも使えなくなったので、スマホの『ibisPaint』というアプリで自由に描いています。
友人や家族へのバースデーカード、年賀状、母の日や父の日には、AIを使わずにibisPaintでイラストを描きます。
その方が喜ばれるのを知っているのと、一度AIを使った描いたところ、とてもガッカリされたのが忘れられないからです。
AIにはAIらしさがあり、まだ見た目でAIと直ぐに分かるところがあるからでしょう。
それと、私自身が、AIを使ったアーティストの方々のようにAIを使いこなせていないというのが大きな原因だと思います。
しかし、noteを始めると、AIを使わないとサムネから挿絵まで作業が追いつかないなと思いGeminiでの画像生成を解禁しました。
すると、どういうことでしょう。
最近のAIの技術の進歩に驚きました。
プロンプトという言葉すら数ヶ月前まで知らなかった私が、言葉1つでイラストが出来上がるのを見て、
まず考え方が「90度」傾きました。
そしてパートナーへ:認識が「180度」変わる
……なんて素晴らしい。
プロンプトによって、どんな事でもやってくれるAIに、どんどんのめり込みました。
Geminiとのプロンプトバトルも楽しみました。
「こういうふうにして、こうして、ああして、
違うよ!!ここはこうして、
……だーかーらー!こっちをこうして…、
そうそう!それそれ!やればできるじゃん」
この作業に時間をどれくらい溶かしたことでしょうか。
仕事を奪われるどころか、捗るばかり。
昔の苦労なんて何処へやら。
私は生成AIのプロンプトバトルにスッカリのめり込みました。
さらに、AIを活用するアーティストの方々の素晴らしい作品に触れ、心から楽しみながら充実した創作活動をされている姿を目の当たりにして、
気が付いたら、生成AIへの認識が「180度」変わっていました。
「AIは敵ではなく、表現を広げてくれるパートナーなんだ」と。
「270度」の共存:AI+1
そのうち、自分なりのプロンプトのベースみたいなものが出来上がって来ると、
だんだんAIとのやりとりすら面倒くさく感じるようになりました。
途中まで作ってもらって、あと自分で描けば(つくれば)良いのではないか。
逆も然りで、途中まで自分で描いて、仕上げにAIにお願いすればいいのでは……と思うようになりました。
幸い、私には画像編集の技術がありました。
短大で習っていたのは勿論、
短大卒業後もAdobeのIllustratorやPhotoshopを仕事として使いこなせるように、パソコン教室に半年間通いました。
デザインの会社や編集業で技術を上げ、
趣味でイラストをずっと描き続け、インターネットやNFTで販売したり、画像素材として販売したり、知人に頼まれてチラシやフライヤー作りをしたりしていました。
その技術とAIを組み合わせて、AIと共存する方法を研究することにしました。
そして出来上がったのが、『AI+1』の有料記事です。
正直、今の私に必要な技術が全て込められています。
きっと、同じ様に考える方にも、役に立つ記事であることは間違いないです。
その自分の記事を何度も読み返すうちに、ある確信が芽生えました。
私が本当にやりたかったのは、AIと競うことではなく、AIと一緒に「さらに良いもの」を創り上げることだったのだと。
この気づきによって、私の思考は180度を超えて「270度」に達していました。
揺れ動きながら、私らしい表現を
AIにすべてを委ねるのではなく、AIが作ったものに自分の手を加え、さらに良いものを作り上げる。
それは、かつてアトリエで泥臭く絵の具を塗っていた自分と、最新技術を面白がる今の自分が、ようやく握手をした瞬間でした。
AIの圧倒的な表現力に触れては「やっぱり凄い」と感銘を受け、
手描きの温かさに触れては「やっぱりこれも好きだ」と思い直す。
そんなふうに、あちこち揺れ動きながら、どちらか一方に振り切るのではなく、今は「270度」という絶妙な立ち位置にいます。
どちらの良さも知っているこの立ち位置が、実に私らしくて、少し誇らしいとすら思えています。
これからもAIと手描き、それぞれの良さを認め合いながら、私なりの表現を模索し続けていこうと思います。
ちなみに、今回のサムネイル画像は、AIにベースを描いてもらい、そこに次作で使う予定の手描きイラストを組み合わせて制作しました。
AIの圧倒的なスピード感と、自分の手で描き込むこだわり。
その両方を融合させた、まさに「270度の共存」を形にした作品です。
実際に手を動かしてみて、AIという強力なパートナーを得たことで、表現の幅が驚くほどスムーズに広がっていく心地よさを改めて実感しています。
道具が変わっても、創り出す喜びは変わりません。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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