ヤンキーの街だと思っていた平塚駅|通勤圏ギリギリの街で考えたこと
JR平塚駅は、東海道線で東京駅まで一本で行ける。
ただし距離も時間も長い。毎日通うとなると、通勤圏としてはギリギリだ。
横浜ですら少し遠い。新幹線が停まるわけでもないし、リニアモーターカーとも無縁だ。
特急湘南は停まるんだっけ、と一瞬考えるくらいで、この街はあまり「変化」を期待されていない気がする。
平塚と聞いて、最初に思い浮かぶのは七夕まつり。
そして、どこか荒っぽいイメージだ。
ヤンキーの街。競輪の街。
少し前にはベルマーレがあって、決して小さくはない街。
高校は平塚学園。一度、甲子園に出たこともあったはずだ。
だから正直、もう少しガラの悪い風景を想像していた。
駅前には、賭け事をしそうな雰囲気のお兄さんや、昼間から酒の匂いをさせたおじいさんがいてもおかしくない。
そう思っていた。
でも、いない。
改札を出ても、いわゆる「ヤンキーっぽい」高校生はいない。
ビーバップハイスクールに出てきそうな学生は、当然いない。
みんな普通だ。
制服も着崩していないし、目立つ集団もいない。
拍子抜けした。
今どきのヤンキーは、女子にモテないのだろうか。
それとも、そもそもヤンキーという存在自体が、もう絶滅危惧種なのか。
平塚競輪があっても、一般市民は競輪なんてやらないのかもしれない。
自分の中にあったのは、ただの偏見だった。
あるいは、勝手に作り上げたイメージだった。
ホームに流れる発車チャイムは「七夕」。
やっぱり平塚は七夕の街なんだな、と妙に納得する。
2階の改札を出ると、小さなバスターミナルがある。
バスのアナウンス、どこかから聞こえる人の笑い声。
夕方の駅前は、それなりに賑やかだ。
排気ガスの匂いが混じった空気が、なぜか心地よい。
都会すぎず、田舎すぎない。
「田舎の都会」という表現が、しっくりくる。
パン屋があって、家系ラーメンの店があって、ヤマザキデイリーストアがある。
居酒屋も、それなりに多い。
美味しいラーメンやジャズ喫茶があるらしい、というのはTikTokで知った情報だ。
自分の体験ではないところが、少し今っぽい。
駅前のベンチに腰掛けて、ブラックコーヒーを飲む。
最初は熱くて、少し苦い。
時間が経つにつれて、生ぬるくなる。
でも、この生ぬるさも嫌いじゃない。
むしろ、最後まで飲めてしまうから不思議だ。
しばらく人を観察する。
……何も起きない。
ガラの悪い人も、酔っぱらいもいない。
探してしまっている自分の方が、少し下品だったのかもしれない。
平塚駅には、湘南の海の匂いはしない。
藤沢のざわつきもないし、茅ヶ崎の「海沿い感」もない。
でも、それが悪いとも思わない。
通勤圏ギリギリで、大きな再開発もなく、将来が劇的に変わる予感もしない。
でも、生活はしやすそうだ。
何もない街。
だからこそ、落ち着いて暮らせる街。
ブラックコーヒーが、やけに健康的な飲み物に思えてきた。
この街も、この駅を行き交う人たちも、これからどこへ向かうのかは分からない。
それは、自分自身も同じだ。
平塚は拍子抜けするほど普通で、少し安心する街だった。
