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湘南台駅、終着の先でミルクだけ入れたコーヒーを飲む

湘南台駅は、終着駅だ。
相鉄いずみ野線の終点であり、小田急江ノ島線と横浜市営地下鉄が交わるターミナル駅でもある。終着でありながら、通過点でもある。そんな矛盾を、当たり前の顔で受け入れている駅だ。

相鉄いずみ野線は地下にある。
ホームは少し暗く、音も吸い込まれるようで、落ち着いている。地上を走る相鉄本線とは、同じ会社の電車とは思えないほど雰囲気が違う。

改札に近づくと、「そうにゃん」がいる。
駅員さんが作ったキャラクターらしい。どこか不器用で、無理にかわいさを主張しないところがいい。湘南台という街に、ちょうどいい距離感で馴染んでいる。

普段なら、そのまま小田急の改札に向かう。
湘南台は乗り換えの駅で、降りる場所ではない。そういう使い方を、長いことしてきた。

でも、今日は違う。
仕事をしていない今、急ぐ理由がない。せっかくなので、地上に出てみることにした。街の風を感じてみたくなった。

地上に出ると、湘南台という地名から想像する風景とは、少し違う光景が広がっている。
海の気配はない。潮の匂いもしない。
ビルがあり、飲食店が並び、パチンコ屋があり、タクシーが止まっている。

少し歩くと、慶應義塾大学SFC行きのバス停がある。
若い人が多い。学生だろうか。
この街は、若さが通過していく場所なのかもしれない。

さらに歩くと、どこにでもありそうなスーパーがあり、松屋フーズのとんかつ屋がある。
油の匂いが、妙に現実的だ。
昼はチャーシュー麺を食べたばかりなので、さすがにとんかつは重い。

マクドナルドに入る。
注文はコーヒー。
砂糖は入れず、ミルクだけ。

アップルパイを頼もうか、一瞬迷う。
でも、店内に女子高校生がいたのでやめた。
ダイエットを気にしたわけではない。
中年のおっさんが、女子高校生の視界にアップルパイと一緒に入るのが、なんとなく嫌だっただけだ。

女子高校生たちは、たわいもない話をしている。
バイトを始めたけれど、もう辞めたいらしい。
人間関係が良くない、と言っていた。

どんな仕事をしているのだろうか。
飲食店か、コンビニか、それとも塾の受付か。
想像はできるけれど、確かなことは何もわからない。

社会人になると、そう簡単には辞められないよ。
そんな言葉が、頭の中に浮かぶ。

でも、すぐに打ち消す。
辞めるのも自由だ。
まだ、いくらでも可能性がある。
今は、それを信じていい。

コーヒーを一口飲む。
ノンシュガー、ミルクだけ。
少しだけ、角が取れた味。

湘南台は、湘南の海からは遠い。
それでも、この街は「湘南」を名乗っている。
名前だけが先にあって、現実が後から追いつこうとしているような街。

終着駅なのに、終わりではない。
むしろ、これからどこにでも行ける場所。

湘南台は、そんな駅だ。

改札に戻る。
相鉄、小田急、地下鉄。
どれに乗ってもいい。

どこへ行くかは、決めていない。
でも、それでいい気がした。

ミルクだけ入れたコーヒーの余韻が、まだ口に残っている。
今日は、それだけで十分だ。

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