「また次回でいいですか?」|滞納が後回しになり続ける理事会に、委員会という選択肢
「理事会だけでは回らない」をどう解決するか:マンション管理費滞納の現場から 第37回
理事会の議題が終盤に差しかかる。
「滞納の件ですが……」
フロントが資料をめくる。
理事長が少し疲れた表情で言う。
「正直、毎回同じ話になってますよね」
誰も否定しない。
報告はしている。
対応もしている。
でも、進んでいる実感がない。
別の理事がぽつりとつぶやく。
「これ、理事会だけでやる話なんですかね……」
この一言が、きっかけになることがある。
今日は、
滞納対策委員会という「もう一つの動かし方」について整理したい。

▼1:「また次回でいいですか」|後回しが積み重なる現場
若手フロントが感じている。
「滞納の話になると、時間が足りなくなるんです」
理事会では修繕の話・設備の話・クレーム対応と、
議題は山ほどある。
その中で滞納はどうなるか。
「また次回でいいですか」、
こうして後回しになる。
しかし後回しにしている間にも、
滞納は着実に悪化している。
金額が増える。
期間が長くなる。
対応できる選択肢が一つずつ減っていく。
理事:「もっとちゃんとやらないとダメですよね」
フロント:「はい……」
でも現実は「時間も人も足りない」、
これが多くの現場の正直なところだ。

▼2:滞納対策に必要なのは「継続的に見続ける仕組み」だ
滞納対策は手間のかかる仕事だ。
個別対応が必要で、経過を追い続ける必要があり、
判断のタイミングが重要になる。
つまり「継続的に見続ける仕組み」が必要だ。
理事会だけで対応しようとすると、
議題に埋もれ、担当が曖昧になり、スピードが落ちる。
そこで出てくるのが、
滞納対策委員会という考え方だ。
委員会の役割を一言で言えば、
「決める場」ではなく「整理する場」だ。
月1回・短時間・少人数で継続する。
この小さなサイクルが、
理事会の負担を減らし対応のスピードを上げる。
ただし一点、
権限の設計は明確にしておく必要がある。
委員会はあくまで整理と提案を担い、
法的手続きへの移行・分割払いの承認などの
最終判断は理事会が行う。
この役割分担が曖昧なまま委員会を動かし始めると、
「委員会が勝手に決めた」という混乱が起きやすい。
管理規約上の位置づけも含めて、
設置前に理事会で合意しておきたい。

▼3:委員会が「動かない」4つの原因
パターン① 理事会だけで抱える:構造的な時間不足
すべてを本会議で処理しようとする。
滞納は「大事だが急ではない」と判断されがちで、
毎回議題の末尾に追いやられる。
対応が遅れるのは、
やる気の問題ではなく構造の問題だ。
パターン② 委員会を作ったが目的が曖昧:形だけが残る
名前はあるが何をする場かが決まっていない。
結果として「一応集まったが何も決まらない」が続き、
自然消滅する。
仕組みは目的があって初めて動く。
パターン③ フロント任せになる:組合の意思が機能しない
実質的に管理会社が対応を抱える形になる。
管理会社は督促はできるが、
法的手続きへの移行や分割払いの承認など
判断が必要な局面では組合の意思決定が必要だ。
それが機能しないと、案件が宙に浮く。
パターン④ メンバーが固定されすぎる:負担の集中が継続を壊す
一部の理事や担当者に負担が集中する。
熱心な人ほど抱え込み、
その人が退任すると仕組みごと消える。
「特定の人に依存しない設計」が継続の鍵だ。

▼4:2〜3人から始める、小さな委員会の作り方
① 小さく始める
いきなり大きな組織を作らない。
理事1〜2名とフロントで十分スタートできる。
メンバーは理事に限らず、
関心のある区分所有者を加えることも選択肢の一つだ。
大切なのは「動ける規模」から始めることだ。
② 役割をシンプルに決める
・滞納一覧の確認
・対応方針の整理
・理事会への提案
この3つに絞る。
「決める場」ではなく「整理する場」として機能させることが、
委員会を長続きさせるコツだ。
数字を追うだけでなく、
相手の状況や反応の変化も共有する場にしてほしい。
案件の「温度」を感じ続けることが、
対応のタイミングを見極める力になる。
③ 月1回・30分で継続する
長い会議はいらない。
月1回・30分程度のサイクルを継続することが重要だ。
短いからこそ続く。
続くからこそ、対応が早くなる。
④ 理事会との役割分担を明確にする
委員会が整理・提案し、理事会が最終判断する、
この構造を最初に合意しておく。
委員会の議事録や報告フォーマットも簡単なもので構わないので
先に決めておくと、引き継ぎが楽になる。

▼5:「で、何をする会なんだっけ?」、目的なき委員会の末路
あるマンションでは、
滞納が増え理事会が疲弊していた。
そこで小さな委員会を設置し、月1回30分で
・滞納一覧の確認
・対応ステータスの整理
・次のアクション
の決定を行い、理事会に報告する形にした。
すると変化が出た。
理事会での議論が短く、具体的になった。
「この案件、進めましょう」、決定が早くなった。
一方、別のマンションでは委員会を設置したが
目的が曖昧だった。
集まっても何も決まらない。
理事長がつぶやいた。
「で、何をする会なんだっけ?」
仕組みは目的があって初めて動く。
目的のない委員会は、疲弊を増やすだけだ。

▼まとめ:分担することが、組合を前に進める
マンションは共同体だ。
問題は誰かの仕事ではなく、みんなの課題だ。
でも「みんなでやる」だけでは動かない。
だからこそ、役割を分けて動ける形にする。
委員会はそのための道具だ。
目的を決め、小さく始め、続ける。
この三つがそろったとき、止まっていたものが動き出す。
分担することが、組合を前に進める力になる。

▼今日のワンアクション
次の理事会で、こう提案してみてください。
「滞納だけを扱う小さな場、作りませんか?」
この一言が、止まっていたものを動かすきっかけになります。

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