副業という出口のない迷路。
【副業という出口のない迷路。】
「私に合う副業はありませんか?」
SNSを開けば、そんな切実な問いかけが溢れています。今の仕事では将来が不安、給料が上がらない、あるいは自分の時間が持てない。そんな閉塞感の中で、多くの人がネットの世界に救いを求めているのだと思います。
しかし、一歩ネットの世界に入ると、そこには残酷な現実が待っている気がしてなりません。「楽に稼げる」「自動化で権利収入」「リストを構築して刈り取れ」。そんな言葉が飛び交い、未経験の人間をカモにするようなノウハウが溢れています。それらの言葉に共通しているのは、人間を人間として扱っていないという冷たさではないでしょうか。
私の原点は、理学療法士として病院で働いていた現場にあります。当時、私が最も大切にしていたのは、技術的なスキル以上に、患者さんの履物を揃えることでした。リハビリが終わった後、靴が乱れていれば、次に履くときに誰かが不快な思いをするかもしれない。そんな些細な、点数にもならない行為こそが、患者さんとの信頼を築く唯一の対話だと信じていました。
音楽活動でも同じです。ライブのチケットは、ネットで簡単に決済されるのではなく、あえて手渡しにこだわりました。相手の目を見て、今の活動の苦労や喜びを伝え、チケットを受け取ってもらう。その瞬間の握手や言葉が、私にとってのビジネスのすべてだったんです。
ところが、マーケティングの世界では、こうした行為は「非効率の極み」とされます。
「なぜそんな面倒なことをするのか」「リスト化して一斉配信すれば手間が省けるのに」。そんな言葉を投げかけられるたび、私は自分が自分であることを否定されているような気さえしました。人をリストとして管理し、歩留まりを最大化するために、感情を捨て去る。そうやって成功した先に、果たして心からの幸福があるのでしょうか。
【ビジネスは、手渡しから始まる。】
ビジネスとは、もともと「手渡し」から始まるものだと思います。
誰かの困りごとを見つけ、それに自分なりの手立てで応える。その結果として感謝を受け取り、対価を得る。この循環こそがビジネスの根幹であり、それ以上でも以下でもありません。そこにリストや刈り取りといった冷徹な論理を割り込ませた途端、温度は失われ、それは単なる数字合わせのゲームへと成り下がってしまうんです。
AIがどれだけ発達し、自動化の技術が進んでも、人間が人間に対して抱く「信頼」の深さは、機械には決して代替できません。だからこそ、今あえて「非効率」なことを大切にしてほしいんです。
効率化という言葉に踊らされ、あなたの人間性を削り取るような副業は、今すぐ手放すべきだと思います。あなたが大切にしたい「泥臭いこだわり」は、今の時代、最も希少で価値のあるビジネスの源泉になるはずです。
【あなたが本当に守りたいもの。】
効率を追い求めた結果、あなたは今、何を失おうとしていますか。
数字やグラフばかりを見つめて、目の前にいるお客さんの顔を忘れてはいないでしょうか。もしそうなら、一度キーボードから手を離して、深呼吸をしてみてください。あなたが本当に大切にしたい温度感は、今のその活動の中に残っていますか。
そして、これから誰とどんな対話をしたいと考えていますか。
ぜひ、あなたの考えを聞かせてください。あなたの迷いや、その葛藤こそが、次の物語を作るための大切なピースになるのだと思うんです。
