[まとめ記事] 2025年: 総括 及び 美味しかったクラフトビール 10 パイント
[2026年1月6日 North Park Beer の記事へのリンクを追加]
2025 年はベイエリアにいる時間が長く旅行をする機会もあまりなかった。故にローカルのビールが多め。しかし、それ故にそれぞれのブリュワリーのビールをより深く楽しめたのではないかと思う。
そんな中で選ばれた 10 パイントはこちら!
2025年 10 パイント🍺
例年と同様、順不同、味のみではなくその時の場所の雰囲気等も含めた(おすすめリストと言うよりは)総合的な個人的感想・記録ということで。こちらも例年同様に Pliny the Elder と Pliny the Younger は殿堂入り(ランキング対象外)しているので10 パイントには含まない。そして Wondrous の Triple Cuff は 2025 年も素晴らしいビールだったので、こちらもついに殿堂入りが決定し、10 パイントには含まない。
Resin Fingers Fresh Hop Simcoe IPA / Ghost Town Brewing

2025 年は今までになく貪欲に Fresh Hop / Wet Hop ((収穫したての乾燥させていない生ホップを使ったビール; Wet Hop は"収穫後 24 時間以内に使用"を指すこともある)のビールを求めて様々なドラフトや缶を飲みまくった気がする。その中でも Ghost Town のこの Resin Fingers Fresh Hop Simcoe IPA はまずしっかりとしたオレンジやパイニーさ木の芽の様なグリーンさが感じられ、後味としてはレジン(樹脂)にも近いフレッシュホップ独特のハーブやお茶がくる最高のホップ体験ができるやつだった。炭酸はやや弱めでまったりと飲める。そしてこの時に飲んだ Dank Dive と合わせて Ghost Town の IPA に対する印象が自分の中で変わった。個人的には Ghost Town の IPA はホップがバチバチに効きまくっっているイメージで、そのスタイルは好きであるもののやや一辺倒に感じていたが、Resin Finger ではシムコのフレッシュさを活かしたフルーティーでまったりとした IPA に仕上がっており、これがまた凄く良かった。
感動の点で Resin Fingers が上ではあったが、モザイクのフレッシュホップ、モザイクCryo、モザイクDynaboost、モザイク T90という正にモザイク尽くしで缶を開けた瞬間からのホップのアロマに驚いた Ghost Town と Fort George のコラボの Mosaic Architect West Coast IPA も印象的だった。
Ghost Town は West Oakland と Laurel の2箇所にタップルームがありやや異なる雰囲気なのでその日の気分に合わせて行くところを選択するのがおすすめ。
Fresh / Wet Hop IPA は今年も Russian River Brewing の Hoptime Harvest Ale (Wet Hop IPA) のドラフトと缶の両方が飲め本当に素晴らしかったし、 Shred の センテニアルのフレッシュホップを使用したSpent Greens West Coast IPA、他のFresh Hopと全く異なるアプローチで面白かった Sante Adairius Rustic Ales の Fresh Hop Chinook IPA、Original Pattern の Dark Schrader Wet Hop IPA、Burgeon Beer の Fresh Hop Carlsbad Crush Pale Ale、等様々な新鮮なホップを味わうことができた。また、Cellarmaker が連続して 4 種類の Fresh Hop のビールをリリースし、仕込み釜の熱い麦汁にホップを添加する Hot Side Hopping と麦汁を冷却してから主に発酵タンクに添加する Cold Side Hopping の両方の違いを味わうことができたのも良い経験だった。
Another Earth Strong Ale + PP Lager / Private Press Brewing

比較的記憶に新しいこちらのペアリング。会員制で 14 % 以上のスタウトやバーレーワインに特化したブリュワリー Private Press Brewing が 12 月からラガーを提供し始めたというニュースを聞いて急ぎ訪問して、この組み合わせを飲み衝撃を受けた。 4.8% のラガーと 16.1% のストロングエールである Another Earth (バレルエイジされたスタウトとヴィエナワインのブレンドをバニラ、ココナッツ、メープルシロップでコンディション)。樽由来の複雑さがありつつも副原料が良いバランスに仕上げ、ココナッツと濃厚なモルトに後に程よい甘さ、そしてハイアル感。その一杯で天国を味わった後に飲むラガーがすべてを綺麗に洗い流し、爽快なビターさとモルトが一番ベーシックなビールとは何かを思い出させてくれる。そして再び Another Earth を含むと濃厚なバレルのスモーキーさ、後から甘さ、ナッティーさを再確認。この永遠にリピートできるペアリングがとにかく衝撃だったし、Another Earth が素晴らしい上にそれをちゃんと支えることができるラガーの存在もすごかった。何よりも Private Press がラガーを始めたのはビールの種類を増やすというよりは更なるスタウトやバーレーワインの体験を向上させるという拘りに感服。Brad さん、すごすぎる。
2025 年から会員になった Private Press だがメンバーボトルの Lark Dream や Sky Shadows に加え、バレル感が凄かった Double Barrel 10000 Steps、SF Beer Week中にSante Adairiusで行われたスタウトのフェスではBarrel 330など美味しい液体(ビール?)を味わうことができた。
そんな濃い黒いハイアルな液体を極限の形で提供してくれる Private Press のタップルームについてもっと知りたい方はこちら。
Hank / de Garde Brewing x Monkish Brewing

Monkish Brewing といえば今や Hazy IPA が有名で日本にも頻繁に入ってきているけど、もともとは自然発酵のベルジャンエールから始まったブリュワリー。そして de Garde Brewing はオレゴン州の Tillamook にてつくるバレルエイジされたファームハウスエールで有名なブリュワリー。この2つの珍しいコラボと聞いて買っていたが正直味は想像できなかった。が、開けて飲んでみて一口目でもうこれが最後の一本なことを後悔。
この Hank は 3 年熟成と 5 年熟成のワイルドエールのブレンドで樽はモスカテル(Moscatel)デザートワインの樽を使用。樽感が凄く複雑味を感じられボタニカルさもある(何由来?)正にデガルドと言った味。2023 年のリリース当初にこれを飲んで酸味が強過ぎたが2年置いて丸くなり好みの味になった。このビールはセラーと共にすごく良い方向に面白く味が変化した好例。こういうのに出会えるからビールって凄い。
実はこの2つのブリュワリーコラボは初めてではなく、過去に二度、なんとIPA (No Robots Involved Hazy DIPA と Armored Dilla Hazy DIPA) でコラボをしている。
de Garde のビールはこれ以外にも美味しいのを飲むことができた。Saturn Peach (蟠桃)と共にマディラのワイン樽で 4 年間熟成させたワイルドエール The Mad Peach や Cantillon の Ashanti の様に黒胡椒を使い 6 年間バレルエイジされたワイルドエール Temps & Poivre など毎年新しい味を発見させてくれる de Garde には本当に感謝しかない。
Tillamook という海添いの街にあるすごくストイックな雰囲気溢れる彼らのタップルームの詳細はこちら。
Keep The Fame / Cellarmaker Brewing x Monkish Brewing

Cellarmaker Brewing と Monkish Brewing のコラボといえば Juice Lee Pale Ale が有名だけど、2025 年はそのコラボが再び戻ってきた!しかも 2 つ。一つは Kick Routines Hazy IPA でもう一つがこちらの Keep The Fame DDH Hazy DIPA。こちらはシトラ、シムコ、ギャラクシーを使いとろとろでトロピカル、Hazy とはかくあるべきというお手本の様なビールだった。家で缶を、ビアバー Crafty Fox ではドラフトを、そして Toronado ではなんとハンドポンプでカスク版を飲むことができてどれも異なる味わいで美味しかった。
さすが世界レベルの両ブリュワリーのコラボという感じで、二つの良いところが上手くでていて本当によかった。
Cellarmaker Brewing はファウンダーの 3 人の内の 2 人、Timさん(元ヘッドブリュワー)と Kelly さん夫妻が辞めてしまい方向性を心配していたが、このコラボと最近のを飲みかなり安心した。
そんな Cellarmaker のオークランドにあるブリュワリー施設もある旗艦店はこちら。
Hallowed Helles / Geisthaus Brewing

Geisthaus Brewing は2025年にサクラメントにオープンしたばかりのラガーに特化したブリュワリー。しかしながら、既に Beer&Brewing や Vinepair の2025 年のベストブリュワリーの中に入る程の人気っぷりで、サンフランシスコ・ベイエリア近郊で今勢いのあるブリュワリーの一つと言える。2025 年の 6 月に初訪問して以来 6 か月の間に既に 3 回訪問しているが、毎回ここのビールをタップルームで飲むたびにあまりの美味しさにため息が出て顔もにやけてしまう。
そんな中でも特に毎回必ず飲んでいるのがこのヘレス Hallowed。Brewers Cup of California のヘレス部門で金賞受賞したビール。ベタつかず丁度良いモルトさの丸みも感じられるミディアムボディ、そして仕上げがとてもドライ。この何度も飲みたくなる美味しさに毎回やられる。そして感じるのは様々な複雑な IPA を飲んで来たけど、最後に戻ってきたいのは結局こういう完璧なラガーだということ。
Geisthaus はこれ以外もどれも完成度が高く、他にもLandbier California Pilsner は 6 分かけてゆっくりと注がれ密度の濃い泡と共に楽しむことができる贅沢なビールでこちらも毎回注文してしまう。時期によってはこれのフレッシュホップ版を飲むこともできる。もちろん濃い色のラガーも得意でDecrepify Munich Dunkel も美味しかったし、Pariah German Pils も最高だった。月に一度のグラビティケグの日に飲めた Unfiltered Czech Style 12° Pilsner も定番にして欲しい美しさ。またIPAで有名な Slice Beer ともコラボをしておりそれも飲むことができたのは幸運だった。
そんな楽しさの詰まった Geisthaus のブリュワリー兼タップルームはこんな感じ。
Formless Reflection English Dark Mild / Olfactory x Hidden Splendor

サンフランシスコといえば 1960 年代のヒッピーそして彼らによるカウンターカルチャーの中心地であった訳だけど、そのスピリットを継承するブリュワリーの一つがラガーやアルコール度数の低いエールを得意とする Olfactory だ。そして、この Formless Reflection の際にコラボした Hidden Splendor は嘗てのサンフランシスコのヒッピー文化の中心であったヘイトアシュベリー地区にあるブリュワリー Magnolia Brewing の生みの親 Dave McLean 氏が2025年に新しく立ち上げたブリュワリーでこちらは イングリッシュスタイル の エールを得意としている。そんな意気投合した2つのブリュワリーのコラボであるFormless Reflection は最高のイングリッシュスタイルのダークマイルドエールだった。(写真の左)
Olfactory は基本まったり系のビールが多いのだけど、これも例外ではなく 4.0 %で軽めのカラメル感とスモーキーさ、良い意味での紅茶感。ボディも軽めでまさに一日中これだけを飽きずに飲んでいられるタイプの素晴らしいビール。こちらのカスク版も飲むことができたが、さらに軽めで微炭酸でこちらも別の味わいがあった。
このコラボ、実は 2 回目で 1 回目は 2023 年の 10 パイントにランクインした Pearly Baker's Best Bitter Ale(このときはまだHidden SplendorはなかったのでDaveさんとのコラボという形)。個人的にとても好きなスタイルをつくる両者なのだが、残念ながら Olfactory はブリュワリー施設がある Dogpatch のタップルームが 2025 年の 12 月に閉店となり、Berkeley のタップルームも今後の方向性は未定とのこと。Olfactory には他にも Little Fest Festbier や初期からあるLamp Industry Black Lager、Lorien Pretty Pilsner など本当に美味しいビールをたくさん楽しませてもらった。そしてここで出会ったブリュワーさんも多く、ビアコミュニティーの集いの中心地の一つでもあった。そんな思い出もあり是非何かの形でカムバックしてもらいたい。Hidden Splendor はまだタップルームは無いが、Vinepairによる2025年のBest New Breweryに選ばれ(Geisthausも)、今後のリリースが注目される。Outside Lands等のフェスやサンフランシスコ市内で開催されるマーケットなどで提供されることが多いのでこれからも飲んでいきたい。
閉店してしまった Olfactory の Dogpatch 店舗に関してはこちら。
また、コラボしている Hidden Splendor の Dave さんが立ち上げた Magnolia Brewing、そしてモルティング施設に併設されたビアバー The Rake に関してはこちら。2026 年の秋にはタップルームをオープン予定らしいので、そちらも訪問予定。
Celly Drippins IPA / Sierra Nevada Brewing

2025 年に飲んだ最もレアで話題性のあるビールという意味ではこれが一番だった。ホップの袋からポタポタと落ちる雫を集め濃厚な状態となって提供されるのがこの Celly Drippins IPA。雫を集めるので 5000 缶つくって漸く 1 缶分を採取できる貴重なビール。クラシカルな West Coast IPA の様な濃いアンバー色でホップの濃縮感のある深い樹脂感(レジン)と柑橘、そして何よりもしっかりとした苦味。
その貴重さやつくる(採取する?)ための工程から飲めるのはブリュワリー関係者のみだったが 2024 年に初めて Mills River のタップルームで提供され、2025 年には初めてカリフォルニア州のチコにあるブリュワリーにあるタップルームでも提供された。
4 日間しか繋がらなかったのだけど、その貴重なリリースイベントに行ってきたので是非とも詳細を読んで頂きたい。
また、チコの Sierra Nevada Brewing ではブリュワリーツアーもやっており、その際の記事はこちら。日本でも Sierra Nevada のビールを見かけることは多いと思うが、アメリカ、特に西海岸のクラフトビールを語る上で間違いなく外すことができないブリュワリーだ。
Waits Smoked Cherry Farmhouse Ale / Fair Isle Brewing x Bizarre Brewing

Fair Isle と Bizarre という大好きなシアトルのブリュワリー2つがコラボしたことをインスタで知り興奮したが、それがまさかスモーク ファームハウス エールだとは思ってもいなかった。飲むチャンスはないだろうと思っていたところ、なんと Fair Isle の Knitting Circle メンバーシップに缶が入っていたので喜んで飲んでみたら、その意外性そして予想を覆す美味しさに本当に感動した。
スモークビール(ラオホビール)はその燻製的な特徴故に得意ではない人もいると思うが、このビールで驚いたのは軽めの燻製っぽさと後から来るフルーツさ、明るさとのバランスの良さだった。ブラックチェリーの木を使い燻製されたウィートモルトと大麦、スペルト小麦を使用して作られ、Bizarre のイーストと Fair Isle のハウスカルチャーの両方で発酵されている。そのためか軽めの良いスモークさと、チェリーウッドおよび Fair Isle のハウスカルチャー由来と思われる果実っぽさが絶妙にブレンドされ、Fair Isle のビールに特徴的な上品さで仕上がっている。
Fair Isle は今年も間違い無く多く飲んだブリュワリーの一つだと思う。これ以外で印象に残ったものとしては凄くシンプルなセゾンだけど味わい深かった Knitting Circle S:5.h、Cascade 産の松茸を浸してつくられ、ジンのカスクで8ヶ月エイジされたファームハウスエール Knitting Circle S:5.f、 ”Cの系統”とも呼ばれる数々の賞を受賞しているワイン樽でエイジされたセゾンの2025年版 Knitting Circle S:6.c (GABF にて銀賞🥈受賞)、スペルト小麦と Sugar Kelp (昆布の一種)を使ってつくられたビール Salacia、シャルドネ葡萄と共に発酵させチェリーとブレンド、そしてピンクと赤の薔薇の蕾を浸してつくられたセゾン Piper、オーク樽で12ヶ月エイジされたエールをワシントン州の白桃で再発酵したファームハウスエール Claude、Osmanthus (金木犀)の花に浸して味付けされたセゾン Jade、ベリーと共に発酵させた後ベリーの葉を浸し、ベリーの蜂蜜で仕上げたセゾン ‘Sabel、そしてファームハウスIPA Eugene w/ Azacca 等書いているだけで味を思い出す素晴らしいビールが実に多かった。とにかくどれも丁寧に作られとても品のある味わい。
そんな Fair Isle のタップルームは他の州であるにもかかわらず 4 回ほど訪れており、また近いうちに行かないといけない気がしてきた。
コラボのもう片方の Bizarre もラガーを中心につくるシアトルの素晴らしいブリュワリーだ。
Coffee & Cigarettes Porter (Saint Frank Coffee ver.) / Cellarmaker Brewing

Coffee and Cigarettes (以下 C&C )と言えば Cellarmaker の定番のコーヒーポーターで、開店当時からある人気のビールの一つだ。名前の由来は実際のコーヒーとややスモーキーなモルトを使っていることからきている。ここ数年の SF Beer Week 中のイベントとして様々のコーヒーロースタリーのコーヒーを使った C&C のブラインドテイスティングを行う ”C&C Showdown” というイベントが開催されており、2024 年、2025 年と連続で優勝したのがこちらのサンフランシスコのロースタリー Saint Frank の Honduras Santa Barbara Natural のコーヒー豆を使用したものだった。
そのイベントには参加したことは無かったが、Saint Frank のコーヒー豆はそこそこ買っていたのでこれを注文したところそれまで飲んだことのある C&C とはかなり異なる方向性で驚いた。今まで飲んだどの C&C よりもスムーズで軽いけど確実に感じられるコーヒーのフルーティーさ。そしてそれにうまく絡む燻製っぽさ。このコンビネーションが本当に良かった。
缶やドラフトで飲めるのとしては他にも Andytown Coffee Roaster 版やSightglass Coffee を使ったのナイトロ版など様々なものがある。
余談ではあるが、Saint Frank Coffee はベイエリアで人気がある珈琲店で近郊に4店舗出店しており Bolivia Cafe Oro の豆の味は今でも忘れらない。
Cellarmakerは今やサンフランシスコではなくオークランドを本拠地とするブリュワリーになってしまったが、サンフランシスコ市内にもまだ Cellarmaker House of Pizza があり、写真の一杯はそこで飲んだもの。
話はそれるがこのコーヒーとビールという組み合わせは 2025 年で出来た良い体験の一つ。Cooperage Brewing では地元の Land and Water Coffee のコーヒーがタップに繋がっていてナイトロのコールドブリューと同じコーヒーを使ったインペリアルスタウトをサイド・バイ・サイドで比べて楽しむことができたし、Humble Sea の8周年記念インペリアルスタウトには地元サンタクルズの Cat & Cloud Coffee が使われている。Moderntime を始め Mad Fritz、BareBottle、Moonraker、Moksa など自分たちでコーヒー豆をロースティングしている、あるいはカフェを経営しているところも少なくはない。
DDH Magic Cabbage / Shred Beer

Shred Beer はほぼ始めのリリースから注目しているブリュワリーで、2025 年も数多くの良いビールをリリースし楽しませてくれた。その中でも印象に残っていたのがこちらのHHD ウェストコースト IPA。ここまで綺麗に雑味なく、ホップの味をうまく引き出した WC IPA に正直出会うことは非常に稀だと思っている。モザイク、モザイク Cryo、そしてストラタを使っていて極限までモザイクを味わえた。感覚が研ぎ澄まされる様な感じで雑味無くホップ汁を飲んでいる様な濃厚さ。とにかくラベルも含め素晴らしい体験だった。
Shred は他の WC IPA もおすすめで、代表的なものの一つである Evil Dank やコロラド州の Cannonball Creek Brewing とのコラボ Dank Yankers もこれまた良かった。
Shred x Wondrous x Berkeley Yeast のコラボも面白くて Shred がメインのHot Headed WC IPA 、WondrousがメインのCool Headed Cold IPAはどちらもイーストの面白さを体験させてくれた。ちなみにここでいうBerkeley Yeastは元 Cellarmaker のヘッドブリュワー Tim さんということを知るとかなりアツい。
一方で、Hazy IPA もかなり美味しく、代表作 Juice Master は 2025 WBC にて金賞🥇、2024 GABF にて銅賞🥉をHazy IIPA 部門にて受賞している。
そんな Shred Beer のタップルームはこんなところ。
そして、もう 1 パイント
Meer & More / de Garde x 3 Fonteinen

あまりにも 2025 年の最後だったので 10 パイントに入れるかどうか迷ったがここで入れないとこの素晴らしさを書くチャンスがなかったので急遽追加。2025 年に飲んだ最後のビールだったのがこれ。
ムールヴェードル葡萄を使い、2〜7 年バレルエイジされたワイルドエールのブレンド。そしてこれを作り出したのはオレゴン州の de Garde と ベルギーの伝統的なブリュワリー 3 Fonteinen。
このビールではデガルトの若いが故の(一部の人は苦手と感じることもある)鋭さは円くなり、3 Fonteinen 独特のランビックさも残しつつ全体としてうまくモダンな方向性でまとまっている。しっかりとしたムールヴェードル葡萄のフルーツ、軽めのタンニンでドライな後味。このバランスが本当に素晴らしかった。まさに伝統とモダンがうまくコラボした例。
ワイン葡萄を使ったビールは他にもいくつか飲むことができた。印象にのこっているのはRussian River Brewing の Small Batch Series: Pomace Beer 2022、Floodland Brewing の見事なハイブリリッド Pinot Noir 2023、そして既に書いたが Fair Isle もこのタイプは得意で多くを味わうことができた。
番外編
Elder-Fu! / North Park Beer x Russian River Brewing

Pliny the Elder が殿堂入りしているのでこれを入れても良いのか迷い結果番外編にて書くことに。
North Park Beer による Russian River Brewing の Vinnie さんとのコラボのDDH ウエストコースト IPA。Vinnie さんの得意とするホップがいつもの様に層になって押し寄せてくる美味しさ。しかし面白いのがそこに North Park のモダンさが加わり一捻り入ったモダンですっきり軽めな Elder になっていること。まさに Elder-Fu!。使用ホップは Simcoe DynaBoost、Simcoe Cryo、Simcoe、Riwaka、Nectaron、Krush Cryo、Mosaic、Tangier、 そして Amarillo Abstrax Quantum Brite。缶は買えなかったものの、North Parkのタップルームと Toronado の Russian River Brewing のイベント(こちらではなんとドラフトで2杯)飲むことができた。
2025 年は North Park がベイエリアのボトルショップでも見かけるようになり、Humble Sea とのコラボのFog Force 4、TDH Hop-Fu! NPBC9 Edition、Loza-Fu! DDH WC IPA などいろいろと楽しく飲めた。
数々の賞を受賞している North Park Beer のタップルームに関してはこちら。
VinnieさんのつくるPliny the Elder/Younger はこちらでかなり深く触れている。
その他美味しかったビール
Sante Adairius Rustic Ales は自分でも驚くことに 2025 年の 10 パイントには入らなかった。が、枠外には多数ランクイン。いずれも絶品でかなり個人的に評価は高いももの、Oakland Arbor のタップルームができたことにより今まで以上に本数を飲み期待値が高くなりすぎたことが原因と思われる。逆に言うと、全体のクオリティはかなり高く大好きなブリュワリーでだけど、2025 年中にはその中でも特に一歩抜きん出たビールには出会えなかった(が、セラーにはまだ多く 2025 年に購入した SARA のセゾンが眠っているでのそれらにも期待)。
2025年 ビール総括
2025 年は前年程様々な旅行をしなかったが、カリフォルニアの州都サクラメント近郊をかなり開拓できた都市だった。10 パイントでも触れた Geisthaus Brewing には惚れ込み 3 度も行き、Shred Beer は 2024 年に続き 2025 年も周年イベントに参加。そして新たに Movement Brewing や Knee Deep Brewing、Mindscape Fermentations、Burning Barrel Brewing に初めて訪れた。Moksa の新しいファミリー向けのタップルーム Moksa Barrel House や UC Davis の学生の街 Davis にあるレコード店Armadillo Music 内のビアバー The Bootleg (及び近くのThree Mile Brewing) に行くという貴重な体験もできた。久々に訪れた Slice Beer ではその良さを再確認した。さらに北のChicoにある Sierra Nevada Brewing へ Celly Drippins を求めて思いつきでいってしまった。
サンディエゴでは新たに Battlemage Brewing に行き D&D に根差したファンタジー感溢れるタップルームを体験でき、一方でかつての教会を使った Lost Abbey の The Church タップルームでは信仰あふれたビールの体験もした。White Labs Brewing では実験要素満載のイーストの世界を味わい、 California Wild Ales の樽に囲まれたタップルームでの体験はギーク心をくすぐられた。パンク風フライヤーに囲まれた Fall Brewing やストリートカルチャー溢れる Black Plague Brewing (こちらは残念ながら閉店)も楽しかった。


サンタローザ 近郊では Cooperage Brewing に 9 年ぶりに訪れビールやコミュニティの良さを再確認し(猫の Beyoncé さんはその後亡くなられたとのこと。RIP)、Toronadoで常に繋がっているラガーに特化したブリュワリーの Moonlight Brewing にも漸く行くことができた。久々に Mad Fritz のプライベートテイスティングにはビア友と参加し Nile さんの魔法を堪能した。

サンフランシスコ・ベイエリアだと、例年と同じ様なブリュワリーに行っていたが、Ghost Town に行く回数は確実に増えたと思う。また、何度も前を通っていたが入るチャンスがなかったビアバー Ale Arsenal に初めていきラインアップに驚きその後頻繁に通う様になった。
アメリカ以外ではイギリスのロンドンに訪れる機会があり、住宅街の中で最高のビール体験ができる Macintosh Ales、Top 50 UK Beer Awards で一位を取った London Black Nitro Porter をつくっている Anspach & Hobday、ロンドンのモダンなビールのシーンを牽引してきて本当に綺麗なビールをつくる The Kernel、Art District 的なエリアにある Crate Brewery や Beer Merchants、そして The Harp をはじめとするパブでうまいカスクのビールを味わうことができた。

イベントの観点では、Russian River Brewing の Pliny the Younger イベントに初めて大人数で並び(大雨だったものの)Younger を皆で楽しく飲むことができた。また、ありがたいことにトロントのお土産ビール飲む会に呼んで頂き Godspeed Brewery や Bellwoods Brewery、Muddy York Brewing など新たな繊細なビールを味わえ、さらに東海岸からのお土産 Other Half や Torch & Crown のピルスナーやラガーを飲ませていただく会にも参加させて頂いた。
ビアバー Holy Water の12周年や Toronado 38周年、Toronado Barleywine Fest、Cellarmaker 12周年、Sante Adairius 13周年、SARAthon (有志によるSante Adairiusの貴重なビールを飲みまくる会) などのイベント参加を通じて、見たことのある人→挨拶する人→話す人→ビールについて一緒に語る人→その場でボトルをシェアする人というステップで関係が深まるビア友が増えベイエリアのビアコミュニティとの関係も深まった気がする。


映像コンテンツとしては ドキュメンタリー映画 Bottle Conditioned を漸く見ることができ、ランビックへの興味がさらに深まった。
個人的な買い物としては、アンティークショップでついに念願のランビックバスケット(風)を手に入れセゾンなどを飲むときの楽しみが増えた。(最初はかなり注ぎにくかったが、漸く慣れた。)

IBU Beer 活動としては念願にグッズの一つステッカーを作成し、いろいろな人に配ったりお店に貼ってもらったりすることができた。フォロワーの皆さんでサンフランシスコを訪れる際に連絡をくれる方も多く、タイミングが合えば実際にビールを一緒に飲む機会も増えた。

ボトルクラブ
2025 年に入っていたメンバーシップ / ボトルクラブは 以下。
Mad Fritz - Membership
Sante Adairius Rustic Ales - SARA's Cellar
de Garde - Keepers
Fair Isle - The Knitting Circle
Private Press - Membership (new)
昨年からの差分としては、10月に Private Press のメンバーになったこと。継続するためには年間で8本の購入が必要なので、Q2 から少し加速が必要かも。加入時に貰った3本はどれも満足度が高かったので次は ミズナラ系が出ることを期待。


また、メールのみの登録という観点では Hanabi Lager とFoodland Brewing。Floodland は 寄付をすることでカリフォルニアへの発送等も可能かもしれないのでそれを狙っている。
まとめ
2025年もサンフランシスコ・ベイエリアではこの数年同様に多くの変化があった年だった。
ベイエリアクラフトビアシーンの一端を担ってきた 21st Amendment Brewing の閉店には多くの人がショックを受けたし、新めのブリュワリーでは Olfactory Brewing と Rose's Taproom も残念ながら閉じざるを得ず、そして新しいオーナーになったばかりの The Good Hop ボトルショップも12月31日が最後の営業となった。少し離れたところではサクラメントの北にある Mraz Brewing もその長い歴史に幕を閉じることとなってしまった。そしてなんと言っても ビアギークの聖地 Toronado がついに売りに出て新しいオーナーを探しているというニュースが一番の衝撃だった(様々な噂はあるものの詳細はまだ未発表)。

一方で成功しているブリュワリーも多く、それらの規模はさらに大きくなっていく。Fieldwork Brewing は10ヶ所目となる Oracle Park 球場のすぐ前にChina Basin 施設をオープンしたばかりで 2026年中にはすぐ隣に Mission Rock タップルームをオープン予定らしいし、そこから少しだけ南に行った Pier 70 には Standard Deviant Brewing の 2 ヶ所目のタップルームがオープンしお客さんで賑わっている。
Humble Sea Brewing は持ち望まれていたサンフランシスコ市内のロケーションとして観光の中心地である Fisherman's Warf に 6 ヶ所目のタップルームをオープン。East Brother Beer もダウンタウンの中心地である Metreon の中に 2 ヶ所目の初の SF 市内のタップルームを立ち上げ、さらに Laughing Monk Brewing はかつての Barrel Head Brewhouse の跡地に4ヶ所目となるFulton Gastropub をソフトオープン。BareBottle Brewing も 5 ヶ所目となる Walnut Creek のロケーションを開店している。
面白い動きとしては (かつての)Almanac Beer の方向性の変化がある。Almanac は (ドメイン等には残っているものの) 名前からは Beer を除き Almanac としてブランド展開を始めた。店舗も Alameda Adventureland と West Oakland Clubhouse になることで、よりファミリー層が来やすいネーミングや施設を増やしている。Almanac のこの方向性の変化は Alameda のタップルームはもちろんサンフランシスコにかつてあったタップルームができる前のサワービール専門のブリュワリーだった時からから追っかけていることもあり、非常に感慨深い。
同じく Alameda では Park Station という良いラインアップのクラフトビールを提供するビアガーデンがオープンしこちらもファミリー層に集客に力を入れている。
また、HenHouse Brewing と Fort Point Beer が合併して Fort Point HenHouse になったニュースも記憶に新しい。近郊の新しいブリュワリーという観点では Hidden Splendor が2025年に新しく登場。こちらは10パイントで書いた背景もあり是非とも頑張ってほしい。
この様な状況を見て個人的に思うのはベイエリアのクラフトビールの勝負は次のステップに行っているということ。このあたりのクラフトビールは歴史もそれなりにあるのでどこで飲んでも(味の方向性に差はあれど)美味しい。そうなると味単体で客を集めることは難しく、次はいかにお客さんに施設に来てもらうかそして長く滞在してもらえるかになる。上記で書いた規模を拡大しているブリュワリーはいずれもうまくファミリー層を取り入れ、友達・友達家族と集まり際の場としてのスペースの提供を確立し始めている。それは、例えば提供している飲み物の種類であったり(ビールだけではなくワイン、セルツァー、ノンアルビール、ノンアルカクテル)、子供やペットを気軽に連れてこれる環境(砂場や芝生、アウトドアスペース)などであったり。あの Sante Adairius でさえクイズ大会やレトロゲームイベントをタップルームですることでお客さんの滞在時間を長く(故に一人当たりの注文数を増やす)ことに力を入れている。そうすることで年々上がる家賃や材料の値段の高騰に対しての対策をしているのであろう。
この様な変化は他の場所ではまだ必要ないのかもしれない。サクラメントを訪れた時には若い人たちがグループで(あるいは時には一人で)セルツァーのフライトを飲んでいるのも多く見かけたし、全体的に年齢層が若めで活気がある感じではあった。
ただ全体としてノンアルの需要は確実に高まっているのは感じる。個人的にも 2025 年はノンアルを飲む機会は増え Freemont Brewing の Non-alcoholic IPA や Best Day Brewing の Non-alcoholic WC IPA と言った好みのノンアルビールもできた。あの Russian River Brewing ですら Hop Water を提供し始めた。また最近サンフランシスコ市内ではLA発のノンアル専門のドリンク販売店 The New Bar が初の路面店をオープンしてノンアルのジンやテキーラ、ワイン風のスパークリング飲料などの販売をしている。レストランでの提供も多く、かなり多くの場所でノンアルビールの提供はあるし、ハイエンドのレストランでもオーストラリア初のノンアルカクテル NON や場所によっては(ワインのペアリング同様に)ノンアルドリンクのペアリングを提供しているところもある。

一方で Russian River Brewing の Pliny the Younger イベントでは連日多くのビール好きがその一杯の為に数時間並び、今回の Celly Drippins でも久々にPtY以外で朝から行列を見ることができた。ビール好きの最高峰のイベントと言われている Firestone Walker Invitational Beer Fest (FWIBF) のチケットは今年も瞬時で売り切れた(来年こそ!)。この様な状況を見るとやはりビール熱はまだ冷めてはいないと言うことだと思う。
一つ言えるのはこの様なドリンクは人と人を結びつけるのに重要な役割を担っているということ。実際に、コミュニティは小さいものの 2025 年も多くの人と出会い、語り、知識や経験を広げることができた。顧みると 2024 年が出会いの年だったとすると 2025 年はそこからビールを通じて一歩深い交流ができた年だったのではないだろうか。

2026 年も美味しい一杯と良いビアコミュニティの方々に出会えることを祈って、Cheers!
2024 年の 10 パイントまとめ記事はこちら。
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