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【ATD2026カンファレンスレポート①】The Next Renaissance(勇気、コンパッション、慈悲、共感、信頼といった数値化できない人間性こそがコア価値になる)

1. なぜ書くか

様々な情報が飛び交う現代において重要になる中、日本に住む約1億人にはグローバルでの最新の取り組みやトレンドを学ぶ機会が多くありません。Every Inc.では「HRからパフォーマンスとワクワクを」というビジョンを掲げ、グローバルな取組みやアカデミックな文献からD&Iに関する歴史、取組み、事例など”日本なら”ではなく、”グローバルスタンダード”な情報を提供しています。

👉 ATD2026報告会(2025/6/3開催)はこちら

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2. ATDカンファレンスとは

ATD-ICE(Association for Talent Development – International Conference & Exposition)は、世界最大級の人材育成に関するカンファレンスおよび展示会で、ATD(Association for Talent Development:人材開発協会)が主催するイベントです。毎年、世界中から人材開発、学習、組織開発の専門家が集まり、最新の知見、トレンド、スキル、ツールを共有し学び合う場として広く知られています。
2026年のイベント「ATD2026」は、5月17日(日)〜20日(水) にロサンゼルスで開催されました。

👉 ATD International Conference & EXPO

3. 「勇気、コンパッション(慈悲・共感)、信頼」といった数値化できない人間性(非計量化知性)こそが主製品(コア価値)になる」

今年の月曜日キーノート(基調講演)には、元OpenAIのGo-To-Market責任者であり、現在は世界のトップ企業や政府のAIアドバイザーを務めるザック・カス(Zack Kass)氏が登壇しました。

AIの劇的な進化によってインターネットや教育の前提が覆る中、「テクノロジーが人の知性を代替していく時代に、私たち人間はどうあるべきか」という、これからの人材開発・組織開発の核心に迫る非常に熱いセッションが展開されました 。

以下に、講演の要点と、日本のHRプロフェッショナルの方々が日常の実務に持ち帰るべき具体的な「学びと視座」をまとめます。


① AIの現在地:「増強アプリ」から「アグENT(自律エージェント)」へ

  • セッションの要点: GPT-3の時代から現在に至るまで、AIの推論コストは「100万トークンあたり30ドル」から「0.01ドル」へと劇的に急落しました 。これによりAIは、人が指示を出して動かす単なる「効率化ツール(増強アプリ)」の段階を終え、ブラウザや社内データ、システムを自ら横断して目標を自律的に達成する「アグENT(自律エージェント)的AI」へと移行しています 。

  • 日本のHRへの示唆と視座: 日本の多くの企業では、まだ「プロンプト研修」や「ChatGPTでメールや企画書の文面を作ってみる」といった初期段階(増強アプリとしての利用)に留まっているのではないでしょうか。 しかし、これからは「そもそもその業務プロセス自体、人がやるべきなのか」を問い直す必要があります。例えば、毎月の勤怠データのチェックや経費精算の突き合わせ、定型的な一次面接のスケジュール調整などは、2026年内にも「エージェントAIに完全に委任する(手放す)」対象になり得ます 。人事は、社員に「AIの叩き台の直し方」を教えるのではなく、「どの業務をAIに委任し、どこに人が介入するか」という『自動化の境界線』を設計するスキルを育まなければなりません 。

② 「非計量化された知性(Unmetered Intelligence)」がもたらす逆説

  • セッションの要点: 知性という資源が無限かつ低廉に手に入るようになり、「卓越性へのアクセス」が民主化されました 。これは全員が一様に賢くなるという意味ではなく、「手に入った高度な知性を、どう・なぜ活用するか」によって恐ろしいほどの格差が生まれることを意味します 。

  • 日本のHRへの示唆と視座: これまでの日本の人材開発は「知識のインプット(何を学ぶか)」に多くの投資をしてきました 。しかし、知識そのものがコモディティ化するこれからの時代、専攻や過去の知識量と、本人のパフォーマンスや収入との相関は低下していきます 。 HRがこれから育成・評価すべきは、知識の量ではなく、「内発的動機(なぜ知りたいのか)」に基づき、自ら問いを立てて試行錯誤する「メタ学習能力(修練の力)」です 。社内研修のあり方を「答えを教える場」から「未知の課題へのアプローチ方法(エージェンシー)を学ぶ場」へと再設計することが急務です 。

③ 「Idiocracy(映画:26世紀青年)」の危機と、人間性の再発見

  • セッションの要点: AIが「それっぽい正論」や最適解をいくらでも自動生成してくれるため、人間が考えることを放棄すれば、社会全体の認知能力や主体性が低下する(まさに映画『Idiocracy』のような思考停止の世界になる)リスクがあります 。仕事の喪失は、単なる経済的困窮だけでなく、「自己同一性(アイデンティティ)の喪失」という深い精神的ダメージを人に与えます 。だからこそ私たちは、技術時代に「人であること」を集団で再学習しなければなりません 。

  • 日本のHRへの示唆と視座: AIがどんなに賢くなっても、組織を動かすのは「感情を持った人間」です。ザック氏は、認知のコモディティ化が進むほど、医療における『ベッドサイド・マナー(患者への共感や態度)』のように、「勇気、コンパッション(慈悲・共感)、信頼」といった数値化できない人間性(非計量化知性)こそが主製品(コア価値)になると語りました 。 日本のHRにおいても、効率化の先にある「エンゲージメント」や「パーパス(なぜこの組織で働くのか)」の重要性が増しています 。AIの時代だからこそ、人事は社内コミュニケーションに「身体性」を取り戻す(あえて屋外で散歩ミーティングを行うなど)工夫や、社員が「仕事を通じて何者になりたいか」というアイデンティティに寄り添うキャリア支援が求められます 。

④ 楽観主義の倫理(The Ethics of Optimism)

  • セッションの要点: 「AIに仕事が奪われる」「ディストピアが来る」といったネガティブな言説が溢れる世の中だからこそ、意図的に良いニュースを見つけ、次世代に「私たちが創る希望ある未来」を具体的に語ることは、リーダーの道徳的義務である、とザック氏は締めくくりました 。

  • 日本のHRへの示唆と視座: 変革期にある組織において、人事が「不安やリスク」ばかりを語っていては、組織は萎縮してしまいます。「AIを導入して人件費を削る」という引き算の発想ではなく、「AIによって生まれた時間で、私たちはどんなワクワクする顧客価値や新しい事業を創出できるか」という『楽観的かつ具体的なビジョン』を、HRのリーダーシップから発信していきましょう 。


まとめ:どんな世界を創っていくかのチャレンジが、今ここにある

ザック・カス氏のセッションは、単なる最新テクノロジーの紹介ではなく、「人間らしくあることの解像度を上げ、より人間らしい組織を創るための、HRへのバトン」となる講義でした 。

AIがコモディティ化する2026年現在、私たちEvery Inc.もまた、「HRからパフォーマンスとワクワクを」というビジョンのもと、単なる効率化を超えた「グローバルスタンダードな組織開発・人材開発」の知見を日本の皆様にお届けし続けます。

AI時代に求められるHRBPのスキルや、世界基準の人事制度設計にご興味のある方は、ぜひ各種講座やツアーの詳細をご覧ください!


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執筆者紹介:松澤 勝充

神奈川県出身1986年生まれ。青山学院大学卒業後、2009年 (株)トライアンフへ入社。2016年より、最年少執行役員として組織ソリューション本部、広報マーケティンググループ、自社採用責任者を兼務。2018年8月より休職し、Haas School of Business, UC Berkeleyがプログラム提供する Berkeley Hass Global Access Program にJoinし2019年5月修了。同年、MIT Online Executive Course “AI: Implications for Business Strategies”修了し、シリコンバレーのIT企業でAIプロジェクトへ従事。

2019年12月(株)トライアンフへ帰任し執行役員を務め、2020年4月1日に株式会社Everyを創業。企業の人事戦略・制度コンサルティングを行う傍ら、UC Berkeleyの上級教授と共同開発したプログラムで、「日本の人事が世界に目を向けるきっかけづくり」としてグローバルスタンダードな人事を学ぶHRBP講座などを展開している。

保有資格:
SHRM-SCP(SHRM)
CPTD(ATD)
Senior Professional in Human Resources – International (HRCI)
Global Professional in Human Resources (HRCI)
The Science of Happiness(UC Berkeley)他

#FunwithHR #EveryHRAcademy

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