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芸にすべてを捧げた男 映画『国宝』

一言では言い表せない感想の言葉が切れ切れに頭の中をモヤモヤと漂っていて、整理できていない。

あれは、『源氏物語』または『あさきゆめみし』の感想文だったと思う。「雲隠」の章の直前、光源氏が姿を現した最後の場面を「昔と変わらず美しかった」と表現していた。それを誰かが「それが凄く残酷で悲しかった」と書いていた(たぶん大塚ひかり『源氏の男はみんなサイテー』だったと思う)。小説の場面そのものよりも、感想の方が心に刻み込まれた。

映画『国宝』ラストシーンに、それと同じものを感じた。

原作とは少し違う終わり方だったが、映像だからこそ、それでいいのだと思った。昔と変わらず美しく、さらに芸が磨き込まれた姿で。

すべてを犠牲にして芸に昇華させた男の舞う姿の美しさ、凄絶さ、哀しさ。家族も、師匠も、親友も、妻も、愛人も、娘も、何もかも犠牲にして……芸だけを追求し、芸の頂点に立ち、その目に何が映るのか。芸という果てしのないものに、有限の命と肉体と精神を捧げた末に見えた景色とは。

生の歌舞伎もシネマ歌舞伎もそこそこ観ているのだが、観客の目線からは見えない角度で、演者や裏方でないと見えない場所や表情も見えるだけに、ものすごく密度の濃い時間だった。3時間弱でも長いとは感じなかった。



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