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美佐江に愛されなかった美雪だからこそ

『虎に翼』最終週のシナリオをオンラインで受け取り、一気に読むのが惜しくて、一日かけて、ちびちびと読んでいる。放送時間の都合とはいえ、あの場面やこのセリフがオンエアされないことが惜しい。

万能感・特別感に酔う美佐江、ありきたりを怖れる美雪

上記記事はオンエア場面から書いた感想だけど、シナリオを読むと、あぁやっぱりそうかと思った。美雪が「どうして人を殺しちゃいけないのか」と美佐江そっくりの顔で寅子に詰め寄った場面。

寅子の答えは、まず法。刑法、そして憲法だった。

寅子「どうして人を殺しちゃいけないか。刑法で定められているから」
美雪「罰を受ければ殺しても構わないと?」
寅子「憲法で、すべての国民は平等で、個人の人権が尊重されていると定められている。人権は、どこでも誰でも、人が人らしく生きていく権利……殺された側も殺した側も【人らしさ】を失うことになる」
美雪「(ニヤニヤ)……人らしさ、非常に定義が曖昧な言葉ですね」
寅子「殺人が正当化されると、いずれ、その力や手法を持つ者が社会や人を支配することになる」
美雪「(ニヤニヤ)……いずれでなく、私個人のたった一度の話ならば?」
寅子「……あと言えることは、奪われた命は元に戻せない」
音羽「……」
美雪「(ニヤニヤ)……元に戻せない」
寅子「死んだ相手とは言葉を交わすことも、触れ合うことも、何かを共有することも永久にできない……だから人は生きることに尊さを感じて、人を殺してはいけないと本能で理解している」
美雪「(ニヤニヤ)……」
寅子「それが長い間考えてきた、私なりの答え……でも答えは一人一人が見つけることだと思うし、ここまで話して理由もわからず納得できないなら【納得できなくても黙って従いなさい】としか言えない」
と言いながら美雪の横に行き、彼女をまっすぐ見つめる。
音羽「!?」
寅子「権利を奪う側の納得は要らない。理由がわからないからやっていいじゃなくて、分からないからこそやらない、奪う側にならない努力をすべきと思う」
美雪「(寅子に見つめられてクスクス笑い)……そんな乱暴な答えで、母は納得しますかね?」
寅子「美雪さん、私は今あなたの質問に答えています。お母さんの話はしていません」
美雪「(笑顔は消える)!」
(中略)
寅子「……美佐江さんはとても頭は良かったけれど、どこにでもいる女の子だったと思う」
美雪「……どこにでもいる女の子が、人を支配して操ろうと思いますか?」
寅子「苛立ちを発散したかっただけかも。自分の持つ力を周囲に示したかっただけかも。ご両親から自立したくて、間違った方向に行っただけかも。戦中戦後の価値観の変化に順応できなかったのかも。もしくはただ、誰か大人に自分をわかって欲しくて、愛して欲しかっただけかも知れない」

吉田恵里香『虎に翼』最終週第126話〜第127話」

あぁ、寅子はやっぱり刑法を説き、憲法を説き、その後で倫理を説いたのだった。私の直感は間違ってなかった。その上で、情に言及する。このあたりが「愛の裁判所」で多岐川や仲間たちと育んできた、少年少女たちへの愛から紡がれた、寅子の半生が込められた言葉だったのだろう。

美雪が寅子に応じたのは、寅子が美佐江について言った「もしくはただ、誰か大人に自分をわかって欲しくて、愛して欲しかっただけかも知れない」という言葉に自分の心を言い当てられたように思ったのではないかな。

おばあちゃんは離婚して森口の家を離れて自分を育ててくれたけど、美佐江の面影を美雪に見て怯えていたかも知れない。

「愛さなくてごめんね」という残酷な遺言を遺して死んでいった母親への様々な感情が、母の行動をなぞり、寅子を試す言動に出た。でも美佐江とは違う、美雪ならではの人格と感情が暫くの冷却期間を経て「おばあちゃんと暮らしたい」と言わせた。

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最終週は本当に盛り沢山だったので、引き続き、記事を書きたい。


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