「結婚はしなくても良いかもね。」と彼が言った。
「結婚はしなくて良いかもね。」
と彼が言った。
「うんうん。そうだよねぇ」
と私はこたえた。
寂しいとか残念とかの気持ちは一切感じなくて、清々しい気持ちになった。
ああ、私、やっぱり結婚したくなかったのか。
バツあり、子どもあり、孫あり、持ち家あり、と共通点の多い私と恋人は五十代半ば。
もう子どもも作れないし、社会的にも金銭的にも自立している。
結婚する理由が見当たらない。
結婚するとすれば、その理由は…。
同じ墓に入れるかどうか、ぐらいかな?
私、結婚に向いてないみたいだし…。笑
お付き合いしている人に言われる
「いつか一緒に暮らそうね」
のあとに「さくらの家で」が続くと萎える。
って記事も書いたことあったなぁ。
恋人も何度か、そう言っていた。
「いつか、さくらの家に住みたいな」
言葉に出したことはないけれど
そのたびに「いや…。無理…。」
と心の中で思っていた。
ところが。
先日彼が
「さくらの家に住みたいって、何度か言ったことあるけど、本気じゃないからね?」
と言い出した。
本気じゃないの?
なら、なんなの?
冗談?
笑えないけどね?
ま、本気じゃないならそれで良い。
なんだか安心した。
彼が「ちゃんとしてる人」だって思えた。
「さくらは、この先のこと、どう考えてるの?僕と一緒に暮らしたいって言ってくれてるけど、具体的には、どう思ってるの?」
彼のお母様が倒れたあとに「この先、どうやって生きていこうか」と頻繁に話をしてきたこともあるのだろう。
彼がストレートに聞いてきた。
いままで、のらりくらりとしてきたけれど、ここで本当の気持ちを話した方が良いのかもしれない。
彼の想いとあまりにも違って、ふたりの仲がこじれるかもしれないけれど、それならそれで仕方がない…。
意を決して自分の考えを彼に伝えた。
いまは娘とふたり暮らしだけど、進学や就職で家を出ていけば、いずれは私がここで、ひとりで住むことになる。
でも、家を出た子どもたちが帰ってきても良いように、この場所を保っておきたい。
私みたいに子連れでバツをつけて帰ってくるかもしれないしね。笑
その時に「知らないオジサン」が家に住んでいたら、子どもたちは居心地が悪いと思う。
私の最優先は子どもたちだから、正直に言うと、あなたと一緒に暮らすのは難しいと思ってる。
あなたが完全に引っ越してきてしまうと、ここが子どもたちの実家では無くなってしまう。
だからあなたが荷物を全部ここに運んで一緒に住む、とかの完全な同居をするつもりはないんだ。
でもね。
もし、私がひとりで暮らすことになったら、いつでも家に来て欲しいし、あなたと毎晩一緒に眠るのも素敵だと思ってる。
よし!
伝えた!!!
さあ、どう出る???
「なるほどねぇ。そりゃあ子どもが一番大切なのは当たり前!ちゃんと説明してくれたから、納得できたよ。その方向でも構わないから、さくらと一緒にいられたら嬉しい。」
彼は穏やかに同意してくれた。
そしてさらに話は進んだ。
「じゃあ結婚は?僕はいつか、さくらと結婚したいと思っていたんだけど。」
うーん…。
いい機会だから、これも正直に話すか…。
結婚したいって思ってた一番の理由は、お墓のことなの。
死んだら別々なのは寂しいと思って。
でも最近、死について良く考えてみたら、別に、お墓が違っても構わないかなって思ってる。だって、もう死んでるしね。笑
私があなたのお墓に入ったら、子どもたちから、お墓参りするのが大変だって苦情が来るかもしれないし。まあその時は死んでるけど。笑
でも私の左手の薬指の骨だけは、あなたのお墓に入れてね?
まあお墓の件は、そんな感じ。
あとは財産の件ね。
結婚したら、ふたりの財産がひとつになるでしょう?
私たちには合わせて7人の子どもがいる。
残された7人が財産を分ける時に、めんどくさかったり、いざこざしたりするぐらいなら、資産は別々のままの方が良いよね?
私の資産は私の子どもたちに。
あなたの資産はあなたの子どもたちに。
それがわかりやすくて良いと思ってる。
となると籍は入れなくても良いのかなぁ?
って、いまのところは考えているよ。
「なるほどね。さくらの考えてることは理解出来るし、そう言われたらそうかもって納得した。」
良かった!
「良く考えてみれば、結婚は、しなくて良いかもねぇ。」と彼が言った。
「うんうん。そうだよねぇ」と私が言った。
「でも、ずっと一緒にいてね?」
と私の顔を覗き込む彼が可愛くて可愛くて、ぎゅうぎゅう抱き締めた。
思っていることは丁寧に伝える。
上からでもなく、下からでもなく、真摯に向き合って伝える。
そうすれば相手は受け入れてくれる。
彼とは、たくさん、いざこざしてきた。
逆ギレもあった。
大喧嘩もあった。
別れ話も何度もしてきた。
これからも、あるかもしれない。
それでも、丁寧に伝えることを諦めずに繰り返していこう。
彼はきっと心を開いて聞いてくれる。
もう以前の彼とは違うのだから。
(と、思いたい。笑)
