郷に入ったおしゃれ、毎週ショートショートnote裏お題、409文字
十月、出雲に着いた。神々が集まるという神在月。
土地に馴染む服を探していた。
「郷に入っては郷に従え」
それが旅先おしゃれの鉄則。だが街の人々は地味だった。見慣れた地方の保守性だと思った。
駅裏の裏通りにぽつんと建つ古びた古着屋に入り、埃の匂いの漂う店内で、店主に尋ねた。
「出雲らしい服はありますか」
「これが郷のおしゃれ」と店主が服を一つ差し出した。
購入し、そのまま着替えて店を出た。
路地で子供に手を合わせられた。老人が道を譲ってくれた。カフェのガラスには自分が映らなかった。宿に戻って鏡を見ると、顔が少しずつぼやけている。SNSにアップしたはずの写真には自分が写っていない。
脱ごうとすると、服が肌に吸い付いて剥がれない。
境内の奥、誰もいない拝殿の前に立つ。そこには自分と同じような格好をした者たちが、静かに並んでいた。
もう、どこにも帰る場所はない。出雲の地で郷に従うと言う意味をようやく理解した。
私は、もう、神になったのだ。
