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落とし物、星、片思い文芸部、1168文字


落とし物というお題の締め切りに間に合わなかったので、先週のお題「落とし物」と今週のお題「星」の両方を消化します。

↑お題は、『「落とし物」という言葉から始まる物語』

↑お題は『「星」という言葉から始まる物語』

パターン1
「落とし物」をお題にした時のプロローグ

落とし物を、市立図書館の裏手、砂利がまばらに敷かれた細道の端で見つけた。錆びた鍵。鈍い金属の塊。頭部に二重円の意匠、星座のような点が散りばめられていた。

パターン2
「星」をお題にした時のプロローグ

星を見上げると思い出す。
あれは、私が、落とし物を拾ったことから始まった。

落とし物、それは、市立図書館の裏手、砂利がまばらに敷かれた細道の端に落ちていた。錆びた鍵。鈍い金属の塊。頭部に二重円の意匠、星座のような点が散りばめられていた。

プロローグに続く文章(共通)

私は仕事を辞めた帰りだった。通知は一枚の書面。上司は目を合わせることもなかった。通い慣れた通路、使い慣れたIDカード、そのすべてを奪われ敷地内を彷徨っていた。鍵はその時間の中で見つけた。

私は鍵を拾い、顔を上げた。視線の端に浮かぶ鉄扉。たしか、今は使われていないプラネタリウム館。その扉は、鍵を差し込むと、ギギギと音を立てて開いた。

誰も来ない場所。埃と黴の混ざった匂い。使われなくなった投影機。ドーム状の天井にはひびが走り、円形に配置された椅子の一つに、皮革の表紙のノートが置かれていた。

開くと、業務日誌なのか、入場者数や観客の反応などが書かれていた。しかし、ある時から内容が変わる。これは日記だった。

毎週金曜、彼女はやってくる。
彼女の右手をそっと包む。人差し指だけが、まっすぐ夜空をなぞるように伸びていた。他の指は折られていた。私はその手を軽く支え、星を順に指差していく。
すると彼女は、柔らかな声でつぶやいた。
「いつも、ありがとう。見えた気がする」


その日記の主は、かつてここで案内係を務めていた職員なのだろう。彼は一人の来館者のために、毎週、金曜日に投影を行っていた。視覚に障害のある少女。星を目ではなく、指先で読もうとする彼女。彼はその姿を、記録し続けていた。

投影が終わると、彼女はいつもこう言った。
「星が見えた。……あなたのおかげで」
私はただ、笑った。彼女に、私の笑顔は見えないのに。でも、何も言えなかった。
そう、好きだと、一度も言えなかった。


彼は彼女を愛していたのだ。名前も、住所も知らぬまま。ただ、彼女のために星の配置を指し続けていた。

彼女は言った。
「ありがとう。明日、入院するの。成功率は低いけど手術で目が見えるようになるかもしれないの。また、星空の下で会えたらいいね」
私は答えなかった。声が出なかった。
今も、その言葉だけが耳に残っている。


次の週からは同じようなことが、繰り返し、繰り返し、何ページも書き続けられていた。
彼女が現れないことと、心配する言葉。

私はその日記を閉じ、目を閉じた。あまりに優しく、あまりに切ない物語が、この場所にあった。

翌週、図書館を訪れると、裏手の扉には、「立ち入り禁止。解体予定建築物」の紙が貼られていた。誰かの片思いは、誰にも気づかれぬまま、終わろうとしていた。

それでも、彼は一度も彼女に告げなかった「好き」のすべてを、星に込めていたのだろう。その愛が報われたかどうかは、誰にもわからない。けれど私は今でも、ときどき夜空を見上げて、煌めく星を順に指差してしまう。

たとえ確かめることができなくても、彼女は、彼のもとに戻ってきたのだと思いたかった。

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