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誤解陸上、毎週ショートショートnote、410字


スタートラインに立つと、観客席からのどよめきが波のように押し寄せてきた。
世界陸上のトラックでの緊張はハンパない。
左右を見れば、隣には世界記録保持者、もう片方にはオリンピック王者。二人とも硬い表情で地面を見つめ、スタートの瞬間を待っている。

心臓が高鳴る。鼓動が耳の奥でドクドクと響き、世界中の視線が背中に突き刺さる。
深呼吸を一つ。地面に指をつき、腰を高く上げる。トラックの粒が指先に食い込み、足裏にスターティングブロックの冷たさが伝わる。

パンッ!

号砲が響くと同時に、全身のバネを解き放った。
スタートが命だ、一歩、二歩、三歩。

どかっ。

衝撃が額から全身を駆けめぐり、視界がぐるりと回る。気づけば尻もちをついていた。

耳に届くのは歓声ではなく、エアコンの低い唸り。
目の前には自室の壁。

足元にはVRゴーグルが転がっている。壁にぶつかった拍子に外れたらしい。
汗ばんだ額をぬぐいながら、僕は苦笑した。

陸上競技は、VRでやるもんじゃない。

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