見出し画像

古墳症、毎週ショートショートnote、503字


俺には、自分で古墳症と呼んでいる症状がある。
古墳に近づくと、声が聞こえるのだ。
「来るな」

母にその話をすると、母は妙に真面目な顔をして、こう言った。
「あなたのお父さんもよ。あなたの先祖の関係で…」

それから俺は、自分なりの解釈をした。きっとうちは、古い王族か豪族の流れなのだろう。古墳に眠るご先祖様が、まだ来る時期じゃない、生きろ、頑張れ、と俺に語りかけているのだ。祖霊の愛だ。

そんなとき、参加した大学の歴史イベント。地元の古墳群をめぐる散策会で、考古学教授が案内してくれた。
「この地域では、古墳時代後期に…」

その時だ。
「来るな」

俺は思わず苦笑した。久しぶりだな、ご先祖様。わかってるって。まだそっちには行かないよ。
すると教授が、こちらを見た。

「顔色が悪いけど大丈夫ですか」

「いや、実は昔から、古墳に近づくと声が聞こえるんです。来るな、って」

教授は「あ」と小さく声を漏らしたあと言った。

「古文書に書いてありました。てっきり、迷信だと思っていました」
「やっぱり、王族の…」
「はい。古墳の墓泥棒にそういう呪術を施したと」

「墓泥棒?」
「そう、盗掘です。きっとあなたの先祖が…」

その時、また声がした。

「来るな。盗むな」


いいなと思ったら応援しよう!