額に入った夕暮れ、毎週ショートショートnote、409文字
夕暮れの絵があまりにも美しく、私は一目で心を奪われた。いつまでも見ていたいと思い、そのまま買い取ることにした。
ある日、絵の中の川沿いの小道に、人影を見つけた。肩の線、首筋の痩せ方──そのすべてが、私自身の後ろ姿に思われた。
絵の中の私が、ゆっくりと振り返った。肩がわずかに傾き、顔の輪郭が現れ、眼がこちらを向く。私の顔だと認識した瞬間、視界が反転した。
絵の中から見た風景──目の前に古びた部屋と、椅子に座って絵を見つめるひとりの人物がいた。それは、紛れもなく私だった。
その意味など、もうどうでもいい気がした。
目の前に広がる夕空を見上げてみた。
視界の中に、これまで見えなかった無数の人影が現れた。過去にこの絵を手に入れた者たちが、皆同じように取り込まれ、川沿いに黙って立ち尽くしていた。
よく見ると、木々の影や瓦屋根の隙間にも、人の顔が浮かび上がるようにして佇んでいた。
皆、沈む光の一部になり、夕暮れの中に溶け込んでいった。
