七夕の歩幅、毎週ショートショートnote、410字
七夕祭り。彼は不思議な姿をして登場した。足首に鎖。そしてその先には鉄球。
「何、その格好」
彼は微笑んだ。
「周りを見てごらん」
アイドルみたいなステージ衣装の女の子。宇宙服を着た子。プロ野球球団のユニフォーム。
「今年から七夕は、短冊だけじゃなく、その願いの姿に仮装することになったんだ。文字だけより、星に願いが届きやすいだろ」
「で、その姿は?」
「僕の願いは、君と同じ歩幅で歩くこと。ゆっくり歩くのって辛いんだ」
「まあ、そういうことなら」
そして、手を繋いで歩き出した。私のいつものペースで歩いている。彼を追って早足になることも、彼を待たせることに申し訳なく思うこともない。
話し声が聞こえてきた。
「おい、あいつ、奴隷になりたいのかよ」
「隣の子、可愛いぞ。俺もあんな子の奴隷ならなりたい」
「待て。女の子の願いなのかもしれない。あいつを奴隷にしたいとか」
「もうやめて、そんな格好」
私はカバンから、底にスプリングのついた靴を取り出した。
