甘噛み県民、毎週ショートショートnote、410字
島根って何もないよねと言われても、反論せず、ニコッと笑う。
でも心の支えがあった。
島根は神々が集う神の国という事実。
石見✳︎の人は考えた。
神のトップは天照大神…略して天神。
ならば島根は天神県と言ってもよいのではないか。
県知事が宣言した。
「我らは天神県民」
が、他県民が首を傾げた。
「甘噛み県民?」
「島根の人って、最初ちょっと距離あるよね」
「仲良くなるまで様子を見る」
「LINE、返事遅い。でも既読はすぐつくよね」
「自虐はするのに、褒めると急に照れるよね」
初対面で距離を詰めない。
まずは様子を見る。
相手の出方を待つ。
いきなり、敵意を見せて噛みついたりしない。
犬のように親愛をストレートに伝えることができず、猫のように近づいては、試すように会話をする。
「これ、甘噛みじゃないか?」
誰かが言った。
いつのまにか、島根県民は甘噛み県民と誰もが認めるようになった。
しかし、出雲✳︎人は知っている。
天照大神は天界にいて、出雲に来ないし関係ない。
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✳︎1 石見=島根県西部のこと。
✳︎2 出雲=島根県東部のこと。
島根県は、仙山峠を境界として東部と西部に分かれる。東部と西部では、言葉も文化も風習も、何もかもが違う。お互いの言葉が理解できないほど違う。
全国の神々は、旧暦10月、出雲に集まる。しかし、天照大神は、いつも天界にいて、この時も出雲には来ない。だから、島根には関係ないのだ。
出雲大社に祀られているのは、素戔嗚尊。天照大神の弟。
兄弟は、三貴子: イザナギの禊によって生まれた三柱の神(アマテラス、ツクヨミ、スサノオ)。
