勘当ガイドブック、毎週ショートショートnote
娘が男を連れてきた。結婚の報告だという。
報告?
まずは、許しを乞うものだろう。私はソファに深く座り直し、辞書を片手に言った。
“I can’t give you my daughter.”
「お前に娘はやれん」というつもりだった。
男は顔を前に出した。
「当然です。結婚しても彼女はあなたの娘ですから」
どうやらgiveを所有権の完全移譲のように受け取ったらしい。娘は私の所有物じゃない。
いったいなんて言えばいいのだろうかと、また辞書をペラペラとめくる。
男は、顔を揺らした。
「giveだと勘当して私にくれるという意味では? 手に持つ本は勘当ガイドブックですか?」
おかしい。
英語圏でも、“I can’t give you my daughter.”は慣用的に正しい英語のはず。
お互いに母国語ではない英語で話すから通じないのだろう。
私の頭が古いのだろうか?
失礼なこととは思いながら、あらためて、相手の全身を眺める。
娘が選んだ男なら認めるべきなのだろうか。
手が8本、足が8本ある異星人が相手だとしても。
