木工用バント、毎週ショートショートnote、608文字
公民館の前を通りかかると、チラシを配っていた。
「宮大工が教える木工教室があります。参加しませんか?」
私の前の人でチラシはなくなったが、私は即座に申し込んだ。
宮大工といえば、釘やボンドを使わず、木に開けた穴へ別の木を差し込んだり、面をギザギザに刻んで、ぴたりと木と木を噛み合わせる技術を持っている。
そんな人から木工を学べるなら、これ以上ない。
当日、ガタイのいい講師が教室にいた。
「木と木をくっつけるところから始めます!」
机の上にあるのは、加工された木片と、なぜかバットとボールだった。
私は部材を手に取って、穴と突起を合わせてみた。きつくて途中までしか入らない。
こういうときは、木槌で軽く叩いてはめるのだろうが見当たらない。
私はバットを持った。
「こらっ!バットが傷むだろうが!」
講師は怒声をあげ、ボールを私の顔めがけて投げてきた。
私は反射的に、手に持っていた木片を顔の前に掲げた。
ボールは木片に当たり、床に転がる。
見ると、さっきまで中途半端だった継ぎ手が、少しだけ奥まで入っている。
「入っただろ。きちんと入るまでやるぞ!」
二球目、三球目、四球目。継ぎ手がじわじわと奥まで入っていく。
「衝撃を逃がすな!芯を外すな!手首を殺せ!」
何の指導なのか、木工用バント?
「先生、本当に宮大工ですか?」
「いや、私は、少年野球チームの監督をしている宮台だ。この辺では、木工名人としても知られている」
「宮台くん?宮台くんが教える木工教室…」
