見出し画像

連続達人事件、毎週ショートショートnote


「本当にそれでいいのか?」
危険察知の達人になりたいと願う僕に、神はそう問いかけた。
「はい」
僕は迷わずに答えた。
そして、世の中のために街へと出た。

最初の事件は公園だった。
ボールが弧を描きながら転がり、子供がそれを追いかける。ボールが道路に出る未来が見えた。僕は瞬時にダッシュした。ボールをキャッチし、子供が飛び出さないように押し戻した。その勢いが強すぎて周囲の子供たちまで巻き込み、数人をなぎ倒してしまった。
「きゃー!」
僕は弁解しようとしたが、子供たちは泣き出し、保護者が駆け寄ってくるのが見えた。逃げた。

次は交差点だった。
子供が飛び出し車に轢かれる未来が見えた。
僕は猛ダッシュで子供に近づき抱きしめた。女の子だった。車は何事もなかったように通り過ぎる。
女の子が泣き出した。周囲の大人が駆け寄る。
「何をしてるんですか!」
逃げた。

人混みの中でスリが財布を盗む未来を見た。
スリの手が伸びる瞬間、僕は猛ダッシュした。
スリの手から財布を掴み取り、そのまま反射的に拳を振った。
スリは吹き飛び、地面に転がると叫んだ。
「スリだ!」
財布を握りしめ僕は叫んだ。
「いや、違う、僕は――」

そこで、神の声が響いた。
「世の中のすべての出来事には、それを司る神がいる。命が救われることも、命が失われることも、それぞれに定められた役割と秩序がある。お前は死神の領域を侵しすぎた。救うことで、死神が怒ってバチを与えたのだ」

僕は地面に膝をついた。
「でも……救いたかったんです」
「救うことは時に、別の破滅を生む。それが理解できない限り、お前はこの力を持つ資格はない」
(664文字)

いいなと思ったら応援しよう!