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おじさん箪笥、毎週ショートショートnote裏お題、519字




それは、ほんとうに唐突だった。

母が祖母の遺品の箪笥の下段をギギッと開けたとき、中からぬっと出てきた。
和服を着た中年男性、やたらと礼儀正しくこう言った。

「お世話になります。おじさんです」

姉は悲鳴をあげ、父は110番しようとしたが、母が妙に落ち着いていて、あろうことかお茶を淹れた。

おじさんは代々、箪笥に憑いて、家庭を守っているらしい。

姉の就職面接前夜、おじさんは言った。「スーツはネイビーがいい。面接官、青が好きだから」
結果、姉は内定を勝ち取った。

父が昇進をかけたプレゼンで悩んでいたときは、「スライドにひとつ、無意味なのを入れて、出てきたら飛ばせばいい。時間調整していて、余裕があるように見えるから」
なぜかそれが大ウケして、父は係長から課長に昇格した。

そして、俺が好きな子に告白するか悩んでいた夜、おじさんは箪笥から顔だけ出してこう言った。

「わざわざ呼び出さず、帰り道で気軽に声をかけたらいい」
不思議と彼女が一人になるタイミングがあり、なんだか告白できた。結果は、まあ、それなり。

そしてある日、ふいにいなくなった。

姉が結婚した朝、箪笥の前に小さな置き手紙。「姉ちゃん、心配だから、あっちに行くね」
両親と僕、無言で見つめて、それから笑った。

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