交差する孤独【告りびと】
「交差する孤独」
彼は告りびとだった。恋する誰かの代わりに告白する仕事。
「告りびとの俺は誰からも告られない。寂しいよ。告白対象のやつが困惑するのを見ると贅沢だと思うよ。お前は好かれてて、俺は頼まれた。喜べよ」
ぽつりとこぼしたその言葉に、彼女は眉を寄せた。
幼馴染の彼女は、じっと彼を見た。
「あんたさ」彼女は呆れたように言った。「ほんと、鈍感すぎる」
かすれた声だった。
「ずっと、あんたのこと好きなんだよ。初恋をずっと引きずってんだよ、私、馬鹿みたいだね。笑ってよ」
目を見開いたまま、彼は動けなかった。声をかけることも、手を伸ばすこともできなかった。
彼女は、ひとつ息を吸うと、潤んだ瞳で彼を睨んだ。
「自分だって、困惑してるじゃない」
そう言い捨てて、彼女は踵を返した。小さな靴音が、アスファルトに響く。彼はその場に立ち尽くし、ただその背中を見送るしかなかった。
彼は、ずっと動かないまま、目を伏せていた。長く伸びた影の上に、彼の小さな溜息が落ちた。
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