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メルトダウンする伯爵、毎週ショートショートnote、430字


冥界の硫黄の霞に包まれた玉座で、地獄の伯爵は温度計を見つめていた。

目盛りは、かつて見たことのない赤を指している。
人間たちの悪意、嫉妬、虚栄、怨嗟…そんな邪悪な熱が地獄の炉に伝わり、炎を強めていた。
伯爵は長年、その温度を一定に保ってきた。

だが今、炎が暴れ狂っている。地上の人間たちの怒りと憎悪が、限界を超えているのだ。
伯爵は冷却塔のバルブを開こうとしたが、手は震え、溶けかけた指がハンドルに貼り付いた。
ついに、魂の融点を超えた。

過熱した地上の悪意に引かれるように、冥界の罪人たちが次々と蒸発していく。
伯爵は崩れ落ちながら呟いた。
「なんということだ。本来なら、罪も記憶も洗い流されてから生まれ変わるはずなのに。
いまは、汚れたままの魂が、そのまま地上へ還っていく」

その言葉を残し、伯爵の姿は溶けるように消えた。

駆けつけた閻魔大王は、膝から崩れ落ちた。
「地獄は消える。もはや、地上こそが地獄になるのだ。
もう、生まれ変わりはない。最後のひとりが死んだとき、人類は滅びる」

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