おせち風呂、毎週ショートショートnote、436字
正月くらいは温泉気分を味わいたかった。
しかし時間がない。移動も面倒。
ならば自宅の風呂で入浴剤。
温泉気分といえば、湯に酒を浮かべて飲む、あれである。
だったら、おせちも浮かべてしまえば完璧ではないか。
正月感、倍増。
実行したが、退屈だった。
スマホを持ち込み、ぷかぷか漂うおせちの横でSNSを眺める。
まだ何かが足りない。思い出せ。
温泉、酒、岩風呂…
そうだ。猿だ。
だが我が家に猿はいない。
いるのは猫だけだ。
「正月くらいは、あいつも綺麗にしてやるか」
間違いだった。
連れ込んだ瞬間、猫は叫び、暴れ、跳ね、酒を倒し、おせちを蹴散らし、スマホを湯に沈め、私の理想の正月を三秒で破壊して逃げた。
おせちを食べれば、健康も金運も人生も、まとめてうまくいくはずだった。
だから私は、「もったいない」という日本人の美徳を発動し、湯に浮かんだおせちを掬い上げて食べた。
結果、腹を壊し、仕事の連絡を見逃し、正月の集まりにも行けず、一人で布団に横になった。
縁起とは、大切に扱わないと、全部、裏返るものらしい。
ーーー
おせちが裏返ったことと、縁起が裏返るをかけたわけですな。
あけおめーっす。
