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君が生まれた日。

愛する娘へ

君がこの世界に生まれた日。
パパはあの日のことを、一生忘れない。

君にとってはまだ知らない話かもしれないけど、今日はその日がどれだけ特別だったかを話したい。


陣痛がきた

予定日を3日過ぎた深夜、ママがふいに「痛い…」と呟いた。
顔を歪め、眉間にシワを寄せるママを見て、パパはすぐに理解した。

「これが、陣痛だ。」

慌てて病院に電話すると、「まだ初期段階だから朝まで様子を見てください」とのこと。

本当に待っていて大丈夫なのか?

そんな不安を抱えながらも、パパにできるのは、陣痛の間隔を測ることだけだった。

ママは痛みに耐えながら、ゆっくりと呼吸を整えようとする。
その顔は苦しそうで、見ているだけで胸が締めつけられた。

夜が明ける頃、痛みの間隔はどんどん短くなり、もう限界だった。

急いで車に乗せ、病院へ向かう。
10分の道のりが、異様に長く感じた。

「もうすぐ、もうすぐだから。。。」

そう言いながらも、パパはただ焦るばかりだった。


待つことしかできない時間

病院に着くと、すぐにママは検査に入った。
コロナ禍で立ち会いが制限されていたため、パパは外で待つように言われた。

「旦那さん、今日は長くなるかもしれません。お食事でも買ってきてくださいね。」

助産師さんにそう言われたけど、コンビニで買ったパンとコーヒーは、全く味がしなかった。

車に戻り、病院を見つめる。
じっとしていられず、何度も車の外に出て、病院の周りを歩き回る。
まるで不審者みたいだったと思う。

「今、ママはどうしてるんだろう?」
「ちゃんと君は元気なんだろうか?」

考えても仕方ないのに、不安が止まらなかった。


君の小さな鼓動

ようやく病院に入れてもらえたのは、10時を過ぎてからだった。

ママの顔は汗で濡れ、時折痛みに耐えきれず声をあげる。
それでも、医師は「まだ時間がかかります」と冷静に告げた。

パパはママの手を握る。

「大丈夫だよ、一緒に頑張ろう。」

そう声をかけるしかなかった。

すると、看護師さんがママのお腹に聴診器を当て、ふと微笑んだ。

「赤ちゃん、しゃっくりしてますよ。」

小さな音が規則的に響く。

その瞬間、ママの険しい顔が、ふっと緩んだ。

「お腹の中で、こんなに頑張ってるんだね。」

か細い声でそう呟くママを見て、パパは少しだけ救われた気がした。

「君は、お腹の中で頑張っている。」

それを知るだけで、不思議とパパもママも力が湧いてきた。


静かな車の中で

その後、再びパパは病院の外へ出された。

仕方なく車に戻り、シートに深く沈み込む。
少しだけ窓を開けると、秋の風がひんやりと頬をなでた。
張りつめていた心が、ほんの少しだけほぐれていくのを感じた。

ふと、さっき聞いたしゃっくりの音が頭の中に蘇る。
ヒクッ、ヒクッ…という小さくて規則的なリズム。
君は、お腹の中で確かに生きている。
その当たり前が、こんなにも心強くて、あたたかいなんて。

その音に包まれながら、パパの頭の中には君を迎えるまでの日々の記憶が浮かんできた。

妊娠がわかったあの日。
信じられない気持ちと嬉しさが入り混じって、何度もママに「本当?」って聞き返した。

そして性別がわかった日。
ママが用意してくれたケーキのプレートには、そっとこう書かれていた。
「プリンセスがふたりになるよ」
その文字を見た瞬間、胸がじんわり熱くなって、涙がこぼれそうになった。

ママのお腹が少しずつ大きくなっていくのを、そばで見守った。
君の名前をママと何度も話し合って、「どんな子になるかな?」と夜な夜な語り合った。
そして、胎動を感じるたびに「今、動いたよ!」と嬉しそうに教えてくれるママと、笑い合った。

あの一つひとつの記憶が、まるで走馬灯のように胸の奥を優しく照らしていく。

今、パパとママは君に会えることを、心から楽しみにしている。
不安や痛みの先にいる“君”のことを、ただただ愛おしく思っている。

車の中は静かだった。
窓の外を流れる風景も、時間も、まるで止まっているようだった。

だけど、胸の中では確かな鼓動が響いていた。
君の鼓動、そして家族になろうとする3人の新しい物語が、静かに、でも確かに動き出していた。


決断の時

15時を過ぎ、ママの痛みはピークを迎えていた。

「もう…無理かもしれない…」

震える声でそう言ったママの目には、涙が滲んでいた。

パパは手を握りしめ、「大丈夫、大丈夫だから…」と何度も繰り返すしかできなかった。

そんな中、医師が一言。

「帝王切開に切り替えるのも、一つの選択肢です。」

手術の話を聞いたママは、目を閉じてしばらく黙った。

「…怖い。でも……。」

唇を噛み、迷うママ。

自然分娩で産みたいという思いが強かったのだろう。
それでも、痛みは限界を超えていた。

パパはそっとママの手をぎゅっと握り、静かに言った。

「どんな形でもいい。君と赤ちゃんが無事なら、それが一番なんだよ。」

しばらくして、ママはゆっくりと頷いた。

ママは、自分の痛みよりも、君の無事を一番に考えていたんだ。

「本当に、ごめんね。」

ママは小さくそう呟いた。

違う。謝ることなんて、何もないんだよ。
君を守るために決断した、その勇気がどれほど尊いものか。

パパはただ、強く頷いた。


初めまして、君へ

手術の準備が進み、ママが車椅子で運ばれてきた。

汗だくの顔で「頑張るね」と微笑むママ。
パパは言葉が詰まり、ただ「大丈夫、そばにいるから」と伝えるのが精一杯だった。

そして、手術室の扉が閉まった。

パパは人生で一番の祈りを捧げた。

「どうか、無事に生まれてきてくれ。」

17時過ぎ。
助産師さんが、小さな赤ちゃんを抱えて現れた。

小さな君を初めて抱いた時、

「うわぁ、小さい…」

と思わず声が出た。

君はふわふわで温かくて、小さな手でぎゅっと握ってくれた。

その瞬間、込み上げるものがあった。

「生まれてきてくれてありがとう。」

そう呟きながら、初めて君を抱いた。
温かくて小さくて、でも力強く泣く君を見て、命の重みと奇跡を全身で感じた。


君は、愛されて生まれてきた

君が生まれた日は、パパにとってもママにとっても、間違いなく人生で一番大切な日になった。

ママは、命を懸けて君を産んでくれたんだよ。
何度も涙を流し、何度も心が折れそうになりながら、それでも前を向いて、君に会うために、全身全霊で耐え抜いた。

その強さと勇気にパパは何度も胸を打たれた。
そして改めて思ったんだ。
「この人が、君のママでよかった」と。

君は、生まれる前からずっと愛されていた。
初めて心音を聞いた日、初めてエコーで姿を見た日、君がくしゃみしたとき、ママのお腹を蹴ったとき、その一つひとつに、パパとママは笑って、泣いて、心を揺さぶられてきたんだ。

この世界に君が来てくれたことは、奇跡だ。
たくさんの祈りと、たくさんの愛が君の誕生を包んでいた。
だからどうか、忘れないでほしい。

君は、生まれたその瞬間から、ずっとずっと愛されている。
そしてこれからも、どんなときも。
どんな姿でも、どんな気持ちでも、何があっても。

そして、ママが命を懸けて届けてくれたこの命を、大切に生きてほしい。

君が君であることを、パパとママは心から誇りに思っているよ。

生まれてきてくれて、本当にありがとう。


君を心から愛するパパより。

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べべ 読んでいただき、本当にありがとうございます! チップをいただけたら、娘と一緒にハイタッチします(たぶん娘は意味わかってませんが、パパは泣きそうに嬉しいです)