はじまりは、島バナナ
何度頼んでも届かない島バナナ
30年以上前、娘にできるだけ安心なものを食べさせたいと有機野菜の産直団体で食材を買っていた。
ある時、そのカタログに「島バナナ」があった。「島バナナって何?」
その時、初めて国内でも暖かい小笠原や鹿児島以南の島でバナナが栽培されていることを知った。
価格は高いが、とにかく味が濃くて美味しいと紹介されている。珍しさから注文してみた。が、欠品。あら残念。また注文。また欠品。なんで?
そしてついに「島バナナは台風で倒れたため今期はお届けできません」となった。
バナナってどうなってるの? からの徳之島ツアー
台風で倒れた。南の方=台風も強いんだろうけど、バナナって一体どんなふうになってるんだろう?
今ならスマホで簡単に分かることだけど、30年前、Windows95もまだない時代、さっぱり見当がつかなかった(図書館で調べるぐらいしか手段はなかったけれど、あいにく近くに図書館はなかった)。
そんなギモンを抱えているうちに、「夏休み産地見学ツアー 徳之島」のお知らせがきた。
やった!これでバナナ畑を見に行ける! こんな機会じゃなきゃ徳之島なんて絶対行かない。一生に一度ぐらい、行ってみてもいいじゃない。
徳之島がどこにあるのかもよくわからずに申し込んだのは、私だけじゃなかった。ツアー前の説明会で徳之島の位置を知って「へぇ~ そんなとこなんだ」とか、「隣の奄美大島は大島紬の産地で」と聞いて「あら、大島紬って、伊豆大島じゃなかったのね」と他の参加者と話したのだった。
一度で終わらなかった徳之島
徳之島ツアーでは、念願のバナナ畑に連れて行ってもらい、バナナは背が高い草だと教えられ、みんなで「えぇっ⁉」とびっくりしたり、初めて花を見て絶句したり。
たしかに押せば簡単にゆさゆさ揺れる。葉も大きいし(風ですぐに破れて風を逃がすようにできていると後で教えられた)、実をつけるのは高いところに何段もとなれば、倒れやすいのも納得だ。
ツアーではバナナ畑だけじゃなく、里芋を掘ったり、畑の奥の川で冷やしたスイカを食べたり、地元の生産者さんの手料理をいただいたりした。
日差しは暑いが、海は青く、森は緑濃く、食べ物もおいしく、ハブ酒は臭かった。
そして何よりも人が魅力的だった。島で有機栽培を始めたときの苦労話もあったけど、とにかく前向きでパワフル。飾らない笑顔が忘れられなくて、「一生に一度ぐらい行ってみてもいいんじゃない」と思った徳之島は、その後何度も通うようになった。
そのうち徳之島の帰りに奄美大島に立ち寄り、奄美大島に通うようになり、時々通えない時期を経て、奄美大島で暮らすようになった。
30年前、もし島バナナがすんなり手に入っていたら、今ここにいなかったかもしれない。島バナナに、島バナナを倒した台風に感謝。
