冬のラミー 〜オカンとオレと時々美人〜
落語に『まんじゅうこわい』って噺があるんよ。
「俺は饅頭が怖くてたまらん」言うて、大げさに震えてみせる偏屈な嫌われ者がおって、
案の定、日頃の仕返しとばかりに仲間から饅頭を家に山ほど投げ込まれる。
ところがその人、震えながらも全部うまそうに平らげて、
最後に一言。「今は濃いお茶が怖い」ってお噺。
その『まんじゅうこわい』を思い出したんは、オカンとチョコの話をしてた時。
基本的に俺はチョコとか甘いもんが大好きやねん。
でも最近はダイエットしてるから、あんまり食べへんようにしてんのね。
ある日実家でオカンと話してたら、
「良いもん買ってん」と、嬉しそうにラミーチョコをスーパーの袋から取り出してきたんよ。
昔っからラミーチョコはオカンが好んで食べてて、よく一欠片もらったりしてた。
肌寒くなるとラミーが食べれるから嬉しいわぁってよく言うてはる。
その時も、
「ほら、食べや」って俺に渡してきたの。
でもダイエット中の俺は首をすくめて、
「チョコ…太るん怖いから食べるん控えてんねん」と。
それを聞いたオカンはニヤッと笑って、俺の手のひらに無理やり置く。
「ちょっとなら大丈夫やから、食べてみ」
その根拠はどこから来るんやろか、なんて思いながら、仕方なく一欠片口に入れる。
甘さが広がる。
その甘さの中にレーズンとラムのいい香りがする。
「……あー、まぁラミーチョコって味やな」
チョコを食べ終わった後にこう続ける。
「オカン、ラミー食べたら思い出してんけど、俺ブラックコーヒーも飲むん怖いわ」
その瞬間、頭に浮かんだんよ。
まるで『まんじゅうこわい』の噺そのまんまやな、って。
「なんやそれ」って笑いながらオカンが淹れてくれたコーヒーはインスタントやったけど、すごく美味しかった。
だからもう今は、チョコもコーヒーも怖くない。
ただ、宮崎あおいと深津絵里と松雪泰子は昔からずっと怖い。
あんな美人さんを間近で見たらぶっ倒れる自信がある。
そしてなにより、今はnoteのスキが1番怖い。
