借りてきた猫は誰の猫
上記の記事の数時間後のお話。
久しぶりに再会した友人と、先日カフェでお茶したんよ。
ここ数年会えてなかったけど、変わらず元気そうで安心した。
『最近ほんまに忙しい。でもあかんねん、俺。忙しくしてな死んでまう』
チーズケーキをフォークで刺しながら、そんなことをこぼす友人。
うんうん、わかるよ。
マグロみたいなもんよな。
泳ぎ回ってるからこそ生きてられる。
でも今の俺は、忙しさの正反対のとこにいるからなぁ。
そっと陰から応援するだけしかできひん。
話ならなんぼでも聞くんやけどな。
なんて考えながら頷きつつコーヒー飲んでた。
『ほんま借りてきた猫の手も借りたい気分や…』
彼はフォークを置いて欠伸混じりに呟いた。
「…それは話違ってこうへんか?
借りてきた猫が労基にチクったら指導入るで」
反射的に俺は口を開いてた。
「借りてきた猫ってことは、他所様の所有猫やろ?
てことはやで?
お隣さんから夕飯のお裾分けでもらった煮込みハンバーグがありながらも、そこからまだお刺身食べたいってお隣さんに言うてるようなもんやろ?
それはダメです。そんな厚かましい贅沢したらバチ当たるで」
でも彼はすかさず、
『煮込みハンバーグが美味しいとは限らへんやん。やから保険でお刺身や』
なんてことを言うのかね、このメンズは。
「保険がデカすぎるやろ、それ。
そこは野沢菜のお漬物とかな?もしくは大根の煮物とかな?
そういうベジタブルを意識しなさいよ。
なんでメインディッシュ+メインディッシュやねん。
サブウェポンを使えって話よ?
それに大根の煮物なんて、一線級の労力と戦力やで?サブには惜しいくらいやし、せめて自分で作りなさいよ」
『違うやんか、例えやん』
フォークくるくるしながら笑ってはる。
「例えならいいんよ。
ほんまにメインディッシュ+メインディッシュとか考えてるなら、本腰入れて話し合うとこやったわ。
ほんで、休みの日はどうしてんの?ゆっくりできてるん?」
『お前と“借りてきた猫の手も借りたい”って議論するくらいには暇や』
憎たらしいくらい笑ってはる。
「そんなん言えてるうちは大丈夫やね」
忙しくしてはる彼やけど、顔はイキイキとしてた。
ほんま元気そうでなによりや。
でもほんの数秒の沈黙が流れると、101匹わんちゃんの悪役クルエラが、頭の中で何故か顔を覗かせる。
他所様から借りてきた猫を、馬車馬の如く働かせる超極悪非道なクルエラが。
彼のことやしそんな人にはならんと思うけどね。
くだらんことばかり話してたけど、もうそろそろいい時間。
なんかあっという間やったな。
店を出て、駅に向かって歩く彼の背中に声を飛ばした。
「なぁ、毛皮刈ってコート作るような趣味悪い奴にはならんでくれよ」
『なに言うてんねん。
そんな悪趣味なことするかいな。
それにどうせなら、まずはお前のその長ったらしい髪から刈ったるわ。ほなな!』
彼は人混みと共に改札に消えていった。
楽しい時間を過ごせて彼に感謝やね。
やけど俺は思うねんよ。
「…それは話違ってこうへんか?」
