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浮かされて、夏。

ほんま夏。

7月やってのに、夏本番すぎひん?

少し歩けば汗がたらり。
おでこの汗を拭って、歩き出す。
そしてまた汗がたらり。

お肌弱いから汗かくと痒くなるんよ。
それやのに汗っかきの寒がり。
ほんまこの体質。

でも気分はバテてないの。
どっちかと言えば、右肩上がりで上がってる。

それは何故か。

「恋をしようよ」
「海に行こうよ」
「花火をしよう」

つい先日、ランダム再生してたiPhoneからそんな夏ど真ん中の歌詞が流れてきたから!
それだけで俺はもう夏モード!

実は、今年こそ!って意気込んでんねん。

なにせこちとら、花火大会の日程は調べてる。
お祭りの日も把握してる。
海へ行くならお昼より夕方がいいな、とか、
甚兵衛なんかもう何年も着てへんのに、
「今年は着るかもしれへん」と思って引っ張り出してる。

多分着いひんねんで?
でも、それでいいねん。

コンビニにはスイカバーが並び始めて、
ドラッグストアには熱中症対策グッズが山積みになって、テレビでは日本の夏キンチョーの夏が流れる。

「ああ、今年も来たんやな。夏」

毎年同じ景色やのに、毎年ちゃんと浮かれて準備する。
結果はわかってんねん。
特になにも起きずにいつのまにか終わってんのよ。
夏って。

でも仕方ないやん。

夏気分になると恋をしたくなるし、
海にも行きたくなるし、カキ氷には練乳かけたくなる。

真夏に食べるカキ氷って、なんであんな美味しいんやろな。

練乳とか直でいけるしな。
俺の冷蔵庫、今練乳とマヨネーズしか入ってへんもん。

冷蔵庫も夏って感じやろ?

「祭りに行こう」
「波乗りしよう」

夏ってほんますごい。
やりたいことだけは無限に出てくる!

今年こそ。
今年こそは何かあるかもしれん。
いや、なにかあるはず!

そんな根拠のない期待も毎年ちゃんと更新されるんよ。
これってほんますごいことやと思う。

せやけど、ある時ふと気づくねん。

で、誰と行くん?それ。

そう言えば、カキ氷の向こうに座ってる相手がいいひん。
花火が上がるたびに「おっほー」って笑う人がいいひん。
甚兵衛着て「暑っついなあ」なんて言いながら歩く人もいいひん。

舞台だけは立派に出来上がってるってのに。

なにせ夏の京都やで!?
これ以上ないほどのセッティングやろ!
海は少し遠いけど、夏のイベントやお祭りもあれば風情もある!川床もある!

でも肝心の主役がまだ来てへん。
果たして主役はいつ来るんや??
てかほんまに来るん???
“行けたら行く”くらい信用ならへんのやけど。

俺の人生の主役は君だ!って言いたいのに。

でもこれ、よくよく考えてみたら夏だけの話じゃない気がすんのよ。

前から思ってたんやけどさ、人って準備するん好きよね?

お祭り本番より、準備の方が楽しかったりするやんか?

それと同じでさ、こうなったらああしよう、とか。
こう言われたら、こう返そう、とかとか。

頭の中では何百回もリハーサルするやん?

せやのに本番がこうへん時もあるし、突然ガバチョ!でやって来る時もある。

ほんで大体本番が来た時には、準備してた台詞なんか一文字も出てこうへんねん。

俺だってそう。
頭の中でどれだけ俺の人生における主役とデートするシミュレーションしても、そんな場面まずこうへん。

って油断してたらたま〜に知人ルートでお食事のお誘いとか来るやん?
で、あばばばばってなってあばばばばばばで終わる。

そんなもんよ。夏って。

全て夏のせいよこれ。

なーにがカキ氷。
なーーにが花火にお祭りや。

なんやの?
女性とうまくいかへん理由を夏のせいにしたっていいやんか!
暑さのせいにしいひんと自我を保てぬ!

冒頭に出てきたその曲の歌詞に、

「恋の駆け引きなど 僕らにゃ関係ないから」
って一節がある。

ほんまにその通り。

こちとら駆け引き以前の問題やねん。

「おっととっと夏だぜ!」

って勢いよく始まって、

「恋をしようよ」

「海に行こうよ」

「花火をしよう」

って、どんどん話は進んでいく。

せやのに最後の最後で、

「まずは 肝心の 相手 探そう探そう探そう」
って歌う。

そこなんよ!
全部そこなんよ!

“勢いだけで突っ走ってきた夏”が、
“一瞬で現実”に戻る。

このざらっとした感じ。
わかる?
その、ある意味ドライな感覚が俺はすごい好きやねん。

夏って、ってより人生って案外そんなもんやと思ってるから。

舞台は整えられるし予定も立てられる。
ある程度の未来を想像することもできる。

でも、「誰と過ごすか」だけは、自分1人では決められへん。

俺1人でどうこうできる次元の話じゃない。
そして夏は終わる。

まあ、それでもいいねん。

カキ氷は1人で食べても美味しいしな。
練乳はいつだって甘いし。

花火は1人で見上げても綺麗やん。

肝心の相手を探し探し探し歩いてる途中の夏も、それはそれで悪くないやんか!

そんな簡単に出会えたら有り難みっちゅうのがアレでんがなまんがな。

って、そんなことを考えてたね。
ここ最近。

あ!
昨日さ、
夜にふと線香花火したくなってん。

やからコンビニで線香花火買ってきて、家の前で1人でやっててん。
ここぞとばかりに甚兵衛着て蚊取り線香焚いて、スイカバー食べながら線香花火垂らして夏を満喫した。

“勢いだけの夏”を感じた。

線香花火みたいに生きるのも悪くないんじゃない?とか、
これ足の甲に落ちたらめちゃくちゃ熱いやろな、とか。
ソニンってめっちゃ美人やな、とか。

雑念のオンパレードやったけど、バケツの中にチュンって落ちる火の玉を見てたらさ、
来年もなんやかんや言いながら1人で線香花火してるんやろなぁって、ある程度の未来を想像できた。

線香花火してる途中で、今のこの情景は流行り言葉で言えば“エモい”ってやつやなとか思ってさ。

俺もついにエモさを手に入れたってワケ。
鬼に金棒ってワケよこれ。

宝の持ち腐れにならんようにせな。

ほんで家に帰ってシャワー浴びて、るんるんで「おっととっと夏だぜ!」って歌いながら冷蔵庫開けたら、やっぱり練乳とマヨネーズしかなかった。

こうやって現実に引き戻されるんよ。

ほんま夏。


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