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小3にオリビアはまだ早い

夜中に電話をかける人の気持ちがよくわからへん。

いや、わからへんってよりも怖い。

夜中の1時とか2時に携帯が鳴る時って大体ろくなことないやん。

酔っ払ってるか、泣いてるか。
大抵どっちか。

昔は家の電話やったからまだマシやったんかもね。
今みたいに1人1台携帯持ってへんかったし。

でも今は逃げ場がない。

突然鳴る。

深夜2時。
昔の恋人からの着信。
怖すぎひん?

ランダム再生してたiPhoneから、懐かしい曲が流れてきたばかりにそんなことを考えてしまった。

“オリビアを聴きながら”

若い頃は失恋の歌やと思っててん。

ジャスミン茶を飲んで。
星を数えて。
眠れへん夜を過ごす。

そういう女性の歌。

でも歳を取ってから聴くと、妙に引っかかる部分があった。

“疲れ果てたあなた
私の幻を愛したの”

なかなか強烈やんね?

“私を愛してくれなかった”
じゃなく、
“私の幻を愛したの”

言われた方はしばらく立ち直れへんよこんなん。

俺やったら多分お酒浴びすぎて、逆にお酒になりたいとか思うもん。

ぐでんぐでんの足で月桂冠の酒造体験とか行く自信あるわ。
それから黄桜のカッパカントリーでお酒の飲み比べとかしたりね。
でも、ぐでんぐでんやから味わからへんねん。
そこからやけ食いするぞーってなって、鳥せい本店で焼き鳥とか食べんねん。

鳥せい本店の焼き鳥はほんまに美味しいからね。仕方ないね。
誰もがおいしー!ってなると思う。

あ、月桂冠の酒造体験で思い出したんやけどさ、地元には酒蔵がぽこぽこあるのよ。

なにせ我が地元、京都の伏見は酒の街。

だから月桂冠だけじゃなく、黄桜にキンシ正宗に宝酒造と名だたる酒蔵がある。

酒の街伏見。

でも、子供の頃は嫌いやってん。
今でこそお酒の香りに耐性ついたから大丈夫やけど、ガキンチョの頃はとにかく臭かった。

宝のみりん工場とかほんま臭くて前通りたくなかったもん。

ほんでなにが嫌って、小学校から行く社会科見学で月桂冠の酒蔵行くねんよ。

こっち小3よ?

誰が“お酒ができるまで”に興味があるの?
同行してる先生しか興味ないってそんなん。

しかも帰り際にお土産〜言うて、“お酒ができるまで”の工程が漫画で描かれた下敷きもらうねん。

もう一回書くけど、誰が興味あんの?

小3にはまだ早いって。
せめて小5からやろ。

他の地域の子らはお菓子工場とか、パン工場とか行ってるのに酒蔵て。
おかげでお酒にハマらへんかったから、そこは感謝してるありがとう。

あ、ごめん、話めっちゃそれた。
なんの話やっけ。
あー、、、そのメンズはどんな男の人やったんやろね。

夜更けに電話をかけてくるくらいやから未練はタラタラやったんやろう。

愛してなかったわけじゃないし、と言うかむしろ愛してたと思うねん。

誕生日にお花だって贈ったんやろ?

優しい人やったみたいやね。
歌詞にもそうあるし。

優しい人。

でも優しい人と、相手を見てる人は必ずしも同じじゃないんやん?

例えばそれこそ歌詞に出てくるカトレア。

俺は花に詳しくない。
全くもってわからん。

カトレアって言われても、お高くて綺麗なんくらいしかわからへん。

でもその男性はカトレアを贈ったんやろ?
きっと花屋さんで悩んだんやと思うの。

店員さんに相談したり、予算とか見栄えとか考えて。

でも、彼女が本当に好きやったお花は知らんかったんかもしれん。

好きな色とか好きな季節、
眠れへん夜にジャスミン茶を飲む理由とか。

そういう小さいことってあるやん?

人を好きになる時って、案外そういう部分をかっ飛ばしてしまう気がするんよ。

好きな人がいる。

それだけで頭の中がハッピーハッピーハッピーになるからさ。
だから愛してなかったってわけじゃないと思う。

俺も昔好きになった人に、水族館が好きな人がいたのよ。

だから魚が好きなんやと思ってたし、さかなクンさんリスペクトやと勝手に思ってた。

でも後から聞いたらクラゲが好きやったらしいし、さかなクンさんをなんか怖い人って言うてはった。

それと同じで、俺の解釈と実際の好き嫌いはまた別なんよ。

人は勝手に相手を理解した気になるんやと思う。
好きな人なら尚更。

この人は優しい人。
真面目な人。
明るい人。
頭の中で勝手にそうラッピングされるんよ。
ほんでそのラッピングされた輪郭に恋をする。

問題は、そのラッピングされた輪郭の中に本人がいいひん時よ。

あのメンズも、多分そうなんちゃう?
多分やけどね。

彼女を愛してた。

それはほんまやと思う。

ただ、愛した彼女が実際の彼女やったんか、
それとも自分の頭の中にいる、都合のいい彼女やったんか。

その違いに気付いた頃には、曲は終わろうとしてた。
いや、終わってたんかもしれん。

もしほんまに俺の想像通りなら、
夜更けの電話で話すことなんか、それこそなにもない。

謝るには遅いし、やり直すには遠すぎる。

やから受話器の向こうで黙るしかない。

そして彼女は静かに思う。

夜更けの電話あなたでしょ?って。

疲れ果てたあなた
私の幻を愛したのって。

そして曲が終わる。

はぁ。
やっぱり夜中に電話をかける人の気持ちはよくわからへん。
それと、小学生を酒蔵に連れてく小学校もよくわからへん。

あ、名産を学ぶのは確かに大切やし、それが文化なのもわかってるよ。
文化の否定はしいひんよ。

ラッピングされた風習も大切!
文化の街京都やもん!当たり前!

でもな、ニーズはちゃうやんか?
こちとら小3よ?
俺が小3の時なんてほぼ赤ちゃんよ。
なんなら蒙古斑や。

ラッピングされた風習を大事にするのはたしかに大切やけど、そうやって子供の気持ち見てへんから”私の幻を愛したの”って言われるんよ。
そこんとこわかってる?
ほんで夜中に電話かけてこんといてね。
びびるやろ?

わかったなら、酒蔵の社会科見学はせめて小5からにして。

そこんとこだけほんまお願い。

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