余談 ~夢~
本日は「夢」についての記事です。
辞書で「夢」という字を調べると、いくつかの意味が挙げられています。
1.睡眠中の幻覚:
眠っている間に見る視覚的、あるいは聴覚や運動感覚を伴う幻覚。
目覚めた後に意識される。
2.儚いことのたとえ:
実体がなく、頼りないこと。夢幻(むげん)。
3.空想・迷い:
現実離れした願望や、心に迷いがある状態。迷夢(めいむ)。
4.将来の理想:
将来実現したいと願う希望や理想。
2と3は他の語と組み合わせて使われることが多いですが、1と4は「夢」一文字で意味が通じる言葉かと思います。
4の「将来の理想」は、人それぞれの思いや経験が反映される部分なので、今回は扱いません。
この記事では、1の「睡眠中に見る幻覚」――つまり、私たちが眠っている間に見る“夢”について書いていきたいと思います。
1.夢はなぜ見るのか。
このあたりの話は、いろいろな場所で語られている内容ですが、一般的には「睡眠中に脳が記憶や感情を整理する過程で夢が生まれる」と考えられています。
特にレム睡眠と呼ばれる、脳が活発に動いている時間帯。
このとき、不要な記憶を消したり、必要な情報を分類したりする作業が行われます。
その途中で、過去の記憶がランダムに結びつき、映像のように立ち上がってくる――それが、私たちが“夢”として体験しているものだと言われています。
では、そもそも脳はなぜ情報を整理するようにできているのでしょうか。
理由はいくつかあります。
1. 脳の処理能力には限界がある(効率化)
人は毎日、五感から膨大な情報を受け取っていますが、脳が同時に扱える量はごくわずかです。
そのため、すべてを平等に扱うのではなく、重要なものから優先して整理する必要があります。
2. 「忘れる」ことで情報を整理する(海馬の機能)
海馬は入ってきた情報を一時的に保管し、「残すもの」と「捨てるもの」を分けています。
不要な情報を忘れることで、新しい情報を入れる余白をつくっています。
3. カテゴリー化による高速処理
脳は関連する情報をまとめて記憶する性質があります。
カテゴリー化することで、必要なときに素早く取り出せるようになります。
4. 睡眠時のメンテナンス(脳のゴミ掃除)
睡眠中には、脳内に溜まった老廃物を排出する仕組みが働きます。
翌日に備えて脳をリセットする、大事な時間です。
5. 生存への最適化(優先順位付け)
人間は、生存に関わる情報を優先して処理するように進化してきました。
危険や快感に関する情報が強く残りやすいのも、そのためです。
2.夢を見るのは熟睡出来ていない証拠?
夢を見ること自体は、ごく普通の現象で、必ずしも「熟睡できていない」という意味ではないようです。
たしかに夢は、脳が活動している浅い眠り(レム睡眠)で見やすいので、記憶が残っていると「眠りが浅かったのかな」と感じることがあります。
ただ、毎晩のように夢の内容を覚えていて、寝た気がしない状態が続く場合は、ストレスや睡眠環境の影響で眠りが浅くなっている可能性があります。
夢の内容を覚えているのは睡眠質の問題?
夢を鮮明に覚えているときは、レム睡眠のタイミングで目が覚めていることが多いと言われています。
脳が活発に動いている状態で目覚めるため、眠りが浅く、結果として睡眠の質が下がっているサインと考えられることがあります。
慢性的なストレスや疲労、寝る前のスマホ、飲酒などが重なると、夜中に何度も目が覚めやすくなり、睡眠の質に影響することがあります。
なお、知られているとは思いますが、睡眠にはいくつかの状態があります。
睡眠には、大きく分けて二つの状態があります。
・ノンレム睡眠:脳が休んでいる状態。深さに応じて N1〜N3 の段階がある
・レム睡眠:脳は活動しているが、体は休んでいる状態
この二つが交互に繰り返されることで、一晩の睡眠が成り立っています。
3.歳をとると夢を見なくなる?
歳を重ねると、夢を見なくなったように感じることがあります。
ただ、実際には「夢を見ていない」のではなく、夢を記憶する前に目が覚めてしまうことが増えるためだと言われています。
加齢によって睡眠が浅くなり、中途覚醒が増えることで、レム睡眠の時間が短くなったり、夢を覚えておく余裕がなくなったりします。
その結果として、「最近は夢を見ないな」と感じやすくなるようです。
ちゃんと、見てはいるんですけどね。
そして、歳をとると「将来の理想」という意味の夢も、だんだん形を変えていきます。そのうえ、睡眠中の夢まで薄れていくように感じるのは、なんというか……少しだけ、諸行無常っぽい話ではあります。
4.多言語での「夢」
文頭にもあった通り、将来の「夢」も寝て見るのも「夢」と同じ言語ですが、これは英語圏でも同じです。
英語ではどちらも「Dream」と言います。
どちらも“心の中で見るもの”という点で同じ語句で表されていますが、ここで敢えて調べて見ました。
将来と睡眠それぞれの「夢」を別の言葉で表す言語。
1.ロシア語
将来の夢 : мечта(mechta)
睡眠の夢 : сон(son)
2.ウクライナ語
将来の夢 : мрія
睡眠の夢 : сон
3.ルーマニア語
単数で表す場合は双方とも vis
複数形で表す場合
将来の夢 : visuri
睡眠の夢 : vise
全てという訳ではありませんが、東方教会圏(スラヴ語圏)には「睡眠の夢」と「人生の夢」を“別の単語で表す”傾向があります。
とはいえ、ほとんどの言語では同じ言葉で表すことが多いようです。
少し深堀をすると、
■ 1. 正教文化の「現実」と「幻想」の区別が強い
東方教会は、西方(カトリック・プロテスタント)よりも
“霊的なもの”と“現実的なもの”を明確に分ける傾向がある。
そのため、
・睡眠中の夢 → 無意識の現象
・人生の夢 → 意志・希望・志向性
と、性質の違いをはっきり区別する文化があります。
■ 2. スラヴ語の語源構造
сон(睡眠の夢)は「眠り」「休息」に近い語源
мечта(理想の夢)は「願う」「求める」に近い語源
語源レベルで別物として発達している。
■ 3. 歴史的に“夢=予兆”の文化が強い
ロシア・ウクライナでは、
睡眠の夢は予兆・象徴として扱われる民間信仰が強い。
だからこそ、
「人生の希望」と混同しないように語が分かれた、という説もある。
5.まとめ
「夢」という一つの言葉を少し掘り下げてみましたが、
書いているうちに、まだまだ深いところがあるのだろうなと思いました。
国が違えば見る夢も違うのか。
体験していないのに空を飛ぶのはどういう仕組みなのか。
考えてみると、気になることは尽きません。
ひとつ言えるのは、この記事は「夢のない夢の話だなぁ」ということです🤣
