会話劇 ~自由~
今回の物語は、今までとは違う形です。
二人の男性がとある居酒屋で話している。
ただそれだけのお話です。
二人の会話を聞いていただき、
是非、皆さんの考えもコメントいただければと思います。
※「」=佐藤 『』=本多 です。
本多『佐藤……ちょっと冷静になって考えたらどうだ?』
本多は半分呆れたように向かい側に座る同期入社の男=佐藤
を諭した。
佐藤「よく考えたさ。
この会社でどれだけ頑張っていても上は見えている。
お前こそ、いつまでもこの会社に搾取されていいのか?」
佐藤はジョッキ片手に鼻息も荒く話す。
『フリーランスでやるったって、簡単な物じゃない。
まずどうやって客を集める?単価は?場所は?』
「客は、まずはこれまでの経験で繋がっている人を当たるさ。
それに単価なら先人がいるわけだから設定もそんな難しくない。
ただ、いきなりすそ野広げてもな。自宅で細々始めるつもりだ」
これは止まることはない。
本多はあきらめるかのように話を変えた。
『分かった。
でも、急に』
「そうだな……まぁ一番は"自由"だ。
いつも上司の顔色伺って、会社のルールに縛られて
雁字搦めで仕事を続ける窮屈さに辟易していたんだ」
『"自由"って、お前、それがどういうことか分かっているのか?』
「え?好きなようにやれるってことだろ。
勤務時間も煩わしいルールにも縛られることなく、
自分のやりたいようにやる。そういうことだろ?」
本多は大きなため息をつく。
『あのな?
自由って言うのは、そんなお気楽なものじゃないんだぞ』
「あ?お気楽だと……?」
『今のお前であれば、会社のルールや上司から離れて、
自分の足で立って仕事をしていく。
たしかに出社時間も、仕事の進め方も、誰と付き合うかも
自分で決められる心地よさがある。
ただ、それはすべての結果を引き受ける重圧もセットでつくわけだ。』
本多の説明に佐藤は生唾を飲み込む。
「そんなことはわかってるさ」
そう答える声には先ほどの勢いは無くなっている。
『時間や場所に縛られず、自分の心が動く方向へ進むこと。
組織のルールや他人の顔色を窺うことなく、自分のペースで働く。
それは間違いなく、誰もが憧れる最高の自由だ。
だが、それは己の行動すべてに"責任"を持つということだ。
組織に属していれば、全てではないにしろ、多くの責任を会社や
上司が受け持ってくれる。
単なる"わがまま"で"自由"を謳い、会社を飛び出すのは勝手だが、
お前はその覚悟と準備が必要だということを分かってるのか?』
佐藤は黙って、俯いた。
『すまん……言い過ぎた』
「いや、お前の言う事は正しい。
それでも、自分の"可能性"を試すには今のままじゃ
ダメなんだ」
佐藤は顔を上げ、本多を見つめる。
『そうか……ちゃんと覚悟があるなら俺はこれ以上何も言わない』
本多は、佐藤を見つめた。そして、
『どちらが正しいなんてないんだろうな……』
自らの思いを噛みしめる様に呟いた。
