ショートストーリーズ③
窓に写る
小田原から東京に向かう東海道線。
窓際に君が座り、僕は隣に座る。
初めての箱根旅行。
たった一泊の二人だけの時間、お互いの愛情を確かめ合えた。
君は、移り行く外の景色を見ながら、
ガラスに映る自分の憂い顔を気にしている。
ひじ掛けに置かれた君の左手にそっと手を重ねる。
指輪が微かに冷たい。
東京に着けば、君はまたいつもの顔に戻り、
僕とは築くことのできない幸せな家庭に戻るのだろう。
このまま、本当はどこかへ行けたなら…。
重ねた手の温かさに、君はこちらを見る。
長い髪をそっと肩へ寄せ、僕に微笑む。
列車は、二人の気持ちと同じように加速していく。
これから先の未来より、確かなものはここにある。
列車は、そのまま速度を上げていく。
