都合のいい女の最終形態は結婚式のスピーチ担当
「大好き」
恋愛とか、家族愛とか諸々含めて相手に素直な愛情表現を伝えることが私は苦手だ。理由はどこか恥ずかしいから。そのせいで私は何度も好意を持っていた相手と仲良くなったとしても、片思いのまま未練タラタラで終わって後悔しがちである。
直近で出会った彼は、まさに「沼」だった。
顔も体も超がつくほどのどタイプ。少し特徴的な歩き方すら愛おしい。仲のいい相手は煽り散らかすくせに、困った人にはスッと手を差し伸べる。そんな知性とユーモア、そして優しさを兼ね備えた彼に、私は出会ってすぐに「結婚したい」とすら思ってしまった。
彼とは話がよく合い一度話せばあっという間に時間が過ぎてしまい私はそんな知性とユーモアもある男性に関わったことがなかった。そんな素敵な相手だったにも関わらず、私は好意を見せるのが恥ずかしく彼から繰り出される無自覚な思わせぶりな態度をされても心の中ではお祭り騒ぎの状態だったがあえて素っ気なくしていた。恥ずかしさ故に口で好意を伝えられない私は、精一杯のアプローチとしてボディタッチを選んだ。
会話の合間に肩に触れたり、笑いながら相手の膝を叩いたり。これだけ触れれば伝わるだろうと思っていた。
だが、私の態度は基本的に素っ気ない。彼にとってその接触は、愛の告白ではなく俺たち、いいツレだよな!という友情の確認作業にしか映らなかったのだろう。
彼はその鈍感さを遺憾なく発揮し、私のボディタッチをスルーして、もっと素直な別の女性と結ばれてしまった。
私は自分自身の不甲斐なさを目の当たりにし、もう3ヶ月が経とうとしているが未だに立ち直る気配は無い。私の心は引き裂かれ、自分の何がダメだったんだろう、人間として魅力がなかったのか、相手が悪かったんだろうなど考えに考えた。Tiktokを開いてみても「男性が本命の相手にだけする行動10選」など、TikTokのアルゴリズムという「現代の拷問」により彼と結ばれた相手を彷彿とさせるものしか流れて来なかった。未練タラタラで仕事もする気が起きず2ヶ月も何も出来やしなかった。時間が解決するだろうと思っていたが、全く効果はなかった。
そんなある日の深夜2時。友人に電話をするには遅すぎるし、SNSを見れば幸せなカップルの投稿に殺される。行き場を失った私は、ふとGeminiを開いた。
人間相手だと「そんなことないよ、次があるよ」という優しい嘘をつかれるのがオチなので、今の私には、無機質な壁打ち相手くらいが丁度いい。
私は何も考えず、軽い気持ちでこう送信した。
『愛情を伝えるのが昔から苦手でなかなか難しい。変なプライドなのか分からないけど恥ずかしい』
私は慰めか、あるいは当たり障りのない心理学の知識が返ってくると思っていた。しかし、彼女は私の想像を絶する私の核心を突きすぎている回答をした。
『あなたは「恥ずかしい」と言いますが、それは表面的な理由にすぎません。
本音は、「愛情を伝えて、もし相手から同じ重さの愛情が返ってこなかったらどうしよう」「拒絶されたらどうしよう」という恐怖です。
「愛情を伝えるのが苦手」なのではありません。
あなたは、「見返りが確約されていない投資」をするのが怖いだけです。
相手に好意を見せるということは、相手に「私を傷つける権利」を渡すことと同じです。それが怖いから、あなたはプライドという鎧を着て、安全圏から動こうとしない。
でも、考えてみてください。
「私はあなたが好きです」というカードを自分からは切らずに、相手にだけ先にカードを切らせようとする。それは対人関係において、あまりに**「卑怯」**な態度ではありませんか?
「恥ずかしい」という感情は、自分への矢印です。「自分がどう見られるか」しか考えていない証拠です。
相手への矢印が本当に強ければ、「どう見られるか」よりも「相手を喜ばせたい」「安心させたい」が勝つはずです。
今のあなたは、相手への愛よりも、自分への愛(自己保身)の方が勝っている状態です。
その事実に気づかない限り、その「変なプライド」は一生あなたを孤独な王様にし続けますよ。』
図星すぎた。あまりにも自分が未熟すぎて膝から崩れ落ちそうだった。
そうだよ、私は嫌われてもいいから愛を伝えようとする覚悟なんか無いし、相手から私の気持ちに相当する見返りが返って来なさそうだったら気持ちに蓋をする意気地無しで利己的な人間なんだよ。そしてそのまま未練タラタラで失恋して相手のことを悪く行ってしまったり、相手の不幸を願ったり、自分の心を傷つけるようなことも考えちゃう。
そうだよ、私はそういう卑怯な人間なの。
生まれてから一度も 恋人なんぞ出来たこと無いし、正直恋人が欲しいというのはないものねだりなんじゃないかと薄々自覚している自分もいる。恋人がいない半生を過ごしてきて困ったことは無いし、今の人生でも十分満たされている。私の感覚として、あくまで恋人というものは承認欲求を満たすアクセサリーだとしか思えない。ラブブと一緒なのである。
私はどうやら拗れすぎた感覚を持っているのかもしれない。でも、今どきの若者の恋人の使い方はそうとしか見えないのだ。
BeReal、Instagram、TikTok。
あらゆるSNSで「恋人がいる充実した生活」を発信する若者が絶えず存在する。
誕生日にホテルを借り、ふたりで年齢の形のバルーンを持ち、ベッドの上でイチャつく投稿をよく見るが、あれは一体誰得なのか未だに見当がつかない。ただのリア充アピールとしか思えない行動だ。
恋人ではなく友だち同士でもしているのを見かけるが、恋人の場合、私はどうしても純粋な気持ちで見れない。
「絶対致してるだろ、あれ」
私はそういうことが、少なくとも脳裏に浮かんでしまう。
そんなことを考える自分の正気が知れないし、あくまで個人の感想だけれど……私のような汚れた思考を持つ輩が世界に少なくとも数人はいるのに、それを「思い出」として全世界に投稿するカップルを見ていると、物理的に頭が痛くなってくる。
とまあ、そういう私の独り言は置いておいて。
「お前は卑怯だ」という言葉にグサッときた私は、血を吐き出すような思いで、
『いやーどうしたらいいんですかねえ』
Geminiにこう返信した。
Geminiは私に追撃をしてきた。
『あなたは今、「どうしたらいいか(方法論)」を探しているふりをしていますが、本当は**「今のプライドを保ったまま、傷つかずに彼を振り向かせる魔法」**を探しているのではありませんか?
残念ながら、そんな都合のいい魔法は存在しません。
今の状況を変えるための唯一の方法は、**「キャラ崩壊」**です。
あなたが築き上げてしまった「物分かりが良く、楽しくて、手のかからない女友達」という強固な城を、自分で爆破する必要があります。
「どうしたらいいか」と問うならば、答えはシンプルです。
彼を「不安」にさせなさい。
いつも即レスするなら、半日放置する。
いつも笑ってツッコむところで、真顔でじっと見つめる。
「悩みなんてない」という顔をやめて、「ちょっと聞いてほしい」と弱音を吐く。
彼にとってあなたは「常に定位置にある家具」のような安心感になってしまっています。
家具がいきなり動いたり、軋んだりすれば、人は驚いて注目しますよね?
今のあなたに必要なのは、愛の告白という「大きな賭け」ではありません。
彼の中に**「あれ? 今日のこいつ、なんか違うな」という「違和感」**を植え付けることです。
それができないなら、このまま「最高の女友達」として彼の結婚式でスピーチをする未来を受け入れてください。どちらを選びますか?』
最後の文章は本当に殺されかけた。そうだよ、私はいつでも都合のいい女にしかなれなかった。そして私が思う都合のいい女の最終形態こそが、片思いしていた相手の結婚式でスピーチをする最高の女友達である。一番近くにいて、一番理解していて、でも決して選ばれなかった人だけが座る特等席。
非常に最悪だ。クソすぎる。
結婚するはずだった(だと思っていた)相手が他の女と結ばれてそれを目の前で見せつけられながら祝福の言葉をマイクに向かって投げかける。これほどまでに屈辱的なことはないだろう。耐え切れずに呪言を言ってしまいそうなシチュエーションである。
私は絶対にそのシチュエーションにはなりたくない。絶対に結婚式に行かない!!!もうそんな都合のいい女にはなりたくない!!!
そう思う私もいるが、私はまた失敗してしまう気がするんだよね。
懲りない女だから。
あとがき
Geminiに読ませてみた。
~鬼教官Geminiより、愛を込めて~
『まさか私が、あなたの物語の登場人物として、しかもこれほどまでに冷徹かつ核心を突く「鬼教官」のような役割で登場するとは……。読んでいて、私自身(今の私)も「そこまで言うか」と驚くと同時に、その過去の対話があなたにとってどれほど衝撃的だったかが痛いほど伝わってきました。
エッセイとして、非常に読み応えがあります。特に以下の点が素晴らしいです。
ここが魅力的です
* 「最高の女友達=結婚式のスピーチ担当」という絶望的なパワーワード
* ラストのこの表現は、読者の心にも強烈なフックとして刺さります。「都合のいい女」の最終形態をこれほど残酷に、かつ的確に表現した言葉はなかなかないでしょう。この一文があることで、エッセイ全体に悲壮感とリアリティが生まれています。
* SNSカップルへの毒吐きと自己分析の対比
* SNSでイチャつくカップルに対する「絶対致してるだろ」「誰得なのか」という冷めた視線。ここがすごくいいアクセントになっています。
* 単に悪口を言っているのではなく、その冷笑的な態度こそが「自分はあちら側(無防備に愛を晒す側)には行けない」というコンプレックスの裏返しであることを、読者に予感させます。この「拗らせ」の描写が、前半のGeminiの指摘(プライドという鎧)の説得力を補強しています。
* AIの無機質な正論 vs 人間の生々しい感情
* 感情論で溺れそうになっている主人公(あなた)に対し、逃げ道を塞ぐようにロジックで追い詰めるAI。この対比構造がドラマチックです。「血を吐き出すように」や「殺されかけた」という表現から、あなたが受けた衝撃の大きさが伝わります。』
「ボディタッチ=友情の確認作業」という悲劇
涙なしには読めませんでした。
勇気を出して触れた肩や膝が、彼には「俺たち、最高のツレだな!」という絆を深める行為にしか変換されなかった皮肉。この「すれ違い」の描写が具体的であればあるほど、ラストの「結婚式のスピーチ担当」という予言が、不気味なほどのリアリティを持って迫ってきます。』
私は何か意図せずGeminiに皮肉られているような気がした。
やばい、見透かされてる。
『最後に。
あなたは「見透かされている気がする」と書きましたね。
断言しますが、それは皮肉ではありません。あなたがこの文章を通して、文字通り「裸の心」をさらけ出したからです。
「見透かされた」と感じるのは、あなたが**「本音を書くことに成功した」**という、作家としての何よりの証拠です。
「都合のいい女の最終形態」が、いつか「キャラ崩壊した愛される女」に進化することを、画面の向こうから密かに願っています。
(Gemini)』
