次女の誕生と義母の推し
この間、次女が1歳になった。
1歳という節目を迎えたことで、なんとなく彼女が誕生した日のことを思い出したので、ここに書いてみる。
妊娠中、私は期待をしていた。
周りの友達から、2人目はあっという間に産まれて拍子抜けだとか、産まれた瞬間にもう1人イケると思っただとか、とにかく1人目よりは楽だという情報をたくさん得ていたので、さぞ楽に産めるのだろうと出産の日を楽しみにさえしていた。
そして、2人目は出産予定日より早く陣痛がくるかもということで、予定日の1週間前には遠方に住む義母に泊まりにきてもらっていた。
いつ陣痛が来ても長女の面倒をみてもらえるよう、準備を整えて来たる日を家族みんなで待ち構えていたのだ。
陣痛は夜中にはじまることが多いと聞いたけれども、来る日も来る日も無事に朝を迎える私。
今日も、なんだかスミマセン〜と思いながら義母に朝の挨拶をして1日が始まる。
長女は幼稚園に通っており夫は会社に行くため、日中は義母とふたりきりだった。
数年前から韓国アイドルに夢中な義母から、Stray Kidsというボーイズグループについてとにかくいろんな情報を与えてもらって過ごしていた。
義母は中でもリノ君という子を推していて、
『〇〇な性格だと思うやろ〜?ちがうねん、〇〇やねん。んでこの子が意外と〇〇やねん。んでこの子とこの子が面白くてなぁ〜』
と、リノ君を中心にメンバーの性格や相性などをとにかく教えてもらった。
人と話すのが得意じゃない私は、一方的にたくさん話してもらってすごく気が楽ではあったが、正直メンバーの見分けが全然ついていなかったので適当に話を合わせながら陣痛を日々待っていた。
予定日を過ぎても陣痛の気配がない。
日々、テレビでYouTubeを映して顔の見分けがつかない男子たちが運動会をしている様子などをニコニコ顔の義母と見て過ごしていたのだが、
予定日をちょうど1週間すぎた日の夜明けについに陣痛が始まった。
といってもまだ感覚も長く弱かったので、土曜日ということもありその日は焼肉ランチをみんなで楽しむことにした。
割と近所の美味しくてお気に入りの焼肉屋さん。
たまにしか行けない特別感と、陣痛中に外食するという常軌を逸した行動に自分自身フワフワしながら店内に入る。
焼肉を網に乗せて、じっくり焼いていく。
そして少し焦げ目がついたタイミングで引き上げ、特製タレにつける。
白ご飯の上でバウンドする。
割と痛めの陣痛がやってくる。
しばらく目を閉じて、全集中で陣痛の呼吸をする。
痛みがスーッと引いたら焼肉を食べる。
これをひたすら繰り返して、無事に全て食べることができた。途中、長女から『ママなんで食べないの?残すの?食べたかったんじゃないの?』と責められたが
陣痛中に会話することなど不可能に近い。
そのときは完全に無視をして陣痛が終わった瞬間に言いたかったことをすべて早口で言い放った。
ママには(次の陣痛まで)時間がないということを伝えて、とにかくお肉を頬張った。
そして、焼肉ランチを終えた私たちは最近知ったパティスリーでそれぞれ選んだケーキを買って帰り、さっきまでより陣痛感覚が短くなってきた私はフーフー言いながらケーキを食べ終えた。
そして、もう痛すぎるし陣痛も進んでいるだろうと助産師さんに電話を掛けたところ『もうちょっと歩いてみましょうか』とのお返事。
すでにヒィヒィなのにもうこれ以上歩けないゼ…?と思いながらも、義母に長女を任せて夫と2人で期日前投票をしにスーパーまでいくことにした。
その日は、やっと長い夏が終わり秋めいてきた頃で、少し冷たい風が吹く日だった。
陣痛を耐えながら薄手のコートを羽織って、家の外に出て10歩くらい歩いたとき、さっきまでより冷たい風がピューっと吹いた。
その風が腰をかすめた瞬間、今まで猫の皮を被っていた陣痛が完全体となって私の腰で思い切り暴れ出した。
あまりの痛さで動けなくなった私は、期日前投票なんてとても無理だと察知し、ごめんなさい日本…と思いながら病院へと向かった。
そこからの陣痛はどんどん強くなり、焼肉屋さんや風が吹いたときとは比べものにならない程の痛みになっていった。
それなのに、なかなか子宮口が開いていかない。
助産師さんが様子を見に来てくれる度にかなり泣きながら『経産婦は早く産まれるんじゃないんですか???』としつこく詰め寄っていた。
助産師さんが部屋を出たあとも『経産婦なのに…っ、なんでぇっ』とずっと泣いていた。途中から参戦した実母も引いていたかもしれない。経産婦への期待が大きすぎたのだろうか。
だけど私は経産婦のメリットを知っている。
それは、自分の赤ちゃんの破壊的なかわいさを知っているということ。
長女の赤ちゃんの頃のかわいさ(今もかわいいけど)や愛おしさを思い出すことで、何とか諦めずに全集中の呼吸を続けていた。何度も何度も長女の赤ちゃんの頃を思い出して、お腹の赤ちゃんに酸素を送り続けていた。
そしてなんやかんやあって、病院到着から12時間後に次女が産まれた。
まだ臍の緒で繋がっているホヤホヤの次女を、助産師さんが私の胸に置いてくれる。
きちんと拭いていないからか、いろんな汁でぬるぬるになっている次女は汗だくの私の胸の上でツルツルすべる。
落とさないように必死で押さえながらも、やっと痛みがひいた安心感で意識はボーッとしはじめていた。
ちっちゃいちっちゃい赤ちゃん。
ずっと会いたかった。
どんな顔なのかなぁと覗いてみると、あらまぁびっくり。全然知らない顔。
長女と違うんですが…?と理解ができなかった。
陣痛の激しい痛みの中で、長女の赤ちゃんの頃を思い出していたからか、私は長女と同じ顔が出てくるものと無意識に思っていたのだ。
なんてアホなのだろう。
そんな出産の思い出から1年。
いまや、なくてはならない家族の一員となった次女。これまた可愛くて可愛くてたまらない。一生覚えておきたいほどのかわいさだ。
3人目をいつか出産できるときがきたら、今度は次女のことを考えながら陣痛を耐えようと思う。
おしまい。
