ゲームの敵キャラ
この日は電車で大阪へ向かっていた。
「ラッキー!今日は座れた!」
背中に当たる心地よい陽射しがウトウト眠気をさそう。
「あーこのまま何時間でもおれるわー。」
大阪に向かうにつれ乗客が増えてくる。
椅子が満席になり、たまたま目の前に立ったお姉さんのカバンにマタニティマークのキーホルダーが。
『マイルール 席が必要な人が現れたら誰よりも先に席を譲る』
このマイルールに従い、「よろしければどうぞ」とお姉さんに席を譲ろうとした。
その瞬間、「やっと空いたわ」という声と同時に、パーマのおばちゃんが譲ろうとした席に座ってた。
はぁ?
僕とお姉さんは同じ顔の苦笑いで、目が合った。
「おばちゃん、俺お姉さんに席譲ってん、どいて」
こう言ったが、おばちゃんは目を閉じ、頑なに知らんぷり状態。完全に無視だ。
「もうあんたとは会うことないし、なんやったら隣の兄ちゃんが譲ったらええねん」とか考えてそうだ。
少し怒り顔の僕に、お姉さんは首を横に振った。
その時、おばちゃんの思惑通りに、目の前のお兄さんが立ち上がり、お姉さんに席を譲った。
無事お姉さんは座れたが、気まずそうだった。
席を譲ろうとして、嫌な気分になったのはこの時が初めてだった。
でも悲観してはいけない。
電車で敵キャラと遭遇するのはかなりレアだ。
感謝される事が多いから、少し気持ちがすり減らされただけ。
電車を降りる時に「さっきはありがとうございました」とお姉さんが頭を下げてくれた。
この一言で、僕のパワーが回復した。
思わぬ敵キャラに屈することもあるが、席を譲ることはやめてはいけない。
人生はいろんなところから、いろんな人から「ありがとう」をいっぱいもらう為のゲームなのだから。
今度、パーマおばちゃんに会った時にストレートパーマでも当ててやろうか。ゲームにはサブイベントも付き物だ。
