フリースクールで初めて挑戦した日〜父の思いを知った〜
今はこうして笑って話せるけれど
僕がフリースクールに通い始めて、
毎日はとても楽しかった。
友達とトランプで大富豪をして、
おしゃべりをして、
楽器を教えてもらって、講座に出る。
こんなに楽しい時間を過ごしていいのか、
と思うくらいだった。
家にいた頃は、楽しい時間があっても
「学校に行っていない」という罪悪感が
どこかでストップをかけていた。
でもここでは違った。
みんな学校に行っていない。
だから、安心して「楽しい」ができた。
僕はそんな毎日を、
思う存分楽しんでいた。
でも、それだけじゃ足りなかった。
ただ楽しいだけでは、
人は満足しないんだなと感じた。
僕はフリースクールの周年祭で、
実行委員になった。
友達を楽しませる企画を考えて、
準備をして、話し合った。
そして僕は、
ピアノの発表にも挑戦することにした。
準備が進むにつれて、
不安も出てきた。
ちゃんと伝わるかな。
これでうまくいくのかな。
でも、逃げなかった。
失敗しても大丈夫。
そんな空気が、そこにはあった。
当日、僕は裏方として動いていた。
実はそれには理由があった。
ただ座っているだけだと、
トイレに行きにくいと分かっていたから。
裏方で動きながら、
僕は何度もトイレに行っていた。
それでも、誰にも変に思われなかった。
それだけで、とても安心できた。
この経験は、心因性頻尿の僕にとって
その後にもつながる大きな安心になった。
発表の時間が近づいた。
客席を見ると思っていた以上に人がいて、
緊張した。
でも、うまくいかなくても
優しく見守ってくれる空気があって、
少しホッとした。
僕の番が来て、
ピアノの前に立った。
その時、扉が開いた。
母が入ってきた。
今日のことは、
恥ずかしくて伝えていなかったのに。
驚いたし、恥ずかしかったけれど、
嬉しかった。
その後なんと、父も入ってきた。
僕はとても驚いた。
父は少し恥ずかしそうにしながら、
でも僕のことを見て、
嬉しそうに笑っていた。
父は、フリースクールに通うことを
あまり よく思っていなかった。
僕はそんな父を、
どこか遠ざけていた。
でも・・・・あの時、
僕を見ている父の表情を見て、
胸が熱くなった。
父は、ずっと僕のことを心配していたんだ。
どうしたらいいのか分からなくて、
悩んでいたんだ。
そう気づいた。
ピアノの発表は、
間違えたり、速くなったりしたけれど、
最後まで弾くことができた。
たくさんの拍手をもらった。
終わってすぐに両親を探したけれど、
もう帰っていた。
家に帰って、父に
「見に来てくれてたんだ」と言うと、
「そうや。よう頑張ってたな」
それだけだった。
でもその一言で、
父の気持ちが伝わってきた。
少し、嬉しかった。
子どもは、
親の表情をちゃんと見ている。
あの時の父と母の表情は、
今も大切な思い出として残っている。
不思議と、あたたかい表情だけが
心に残っている。
振り返るとあの日は、
「楽しい」から
「挑戦できる。もっと楽しい」へ
変わった日だった。
そして、自分の中だけじゃなく、
家族との関係も少し変わった日だったと思う。
そして親の想いは、ちゃんと届いている。
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ここに書いているのは、
あの頃の僕が母に伝えたかった言葉です。
いただいた気持ちは、
いま孤独な場所にいるお母さんへ
そっと言葉を届け続ける力にします。