31年ぶりの、やさしいキセキ。
「幼稚園に戻りたいなぁ」
子どもの頃、私はよくそう口にしていた。
馴染むのに本当に時間がかかる私。
物心ついた時には、なぜだか学校という場所で
自分を出せなくて、頭ではいろんなことを思っているのにうまく話せない。
楽しい、おもしろい、悲しい、辛い。
いろんな気持ちがあるのに、なぜか出せなくて、
それがとってもしんどかった。
「みんなみたいに普通になりたいな」
そんなことをよく思っていた小学校時代だった。
そんな私だけど、幼稚園はとっても楽しかった。
お友達のことで悩んでいた記憶もたしかにある。
年少さんの時に、苦手な鉄棒をスパルタな先生の横でひたすら泣きそうになりながら頑張っていた記憶もある。
でも、お店屋さんごっこをしたり夏祭り会をしたり、お泊まり保育でみかん狩りをしたり、楽しかった思い出の方が浮かんでくる幼稚園時代。
きっとこんな風に感じられたのは、年長さんの時にクラスを受け持ってくれた先生のおかげだと思っている。
いっつもニコニコ優しい笑顔でお話を聞いてくれて、運動会のときも全力で飛び跳ねながら応援してくれて、頑張ったあとは思いっきり褒めてくれて……本当にみんなのお姉ちゃんみたいで、大好きな先生だった。
「先生、どうしてるかな」
──時々思い出すことはあっても、連絡手段はなく、心の中でそっと想うだけになっていた。
そんなある日。幼馴染のYちゃんが母校の幼稚園で働きはじめたと聞いた。それだけでもびっくりしたのに、さらに驚いたのは、そこにあの大好きな先生が、今もいらっしゃったこと。
涙が出るほど嬉しくて、私はすぐにお手紙を書いた。
〇〇先生へ
お久しぶりです。お元気ですか?
Yちゃんから先生のことを聞いて、凄く驚きました。私の中で、幼稚園時代はとても楽しくて、先生と一緒に過ごした〇〇組さんでの思い出や、先生の優しい笑顔が今でも浮かんできます。
この31年、いろんなことがありましたが、
幼稚園の頃から夢だった看護師になり、3人のお母さんになりました。
コロナ禍でいろいろ大変な時期かと思いますが、先生もお身体に気をつけて下さいね。
また先生と会ってたくさんお話したいです。
お手紙には娘がかわいいシールを
ペタペタ貼ってくれた。
31年ぶりのキセキが起きたとき。
我が家は娘の不登校で揺れに揺れていた。
自分自身も心が追いつかず、食欲もなく、
まだ赤ちゃんだった末っ子に授乳をするために「食べなきゃ」と必死に口に運ぶ毎日。
気づけば涙があふれてしまうことも多かった。
そんな時に届いた「先生が今もあの幼稚園にいる」という知らせ。
本当に本当に嬉しくて、なんだか暗闇の中でパッと明るい光が見えたように感じた。
幼馴染のYちゃんから先生に手紙を渡してもらい、それからまもなくお返事が来た。
nokoちゃん、お手紙ありがとうございます。
31年経ってこんな風に再会できるとは思いもしませんでした。
もうこの言葉だけで胸が熱くなった。
何年経っても先生の優しい笑顔が浮かぶ。
はにかんだ笑顔。人前に出るよりも周りの状況をいつも冷静に見ていて、お友達が少なくなってくると、たくさんお話をしてくれたことを今でもはっきり覚えています。
そこには、幼い私のことをしっかりと覚えてくださっていた先生の言葉が並んでいた。
お手紙をもらい、ここでずっと先生をしていてよかったと思いました。
先生からのお手紙。他にも、私の父が年賀状を毎年送ってくれていて母のことも知り、気にかけてくれていたこと。今の様子を知って涙が出たことなど書いて下さっていた。
大好きな先生が、何年経っても覚えていてくれたこと。離れていても、心のどこかで見守ってくれていたこと。その優しさに触れた瞬間、涙が込み上げてきた。
手紙をやり取りした当時は、まだまだコロナ禍の真っ最中。そして我が子の不登校も重なり、なかなか会いに行くことができなかった。
先生のお手紙の最後には、
「まだまだ幼稚園時代のお話や、今のお話などたくさんしたいことがあります。またお子さんも一緒に園に遊びに来てくださいね。」
そう書いて下さっていた。
あれから少し時間が経った今も、
先生に会える日を心待ちにしている。
人生の折り返し地点に立ち、改めて思う。
気持ちは伝えていく。
会いたい人には、会いに行く。
卒園したあの日から31年。
人のぬくもりで紡がれたこのご縁は、
わたしにとっての──
「31年ぶりの、やさしいキセキ」だ。
この記事をずっとずっと下書きに保存していたんだけど、なかなか完成せずにいたそんなとき。
ポンちゃんからメッセージをもらい、記事を読んで涙が込み上げてきた。
先生というお仕事は本当に本当に大変なお仕事だとおもう。
だけど、私が救われたように、先生の存在ってすっごく大きい。きっときっと、しーちゃんもどこかでポン先生のことふとした時に思い出して、想っているんだろうな…そう感じた🌸
書いてくれてありがとう、ポンちゃん。
