眠れない龍のための子守唄
その龍は、あまりに長く生きすぎて「眠り方」を忘れてしまった。
琥珀色の瞳は三百年も開いたままで、その目には疲れが澱(よど)みのように溜まっている。
一人の吟遊詩人が、龍の険しい角の間に座り、小さな竪琴を奏で始めた。
「空の青を忘れなさい
雲を裂く風の鋭さを忘れなさい」
それはメロディというより、土の匂いや雨の音に近い響きだった。
やがて、地震のように大きな溜息がひとつ。
龍の重い瞼がゆっくりと閉じられ
数世紀ぶりに訪れた静謐な闇。
龍が紡ぎ始めた夢は、柔らかなヴェールとなって世界を包み込み、すべての命を深い安らぎへと誘った。

おやおや
夢の中で出会った幼き日の自分も
翼を休めてすやすや。

#3つのお題に空想のひらめきを
#眠れない龍のための子守唄
#片桐みかんさん企画
