The Last Train to Heaven
その駅は、地図には載っていない。時刻表もない。ただ、人生の終わりの、その刹那にだけ現れる。
澄み切った群青色の夜空。満天の星々が、まるで小さな宝石を散りばめたように瞬いている。
彼女は、静かにその駅のホームに立っていた。
長い白いドレスの裾が、夜風に揺れている。
手に持っているのは、たった一つの、使い込まれた茶色の革のスーツケース。
ホームを照らすのは、クラシカルな街燈の、温かい光。
その横の看板には、「天国行き最終列車(The Last Train to Heaven)」と、静かに記されていた。
時間は、午後8時を少し過ぎたところ。
古い柱時計の針が、静かに時を刻んでいる。
足元には、雲が広がり、まるで波のない海のように、静寂をたたえている。
その上を、白い花々が寄り添うように咲いている。
彼女は、目を閉じた。
そこには、愛した人たちの笑顔が、駆け抜けていった。
喜び、悲しみ、怒り、そして、感謝。
すべての感情が、この瞬間に、一つの物語となって、彼女を包み込む。
静かに、彼女は目を開けた。
そして、その光に満ちた列車へと、一歩を踏み出した。
それは、終わりの始まり。
列車は、静かに走り出した。
星空を、雲を、そして、すべての思い出を、背負って。
彼女は、もう振り返らない。
ただ、その光へと、まっすぐに、進んでいく。
その列車は、ただの列車ではない。
それは、人生という、奇跡の旅を締めくくる、最後の贈り物。
そして、その先にある、終わりのない世界へと、彼女を運んでいく。
その夜、彼女の姿は、星空の中に、静かに、溶けていった。
そして、その駅も、静かに、消えていった。

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