連作詩:たそがれ通信
第一章:消えた伝言板
あの駅の古びた黒板
チョークの粉にまみれた
誰かの想いの集積所
「先に行きます」
「明日また」
書き連ねられた無数の言葉は
夕暮れの風が吹くたび
少しずつ滲んでいく
ある日_突然
伝言板は真っ白になった
すべての約束が
すべての願いが
まるで
最初からなかったかのように
消えてしまった
駅長さんは困り顔で
古い公衆電話の受話器を見つめる
時刻表の紙は色あせ
時計の針は止まったまま
ホームに立つ二人の背中も
どこか頼りなげだ
消えた言葉たちは
一体どこへ行ったのだろう?
空へ昇り
あの燃えるような
茜色の雲になったのだろうか
それとも
時の狭間に
落ちてしまったのだろうか
誰も答えを知らない
ただ伝言板だけが
沈黙を守り続けている

第二章:下駄箱の手紙
教室の隅
木の香りが残る下駄箱
自分の名前が書かれた場所を開けると
一通の手紙が
静かに横たわっていた
さくらの花のシールの甘い香り
手書きの少し震えた文字
「いつもありがとう。」
「今日、掃除のあと、教えてほしいことがあります。」
それは 小さな
けれど確かな誰かの勇気の証
廊下の向こう
夕日を浴びて笑う友だちの声
自分の手元にある
この小さな紙切れ
それは世界で一番大切な
秘密の鍵のよう
下駄箱の奥深くに隠された
この手紙に込められた想いは
きっと明日を
少しだけ変える力を持っている
たとえそれが小さな一歩だとしても

第三章:茜色の自転車
夕暮れの街角
石畳の道
赤い自転車が一台
静かに佇んでいる
カゴには小さな願いが
花びらのように積もっている
街を染める茜色の光
電柱の影が長く伸び
猫が静かに毛繕いをする
「今日も一日、無事でありますように」
看板の文字が
温かく見守っている
自転車のペダルをこげば
風が茜色の想いを運んでくれる
遠くの山へ
広がる空へ
誰かの元へ
この自転車は
ただの乗り物ではない
人々の想いを乗せて
たそがれの国を走る
奇跡の運び手
茜色の空の下
自転車は今日も
誰かの願いを乗せて
ゆっくりと走り続ける

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