星くず市場と黒猫の導き
その夜、ミオは大切な「探したいもの」を忘れて、夜空の下を歩いていました。
気がつくと、見たこともない光の街に迷い込んでいました。頭上のアーチには、どこか懐かしい文字で『星くず市場』と書かれています。
「わあ……」
思わず吐き出したため息が、星の光に溶けていくようでした。
市場の空気は優しく、どこか甘い焼き菓子の匂いがします。木製の案内板には「流れ星カフェ」「夢のかけら」「願いごと屋」といった不思議な名前が並んでいました。
ミオが戸惑ったように立ち尽くしていると、足元で「にゃあ」と小さく声がしました。
見上げると、首に星のチャームをつけた黒猫が、ミオをじっと見つめています。その目は、夜空をそのまま映したように深く、賢そうに輝いていました。
黒猫はトコトコと歩き出し、一枚の黒板の前でピタリと止まりました。
そこには、チョークで「本日のおすすめ」が書かれています。
きらきら星砂
光るどんぐり
星のかけら
月のしずく
ふわふわ雲のかけら
あります☆
黒猫は、黒板の「星のかけら 1個 50」と書かれたガラス瓶を前足でトントンと叩きました。瓶の中では、まるで小さな蛍が集まったように、ぬくもりのある光がまたたいています。
「これを、私に……?」
ミオがそっと手を伸ばすと、不思議なことに、胸の奥につかえていた寂しさが、すうっと消えていくのが分かりました。自分が何を「探したい」と思っていたのか、ようやく思い出したのです。それは、最近すれ違いがちだったお母さんと、笑顔で話すための「きっかけ」でした。
「ありがとう。これ、お土産にするね」
ミオが星のチャームのついたバッグからコインを取り出そうとすると、黒猫は満足そうに目を細め、しっぽをひと振りして、テントの奥へと消えていきました。
気がつくと、市場の灯りが少しずつ朝の光に溶け始めています。
ミオがぎゅっと握りしめたポケットの中には、まだほんのりと温かい、星のかけらがひとつ、静かに輝いていました。

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