なにをしても起きない君を愛してる
41週5日で長女は産まれた。
産院の方針により41週0日で入院、陣痛促進剤の投与が開始された。しかしまったく陣痛の起こる気配はなく、ただただ時間が流れていった。
はじめの3日は内服薬。4日目からは点滴を。それも効果なし。このままでは42週目に入ってしまう。41週5日。この日に陣痛がつかなければ、翌日は人工的に破水させることになっていた。
ついにそのときが来た。 誘発による陣痛は激烈であり、最初から2分間隔であった。痛みには強い方であるのだが、あまりの痛みに息を吸うタイミングもとれず、「叫びなさい、叫べば息吸えるから」という先生の声が天使の声に聞こえた。無痛分娩を希望していて良かったと今でも思う。この二分間隔の陣痛のまま、産まれたのは8時間後の23時50分。硬膜外麻酔がなかったらと思うとゾッとする。
42週寸前まで産まれようとしなかった我が子は、産まれた後は眠り続けた。
産院で初乳を与えるべく、子に乳を含ませたいのだが……
起きない。
なにをしても起きない。助産師さんが起こしても起きない。
やっと目を開けても、子猫のような小さな声で20秒ほど泣いた後、またすぐ寝てしまう。母乳もミルクも飲む気なしで、口に含んだまますぐ寝てしまう。
起きない、飲む気のない新生児の話など聞いたことがなかった。
体重は増えなかったが減りもしない。
沐浴しても寝る。おむつを替えても起きない。飲まずに寝る。
退院の日、体重が増えていないことでその後の通院の指示が出た。
退院して2日。……やってしまった、と思った。
起こさねば起きない新生児とともにぐっすりと8時間続けて眠っていた。
新生児に8時間授乳しない。
それはあって良いことなのだろうか?
起きていても泣かない。おむつが濡れた時しか泣かない。それもほんの少しだけ。乳を飲むより眠りたいのだと言わんばかり。
寝てもいい。母乳でもミルクでもいいから、お願いだから飲んでよ。
あの頃、巷には子が寝なくて辛い話はいくらもあった。皆が「大変ね、ママ頑張ってるね」と。だが、子が起きなくて辛い話は皆無だった。「あら、よく寝るなんて良い子ね、羨ましいわ」
わたしは母として失格か。寝る子は楽でいいのにミルクあげないひどい母か。
そんなわたしを救ったのは、毎日沐浴・おむつ交換をしてくれていた夫だった。
「よく見てごらん。肌もきれいだし、筋肉もしっかりしてるし、おしっこもでてる。大丈夫だよ。起きればよく動いてるし。俺もいろいろ調べてみるよ」
長女は今、中学生。平均よりは小さめだが、しっかりと育った。
マイペースで動じない。いちど眠るといつまでも起きない、起こしても起きない。そこは今でも変わらない。母のお腹からいつまでも出てこなかった頃から。
なにをしても起きない君を愛してる。
起きないわが子を前に泣いたあの日、わたしは確かに母となっていた。
あの日のわたしに伝えたい。
心配しなくていいよ、しっかりと元気に成長するから。。。
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