【比例の式で考える】学力を伸ばす「定数」と「変数」の考え方
目次
1. 学力を考える上で大切な「定数」と「変数」
皆さんは、中学校で習う比例の式を覚えていらっしゃるでしょうか。
中学生の頃何気なく解いていたあの比例式は実は私たちの生活に置き換えるとすごく重要な式であったことが見えてきます。
学力について考えるとき、私はよく「定数」と「変数」という言葉で説明しています。
比例とは、たとえば、
y = 5x
のような式です。
この式で言えば、「5」は定数です。
すでに決まっている数なので、自分で変えることはできません。
一方で、「x」は変数です。
xに入れる数が変われば、それに応じてyの値も変わります。
つまり、
定数は変えられない部分
変数は、動かすことができる部分
です。
数学として習うと、ここで終わってしまうかもしれません。
しかしこの式を、私たちの生活の中に落とし込むとかなり重要な式であると言えます。
では、これを私たち自身に置き換えるとどうなるでしょうか。
定数とは、自分の力ではなかなか変えることができない部分です。
たとえば、生まれ持った体格、遺伝的な特性、もともとの得意不得意などがこれにあたります。
一方で、変数とは、自分の行動や環境によって変えていける余地がある部分です。
日々の努力、学習の仕方、取り組む姿勢、周りの環境、そして自分の内側から湧いてくる動機などがこれにあたります。
もちろん、人間を完全に「定数」と「変数」に分けることはできません。
ただ、子どもを見守る大人にとって大切なのは、「変えられない部分」を見るのではなく、「その子が変えられる部分」に目を向けてあげることだと思っています。

2. 才能と努力を掛け算で考える
たとえば、才能と努力をそれぞれ5段階で考えたとします。
才能が5、努力も5。
つまり「5×5=25」のような状態の人がいたとしたら、その人に勝つのは簡単ではありません。
才能もあり、努力もできる人。
そういう人は、やはり圧倒的に強いです。
スポーツの世界で考えると、この話はとても分かりやすいと思います。
たとえば、大谷翔平選手です。
大谷選手は、誰よりも凄まじい努力をしている選手です。
ただ、それと同時に、恵まれた体格、身体能力、野球のセンスといった才能も持ち合わせています。
努力だけであそこまで到達したわけではなく、才能と努力の両方が非常に高いレベルで掛け合わさったからこそ、メジャーリーグのトップで活躍できているのだと思います。
つまり、大谷選手は「5×5」に近い存在だと思います。
才能もある。
努力もする。
だからこそ、あれほど圧倒的な結果を出すことができるのです。
大谷翔平選手は、非常に稀有な存在であると言えます。
ただ、みなさんお分かりのように誰でも大谷翔平選手のようになれるわけではありません。
だからこそ大事なのは先天的な定数に目を向けるのではなく。
後天的に変えることが可能な、変数に目を向けるべきなのです。
変数を向上させれば、才能がある人に近づき、追い越すだって可能なのです。
例)
才能 5、努力 2(才能がある子)
y = 5 × 2 = 10
才能 3、努力 5(才能は普通でも努力、やりきれる子)
y = 3 × 5 = 15
このように努力ややり切る力つければ才能のある人を追い越すことだって可能です。
そして、やり切る力は研究により、後天的な環境や周囲の関わり方によって大きく伸ばせることがわかっています。
3. 勉強にも「伸び方の違い」はある
勉強の世界では、「努力すれば誰でも同じように伸びる」と考えられがちです。
しかし勉強にも、理解の速さ、記憶の得意不得意、集中力、処理速度などには個人差があります。
一度聞いてすぐに理解できる子もいれば、何度も繰り返してようやく理解できる子もいます。
短時間で覚えられる子もいれば、時間をかけて少しずつ定着していく子もいます。
私は、まずこの前提を大人が理解しておくことが大切だと思っています。
「勉強に才能なんて関係ない。努力すれば全員同じように伸びる」
そう言い切ってしまうと、努力しているのにすぐに結果が出ない子は、かえって苦しくなってしまいます。
「自分は努力しているのに伸びない」
「ということは、自分はダメなんだ」
そう感じてしまう子もいるかもしれません。
同じ時間勉強しても、すぐに結果が出る子もいれば、時間をかけて少しずつ伸びていく子もいます。
その違いを理解せずに、結果だけを見て、
「なんでできないの?」
「もっと頑張りなさい」
と伝えてしまうと、子どもは自信を失ってしまいます。
大切なのは、得意不得意や伸び方の違いを理解した上で、
「では、この子にとって変えられる部分はどこなのか」
を一緒に考えることです。
4. 大切なのは、変えられる部分に目を向けること
では、子どもにとって「変えられる部分」とは何でしょうか。
才能という定数は、自分では変えることはできない部分です。
でも、努力の仕方、学習環境、取り組む姿勢といった変数は変えていくことができます。
変えられない部分ばかりを見ていると、人は苦しくなります。
「あの子は頭がいいから」
「あの子は才能があるから」
そう考えてしまうと、子どもの可能性を大人が閉じてしまうことにもつながります。
でも、変えられる部分に目を向けると、少し見え方が変わります。
分からない問題をそのままにしない。
集中できる環境を整える。
前回よりも少しだけ良いやり方を試してみる。
こうした一つひとつは、すべて変数です。
そして、その変数をどれだけ動かせるかが、子どもの成長に大きく関わってきます。
もちろん、すぐに結果が出るとは限りません。
勉強方法を変えても、最初はうまくいかないこともあります。
環境を整えても、すぐに集中できるようになるとは限りません。
復習を始めても、すぐに点数に表れないこともあります。
それでも、変えられる部分に目を向け続けることには意味があります。
なぜなら、学力は一気に伸びるものではなく、小さな改善の積み重ねによって少しずつ伸びていくものだからです。
5. 子どもの「変数」を一緒に見つける
全員が同じ才能を持っているわけではありません。
同じスピードで伸びるわけでもありません。
でも、変えられる部分は必ずあります。
勉強時間の使い方。
分からない問題への向き合い方。
集中できる環境づくり。
前回よりも少しだけ良いやり方を試してみること。
こうした一つひとつが、その子にとっての「変数」です。
自分の変えられる部分を少しずつ動かし続けることが重要です。
子どもに対して、つい
「なんでできないの?」
「もっと頑張りなさい」
と言いたくなることもあるかと思います。
もちろん、親として心配だからこそ出てしまう言葉だと思います。
でも、その前に、
「この子にとって変えられる部分はどこだろう」
と一度立ち止まって考えてみる。
その視点があるだけで、子どもへの声かけは大きく変わります。
才能であきらめるのではなく、その子が変えられる部分に目を向ける。
そして、その変数を少しずつ伸ばしていく。
その積み重ねこそが、子どもの本当の成長につながっていくのだと思います。
